ふっと思い出したんでお焚きあげに書いてきます。
自分がガキの頃の話。

その夏の日、友達との待ち合わせ場所に急いでた自分は古いトンネルを使うことにした。
今は車道に使われてない(入り口前に車侵入禁止の柵が置いてあった)地元住民の通り道。
でも変なのが出ると言う噂が絶えず自分も何となく使わなかった。自分も出来れば使いたくないけど、そのとき急いでたのでやむを得ずトンネルに入った。

案の定、使われてないから手入れもされず入り口の壁を蔦(ツタ)が覆い、顔にかかりそうな高さまで垂れ下がってた。ツタのカーテンを抜けると内部は街灯が消えそうに暗く、車道は雑草伸び放題。真夏なのに奇妙にひんやりしてる。

嫌だなあと思いながら足早に歩いてたら前方からおばあさんが来た。
人がいることに半分ホッとした自分はおばあさんを見て凍りついた。
普通ではなかった。まず裸足。口は半開き、目は黒目が完全に上に向いてる。髪は伸びきった白髪がボサボサで服もぼろぼろ。
しかも私が歩いて行くと立ち止まり、じーっと私の方を向いてきた。そしてすれ違うとき、ゆっくりこちらに手を伸ばしてきた。
さすがにヒッと悲鳴をあげそうになったが動きがのろかったので手をかわし、心臓バクバク言わせながら通り過ぎた。
でも背後から視線?的なものを感じてずっと全身総毛立っていた。
出口にもあった蔦のカーテンを抜け、トンネルを出ると友人がいた。迎えに来てくれたらしい。
友人は言った。
「おまえ真っ青だぞ?」
日の下にいる友人を見て黄泉の国から出られた気分だった。
私はまくしたてるように、
「ねえねえ、今入ってったおばあちゃん、絶対に徘徊してる認知症の人だよね!?警察に連絡する?」
すると友人はキョトンとして言った。
「おばあちゃん?誰も入っていかなかったよ?」
バッとトンネルを振り返る。

ついてきていたらしい。
蔦カーテンの下に裸足の足が見えた。
…まあありがちかな。その後地元を離れるまで二度とトンネルは使わなかったし近くも寄らなかったからトンネルが今どうなってるか知らん。
本当にあったことだから、その後の祟り的な後日談とか面白いオチは何も無かったけどね。