>>144
広さがあるとは言っても売店や展望台はなく、あとは引き返して帰るのみという場所。

昼間だったのに曇り空で薄暗く、それまでの道中より霧が濃かったです。
父が「山の天気は変わりやすい」なんて言っていたのを覚えています。

天気が良ければ眺めが良かったのでしょうが、霧のせいで景色は真っ白。
自分たちがいるその場所以外、他の山などは周囲に見えませんでした。

当時の私は、このような場所に来た経験がなかったため、目の前で霧が右から左に流れていく様を見て「雲に触れる〜」と霧を手で掴もうと試みたものです。

登ったからには高さがあることは分かっています。
視界も悪く、流石にこの場所で調子に乗ってはマズいなと、はしゃがず大人しくしていました。

この場所ですることもない、あとは引き返して駐車場に戻るだけ。

そう思い歩いていると。
前方にあったはずの地面が、急に無くなったのです。

ここで一歩進んだら死ぬ、私はそんな崖に立っていました。

先ほどまで、自分の視界にはドッジボールが出来るほどの縦幅はあろう地面が広がっていたのに。
たまに霧が流れ視界が途切れるものの、地面および他の観光客の姿も見えていたのに、目の前が急に崖になったのです。

完全に奈落の底。
相当な高さの断崖絶壁が足元から下に伸びており、その先は雲だか霧だかで見えない。
それが絵本のようにクッションになるわけもなく、落ちたら絶対に助からない事は明白でした。

流石に小学生とはいえど、こんな危険な場所に立つ馬鹿はいないだろうという位置。