昭和どころか明治以前にさかのぼる、由緒ただしい山の神「空チャイム様」だぞ。
玄関のチャイムが鳴った気がする、携帯に着信がきた気がするから生まれた妖怪だ。
目には見えない、左肩にとまる、自分の名前を告げる、名前を呼ぶと目をついばまれる。
天然痘の被害と“名前を呼んではいけない”の民間伝承が混ざり合って生まれた山の神だ。
そして時代がくだって山の神だったものが、「ちねちね」、「死ねしね」に変化した。

子供は注目を集めるために嘘をつくし、騙されやすく、そして暗示にかかりやすい。
だから何でもない物音や空チャイムを、「死ね」の言葉だと簡単に思い込んでしまう。
結果として子供のうちに何度となく耳にして、大人になってもまだ聞こえる人もいる。
ひとつの集団のなかで、ぐるぐるとお互いにかけあい続ける催眠術みたいなものだな。

A君が自傷に走った原因はおそらく家庭不和だと予想している。
A君の病気が原因で家庭崩壊したのではなくて、家庭崩壊が原因でA君は仮病になった。
耳をどこまで切ったのかは伝聞だから正確には分からないが、救急車は呼ばれた。

ニュータウンがおかしい原因は、第三セクターという名の妖怪の仕業だろう。
時代的には世界金融危機も重なってるし、現在進行形ではコロナだな。
オカルト的な表現を極力排除すると、こんな夢も希望も持たせない実話になるんだが、そっちのが良かったのか?