やなせたかしの絵本「キラキラ」

「オビエ村」では「近くにある高い山に近づいてはならない」という掟が守られていた。
その山には「キラキラ」と呼ばれる全身が毛深く、一つ目の不気味で巨大な怪物が潜んでいたからである。
その恐ろしさは、ひと目見た者が物も言えなくなるほどであるとされるため、山に近づこうとする者は一人もいなかった。

「キラキラがなんだ。いつか自分がこの棒で叩き殺してやる!」
そう張り切るのは、オビエに住む少年・キリ。彼は棒術に長けるが、暴れ者で無鉄砲な性格だった。そんなキリは、ある夜突然村から消息を絶ってしまう。
「おそらくキラキラの山へ向かったのだろう」
そう確信したキリの兄・キルは、帰らない弟を救うべく、得意の弓を片手に誰も近付くことのなかったあの山へ単身救出へ向かった。

何日か暗い森を歩き続け、目も眩むような高い断崖を制覇したキル。
ようやく山頂に到達した彼の目に飛び込んだのは、あの恐ろしい怪物・キラキラが、気を失って倒れているキリを今まさに襲いかかろうとしていた光景だった。
弟の危機を瞬時に察したキルは一時パニックになるが、やがて心を鎮め、弟に矢が当たらない事を神に祈りつつ、静かに弓を引いた。

キルの祈りを込めた一矢は見事にキラキラの胸部を射た。間もなく怪物の凄まじい悲鳴が山々に響き渡る。