まず、『秘密集会タントラ』を含む、各種のタントラに基づく後期密教の修行は、
生起次第(しょうきしだい)究竟次第(くきょうしだい)の2段階に分けられる。

1は文字通り、2に向けた導入・準備的な修行で、
観想による曼荼羅の生成・操作によって心身を修養するものであり、中期密教の観想と類似している。
2は後期密教に特有な修行法であり、「チャクラ」理論的な身体観に基づき、
身体に影響する呼吸コントロールを積極的に行う。ハタ・ヨーガ、クンダリニー・ヨーガと近親関係にある。

究竟次第
(※究竟次第は、身体(特に血流)に影響を与える観想(イメージ操作)や呼吸コントロールを積極的に行い、
仮死状態ないしは意識混濁状態・恍惚状態を生み出すものであり、興味本位で真似するのは非常に危険なので、注意してもらいたい。)

身体論
究竟次第に関しては、まず、その前提となっている、インド古来のチャクラ理論をベースとした身体論を理解しておく必要がある。

この身体論では、

我々の物質的身体の内外に霊的な身体がある
そこには7万2000本の脈管(ナーディ)が走っている
なかでも約5mmの左右の脈管と、約10mmの中央脈管、合わせて「三脈」が特別大きい
左右の脈管は中央脈管と数カ所でかたく絡んでいる
(これがいわゆる「輪」(チャクラ)であり、その数は4から8の間で諸説分かれるが、
秘密集会聖者流では性器・ヘソ・心臓・のど・頭頂の五箇所をチャクラとみなす。
この脈管結合部としてのチャクラでは、通常、左右の脈管から中央脈管に「風」(チベット語で「ルン」、
インドで言うところの「プラーナ」)が入り込むのが阻止されており、中央脈管は真空状態にある。)