「勇者鎧をきる」というフリーゲームのエンディングの一つが後味が悪かった
この作品は精霊に選ばれ世界で唯一電撃魔法を使える勇者が、魔王を倒して世界を平和に導く話なのだが、長い冒険の末、ようやく魔王を打ち倒した後のイベント。
魔王討伐後勇者は故郷の国に凱旋したが、その力を国王から危険視されて幽閉され、命からがら国から脱走し、かつて勇者が危機を救った「魔導の国」に訪れる。
魔導の国では勇者の元仲間の魔法使いの少女が国の長の1人を務めているため、勇者は保護を求めるが、魔法使いは浮かない顔をしていた。
勇者は魔法使いと共に魔導の国の長老に会い、保護を得る事を確約したが、長老は条件として勇者の電撃魔法を世界発展のために用いたいと言ってきた。長老曰く、電撃魔法を皆で使えれば、人々は便利な生活が出来るようになり、国家間で物資を大量輸送する事も出来ると言う。
しかし魔法使いは「今の説明はメリットしか伝えてないからアンフェアだ」と指摘し、長老は「世界発展に比べればごく僅かな代償だ」と言いつつ、
そのデメリットについて説明した。電撃魔法を皆で使うには、その魔力を供給するため勇者を『人間発電機』として死ぬまで牢獄に幽閉する必要があると言う。
魔法使いは「魔王を倒して十分世界に貢献した勇者がこれ以上身を犠牲にするのはやっぱりおかしい」と長老に反対するが、ここで「人間発電機になる」という選択肢を選ぶとエンディングとなる。
魔法使いは、世界に貢献したいという勇者の意志を汲み取り、電撃の力を絶対に世界の為に役立ててみせると涙ながらに誓うのだった。
その後長い年月が経ち、長老の言う通り電撃の力によって人々の生活は一変した。魔法の代わりに科学という新たな力を手に入れて豊かな暮らしが出来る人が爆発的に増えていった。
魔導の国はその富を独占し、世界中の人々を支配しようとし、人間対魔王の争いの代わりに人間同士の科学戦争が勃発した。
その世界では、人々の為にその身を犠牲にした者が居たことなど、すでに誰も覚えてはいなかった…。