友人は「どうせ変な形の石とかだろうな」と期待しないでいたんだけど、男の子がふたを開けた缶の中には、ぎっしりと手紙が入っていたらしい。
白、ピンク、茶色と色柄も形も統一性のない封筒が大体2、30くらいは入っていたようで、友人は?状態。
すると男の子が一つの封筒を取り出し、中に入っている手紙を取り出して友人に見せてくれた。
途端友人は思わず「えっ…」と声を出してしまったらしい。
その便せんには、筆ペンのようなものを使った流暢な文字で一言、「子どもをください」と書かれていた。
友人が「なにこれ…」とつぶやくと、男の子は続いて何枚か手紙を取り出す。
内容はほとんどが同じもので、多少言い回しは違うもののすべて「子どもをください・子どもがほしい」といったもの。
時々、一転して荒れた文字で「なんでくれないんですか」と書かれたものもあった。
友人は完全に引いてる中、男の子はうれしそうに次々手紙を見せてくる。
いくつめかの手紙を開いて、男の子は突然「これはぼくのお母さんからもらった」と言い出した。
「この手紙の人がぼくの本当のお母さん」「ぼくはもうすぐ本当のお母さんのとこにいく」
そんな風なことを、ニコニコしながらずっと言ってたらしい。
さっきまでと打って変わっていきいきと喋りまくる男の子を見て、友人はもう気味が悪いし意味もわからないし、
もう家に帰らないといけない、とだけ伝えて急いで逃げ帰った。
帰ってから家族に伝えようかとも思ったが、改めて思い出してみても謎だし引っ越しでバタバタしてるし、
結局言うことはなかったそうだ。
その手紙が何だったのか、E棟の噂の原因は何だったのか、その男の子はどうなったのか、
何も分からずじまいなので後日談とかはない。
ただ俺がこの話を聞いたとき、その出来事からもう10年ほど経っていたが、
「今でもあの本当にうれしそうな顔は忘れられない」と友人は言っていた。