事情を上手く飲み込めずにいたが、取り合えず親父の無事が確認出来たこと、
そして謎の電話を真に受けて夜中の12時に廃病院へ一人ぼっちで行く気にはなれず、
腑に落ちないままも自分のアパートに帰る事にした。川田のコンビニを出て、車を
返却し自宅に着いたのは夜中3時手前だった。自宅のドアを開けると仕事の後に
4時間もの運転をしたことで泥のように疲れ、風呂にも入らずベッドに倒れ込んだ。

翌朝、昼前に電話で起こされた。見ると親父の表示。はい…と出ると「おう、元気か?
昨日は家に居なくてすまんな。何かあったか?」と聞いてくる。
変な話を告白するようで気が引けたが、親父の携帯から電話があったこと、親父に病院
へ呼び出されたこと、川田の家のコンビニで真相を知り引き返した事を正直に話した。
親父はその場で自分の携帯を確認して、その時間に俺へ発信はないと言う。
そして暫く黙り込む親父。「…市民病院は確かにもうやってない。あの時間に行って
も、いや昼間に行っても誰もいないよ。…それよりも川田さんちのコンビニに行った
んだな?川田君もいたのか?」
と聞くので話した内容や川田の携帯で電話をしたことを告げた。
すると親父はうーん、と言い辛そうに「川田さんところのコンビニは半年前に閉店
したぞ。ご一家も居なくなっている…。お婆ちゃんから捜索願が出ているはずだ」と。
「昨夜俺にかかってきた番号は000-0000-0000だった。俺は携帯が壊れたかと思ったが、
出てみたら若い男が出てお前に代わったんだ」と言った。
2人とも暫く無言になったが、親父は気を取り直したようで、「取り合えず事情は
分かった。お前疲れてないか?仕事は大丈夫か?交通事故とかには気を付けるよう
にしろよ、また連絡するから」と言うと電話を切った。

当時は携帯のなりすましやSIMコピーとかあるような時代じゃなくて今だったら出来る
のかもしれない裏技も無かったように思う。
それに全部が0の発信や通知って出来ることなんだろうか。
川田の一家は数年経った今でも行方不明でいる。