村上春樹さん、亡き父の戦争体験つづる 文芸春秋に寄稿:朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASM584S8TM58UCVL00W.html

 作家の村上春樹さん(70)が、父・千秋さんの中国大陸での従軍経験について
エッセーをつづり、10日発売の月刊総合誌「文芸春秋」6月号に寄せている。
村上さんが自身の父を語ることは、これまでほとんどなかった。その戦争体験は
小説にも投影されている。

 「猫を棄(す)てる 父親について語るときに僕の語ること」と題した特別寄稿は、
小学生だった村上さんが父と猫を捨てに行った思い出から始まる。帰宅すると
猫はなぜか自宅に戻っていたと村上さんらしい軽やかな語りもあるが、
父の戦争体験に及ぶと筆致が変わる。

 村上さんの父・千秋さんは1917年に京都の寺の次男として生まれ、在学中だった38年、
20歳で第16師団輜重(しちょう)兵第16連隊に入営した。村上さんが小学生の頃、
所属した部隊が中国で捕虜を処刑したと、一度だけ父から打ち明けられたことがあったという。
「軍刀で人の首がはねられる残忍な光景は、言うまでもなく幼い僕の心に強烈に
焼きつけられることになった」と書き、父から継承した「疑似体験」として受け止め、
「どのように不快な、目を背けたくなるようなことであれ、人はそれを自らの一部として
引き受けなくてはならない。もしそうでなければ、歴史というものの意味がどこにあるだろう?」
と続ける。

(以下略)