稲川淳二みたいな口調のスレですよ 第八拾壱話目
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
絶対にageちゃいけない!
稲川淳二公式サイト
ttp://www.j-inagawa.com
稲川淳二の怪談ナイト オフィシャルサイト
ttp://www.inagawa-kaidan.com/
前スレ
稲川淳二みたいな口調のスレですよ 八拾スレ目
https://mao.5ch.net/test/read.cgi/occult/1547696909/
アタシ次は>>980さん目安に立てて欲しいんですよ、えぇ >>599の続きなんですがね
翌日、寝落ちしたアタシは目を覚ましたんですが、目を覚ましたら何故かベッドの上に寝てるんだ
(おかしいなー、テーブルの椅子で寝落ちしたはずなんだけどなぁ)
ベッドの上にある目覚まし時計を止めると朝の6時半だったんですが、テーブルをそこから見た瞬間アタシは仰天したんだ(オーッ・・・!?)
昨晩中央に添えた腕時計以外の周囲の腕時計全てが、時間が全部滅茶苦茶になっていて
中央に添えた時計は秒針のタイミングこそ正確ですが、大きく移動したり、小さく移動したりとおかしな動きをしている
アタシが昨晩テーブルの上に出した時、コレクションした腕時計の数々は1つも時間が進んだり遅れたりしていなかったんだ
それが「全ての腕時計が一緒に時刻が狂うなんて事が起こり得るのか」、をアタシは冷静に考えたんですね
(これはどう考えても異常すぎる…しかも全部の時計の時刻が全部違うだなんて…)
…と、テーブル上の時計を1つ1つ何となく見渡していると、ある妙な点に気付いたんですね
(あれ…)
それは店主からもらった腕時計に近い位置の腕時計が極端に時間が遅れている事
そして遠い位置の腕時計になるにつれ時刻が極端に進んでいる事に気付いたんです
また、中間の位置の腕時計はアタシが寝落ちする直前の時刻からほぼ停止の様な状態になってるんだ
(…これは…)
アタシはこの物理現象を何とか解明出来ないか考えたんですね しかし、朝食やらシャワーやらの後に出勤が控えていますから、そう悠長に部屋で何もせずに考えてもいられなかったので
とりあえず通勤しながら考える事にしたんですね
時計達をとりあえずそのままの状態にして自宅を出て、電車に揺られ勤務先の最寄駅で降りたんだ
…と、前日見かけたアンティークショップの路地に繋がるいつもの道に来たんですが…店が無いんだ
(おいおい、やっぱり見間違いなんかじゃない、一昨日もそうだがこんな所にアンティークショップなんて最初から無かったんだよやっぱり!!)
毎日使っている通勤路ですからね、見間違うはずがない
そうなると…前日にのみその店をアタシは何らかしらの因果で目撃した事になる…そうしか考えられなかったんですね
しかも実際に店主からもらった時計は実物として今も自宅にあるんだ
(…店も店なら、あの腕時計も腕時計って事か…)
なんて考えながら、出社後にいつも通り仕事をこなし、また帰宅時刻になっていつもの通勤路を戻ったんですね
綺麗な夕焼けに通勤路が照らされている…と
(!?)
例の路地裏に繋がる地点に来ると今度は店があるんですよ
「馬鹿な…!!」
アタシは急いでそのアンティークショップに駆け寄り、扉をバーン!と乱暴に開けて店内に駆け込んだ 息が少し上がり、ゼーハーゼーハー言っていたアタシが店内に舞い込むと
まるでアタシがこのタイミングで店を見付けて来る事が分かっていたかの様な達観ぶりをも伺わせる穏やかな佇まいで
あの黒髪の女性店主がアタシを見てまたにっこり微笑んだ
「…」
アタシは息が上がっていた事もあって、言葉を暫く発する事無く店主を見つめていたんだ。すると
「…腕時計、気に入ってくれた?」
いらっしゃいませ、も無く前日とはうって変わって気さくな口調で話しかけてくる店主にアタシは少し驚いたんですね。ですが
「…お店開けてらしたんですね」とアタシが返すと
「…いいえ。お客様がこのお店を意識したからお店が開いたんですよ」と、またも意味深な言葉をアタシに放つんだ
「…店主さん、昨日の今日でこんな事を尋ねるのは慇懃無礼と解釈されても仕方ない事かもしれません。ですがお許し頂きたい。」
アタシは意を決して頭の中にあるモヤモヤを質問で解消する事にしたんです
「…気になさらなくていいですよ。お客様から何を尋ねられても私は一向に問題ありませんから」と、少し妖艶な瞳でそう返され少しゾクっとしましたが気にせず続けました
「…店主さん。昨日の今日って事で、朝の通勤中このお店が見える路地地点から、このお店の方向を見たんです。ですがその時このお店は間違いなく無かった。いや、一昨日までもずっと。」
そうアタシが早速切り込み始めると
「…麗子。店主さんって、言いにくいでしょう?」と、さらりと名前で呼んで的な返しでカウンターを受けるアタシ
「…っ、じゃあ麗子さん。はっきりと言いますけど、私は長い事そこの道を通勤路として使ってますが、このお店をそこの地点から見えたのは昨日が初めてで今日を含めても2回目なんです。」と
アタシは改めて言い直したんですね すると驚く事にアタシは予想すらしていなかった事を麗子ははっきりと述べたんだ
「私は、お客様の事いつも店内から見ていましたよ」
流石に心臓が止まりそうになりましたね。間違いなく、アタシの肉眼にはこの店が前日まで映っていなかったのだから
「…つまり…このお店はずっとあって、私の方が昨日までずっと見えていなかった、と言いたいんですか麗子さん」
そうアタシが返すと、平然と麗子は
「…そんなに興奮しても良い事ないですよ。お客様が実を言うとこの店を見付けたのは初めてなんです。騙すような事を昨日言ってごめんなさいね」
と美しい黒髪を書き上げながら言ってきたもんで、頭の中がぐるぐる色んな事が巡ってパンク寸前になっていましたが、麗子は畳み掛けるように言葉を放ったんですね
「…このお店は…実は何十年も存在しています。でも、今まで誰も気付いてくれなかったんです。ですけど、お客様…いえ、貴方がもし一度も気付いてくれなかったら」
「気付いてくれなかったら?」とアタシが返すと
「…来客を諦めて完全に店を閉めようと思っていました。これは本当ですよ。3年前から表の道を通勤と退勤時に貴方が使うのを見かけた時から、もしかしたら見付けてくれるかもしれないと、最後の希望に託し待つ事にしたんです」
と、爆弾発言と取られてもおかしくない発言を麗子は述べたんです
…アタシがいつかはこの店を認知するかもしれない、という賭けに麗子が出ていたとは一体どういう事だと、次第に感情が困惑に変わっていきました
「何だって…?3年も前から…お、俺が来店する事に賭けて待ってたと…??…麗子さん…こんな事を言うとあれかもしれんが、そんなに俺を毎日見かけてたというのなら、俺に声をかけに来ればいいだけの事では…?」
それを述べると麗子は押し黙るように下を向いて俯いたんです 「それが可能なら…もっと前に、いえ貴方を最初に目撃した時にしています…理由、言わないと駄目ですか…?」と下を向いたままの麗子でしたが、アタシは
「つまりこの店は『普通に訪れる事が出来ないお店』と、同時に麗子さんも『このお店から普通に出れない人』で、間違いないですか」と質問をすると
黙って、こくりと麗子は頷いたんですね
アタシは霊感が無いので、そうなると1つ疑問が出てくる
そう、この店も麗子も霊的なものではなく別の何かとしか考えられない、とアタシの直感が汲み取った
「もしかして麗子さん、俺の第六感に気付いてたりしますか」
とアタシが述べると、一瞬麗子の体がビクッと震えた事をアタシは見逃さなかった
しかし、アタシが麗子をじっと見つめている気配を麗子は察したようで、相変わらず視線を下に向けたまま、またこくりと頷いたんです
「俺には麗子さんが悪人にも霊的なものにも見えない。昨日頂いた時計は実物として自宅に存在しているし」と言うと、麗子は視線をアタシに戻した
少し涙ぐんでいたのか、アタシの問いに少し感傷的な思いを忍ばせているかのような表情をしたんです
「貴女の素性・使命、この場所の特質性、そんな事を根掘り葉掘り聞くつもりはもうない。何を俺に望んでます?」と、アタシは麗子に諭すように尋ねたんだ
すると麗子は意を決したかのように
「貴方にお譲りしたあの腕時計は、時間という根本の概−」と言いかけた所で、店の外が急に暗くなり始めたんです
(夕立…?でも雨雲なんて…どこにも…)とアタシが思っていると、麗子が
「あ…あ…」とガタガタ震え始めたんですが、ハッと我に返ったと思われるタイミングでアタシに対して今まで発した事の無い大声で
「逃げて!今すぐ!元の通勤路に戻って!お願い!」
と悲鳴にも似た言葉を放った
(え?なんで??)とアタシは一瞬返そうかと思いましたが、震え方が尋常ではない事かつ真剣な眼差しに加え、明らかに外の暗くなり方が異様だった事もあり
「わ、分かった!大体の事は分かった!麗子さん、また来るから!」
とアタシは扉を勢いよく開け放ち、暗闇に飲まれそうな路地裏を必死に走り、表の通勤路まで逃げるように移動したんです。
…気付くと、ある病院のベッドの上だったんです。 肌が荒れに荒れまくったブサイク極まりない中年看護婦が、酔っ払い親父のような口調でアタシに話しかけてきた
「お兄さん〜危なかったね〜、*通りで倒れているのを救急車で運ばれて来たんだよ?あと1分通報が遅れてたらお兄さんお陀仏だったみたいよ?」
…アタシは確か麗子の店から通勤路に戻っただけのはずだったが…どうやら通報者が言うにはアタシが通勤路上で呼吸困難状態で倒れていたらしいんです
(…仮に…あの時麗子の忠告を無視していたら…俺死んでたのか…?)なんて考えながら点滴を受けつつ寝転がっていました
3時間したらすっかりアタシは体がすっきりして、医師から帰宅の許可が出たのでそのまま帰宅したんですね
「はあ〜やっと帰宅できたわー」
と、朝そのままにしておいたテーブルを見ると…「!?」
いや、間違いない、アタシは今はっきり見た
腕時計が並べられているテーブルのある部屋に入ると、確かに全ての腕時計が止まっていたんだ
にも関わらず、アタシが部屋に入って5秒ほどすると、全ての腕時計が一斉に動き始めたんです
これはかなり怖かった
(…おかしいとかそういう次元の話ではない。…麗子からもらった時計が、他の時計に影響を与え…いや、俺と何か反応してるのか???)
これまで集めてきたアンティーク腕時計は一度足りとも異常挙動を見せた事が無かったんだ
となれば、タイミングから見てもそれを引き起こしているのは麗子からもらった腕時計が原因としか考えられなかったんですよね
それに、相変わらず時刻は朝見たまんまの無茶苦茶な状態
全ての時計を見ながら、それまでの麗子の言葉を思い出していました
(時間という根本…、所有して頂くにふさわしい主…、時間を調整しないで…、時計の赴くままに時を刻ませて…、…………)
やがて熟考の末、アタシは1つの仮説と実験を行う事に決めたんです
これは、必ずやらなくてはいけない事だ、とアタシは本能で察しました ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています