(2/2)
その一部始終を「闇の中のどこかの部屋」で死んだ老女が見ていた。
「なんとか助けてあげたい」と涙ながらに言う老女。
「あなたのように天寿を全うした人の場合、時間を巻き戻して生きていた頃に戻すことはできるが、戻すタイミングは死ぬ間際。香住ちゃんが毒を飲む日まで
生きていることはできませんよ」
そう告げる番人に、老女は「それで十分」とにっこり笑う。

かくして時間は巻き戻り、運命通り再び老女は死亡。
と、ここで流れが変わり、香住の家に弁護士がやって来る。
「亡くなったご婦人から依頼を受けました。依頼人は実は資産家で、身寄りがないため、そのすべてを
香住ちゃんに遺すそうです。ご両親は離婚の話し合い中だとか。では、香住ちゃんの親権者が決まってから相続手続きを開始する
ことにしましょう」
かくして、香住の毎日は一変した。
両親はこぞって香住の機嫌を取り、甘やかし、ご馳走やプレゼントを並べる。
自らを奪い合う両親の態度に戸惑う香住。
そして決断の日がやって来た。
ここでも香住の提案で乾杯をするが、飲み物を飲んだ後、倒れたのは両親だった。
グラスからは毒物が検出され、「離婚問題がこじれた末の心中」と結論づけられる。

警察での事情聴取を終え、香住、女性教諭、花屋、弁護士が歩いている。
この騒動を経て、女性教諭と花屋はくっつき、結婚を決めていた。
なお、花屋と弁護士は以前からの友人らしい。
弁護士「お前たちの式には参加させてもらうよ。今回の依頼料、あのばあさんの全財産三万円はご祝儀にさせてもらおうかな」

作中で明言されていないが、老女は死ぬ間際に遺言状を書き、一芝居うってくれるよう弁護士に依頼したのだ。
両親の飲み物に毒を入れたのは恐らく香住で、動機は「遺産目当てで自分を物のように奪い合う両親が鬱陶しくなったから」。
両親の死後、香住はすっかり明るくなり、花屋と女性教諭に引き取られてハッピーエンド・・・・・
という描き方なんだが、どうもモヤモヤした。
このままだと香住は「嫌な相手は殺していい」と覚えたまま成長する。
花屋と女性教諭は、容姿や台詞は「誠実な美男美女」として描写されているが、相手が子持ちの既婚者と知って不倫するような人間。
子ども心になんだかな〜と思った。