その話の登場人物は、私自身だった。
その話にはそれから私の身に起こる
怖ろしい出来事が書かれていた。

読み始めてすぐに気付かないなんて、
何て間抜けだろうと思われるだろうか。
でも、思い出して欲しいことがある。

貴方は、ベッドの中で眠るまでの暇つぶしに
洒落怖でこの文章を読んでいないだろうか?

この文章のタイトルは「泥捨て」。
そう、この話の本当の登場人物は、
今この文章を読んでいる貴方なのだ。

ここから先に、これから貴方に起こる
怖ろしい出来事が書かれている。

合わせ鏡の像が無限に映り続けるように、
この話における読者は登場人物に変わり、
それをまた別の誰かが読者として目にする。

そして、合わせ鏡の中にいる悪魔が
鏡に映る人の肩に手をかけるように、
“そいつ”は貴方に話しかけてくる。

洒落怖を読み終わって
眠ろうと目を閉じた瞬間
背後から女の声で

「面白かった?」