うちのじいさんの知り合いで偉いお坊様がいて、生前に弟子を取った。弟子といっても正式に坊さんになるのではなくて、行き場のない霊感少年の面倒を見てるって感じだった。
茶髪にグラサンでピアスしてるような田舎の寺には場違いなにーちゃんだったけど、そして俺にはよくわからなかったが、やたら霊感が強くて日常生活でも浮いているから寺に来たらしかった。
当のお坊様が老衰で亡くなられたあともうちとの付き合いは続いていて、ちょくちょく遊びに来てたある日のこと。
にーちゃんがにこにこ笑いながら「本物」の心霊写真見たくない?って一枚の写真を出してきた。
俺もそういうのは好きだからわくわくしながら覗き込むと、なんの変哲もないうちのじいさんとばあさんが並んで立っているスナップ写真だ。
あやしいものはどこにも写りこんでいないじゃないか。でもなんでじいさんとばあさんは離れて立ってるんだ? この人ひとりぶんのスペースは?
って思いながらにーちゃんになにこれ?と問いただすと、大笑いしながら実は先生(亡くなったお坊様)も久しぶりにじいさんとばあさんに会いに来たから記念に撮った写真だ、本当に霊感のある人間じゃないとじいさんとばあさんの間に立っている先生は見えないんだ、と。
ふだんから冗談ばっかり言ってたやつだからからかわれたんだろーなーと思ったけど、もう20年くらい前の懐かしい思い出です。
いっしょにテレビの行方不明者捜索スペシャルなんかの特番見てて、真顔でこの人もう死んでるよ、この人は男と逃げたよ、とか淡々と話すのはちょっと怖かったなぁ。