「お客さん、本当に見えなかった?本当に?……いやね、お客さんが踏切のバーを持ち上げようとしてる時にね……
小学生くらいの男の子がそのバーの先の方でね…
ぶら下がる様にしてたんだよ…
こんな夜中におかしいなと思ったんだけどね、まあこんな時間でも出歩く子供が居ない訳じゃないし…
邪魔になったらお客さんが声掛けて帰すだろうと思って見てたんですよ…
そしたらお客さん気が付かないみたいで…
私、あれえ?と思って見てたらその子供が笑いながらお客さんの方に近付いて行くじゃないですか…
ニタ〜っとした嫌な笑い方で…
バーを両手で抑えて…
それでね、これは不味い奴だと気が付いてここに居ちゃいけないと思ってお客さん呼んだんですよ…
本当に見えなかったんですか?あれ…」
彼は驚きながらも「そうなの?いや全然バーが動かないからおかしいと思ってたんだけど、そんな子供見えなかったよ…でも呼んでくれてありがとう…」と応えたそうな
すると運転手さんは
「いえいえ…でも、見えなくて良かったのかもしれませんねえ…
あんな気持ちの悪い笑い顔の子供が近くに居たら、私なら正気でいられないと思いますよ…」
と、低い声で言ったと…