おれたちは当時大学二年で来年度には就職活動を控え、Hには学部でも評判の美人の彼女がいた 

Hは自身の将来について不安を抱き、怯えていた 

「今は二十一世紀だぜ」 

おれは、現在は差別する側が重大なペナルティを負う時代だ 

もし被差別部落出身であることを理由に採用を見送ったとわかったら、 コンプライアンスの面で叩かれるのは企業の方である、とHに語った 

「とはいえこれは差別の実態を知らないおれの一般論だ。おまえの彼女に相談してみたらどうだ?」 

Hの彼女は関西の出身だった 

同和教育もされているだろうし、おれたちよりは実態を知っているだろうから、 そのアドバイスは有益だろう、とおれはHにいった 

Hはその通りだと頷き、一度機会を作って彼女にきちんと話してみるといった