地下5キロメートルで「巨大な生物圏」が発見される
<地下深部にこれまで存在が知られてこなかった微生物の巨大な生物圏が存在する>
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/12/5-58.php

「地球の深部には、様々な生命体が無数に存在する」
深部炭素を研究テーマとして世界52カ国1000名以上の研究者で構成されるグローバルコミュニティ「深部炭素観測所(DCO)」は
2018年12月10日、米ワシントンD.C.で開催されたアメリカ地球物理学連合(AGU)の年次総会において、2009年の創設以来およそ10年にわたる研究成果を報告し
「地球の深部にはまるで"ガラパゴス"のように様々な生命体が無数に存在しその生物量(バイオマス)は全人類の245倍から385倍に相当する」と明らかにした。

「数千年にわたって存在しつづける生物がある」
研究チームでは世界数百カ所を対象に海底から2.5キロメートル掘り深度5キロメートル以上の鉱山や掘削孔から微生物をサンプル採取し地下深部の生態系モデルを構築。
地下生物圏の大きさは地球の海のおよそ2倍にあたる20億立方キロメートルから23億立方キロメートルで炭素重量で換算すると150億トンから230億トン。
地下生物圏には全生物界を3分する細菌・古細菌・真核生物がすべて存在するが、中でも細菌と古細菌が多く地球上の細菌と古細菌のおよそ70%が地下に生息する。
光がなく熱や圧力に曝され栄養源も十分とはいえない地下奥深くで生息する地下微生物は、生活環境やエネルギー摂取等において地上とは大きく異なる。
DCOのメンバーでもある米テネシー大学ノックスビル校のカレン・ロイド准教授は、英紙ガーディアンの取材で
「最も奇妙なことは数千年にわたって存在し続ける生物がいる事です。これらの生物は代謝をしますが
生命維持に必要なエネルギー量よりも少ないエネルギーで静止しています」と述べた。

地下生物圏について謎はまだ数多く残る。
生きるためにどのようなエネルギーを利用し、地下生物圏はどのように広がったのか。
日本・北米・アフリカで深部地下生物圏は似ているのか。
地震や隕石衝突など、地質学的事象が地下生物圏にもたらす影響についても解明が待たれる。
地球上での生命の起源についても深部地下生物圏との関連を交え、研究が進みそうだ。