扉を開けて止め具のようなものを探している時に、キィーというような音が聞こえた。

車の急ブレーキ音のような音。
でもおかしい。
急ブレーキはこんな長く続かない…。
だんだん大きくなる音。

うっかり扉から外に顔を出した俺が見たものは紛れもなく、彼女が真っ逆さまに落ちていくところだった。

ハッキリと見た。
目を見開いて笑っているあの顔。
今でも夢に見るあの顔だ。

俺はその時、人生で初めて腰を抜かした。
立てなかった。

もしかしたら、生身の人間の自殺現場を目撃しただけなのかもしれないが、俺にはそんなことどうでもよかった。

ただこの場から逃げたい。
その一心で、床を這った。

死ぬ気で店のドアまでたどり着き、ドアノブを支えに立とうとしてる時に俺は見た。

いつの間にか1階まで降りてたエレベーターが上がってくるのを。

頭が真っ白になって、助けてと叫びながらなんとか店内に入った。
仮眠してた同僚を叩き起こして、店の酒を飲みまくって、昼まで寝た。

飲み始めてからのことは覚えてない。
起きてから荷物まとめてその店は飛んだ。