「滝、どうする?」
「……滝はいいや。なんか疲れた。帰ろ」
元来た集落の方へまた車を走らせると違和感が込み上げて来た。さっきあれだけ人がいたのに誰もいない。急に笑い出したおばさんたちもいない。
紙人形が埋め尽くしていた民家もない。普通の光景がかえって不気味だった。
一体なんだったんだろう……と車窓を眺めていた。どんなに注意深く見ていても、最初のT字路が見つからなかった。仕方ないので二車線の県道をまた30分くらい走って、どうにか市街地まで戻った。
夫さんは疲れと緊張が混ざった様子だけれども、あの不気味な表情をすることはなかったので安心した。
ふたりして定食を食べながら、結局なんだったのかを話していた。
「つまるところその滝はあるの?ないの?」
「あるはずだよ、昨日ラジオでいってて」
「じゃあなんでググッてもひとつもヒットしないの」
「ええ、じゃあなんで最初のナビで目的地設定できたの」なにがなんだかわからなかった。

長くなったわりに大したオチもないんですがこれで終わりです。生きて帰ってこれてよかった。洒落怖を好きでよく読んでるんですが、リアル洒落怖でした。