Z子の存在はA君に言われるまで完全に忘却していたが読み書き計算は全くダメでも、
クレヨンでお絵描きさせたら抜群に上手いというアスベ気味の女子がいたのは紛れもない事実だ
他に小1の頃の出来事覚えてないか?と訊ねるも俺が振ったから受動的に思い出したというだけで、
A君の側からこれ以上の提供はなかった

逆に俺もA君もきっとZ子が体験したようなトラウマ級の出来事があり、
それを思い出してはいけないと脳が防衛プログラムを作動させているのではないだろうか、
それが証拠に鈴木先生の顔思い出せないだろ?という結論に達した

俺は一時似顔絵にはまっていた時期があり、よく先生や級友のデフォルメ画を描いていた
食えるレベルではなかったものの概ね好評だった
そこでボールペンと手帳を取り出し、2年から6年までの担任のマンガを描いたらA君大ウケ
でも鈴木先生は何としても顔が思い出せない
記憶にあるのは首なしの服着たマネキンみたいなのが黒板の前に常に仁王立ちしている、
でもなぜか怒っている機嫌が悪いというのは伝わってくる、そんな存在だ

(おわり)