人伝てに聞いて話
幽霊の出るという踏切は全国各地にあり、大抵白ワンピース黒髪ロングの女性が千切れた足とか探したり人に掴みかかってきたりとありきたりな迷惑を働くが、西日本にあるそこは毎回違う幽霊が現れるのがセールスポイントのようだった。
終電近くに彼が通りかかったとき、警報器が鳴り遮断機が下がる。2.3分もかからないがやきもきした気分で列車の通過を待っていると踏切の向こうに黒っぽい何かが揺らめいていた。
夜に黒いのが見えるのも変な話だし、彼もあまり見ないようにしておこうくらいの気持ちでいたがそれはずるずると形を成すと5人の武者になり刀を抜いて迫ってきた。
そこに見えるはお屋形様の仇だな、御首頂戴する。みたいな事を言いながらずかずかと歩いてくる。彼は金縛にあったかのように動けなくなり見ている事しかできずにいた。
早く逃げないといけないが体は動かない。そうこうしてるとあと少しのところまで武者に迫られたが、そのとき横から来た電車にまとめて武者が跳ね飛ばされた。
遮断機が上がったとき5人の武者は茂みに飛ばされててたり下半身がなくなってたりと悲惨な状態で半透明に消えかけていた。ひとりの武者がズタボロになりがら
「なんと面妖な物が…あれは生き物か妖術とやらか」と独りごちていたので、あれは乗り物だと説明すると信じられん話だが本当なのだろう、かたじけない。と言って消えていった。
それ以来夜にあの踏切には近づかないようにしているそうだが、5人の武者が線路際で電車の通過を興味深そうに眺めている夢を時々見るそうだ。