実体験であるがゆえ、あまりパッとしない話

中学生の時、俺は夜に自転車で地元を徘徊するのが好きだった
何か目的があるわけでもなく、夜風に当たりながらあてもなくさまよう

その日もいつものように徘徊していた
そういう時はなるべく新しい道を開拓する
近所の道は行き尽くしたので、少し遠くまで行き、自分が知らない区間を探検していた
曲がったことのない路地を何本か曲がり、方向感覚もわからなくなってきた頃、突如として道が開け、広い民家の庭に出た

そこには上半身裸でサラシを巻いた、昔の任侠スタイルの男が立っていた
「兄ちゃん、何しに来た!」
男は声を張った
両肩から背中にかけて龍の入れ墨
手には木刀を持っている
背後には横幅の広い平屋があり縁側に同じようなサラシの男が2人座っていた
「間違えて入って来たんだな?そうだろう?」
男がにじり寄って来る
眉間に皺を寄せ俺を睨みつけ、木刀を握る手には明らかに力が入っていた
俺は慌てて自転車をUターンさせながら、
「す、す、すみません!道を間違えました」
と言い残し、自転車に飛び乗り急いで去った

つづく