四国某県の県庁所在地に出張した時の話。駅前のビジネスホテルに宿泊し、朝早く目が覚めてしまったので、周辺を散歩していた。
夏だったのだがその日は比較的涼しく、大きな川が流れていて緑が豊富だったこともあり、大変気持ちが良かった。

だが、とにかく人がいない。
県庁所在地でもこんな感じなのか、過疎化もいよいよ...などと考えながら佇んでいると、向こうから初老の男が、自転車に乗りフラフラとやってくる。
アロハシャツに汚いジーンズ、頭にはジャイアンツの帽子を被っている。

今どき球場以外で野球帽なんて珍しいな、と思ってぼんやり眺めていると、男は傍に自転車を停めてツカツカとこちらに歩み寄り、突然「積年の恨みじゃあ〜」と叫ぶと同時に、私を殴りつけた。
痛いとかムカつくとかよりも、とにかくびっくりしてしまい、なんだよコイツと呆然としているうちに、男は素早く自転車に乗り、来た時からは想像もつかないようなスピードで走り去って行った。

まったく見覚えのない人だし、そもそも私は四国に上陸したのがその時初めてだ。
他人から積年の恨みを買うような心当たりもない。
タイガースファンであることがいけなかったのだろうか。
ちなみにパンチは結構強烈で、口の中切れてた。