【心理学的な解釈:集合的虚偽(過誤)記憶】

同じ記憶違いが大勢の人々に生ずる現象は心理学の分野では
「集合的虚偽記憶/過誤記憶(Collective False Memory)」と言い、
多くの人に印象付けられた集合的な記憶像(Collective Representation)が
関連する記憶のミスリーディングを引き起こして発生するものと解釈されている。

2009年に発表された論文では、ボローニャ中央駅の時計が爆破テロ以降
事件発生時刻(10:25)のままずっと止まっていたという記憶違いを例に挙げている。
実際には時計は1980年の事件発生後すぐに修理され、1996年に再び自然故障した際に
駅のシンボルとして事件発生直後と同じ状態で保存しいてたのが真相だった。
しかし、駅の利用者・職員を対象にした調査によると、実に9割もの人々が
時計はずっと止まったままだったという記憶違いを起こしていることが明らかになった。
また、追悼式典の常連参加者に対象を絞った分析によっても、
事件への関心度の高さによる有為な差異は認められず、
記憶の曖昧さや無関心が原因で引き起こされた現象ではないことが裏付けられた。
これは爆破テロという衝撃的な事件と時計が現在止まっているという象徴的な事実が
人々の共通認識として強く印象付けられた結果、
その間の16年間時計が動き続けていたという事実が記憶から排除され、
「時計は爆破テロ以降ずっと止まっていた」という誤った記憶として
多くの人に植え付けられたものと結論付けている。

参考
https://www.researchgate.net/profile/Stefania_De_Vito/publication/256375079_Collective_representation_elicit_widespread_individual_false_memories/links/00463530cced638f87000000/Collective-representation-elicit-widespread-individual-false-memories.pdf