茨城の知り合いから聞いた話なんだけど ある日その知り合いが彼女とデートに行く約束をしたそうなんだ。
デートってのも至って普通で、近くの山を車でドライブしながら まあどっかで止めてぶらぶらハイキングでもしようって算段で じゃあ明日ね って別れた。
で 当日待ち合わせ場所まで自慢の愛車を転がしてった。
彼女をサイドシートに乗っけていざ発進。天気も全く快晴で 「よかったね 楽しくなるね」 なんて話しながら目的の山へ到着。
山って言ってもそんな高いもんじゃないし 普段からよく遊んでるから気楽に降りて散歩してた。
と 普段は目もくれない様な なんとか一人通れるような鬱蒼としてる いわゆる獣道に差し掛かった。もちろんハイキング用の道は隣にあるからそっちに進めば良いわけなんだけどもそのときふと気になって獣道の方を覗いてみた。
なだらかな坂になってるその道の上の方で,誰かがこっちに向かって手を振ってる。うわっと驚いたけれどもこれはこの世のものじゃないとすぐ心付いたもんだから知らない振りをしようと決めた。 彼女を肘でつついて「行こう」と声かけた。
すると彼女 頷いて 「ねぇ あれ見たの? 私もなんだか気になって 行ってみない?」なんて提案してきたもんだからさあ大変だ。彼氏の面目として行かなければならないでも怖い。
葛藤してたら彼女が凄い力で手を掴んで引っ張って坂を登りだした。おいちょっと。
例の方を見て気がついた。その人、手を振ってるんじゃない。手の甲をこっちに向けて押すような引くような動作。機械的なんだけどそれ「おいでおいで」なんだ。
そう気づいたから彼氏 「おいあれやばいから戻ろう なあ!」って叫んだ途端 彼女こっちを見ながら歯をむき出してニターッと笑った。
と 同時にケータイがなった。なんと着信は彼女からなんだ。なにかがおかしい。
彼氏は死にものぐるいで腕を振りほどい車まで走って急発進。市内まで猛スピードでかっ飛ばして 彼女に電話を掛けた。
彼女 怒りながら電話に出て こう言った。 「ずっと待ち合わせ場所で待ってたんだけど全然来ないじゃない。」
それじゃあずっと一緒にいたあの女はなんだったんだ。