俺が二歳の頃の話をしよう。
まあ、それほど怖い話ではないが暇な人は見て
くれ。

ある夏の暑い夜、俺は自宅の二階にある寝室で寝ていた。いつもなら朝まで熟睡している俺だったが、その日は午前一時頃に目覚めてしまった。俺は喉が渇いていたのか、両親のいるリビングへ冷たい麦茶を飲みに行こうと寝室のドアを開け、一階へと続く階段を降りていった。

自宅の間取りを説明すると、玄関を入ると左にリビングがあり、右に廊下がある。また、正面に階段、階段の右側にトイレがあり、トイレの正面に和室、トイレの右側に風呂場がある。
つまり、階段を降りて左前に和室があるということだ。

そして、俺が階段を降りている途中、ふと和室の方が気になり和室を覗き込んだ刹那、俺の背筋は凍りついた。

和室の奥にある黄色い引き出しに描かれているプーさんの九つの顔が赤く光っていたのだ。俺は蛇に睨まれた蛙のように固まっていると、その引き出しから何か声が聞こえてきた。
「んーんーっんーふっんー」
みたいなことを高いのか低いのかよくわからない無機質な声で言っているのだ。

俺は恐怖でちびりそうになりながら、
「怖い怖い怖い怖い」と繰り返していると、母がやってきた。
どうやら母にもそれは見えていたらしく、母は怯える俺を抱えて二階に連れて上がった。それから俺はすぐに眠ってしまい、その後プーさんがどうなっていたかは知らない。

翌日、母にそのことを聞いても微笑むだけで何も答えてくれず、怖くなった俺は今まで集めていたポケ〇ンのシールでプーさんの顔を封印した。

それから俺の家で俺に怪異が起きたことはなく、平穏に暮らしている。

今もその引き出しはシールで封印されたまま残っているが、俺はその封印を剥がそうとは思わないし、母にその引き出しのことを聞こうとも思わない。

このことを友人に話してもバカにされてまともに信じてくれない。しかし、これは真実であり、実際に俺に起きた怪異の一つである。その証拠に、今でも俺はプーさんが怖い。見るだけで悪寒がするのだ。