中国の古典を題材にした漫画「蓬莱トリビュート」より「狐の掟」。

昔、貴族の使用人で墓守をしている男がいた。
墓守はある日の仕事中に、狐が犬の群れに襲われていたので狐を助けてやった。

するとその夜、美女が現れ「助けていただいたお礼として、晩のお供がしたい」と言う。
女に縁のなかった墓守は二つ返事で快諾し、それから毎晩美女は墓守のもとを訪れるようになった。

だが、墓守が狐の化けた美女と深い仲になってから数か月もたつと、彼はどんどん痩せ衰えていった。
事情を聞いた同僚たちが「その狐のせいでは」と心配しても墓守は美女に惚れこんでおり、
彼女を放そうとはしなかった。

そしてある夜。同衾している墓守と美女のもとに、体中に包帯を巻いた少女が現れた。
実は、少女こそが犬に襲われていたところを墓守に助けられた狐本人であり、
美女は本物がケガで動けないことをいいことに、男の精気を狙って嘘の恩返しをしに来た別人だった。
『本物』である少女は、命の恩人である墓守を救うために『偽物』の美女を退治しに来たのである。
少女は助太刀として自分の姉を連れてきており、結果美女は集中攻撃を受けて元の姿に戻り、死んだ。

「私こそがあなたに助けていただいた狐です、今まではケガのため何もできませんでしたがこれで安心です」
そう言って少女は微笑みかけるが、狐の亡骸を抱え号泣していた墓守は少女に石を投げつける。
その眼には、少女への恨みがあった。呆然とする少女に、墓守は
「それでも俺は彼女を愛していたんだ、彼女といられて幸せだったんだ! お前は俺の恋人を殺した疫病神だ!」
と叫ぶ。呆然とする少女は
「そんな、私はあなたに助けられたことが嬉しくて、治ったら、恩返し、を……」
と言いかけたところで号泣し、夜の闇に消えていった。