昔、といっても1990年代の話、初めて買った短波ラジオで海外放送が聞けるのに感動した。
海外といっても安定して聞けるのは中国、韓国ぐらいで、電波が良ければタイやベトナムもなんとか、という感じだったが、それでも大満足だった。

そして、夢想した。

トランジスターラジオが発明される以前、ラジオはそもそも家電だったし、海外放送を聞くにはでかいアンテナをベランダに張る必要もあった。
それがいまや、こんな手のひらサイズで、ロッドアンテナを伸ばすだけで隣国の放送も聞けてしまう。
あと何十年か経ったら、さらに技術が進んで、アンテナを伸ばす必要もなく、電波の不安定なんかも気にせず、海外のラジオが聞ける時代になるかもしれない。
さすがに地球の裏側までは無理だろう。でも、アジア全域ぐらいを聞ければ、どんなにいいだろう。
テレビが普及してからラジオは衰退してるって言われてるけど、案外、ラジオの将来は明るいのではないか?
だって、テレビは電波の性質上、海外どころか隣の県の放送すら見れないから、案外、ラジオよりも先に淘汰されたりして…
ああ、俺が生きてる間に、そんなすごい時代を味わえればいいな。

それから10年後、インターネットラジオが登場し、地球の裏側のBBCやRFIなどのラジオが、スマホで雑音一つないクリアな音で聞けるようになった。
さらにその10年後、YouTubeに生放送チャンネルができ、フランスなどのテレビが24時間、タブレットでクリアな画像で楽しめるようになったし、
Chromecastを使って、ごくふつうのテレビでそれを楽しむこともできるようになった。

いまでも時々思うのは、
あのとき夢想した「すごい未来」よりもさらにすごい未来が、わずか20年後に来るなんてことを、当時の俺に未来人が教えに行ったとして、はたして、それが信じられるだろうか、
ということだ。