主人公は会社に戻った。同僚が一人で残業していた。
主人公が問い詰めると、同僚は妻を調べたことを認めた。
「いい嫁を持って幸せそうなのが妬ましかった。部長にまで認められて、先に出世されそうで
むかついた」
と、同僚は話した。主人公は、同僚も殺した。


中年女と同僚殺しについて、主人公は疑われなかった。事件は迷宮入りした。
主人公はそのまま妻の美味しい料理と菓子を食べ続け、今では球体型になっていた。みっともなく
太った主人公に、妻の視線は酷く冷たい。
「私は子供の頃からお菓子作りが好きだった。大人になったら素敵な恋人を作って、私の
手作りお菓子を食べてもらうのが夢だった。でも、恋人たちは皆、一緒にいるうちに素敵な
人ではなくなってしまうのよ」
妻は憎らしげに主人公を睨みながら言った。
主人公はうな垂れた。妻に愛されるためには妻の手作りお菓子を食べ続けなければいけない。
しかしハイカロリー菓子を食べ続ければ、醜く太って妻の愛を失うのだ。妻に愛されなくなった
ことは、主人公には耐え難いことだったので、自殺を決意した。
きっと妻の同棲相手も前夫も、同じ理由で自殺したに違いない。
首をつろう、と考えた主人公に、妻は優しく声をかけた。
「縄に生クリームを刷り込むといいわよ。首が痛くないし、甘い匂いがするから」