最初の頃はたまに部屋からベランダに出ると
学生服も、お隣さんちの奥さんが洗濯物はたいてる音とかも
もう何もかもが羨ましくってしかたがなかった
見下ろした先にあるさびれた食堂が不味いんだけどさ
あんな店でも食べに行きたくなった
そうしたら半年くらいしてそこが潰れて暖簾がかからなくなった
パネルで区切られてるだけの隣の家のベランダでお隣の奥さんが洗濯物干す音すら恋しくなって
そうしたらしばらくして隣があわただしく引っ越していって空室になった
以来最近仲良くなったホタル族のおっさんが越してくるまで何度も住人入れ替わった
そのおっさんが言ったんだ
おっさんの部屋にも俺は行くらしい
最初はめちゃくちゃ怖かったけど
本人とこうして話してる分には怖くないなって言ってくれた

もう悪い事起こらないって信じることもできないから
次の犠牲者がおっさんにならないように
早く外に出て俺の気持ちが向く人みつけないとな