30年近く前の話だから、記憶違いがあるかもしれないが…

中学生の時、夏祭の実行委員だった親父を手伝って
祭の後片付けをしてたら、夜の11時を過ぎてしまったことがある
先に帰ってろと親父に言われて自転車で家に向かっていると
畑の脇の自販機の前に4、5歳の女の子が1人でしょんぼり立っていた
浴衣ではなく、伸びたTシャツみたいなものを着てたから
貧しい家の子かなと思いながら一度は通り過ぎたが
(大抵の子は夏祭には可愛い浴衣を着せてもらっている)
時間が時間なので、気になってUターンして「どうしたの」と聞くと
女の子は泣きそうな顔で「ジュース」「オレンジジュース」と言う
婆ちゃんから貰った小遣いが少し残っていたので
自販機でオレンジジュースを買って、缶を開けて渡すと
女の子は世にも嬉しそうな顔で受け取った
大人なら、どこの家の子だとか、親はどうしたとか聞いたんだろうが
こっちも子供だったから、俺はそのまま自転車で家に帰ってしまった

それだけの話なんだが、今思い返すと首をひねってしまう
本当に、家1軒ない畑の脇の一本道での出来事なんだよ
見たことのない子だったが、子供が誘拐されたとか
行方不明になったとかいう騒ぎも、そのあと一切聞かなかった
その子の顔は覚えていないが、ジュースを買う時
ものすごく心配そうに俺の手許をのぞき込んで
「大丈夫?」「お金あるの?」と何度も聞いて来たのを覚えてる
子供なりに苦労してるというか、
大人の顔色をうかがうような痛々しい感じがあって
あの時、もっとどうにかできなかったのかなあと後悔してる