ある日、閑静な住宅街を歩いていたらどこからか呻き声のようなものが聞こえた。
声のする方へ歩いていくと古い一軒家が。
不審に思い扉をノックしてみるも返事は返ってこない。ドアノブを握ってみると鍵は開いていた。
玄関へ足を踏み入れると少し奥から老人の声。
「誰かいるのか!?」
「勝手に入ってしまってすみません。この家から呻き声が聞こえて」
「そんなことよりも早く助けてくれ!」
慌てて声の方へ駆け寄ると、そこはトイレだった。
老人は便座に座ったまま、泣き出しそうな目でこちらを見ている。
そしてしわがれた声で言った。
「ウォシュレットが壊れて止まらなくなったんじゃ……もう何十年もトイレの水と、隅に生えたキノコ、たまに来るネズミしか口にしておらん……」