漸東学派の思想 と対既的な位置にあるかに見える宋元埠の政策 も,実は儒教の論理から逸脱 したもので
はなく,儒教の理念 と現実 との二面性 を指摘 して,理念 を重視 したのが漸江学派であるのに対 し,理念の
実現のために皇帝権の強化を図ったのが宋元嘩であるとして,明朝専制国家の成立の経緯 をイデオロギー
の面から論証 しようとするのが,第四部<明朝専制支配のイデオロギー的構造>であって, 3章からなる。
第四部第-章 「明代南北巻の思想的背景一地域性超克の論理-」 は,統一王朝である明朝の具体的な政
治的措置である<南北巻>すなわち科挙q)試験答案を南北に区分 したことにも,思想的根拠があったこと
を指摘する。 つ まり南人の抑圧 を伴 う南北巻が商人に受け入れられたのは,これが南北を一視同仁する君
主の至公性の具体的表徴であったからであるとする。そ して第二章 「明朝専制国家」 と儒教的家族国家観
一尾形勇氏の所論によせて-」は,尾形氏の非家族国家論が儒教イデオロギーを一面的にしか捉えていな
いことを批判 しつつ,明初になぜ専制国家が成立 したのかという問題を論 じる。