「引き揚げ婦女子の悲劇」
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 満州奥地から引き揚げて来た人、ソ連軍の侵攻と引き揚げが重なった人たちは悲惨
だった。ソ連兵や現地の中国人は無抵抗の日本の民間人に掠奪と暴行の限りを加えた。
集団は散り散りになり、飢えと疾病で多くの人の命が失われた。中でも日本人婦女子の
惨状は想像を絶するものがあった。特にソ連兵は日本人の女性とみれば見さかいなく
襲いかかった。殆どが銃口を突きつけての強姦、輪姦であり、その実態についての記録
は数多く残されている。ソ連兵は満州だけでなく欧州においても、現地の住民を対象に
したレイプで性欲を処理するのが慣行であった。
 ようやく満州から陸路朝鮮に入り、半島を南下するに際しここで再び現地人男性による
凌辱が繰り返されたのである。不法妊娠者の数から医師の試算するところでは、被害者
は少女から中年婦人に至るまで約5,000人に及んだと推定される。
 日本国内では、「戦争と性」が語られるとき被害者は善良なアジア人、加害者は必ず
悪辣な日本人と言う呪縛の構図が出来上がっている。しかしその逆も数多く有ったのだ
と言う事実に対しては、うっかり口にできない重苦しい空気が澱んでいる。事実の認識が
歪められている社会では「戦争」の現実を見る眼も曇らざるを得ないだろうし、性欲を処理
する仕方に於て日本人も外国人も変わりが無かったと言う、至極当り前な事実でさえ見え
なくなってしまうのだ。有るがままに歴史を見る眼が日本の政治家やマスコミに少しでも
あったなら、慰安婦問題、戦後補償、謝罪等の論議はもっとバランスのとれた、国民の
良識で納得できる方向に展開していたことだろう。