つまりこういうことなのかな。

事件発生から一ヶ月の間で、今村は「小うるさい山口真帆一人を解雇して終わりにするつもりだった」。

真帆さんはその気配を察し、今村が問題を解決するつもりがないことを察し、玲奈さんに危険が及ぶ
ことを察し、ファンに向かって告発した。

洗いざらいぶちまけられあっという間に拡散したことで、NGT内部の風紀の乱れについて世間で語られ
出す。

厄介はそもそも「このグループには熱心なファンがついていて、必ずイベントは盛り上がります」という
ことをお偉方に見せてスポンサードや地方自治の協力を得るための運営が雇った「見せ応援団」
であり、文春にも同時に雇われたストーカー記者。
だから彼らは「これだけ騒いだ」「これだけ課金した」「こんなに握手会の券を入手した」「こんなに
メンバーに認知された」とあちこちでわめき散らさなきゃならない。
それが「お仕事」だから。
アピールしなければ、仕事してないと思われるから。

しかしだからこそあらゆる証拠がザクザク残っていて、あっという間にネット民により犯人は特定されて
しまった。

あっという間に、今村支配人こそが、文春こそが、彼らを好きにさせていた元凶ではないかと追求され
始めた。

刑事事件の犯人を運営が飼っていたと知られるわけにはいかない。ほかにも色々バレたらヤバイ。
秋元康は今村を下げて松村に幕を引けと命令する。
運営の関与はばれてはならない。
ならば

「山口真帆の個人的な恋愛のもつれで、山口真帆が精神的に問題を抱えていて妄言を吐いた」という設定で
幕を引くのが一番簡単だ。
当初の予定通り、山口真帆一人の解雇ですむ。騒がせたことを謝罪させ、三周年記念公演で卒業させよう。

誰だどう見ても痩せやつれて怯えている可哀そうな女性を謝罪させたことで、世間の怒りがマックス。

そんな反応が来るとは思っていなかった松村今村は、当初の設定を
御用新聞や友人(ヒロミ等)、ネット業者に吹き込みまくったあとだった。
「山口の恋愛、山口の妄言」。

だがもう、そんなこと誰も信じない。

そして真帆さんは長谷川家に匿われ連絡がとれなくなり、玲奈さんたちのために卒業も名言しなくなる。
退っ引きならなくなり、
「最近流行りの第三者委員会というのをつくって、運営の言い分を補強させて幕を引こう」ということに
なる。

弁護士の先生に「多少山口の言い分も汲み取って、しかし山口の勘違いで、山口一人で事を大きくしている
だけ、という路線で報告書を作ってくれ」とあらかじめストーリーを依頼。

依頼した通りのものが小難しい言い回しで、プロの弁護士の手によって出来上がったはずだと信じ、小難
しい内容は誰もまともに読まなかった。今村も戸賀崎に「これで大丈夫」と読みもしないで語る。