【警部補まほほん・4(終)】

押収した薬袋を元に、夫が受診したクリニックを尋ねることになった僕たち

「どうしてこんな自宅からも職場からも離れたクリニックに来てたのかしら?」と呟くまほほん先輩

「あ…ここですね」と僕たちはビルの一室にある小さな内科クリニックに入った



「はい、これは昨日うちで処方したもので間違いありません」と答える禿頭の院長

「診察時の状況は覚えておられますか?」とメモ片手に尋ねる僕

「はい、奥様がインフルエンザなので予防のためのタ●フルが欲しいと言われて」とカルテを見ながら答える院長

「え?予防…ですか?」と目を丸くするまほほん先輩

「保険がきかず実費になりますが、ご家族がインフルになって、どうしても仕事などでうつるわけにいかないという場合に処方するんです」と説明する院長

「そういう場合に例えば奥様がインフルエンザだという証明はどうするんですか?」と尋ねる僕

「いや、正直そこまでする余裕はないです」と禿頭を掻く院長

「じゃあ、患者の申告をそのまま信じて?」とツッコミ入れるまほほん先輩

「いや本当にそういう方が毎日たくさんいらっしゃるんで…以後努力します」と滝汗を拭く院長

そして礼を言って僕たちはクリニックを出た

「なんか見えてきましたね、先輩」とメモをしまいながら話しかける僕

「これで夫が嘘をついている可能性が高くなったわね」と拳を握りしめるまほほん先輩

「奥さんがインフルエンザだった話も聞き込みでは全く出てこなかったし、夫もインフルエンザでも無ければタ●フルも実は飲んでないなら異常行動という言い訳は通用しない」と思わず語気が強くなる僕

「つまり計画殺人の線も出てきたってことね」と何かを見つめる仕草がとても美しいまほほん先輩

「もっとこの件を固めるには裏をもっととらないといけませんね」と話しかける僕に振り向いて
「よし、じゃあ証拠固め急ぐわよ!」と微笑んで走り出すも運動神経0のためあっという間につまづいてこけそうになるまほほん先輩だから好き

―了―

続かないよ