イタリア声楽コンコルソ主催者発行の参加規程によれば、
「シエナ大賞100万円、ミラノ大賞100万円。両大賞の優勝者は、
イタリア国立音楽院へ推薦入学することができる。上記の両大賞は、
一年以上のイタリア国立音楽院留学資金として贈られるもので、
翌年度の留学を辞退したときは、両大賞とも留学資金を受ける資格を失う」。

ところが実際には、イタリアの国立音楽院(conservatorio di musica)の正規課程に、
民間団体主催の声楽コンクール受賞者を推薦入学させる制度は存在しない。

イタリア国立音楽院の正規課程では、外国人受験者に対して一律にイタリア語試験を課している。
イタリア語試験に合格した受験者だけが、その次の音楽実技試験に進むことができる。
イタリア語が不合格ならば実技試験を受けられない。

つまり外国人受験者にとっては、イタリア語試験の受験・合格のあとに
必ず実技試験が控えているのであり、この点について例外規則は設けられていない。

日本の民間主催コンクールの結果等を、イタリア国立音楽院での実技試験合格と
同等と見なすような扱いは、このような入試実施の手順からみてありえないことが分かる。

『山形新聞』(2010年1月29日夕刊記事「つかんだ夢への切符−伊国立音楽院留学へ」)で紹介された受賞者は、
現地でイタリア語試験に合格しても、さらに実技試験を受験・合格せねば
音楽院に入れず、コンクールの賞金も得られない。

コンクールの受賞者がイタリア国立音楽院に「推薦入学できる」などとは、
まったくの虚偽だと断定できる。