プライズなし。今回も「三菱らしさ」を貫いたトップ人事だった。 1月28日、三菱東京UFJ銀行は頭取交代を決定。4月1日付で平野信行頭取(64歳)が会長となり、後継に小山田隆副頭取(60歳。写真)が就く人事を発表した。 
三菱東京UFJのトップ人事には三つの鉄則が存在する。 
一つ目は「任期4年の不文律」だ。頭取への権力集中を防ぐ。 二つ目は「頭取の履歴書」。歴代頭取は大半が東京大学卒で旧三菱銀行出身の企画畑。
保守本流を歩んだエースだけに許される履歴書の持ち主なのだ。 三つ目は「個性を殺す」(三菱東京UFJ頭取経験者)こと。組織戦の展開が重要視される。 今回もこれらを踏襲した交代劇となる。その鉄則を踏まえると、
次の次の頭取まで予想可能なのが伝統の三菱流人事であり、そこで名前が挙がるのが、企画畑出身の柳井隆博常務だ。 
ただ、三菱東京UFJの海外戦線急拡大が、伝統を覆す可能性もささやかれる。小山田次期頭取には海外経験の不足を指摘する向きもあり、2代先のトップには平野頭取と同じ国際派を望む声も強い。 
そうした状況下で対抗馬として台頭しつつあるとされるのが、米州と欧州の特命担当を任される2人の役員、亀澤宏規常務と桑原昌宏執行役員だ。 
三菱の伝統は重大な過渡期に直面している。