『夏の約束』

たっくんが作ったてるてるぼうずが2階のベランダでゆれている。
そこにセミが飛んできた。セミはてるてるぼうずのすぐそばにとまって、てるてるぼうずに声をかけた。
「やあ、今どきめずらしい。きみはだれに作ってもらったんだい?」
てるてるぼうずはにっこり笑って言った。
「たっくんていうこの家のこどもさ。あしたの海水浴の天気が心配で、ぼくを作ってくれたのさ」
その時、たっくんが2階の窓からちょこんと顔を出して、てるてるぼうずに声をかけた。
「てるてるぼうずさん。あした、いいお天気にしてね」
てるてるぼうずはだまってゆれている。そしてセミが大空に飛び立つと同時に、雲のすきまから、夕方のまぶしいおひさまのひかりが差しこんできた。(了)