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ワイが文章をちょっと詳しく評価する!【241】

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0001ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
垢版 |
2023/05/21(日) 10:27:27.33ID:obgPc/Cb
オリジナルの文章を随時募集中!

点数の意味
10点〜39点 日本語に難がある!
40点〜59点 物語性のある読み物!
60点〜69点 書き慣れた頃に当たる壁!
70点〜79点 小説として読める!
80点〜89点 高い完成度を誇る!
90点〜99点 未知の領域!
満点は創作者が思い描く美しい夢!

評価依頼の文章はスレッドに直接、書き込んでもよい!
抜粋の文章は単体で意味のわかるものが望ましい!
長い文章の場合は読み易さの観点から三レスを上限とする(例外あり)!
それ以上の長文は別サイトのURLで受け付けている!

ここまでの最高得点79点!(`・ω・´)

前スレ
ワイが文章をちょっと詳しく評価する!【240】
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0477創る名無しに見る名無し
垢版 |
2023/06/07(水) 16:47:18.88ID:I79F+5DK
『美しき養分』


 小高い丘の真ん中を、一本の大きな桜の木が立っていた。月が悪意のある光で丘を照らし、桜の孤独を夜に晒している。
 そこへ一台の車がやって来た。ヘッドライトの強い光が夜の闇を切り裂く。

「ほら、ここだよ。ああ、丁度満開だ」
 男がそういいながら運転席から降りてきた。
「わあ、ほんとーだ! きれーい!」
 女が興奮気味にいいながら助手席から降りてくる。
「な? 綺麗だろ? ここは誰も知らない穴場なんだ。君に見せたかったんだよ。なんと言ってもうちの山だからさ、誰も入って来れないんだ」
「え? これ駿くんのお家の山なの? すごーい! え? 何? 駿くんちってお金持ちなの?」
「別に山なんて大した値段にもならないみたいだよ。それより、管理費やら税金やら掛かって金食い虫なんだって。だから買い手が付かないし売る気も無いって親父が言ってた。
そんなことよりもさ、はやく桜の真下まで行こうよ。ひらひら舞う花びらにまみれるのがまた最高なんだ」
 男はスーツの上着を脱ぎ、車のボンネットに置くと足速に桜へと向かう。
「待ってよー。一人にしないで。暗くて怖い。さっきから変な鳥鳴いてるしー」
 女は小走りで男に追いつき、胸を押し当てるようにして男の腕にしがみついた。

「今日は少し蒸し暑いね。明日は雨の予報もあるし」
 ネクタイを解きカッターシャツのボタンを一つ外した。いつの間にか風が止みそれでも花びらは降り続いている。ふたりは桜の幹にもたれ掛かり見上げる様にして桜の花を眺めていた。
「そう? 私は全然へーき。でも、夜桜ってほんとーに綺麗ね。昼の桜と違って、何かこう妖しい感じってゆーの? そんな感じがわたし、好きだったりするの」
 女は媚びるような笑顔を男に向ける。男は意に介さないかのような口調でふーんとだけ答えた。
「君さぁ、何で桜が妖しくて綺麗に見えるか知ってる?」
 暫く続いた沈黙を男が破った。
「え? 知らない」
 女は無邪気に答える。
「桜の木の下にはね、屍体が埋まってるからなんだってさ」
「何それ? 怖いんだけど」
 男は不気味な笑みを作り女に顔を向ける。
「桜の木の下には屍体が埋まっている。これは信じていいことなんだよ。
屍体は腐乱してウジが湧き、堪らなく臭い。それでいて水晶の様な液をたらたらと垂らしている」
「だから、何それ? ちょっと怖いよ?」
「桜の根は貪婪な蛸のように、それを抱きかかえ、いそぎんちゃくの食糸のような毛根を集めて、その液体を吸っている」
 男は女の嫌がる顔を他所に笑みを強めて続ける。
「何があんな花弁を作り、何があんな蕊を作っているのか、俺は毛根の吸いあげる水晶のような液が、静かな行列を作って、維管束のなかを夢のようにあがってゆくのが見えるようだ。
桜の木の下には屍体が埋まっている、これは信じて……」
「やめて!」
 耐え兼ねた女が声を上げた。
「怖いって言ってるでしょ?」
 少し大きな女の声が深夜の山間を響き渡る。奇妙な鳴き声の鳥は相変わらず奇妙な鳴き声で夜を支配していた。

「ごめんごめん。梶井基次郎って作家のさ『桜の木の下には』って小説の一節なんだ。知ってるだろ? ほら、『檸檬』って作品、中学の教科書でやらなかった? あれを書いた小説家。俺、結構好きでさ。よく読んでるんだ、何度も何度も。ごめんね。怖がらせるつもりはなかったんだ」
 少し逡巡したフリをして続ける。
「いや、怖がらせるつもりだったのかも知れない。君が怖がってくれれば……」
 男は女を真剣な眼差しでみつめる。
「こうやって君を抱きしめる口実ができる」
「駿くん……」
 女は瞳を閉じて、唇を突き出し、男の唇が重なるのを待った。一瞬、風が吹き花びらが雪の様に舞う。男は、ああ、美しい、と呟いた。
0478創る名無しに見る名無し
垢版 |
2023/06/07(水) 16:47:47.86ID:I79F+5DK
「ぐっ! ちょ…駿……」
 桜が舞い散るのを眺めながら、手にしていたネクタイで女の首を絞める。
「ああ、美しい……ご覧? まるで吹雪みたいじゃないか。風に揺れて枝が鳴ってるよ? 彼女たちも君のことを歓迎してくれているようだ。良かったね? 君もじきに屍体だ」
 男は暴れる女の腹を詰まらなそうに蹴る。女の身体が崩れると今度は顔面に膝蹴りを入れる。女の口から赤い泡が噴き出した。風に揺られて桜の枝がざわっと鳴る。
「一年振りだね。由美。詩織。恵子。陽菜。紹介するよ、この子、咲良って言うんだ。美しい名前だろ? なんだい? 嫉妬しているのかい? 嫌だなぁ。仲良くしてあげなよ。何と言っても君達は一つになるんだからさ」
 女は怒ったように眼を剥き自らの首を絞める男の腕を引っ掻く。「グッ、ギッ」と声にならない声で男に抗議をし、やがて力尽きた。ぐったりとしている女の首からネクタイを解き、男は女の身体を何度も蹴った。ひとつの作業を終えた職人が作業に不備はないかを確認するかのように、詰まらなそうに、無機質に、何度も何度も蹴った。
「ねえ、咲良、聞いてるかい? 桜の花の美しさにはね、屍体が必要なんだ。これは信じていいことなんだよ。もう怖くないだろ? 何と言っても今では君が屍体だ。君はこれから腐乱してウジが湧き堪らなく臭くなる。
それでいて、水晶の様な液をたらたら垂らすんだ」
 男は蹴るのをやめ月を見上げた。悪意のある光が男を照らす。
「咲良、君の打算や矮小さや愚かさやさ、傲慢さや醜悪さをさ、養分にして、また、桜が美しくなるんだ。ああ、咲良、初めて君を愛してると言っても構わない気持ちになったよ。咲良が桜になる。なんちゃってね」
 男は女の死体に腰を掛けて嬉しそうにタバコをに火を点ける。
 奇妙な鳴き声の鳥が鳴いている。風が吹き桜の枝をざわざわと鳴らしている。桜は丘の上に孤独で、美しかった。
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