高校3年生になった高文は、毎年、春に行われる新入生に向けてのクラブ説明会に、サッカー部の副キャプテンとして参加することになった。クラブ説明会は体育館で行われ、各クラブの代表者が順番に演壇に立ち、クラブの活動内容や功績を簡潔に紹介し、新入生を勧誘していく。高文は「1番目に紹介させてほしい」と願い出た。

どのクラブの代表者も紹介文が書かれた紙を持っているが、高文は何も持たずに壇上に上がる。新入生は静かに壇上の高文を見つめていた。

「えぇ〜、サッカー部の杉本です。わがクラブは……」

高文は得意の漫談口調で冗談混じりにクラブ紹介を始めた。静まり返っていた新入生たちの間からクスクスと笑い声が漏れてくる。紹介を終えると、高文は大きな拍手を浴びながら、壇上から降りた。 

 すると、2番手のバスケットボール部のキャプテンが高文に駆け寄った。

「杉本、バスケ部の紹介もやってくれへんか? 頼むわ」

「おぉ、ええよ」。高文はふたつ返事で再び壇上に上がり、バスケットボールを片手に、先程と口調を変えて紹介を始めた。

「えぇ〜、バスケットボール部の杉本です。このバスケットボールに君の青春をかけてみないか」。新入生たちは大声で笑い出した。

「ご清聴ありがとうございました〜!」紹介を終えると高文は足早に壇上から降りる。

すると今度は、「俺んとこも頼むわぁ」と、3番手のテニス部のキャプテンが頼んできた。

「よっしゃ、まかしとけ」3度目は、高文が演壇に立つだけで体育館は笑いに包まれた。

「次は? 放送部? よっしゃ、まかしとけ!」

結局、高文は21のクラブすべて紹介し、新入生たちが疲れ果てるほど笑わせた。