僕が描いた絵を売って欲しいという人や絵に関する仕事が少しづつ入ってきた。

大学の課題と仕事とバイトの掛け持ちは辛かったが、金島と小根山が助けてくれたこともあり、楽しい生活を送っていた。

また、夏も本格的に始まり、僕の誕生日が来るという時。父が他界した。

急だった。

妹から電話が来て知った。

死因は1年前の事故で脳の血管が何本かやられていて今になり、破裂したらしい。

母が朝起きると隣で冷たくなっていた。

約2年ぶりに父を見た。二年前からは想像できない白髪まみれのその人はどこか笑っているような怒っているような顔で深い眠りに就いていた。

葬儀が終わりまた、家に帰ろうとした時母にとめられた。

なにかを聞く前に母は僕にパンパンに膨れたビニール袋を渡した。

「これだけは持っていきな。あとは私たちで片したりするからあんたは早く大学に行きな」母は少し泣いていた。僕は「あぁ」とだけ言い玄関を後にした。

ダッダッと走る音が聞こえ後ろを見る。妹が話したいことがあると僕をカフェに誘う。

「実はお父さんね、○○に普通の仕事がして欲しかったんだって」そう言う妹を僕は睨む。「自分の好きな事をやればいいじゃんなんなんだよ」僕が言うと妹は「お父さんが晩酌をした時、あいつはいい子に育ったかな。なんて嘆いてたよ」と僕に言い返す。

結局、父は僕に収入が安定した職業に就いて欲しかったそうだ。僕はカフェを後にし、家に戻る。

それにしてもこのビニール袋何が入っているのだろう。

僕は頑丈に縛られた脇からハサミを使い袋を破く。

ゴロゴロと何かが飛び出た。

僕の大好物。カップラーメン塩味ではなく、小さい頃に大好物だったカップラーメン味噌味だ。それが10個近く入っていた。

その中にふと紙を見つけた。

○○へ
お誕生日おめでとう。
前から応援していましたよ。一生、お父さんは味方です。でも、気持ちを伝えられなかった。だからふたつの贈り物をあげます。こんな親父でごめんね
○○より

僕は手紙を読んで泣いた。文字は上手だが、文章が拙い。手汗か、涙か、分からないが手紙の文字が滲んでしまった。

ちゃんと話しておけばよかった。

今日も父が買ってくれたカップラーメンを食べる。カップラーメン塩味よりも塩っけが多い気がする。あぁやっぱり今日も食べながら泣いていた。

父が亡くなってから、僕の口座には300万円が振り込まれていた。

あれから僕は無事に大学を卒業した。今はイラストレーターをやっている。

今年で父の三回忌だ。実家に帰ったらまた、カップラーメンをお供えしようと思う。