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そして呪文の詠唱が聞こえ、
呪文の最後の一節が発されたその時、ヌルスケが動いたかに見えた。
次の瞬間、ヘッポコの視界が黄白色の閃光に染まった。
続いて熱風がヌルスケの立っている場所から吹き付けてくる。
地の底の業火が噴き上がったかの如くに、直径6メートルばかりの炎の渦がヌルスケを包み込んでいた。
芸術的な高熱の炎を生じさせるウロタトモカーオの下位呪文・トモカーオだった。
人間程度の大きさの生物なら即座に回避行動を取らない限り、ものの数秒で肉体を炭化させるだけの燃焼エネルギーを有している。
アナが最も得意とし、好んで用いる呪文だった。
赤、青、黄色と変化する炎が、ヌルスケを中心に爆発しながら回転していた。
文字通り、渦そのものだった。
自ら周囲の空気を取り込み、加速的に燃焼力を高めていく生きた炎だ。
発火して約3秒、ヌルスケはまだ炎の外に飛び出して来ない。
このまま火炎の有効範囲に留まり続けていれば、恐らくはあと数秒でヌルスケの肉体は半ば消し炭と化すだろう。
そうなっては、奴の正体が何であれ生命を維持できるとは考えられない。
アナはすでに勝ち誇った笑みを浮かべていた。