クリーム侯爵の頭上を飛び、その手を斬った剣士は、誰も気づかぬ間に道の上に降り立っていた。

「何よ、アンタ!!」

真っ先に気づいたクリーム侯爵が声を投げ、みんながそちらへ振り向くと、剣士は静かに言った。

「名乗る程の名はない。ただ無益な殺生を見るのを好まぬゆえ斬っただけ」

黄色い日本の着物に身を包んだ、色白痩身の剣士だった。
その場の者全員の視線を浴びると、恥ずかしそうに白い頬を紅くした。