茨木敬くんの日常
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主人公は茨木敬くん、33歳独身のヤクザです。
顔も身体も傷だらけで喧嘩もメチャメチャ強く、見た目は怖いけど心は優しい人です。
子供、女性、老人は絶対に殴ることが出来ず、スイーツが大好きです。
孤児院出身なので、特に身寄りのない人に対してはとっても優しいです。
そのくせお酒や辛いものも好きで、敵対する人をブッ殺したことも何度もあって、渋みが全身から滲み出ています。
そんな茨木くんの平凡な日常。さて、今日はどんなことが起こるのかな? 茨木くんは今日はパチンコに行きました。
「出ないなぁ」 茨木「出ないのは俺の日頃の行いが悪いからだな。ハハッ」 茨木くんは国営暴力団 桜田門組に所属していますがみんなには秘密です。 そこへ敵対する組のチンピラが後ろからドスを構えて襲いかかって来ました。
「死ねやぁー茨木ィー!!」 ドスを構えたその組員の名は、「茨木男夫(いばらき だんぷ)」。
茨木敬の実の兄であった─────! 茨木敬「待って待って!ちょっと今は待って!激アツリーチ来たコレ!」 茨木敬は茨木男夫に銃刀法違反で手錠をかけた。
実の兄とて容赦はない。これが桜田門組の掟なのだ。 男夫「聞け。俺は実はお前の本当の兄さんじゃない!」 茨木「なん...だと...」
茨木は絶望した。そしてウンコを漏らした 茨木のウンコはズボンに染み込み、海へと辿り着いた。 海には1と描かれたタコや4と描かれたサメ、7と描かれたイルカなどが泳ぎ回っていた。 そしてそいつ等は死んだ
どうやら茨木のウンコによって海が汚染された様だ 茨木「ちっ。死んでたのか……。どうりでパチンコが出ないわかけだ」 茨木「ところで俺は主人公なんて柄じゃないんだが……。友達も彼女もいない俺に何を求めてんだ?」 突如現れたデブ「ククク、主人公の座はこのボクが頂こう...」 茨木「ああ、頼む。アンタならタレント性がありそうだ。何かぶちかましてやってくれ」 そう言うと茨木はパチンコ海物語を諦め、ジャグラーEXのシマのほうへ移動した。 「ペカれ!」と言いながらコンビニでトイレのレバーを叩く。 台湾の戦いで死んでいったはずの戦友たちが地獄の底から這い出してきたのだ 「しっ、しっ。這うな、這うな」
茨木くんは亡霊達をしつけようとしました。 「うわ〜っ死にたくない、助けてくれぇ!」
上半身だけの一体の亡者が茨木のズボンの裾を摑んだ。
「…じょ、成仏して」
上半身だけの亡者は戦死した上官、兵藤だった。 「あくりょう、たいさーんっ」
呑気な声が聞こえたかと思うと、悪霊は甲高い声を上げて逃げ出した。
声のしたほうを見ると、少年なのか少女なのか判然としない色黒な人物が立っていた。
顔も黒くてよくわからない。ただひとつはっきりしているのは、その人物が全裸だということだけだった。 「ありがとう、助かったよ」
茨木が笑顔でそう言うと、黒い人物はいきなり茨木の頬に平手打ちを喰らわせた。
「てめー主人公だろーが。てめーが何とかしなきゃいけねーだろぉ〜」
そいつの声はやはり中性的で、しかものんびりしていた。
「オレがお前の友達になってやんよ。お前、友達いねーんだろ?」
「あぁ、よろしく」
茨木はそう言うと無理矢理また笑顔を作った。 「俺の名は茨木敬だ」
自己紹介するなりまた黒い平手が飛んで来て茨木の頬を張った。
「だーかーらー、とっくに知ってんよ。てめーは主人公なんだからよ」
「あぁ、そうか」
「てめー主人公ってモンをわかってなさすぎ」
「あぁ、そうかもな」
「いいか? 主人公は目的を持て。野望を持て」
「そうなのか」
「友達も彼女もいないとか言ってる場合じゃねーよ。ないなら作れ。じゃ、次は彼女を作ってみろ」
「いや、それは無理だな」
「なんでだよ?」
「ハハ……。恥ずかしいから」 一番強烈な平手打ちがやって来て茨木は吹っ飛ばされた。 黒い人物は言った。
「オレの名前はクロ。今日からお前のショボい主人公根性、オレが叩き直してやる」 茨木「しかし俺は本当に主人公なんて柄じゃ……」
クロ「今度それ言ったら罰ゲームな」
茨木「しかし本当に……」
クロ「スレタイ見てみろ。お前が主人公じゃねーと困るんだよ」
茨木「むぅ」
クロ「わかったらさっさと物語起こせ」
茨木「な、何をしたらいい? とりあえず何かお題をくれ」 「わっ」
そこへトラックが突っ込んできた。
トラックはクロを跳ね飛ばし、壁にぶつかり
大破しながら停まった。 「ひねくれすぎだろ、お前!」
茨木はツッコんだ。
「お題くれる前に死ぬなや!」 すると、ゆがんだトラックのドアが開き
1人の男が降り立った。
「・・・外したか」
初老のその男は何かを呟いたあと、茨木をにらみながら手をかざした。
男の手はみるみるうちに巨大化していく。
「・・・こいつ、わざわざ台湾から俺を追ってきたのか!?」
茨木はこの男を知っている。茨木はハッとした。
初老の男は巨大化した腕を振り下ろしてきたのだ。 「我が名はタオパイパイ、裏切り者共の生き残りを皆殺しにするため、この世に帰ってきた!」
タオ爺は雄叫びをあげ、逃走しようとする茨木に追撃を仕掛けてきた。 大阪府三島郡島本町は
「大阪府三島郡島本町のいじめはいじめられた本人が悪い」
と公言してはばからない町
島本町のいじめ加害者やその周囲の多くの町民
そしていじめを放置ないし容認している島本町の行政機関等に
重大な問題があるとしか思えない
こんな町は非難されて当然 「いや、これはイジメじゃない!」
茨木は逃げながら、言った。
そして知り合いに電話をした。
「頼む! 戦車を貸してくれ!」 俺も一度だけキャンプ場で子ども探しを手伝ったことがある
夕暮れどき
オチを言うと管理事務所に保護されてたんだが、あれはむりだ
気絶か、冒険か、イタズラか
想像する
まずはヤバイ気絶に対応する方針で探し始める
短時間放置で絶命リスクが高いとこを探し出す
草むら
ほんのちょっと丈のある草が捜索にスゴい邪魔なんだわ
声が出せない状態を想定して探してみると、いや、どうやって探すのさ?
すべての草をかき分けるなんてムリだもの
それって捜索範囲すべてを草刈り機で除草するのと同じ手間
警察の大量投入は相当経ってからだったじゃん
そんなん、ムリだよ
少しでもやってみりゃわかる 茨木「よし決めた! この物語はハッピーエンドにするぞ」 茨木は(ヒロイン募集中)の貼り紙をパチンコ屋の入口に貼り出した。 「ですけど……何だ?」
茨木は凄い美女が来た緊張でつい睨みつけてしまった。
そして中條あやの撃った銃弾が心臓に命中すると、困ったような顔をした。 「ここ、ダメなんだ、俺」
銃弾は心臓に命中したが、茨木は倒れなかった。
そして自分の頭を指差すと、言った。
「狙うならここだ」 中條は茨木の眉間に銃弾を数発打ち込み、さらにチェーンソーを使い頭部を切断した 「ひどいな……。ここまでするかよ」
切り取られた茨木の首は無表情に困り顔を浮かべた。
「チッ……。女は殴れねぇ」 「っていうか何で俺、生きてんだ?」
斬られた首をひねって不思議がる茨木の後ろから、それに答える声がした。
「それはお前が主人公だからだ」
茨木の生首が振り向くと、そこには無傷で相変わらず全裸のクロが立っていた。
「クロ!」
茨木は喜びの声を上げた。
「生きてたのか。よかった!」 「お前に礼を言う」
クロはのんびりした声で言った。
「お前がオレに生きててほしいと願ったから、生き返れた」
「俺が?」
「あぁ。それこそ主人公のみに許された特権だ。
お前が主人公である限りお前は死なないし、お前にとって必要な人物も、お前が主人公である限り死なないんだ」
「でもTPパニックの主人公、あっさり死んだぞ?」
「アイツは物語の中心地へ赴くべき時にあさっての方向へ行こうとした。物語の中心から外れれば、主人公ではなくなり、死ぬこともある」 クロは茨木に言った。
「つまりはこの物語(スレ)は、『主人公とは何か』を追求する物語なのだ」
「そ、そうなのか?」
茨木は釈然としない調子で言った。
「よそ見してんじゃないわよ!」
中條あやがさらに3発ピストルをぶっぱなして来た。 「まぁ、そうとなれば……」
茨木は胸に銃弾を受け止めると、言った。
「俺が主人公である限り、誰も死なさない!」
そして中條あやの肩をがっしり掴むと、いきなりその唇にキスをした。
「お前は俺の彼女になれ! そして俺はお前のことも絶対に死なさない!」 「何言ってんの?」
中條あやはフラフラと足をもうれさせながら、言った。
「私は敵対する剛力組のヒットマンなのよ? あなたを殺しに来たのよ?」
「寝返れ」
茨木は真剣な顔で答えた。
「お前が好きになった。俺の側へつけ」 「バ……バッカじゃないの!?」
中條は茨木の抱擁を振りほどいた。
「人の心までアンタの自由に出来ると思って!?」
「それが出来るのが主人公というもの」
茨木は真顔で言った。
「……だよな、クロ?」
「あ? えーと……」
クロは言葉を濁した。
「あぁ、うんうん。そうかもしれないしけど、どうかなぁ〜」 「ウチの組を舐めるんじゃないわよ」
中條は言った。
「組長の剛力あやの、副組長の上戸あやこ。……二人とも凶悪狂暴な上に、他にも恐ろしい殺し屋がいっぱいいるのよ?」 中條は次々と自分の組の兵力を茨木に漏らした。
高島あやみ。気さくに笑いながら狙撃する恐怖の女子アナ系スナイパー。
山本さあや。ギターでも何でも武器にする実力派アイドル喧嘩師。
西脇あやや。恐ろしい広島弁を使う殺人テクノポップグループ「バフューム」のリーダー。
大本あやよ。同じく「バフューム」のメンバー。最も狂暴。
樫野あやゆか。同じく「バフューム」のメンバー。ハムスターのごとき声を出す。 ちなみに「バフューム」のメンバーの通り名はそれぞれ「ヤ〜ちゃん」、「ボッチ」、「殺ゆか」である。 茨木「女ばっかりなのか。困ったな」
中條「そうよ。女の極道は怖いんだから」
茨木「しかもみんな『あや』じゃないか」
中條「そうよ。他にも恐ろしい『あや』はいっぱいいるわ。えーと、えーと……」 中條とイチャつく茨木の背後に、タオ・パイパイが忍び寄る。
「しねぃっ!」
タオパイパイの貫手が、茨木のズボンを突き破り直腸に侵入し、彼の魂を掴んだ。 「あっ、そうだ。松浦……」
中條は言葉を最後まで言えなかった。
目の前の全身鎧のような男の尻から、腕を突っ込むように生えているジジイの姿を見たのだ。
中條は甲高い悲鳴を上げた。 「やめてくれよ、爺さん」
やりきれなさそうに茨木は振り向いた。
「俺は主人公として、まだまだやることが沢山あるんだ」
『フフ……。茨木の奴……』
ほくそ笑みながらクロは思った。
『いいぞ。なかなか主人公の自覚が出て来たじゃないか』 しかし、タオ爺は表情一つ変えず、茨木の魂を掴む手を引いた。
彼には日本語は通じてなかったのだ。
「はうあっ!?」
茨木は痙攣しながら情けない声を上げた。彼の顔は青ざめ、白目をむき口からは泡が吹き出してきた。 そこに新キャラが登場!
ヨコヤ「クククク...」
糸目でオールバックの謎の男が現れた シュンエイの特性上、単体攻撃になかなかお目にかかれないのですが、シュンエイを景門まで育成したことに後悔はありません。
ナイトメアギースの悪夢効果にはかなり苦戦を強いられますが、それでもシュンエイは強い!!w
最高の攻撃力で、相手を一撃必殺!これこそLRの醍醐味ですよね。
オズワルドきたらどうしようかなぁwwタン先生ww 「残念だったな」
茨木は演技をやめ、平然とした顔で言った。
「俺の魂はここにあるんだ」
そして上着のポケットから魂を取り出した。
それは古びた少女の人形の形をしていた。 「なぜ俺の魂がこんな形をしているか……、少し昔話をさせてもらおう。なに、そんなに長い話じゃない」
茨木はそう言うと、自分の過去の話を始めた。 「ぎゃああああああっ」
茨木は断末魔をあげた。不死身だろうが魂が何だろうが痛いモノは痛いのだ タオパイパイは茨木がのたうち回ってる隙に
人形を奪い取った 「フッ。かかったな? 爺さん」
茨木は笑った。
「忘れたのか? 物語の中心から外れようとする者は消されるということを?」 「今は主人公であるこの俺がしようとしていた昔話が物語の中心だ。あさっての方向へ行こうとしたお前は、消えろタオ・パイパイ」
茨木がそう言うと、タオ・パイパイはこの物語(スレ)から永久追放された。
もはやこの物語(スレ)の誰も彼のことを覚えていない。 「許してくれな。あまり主人公面はしたくないが、仕方がなかった」
茨木はそう言うと、古い人形を握りしめた。
「俺はこの物語で誰も死なせたくはない。もちろん自分もだ」 「タオ・パイパイの存在は皆から忘れ去られたが、俺だけはアンタのこと覚えておいてやるよ」
そして人形をポケットにしまうと、昔話をするのはやめてしまった。
「気がそがれた。それにやはりあのことは俺の心の中だけにしまっておくこととしよう」 茨木が目を覚ますと、そこは病院のベッドの上だった。
「…」 ベッドの傍らで中條が眠っていた。
茨木『俺の看病を……?』 中條「あっ、気がついた?」
茨木「あぁ……。お前、大丈夫だったか?」
中條「何言ってんのよ。自分の心配しなさいよ。えーと……。あんた、何かにケツを掘られて重傷だったんだから」
茨木「俺は不死身の茨木だ。心配ない。お前にさえ怪我がなければ俺はいいんだ」
中條「……きゅん」 茨木は瞬く間に身体が完治した。
どうやら不死者は自己治癒能力が高い様だ 茨木「ところでヨコヤって奴はどうした? 登場してから何かしたか?」
中條「え……。知らな……覚えてないわ」 「ところでお前の名前、まだ聞いてなかった……よな?」
医師の許可が下りるまでの暇を持て余した茨木は、ベッドに再び身を横たえると、聞いた。
「あやよ。中條あや」
「あや……?」
「どうしたの?」
「いや……」
茨木は中條あやを全面的に信じるように、隙だらけの背中を見せて向こうを向いた。
「いい名前だ」 茨木(・・・くそ、なんてこった。)
実は中條の背中に亡者がとりついていたのだ。
それも、南方の戦いで死んだヤクザ仲間の飛島優太そっくり・・・いや、本人だった。
優太「ふぅ・・・はぁ・・・やっぱいい女だなぁ・・・茨木には勿体ねえ・・・」
優太は口から長い舌を伸ばして、中條の頬から首筋をなめ回している。
しかし彼女は気がついていないようだ。
茨木(・・・てめぇその汚い舌をしまえっ、いいかげんにしねえとぶったぎるぞ・・・!) 「そうだ、クロ」
茨木は病室の隅でずっと折り鶴を折っていたクロを振り返った。
クロは呼ばれるとにこっと笑った。真っ黒な顔に白い歯が覗いた。
「なに?」
「お前……言ってたよな? 主人公の特権。死んだ者を生き返らせることが出来るって」 「あぁ。ただし、お前が心から生き返りを望んだ者なら、な」
クロは説明した。
「そしてその者が物語の中で何らかの活躍することも必要だ。つまりモブは生き返らせられない」
「なるほど。……じゃあ」
「そしてもうひとつ。物語の根幹に『そいつが死ぬことが必要』とされた場合は、そのキャラは生き返れない」
「どういうことだ?」
「例えばな、そいつが死んだことで主人公のお前の怒りに火がつき、お前がパワーアップしたために強敵に勝った、とかの場合だ」
「……なるほど」
「つまり生き返らせることが出来るのは、物語の根幹に大した影響も与えずに死んだモブキャラじゃない奴、ということになるんだ」 「お前が心から生き返りを望んでいる奴で、条件に当てはまる奴なら誰でも生き返らせることが出来るぞ」
クロの言葉に茨木は考え込んだ。
自分は心から、コイツを生き返らせたいと思っているか?
「よし」
茨木は言った。
「優太、生き返れ」
本心だった。
一緒にいて居心地の悪い奴ではまったくなかったし、腕が立つ。
何よりも中條も目に見えれば避けてくれるに違いないと思った。 10畳の部屋で床の間に飾った日本刀を惚れ惚れとしながら見つめていた剛力組組長 剛力あやのは、報せを聞いて振り返った。
「何でおじゃると?」
麿眉の間に皺を寄せ、剛力は言った。
「中條がマロらを裏切ったでおじゃると?」
「バカなぁーッ!?」
手前に控えていた副組長の上戸あやこが声を荒らげた。
「中條はウチの組で1、2を争う美人ぞーーッ!?」
「それは関係ないでおじゃる」
剛力組長が突っ込んだ。 「茨木に惚れよったのかーーッ!?」
上戸は悔しそうに畳やら壁やら襖やら障子やらを叩きながら喚いた。
「中條ーーッ!? 茨木なんぞに惚れよったかーーッ!?」
「これ、破れるでおじゃる」
剛力組長がたしなめた。
「あ、もう破れておるでおじゃる」 「組長ーーッ! 高島を差し向けましょうぞーーッ!!」
上戸は机に勢いよく両手を叩きつけて提案した。
お茶がこぼれ、茶菓子が畳に散乱した。
「あの辣腕女子アナスナイパーに! 遠くから茨木の額を撃ち抜いて貰いましょうやーーッ!」
「いいね」
剛力組長は賛成した。
「それよりそれ、全部お前が片付けておいておくのでおじゃるよ」 「ヤッター! 俺様のリアルチンポふっかーつ!」
びっくりして固まっている中條の口へ早速それを突っ込みにかかった飛島優太を、茨木がハグで止めた。
「よかったな、優太! また会えたな」
「離せオッサン! 男と抱き合う趣味はねーぞゴルァ!」
優太は茨木の腹に必殺の拳を入れ、茨木は鋼の腹筋でそれを受け止めた。 「いい話があるんだ」
暴れる優太を抱き締めながら、茨木は言った。
「女ばっかりの組があるらしいんだ。お前、知ってたか?」 黒いビニールのコートに赤いブーツを履いた女が、ギターのハードケースを手に、ビルの階段を昇って行った。
年頃は30歳代前半位だろうか。サングラスをしていてもいい女だというのがわかる。
彼女を見かけたスケベな男達は口々にザーメン臭い言葉を交わしていた。
「おっ、おい。今のAV女優の大槻ひびたんじゃないか?」
「似てたな〜。ズボンの前がいきなり膨らんだぜ」
話が聞こえたのか、女はピンク色のルージュを塗った唇を柔らかく笑わせた。
男達はそれだけで昇天してしまった。 女はビルの一室に入ると、ギターケースを開けた。
中にはライフルと銃弾、スコープなどが綺麗に収められていた。
それらをチェックし終えると、女はスマートフォンを取り出し、電話をかけた。
「こちら高島あやみ。待機場所に到着した」
そしてすぐに電話を切ると、窓から見える病室を眺めながらサングラスを外した。 マスカラで黒く囲った目に双眼鏡を当て、標的の窓を探す。
「あらら。カーテンが閉まっていますわ」
高島はそう呟くと、床に腰を下ろし、ギターケースの中からサンドイッチとコーヒー牛乳を取り出した。
「カーテンが開くのを待つしかないですわね」
鼻唄を歌いながら機嫌よく食事を始める。 口元をハンカチで拭き、夢見るように笑うと高島は言った。
「茨木敬と、それから裏切り者の中條さん。仲良く殺して差し上げますので、楽しみにお待ち下さいね」 高島が優雅に食事を済ませた時、ふいに病室のカーテンが開いた。
それどころか丁寧に窓まで開けてくれたのは中條あやの姿だった。
病室に初夏の風を入れようとしているらしい。
「あら、あらあらら」
高島は跳び跳ねるように身を起こすと、ライフルを手に取り、スコープの向こうを見た。
窓辺の中條はもちろん、ベッドの茨木の姿もよく見える。
「あらららら、あらら♪」
高島は楽しそうに言った。
「どちらにしましょう。どちらから射殺して差し上げましょう♪」 高島が迷っていると、窓の下から何かがせり上がって来た。
リーガルの革靴の底からジェット噴射させて空中を昇って来た飛島優太が、ライフルを構えた高島あやみを見つけて物凄く嬉しそうな笑顔を浮かべた。
「やったぜ美熟女! 大当たりだ!」 「いやん! 気持ち悪いっ!」
思わず高島が発砲すると同時に目の前の優太が消え、窓ガラスをぶち破って入って来た。
「スゲー! 茨木のオッサンの言った通りだ!」
「なっ、何なのかしら、あなた!?」 優太はけり破った勢いで高島を押し倒した。
優太少年は肉食獣のような目で彼女をなめまわすように見る。
「どちらにしようか」
優太は屍姦の趣味もあるのだ。 「あらら。可愛らしい坊やね。茨木敬のお仲間かしら?」
高島は舌なめずりをし、余裕の微笑みを見せた。
優太がまだ18歳であり、見た目も歳相応なことを嘲笑う態度だった。
「悪いけど、年上のお姉さんのことを舐めないほうがよくってよ」
そう言うなり、接近して来た優太の顔面に頭突きを喰らわした。 鬼滅の刃のアニメ化が始まってから、人気の勢いがもの凄くなってきています。
ジャンプ史に残る作品となっていますが、作者の吾峠呼世晴さんについては不明な点も多くミステリアスな印象となっています。
吾峠呼世晴と言う名前についても、おそらくペンネームではないかと推測しているファンが多く見受けられます。
そこで、吾峠呼世晴さんの本名について考察している様子がネット上で話題になっていたので、ご紹介していきたいと思います。 「ヤッター! 俺様のリアルチンポふっかーつ!」
びっくりして固まっている千田の口へ早速それを突っ込みにかかった永谷園を、露蘭がハグで止めた。
「よかったな、万時郎! また会えたな」
「離せオッサン! 男と抱き合う趣味はねーぞゴルァ!」
直子は吉岡の腹に必殺の拳を入れ、真奈は鋼の腹筋でそれを受け止めた。 だが先に悲鳴を上げたのは高島だった。
丸太のような優太少年のおちんちんが、
高島のスーツを突き破り、股間に深々と刺さっていたのだ。
「あれ?俺いつの間にか入れてたのか…ハァ…ハァ…まあいいや」
優太の下半身は別の生き物のように独立して、
腰を高島の臀部に何度も叩き付けていた。 優太はチンポを引き抜くと、膣から精子混じり血の塊がドロリとこぼれ落ちた。
高島は白目をむき口から泡を吹きながら失神していた。 「俺は茨木のオッサンと違ってさ」
飛島優太は賢者のようにスッキリとした顔を笑わせた。
「敵ならば女でも殴るし、殺すんだよね」
優太はそう言うと白い上着のポケットに手を入れた。
そしてスマートフォンを取り出すと、電話をかけた。
「征服完了。……間違えた、制圧完了」 そして電話を切ると、失神している高島を見下ろした。
「ウーン……。どうしようかなあ」
胸から拳銃を取り出すと、弾倉を出したり入れたりしながら考えた。
「よし、おねいさん具合よかったし美人だし。奴隷にするか」 「やっぱりこうなるのかよ」
茨木敬は優太からの電話を切ると、呟いた。
「俺は平和な日常を送りてぇのに」 「組長! 大変です」
組員の松浦が駆け込んで来て報告した。
「高島が裏切りました」
「なんだとーーッ!?」
若頭の上戸が声を上げ、振り返った勢いで組長の顎を殴った。
「すすすすみません組長!」
剛力組長は少し痛そうにしながらも平然として松浦に聞いた。
「高島も茨木に惚れおったのでおじゃるかえ?」 「いえ、なんだか敵側の仲間に物凄い性のテクニシャンがいるらしく」
松浦は頬を赤らめながら、言った。
「そいつにメロメロにされたようで」
「どんなテクだーー!!」
上戸は恥ずかしさに顔を覆った。
「何のテクだよーー!!」
「なるほど」
剛力組長は平気な顔で2回ほど頷いた。
「つまり今後美人を差し向ければその仲間とやらの性的興奮を刺激し、ヤられてしまうのでおじゃるね」 「ならばブスを差し向ければよろしいでおじゃる」
「まっ、まさか!? 組長ーーッ!?」
上戸は恐れおののいた。
「あの恐ろしい広島弁を使う3人衆を出動させるおつもりですかーーッ!?」
「茨木に女は殴れないでおじゃる。その仲間とやらもブスに対しては無力でおじゃりましょう」
剛力組長は笑っているのかどうかよくわからない顔でフッフッフッと頷くように言った。
「バフュームの3匹を呼ぶでおじゃる」 音楽プロデューサーの中田シタタカは街を歩きながら、イメージにぴったりな女の子を探していた。
「テクノポップ・アイドルグループを作るんだ。いい子いないかな。あぁ、ロコモコ丼食べたいな」
すると近未来風のコスチュームに身を包んだ3人の女子がこちらに背を向けて何かやっているのを見かけた。
どんな顔の子達か見たくて、中田は3人に声をかけた。
「ねぇ、キミタチ」 3人は揃って振り向いた。
ポリリズムならぬポリバケツの生ゴミを漁って奪い合っていたのだ。
ゴリラのような顔をしたガーリーな女が言った。
「なんじゃコンナは! 気安く声かけよると潰すけんね! 菅原文太はアサヒソーラーじゃけん!」
最後の言葉は意味不明だった。
ソラマメのような顔の人相の悪すぎるショートボブの女が言った。
「殺すよ!?」
目がどこを向いているかわからなかった。
三角形の目をした前髪パッツンロングストレートの女がハムスターのような声で言った。
「ほぅよほぅよ!」
3人の広島弁を浴びた途端、中田はヘビー級の精神ダメージを受け、「はぅあ!?」という言葉を残し、帰らぬ人となった。 ※この物語はフィクションです。実在の人物及び団体とは一切何の関係もありません。 松浦がやって来て、3人を見つけると声をかけた。
「おい、お前ら。組長がお呼びだ。すぐに来い」
そして3人それぞれの名前を呼んだ。
「西脇あやや」
「おうよ!」ゴリラ顔のごつい体つきの女が吠えた。
「大本あやよ」
「んだゴルァ!!!!」ショートボブの女が凄んだ。
「樫野あやゆか」
「プゥー!」ハムスター声の女が鳴いた。
そして3人はいつもの見栄を切った。
「ヤ〜ちゃんじゃ!」
「ボッチじゃけん!」
「あやゆかじゃよ!」
「3人揃ってバフュームじゃゴルァァァ!!!」 茨木敬はあっという間に退院した。
病室に寝泊まりしていた中條あやは、行くあてがないと言った。
「俺はアパートに1人暮らしなんだ」
茨木は中條に言った。
「狭い部屋だが、居たいだけ居ていいぞ」
「あっ。じゃ、俺も……!」
優太が手を挙げた。
「あ??!!」
茨木は思わず不機嫌な声を出した。 茨木の部屋は本当に狭かった。
そして衣食住に必要なもの以外、何もなかった。
「ところで」
茨木はちゃぶ台に優太と向かい合って座りながら、洗い物を片付けている中條に声をかけた。
「剛力組の奴らがなぜ俺の命を狙う?」
「知らないわ」
中條は答えた。
「私はただ命令に従っただけだから」 「とりあえずまだ仲間が必要だな」
茨木は優太に言った。
「誰かを生き返らせよう」
「あっ。じゃ、ララちゃん生き返らせて!」
優太は身を乗り出した。
「お願いだよ、おじさん。ララちゃんを生き返らせておくれ」
しかし茨木は不本意そうだ。
「悪いが……。あの娘はモブキャラだろう。生き返らせたところで何も出来ん。帰りたーいとか抜かす以外はな」
「あ??!!」
優太のこめかみに信じられないほどの血管が浮き出した。 「それよりは……」
茨木は脳裏にひとつの顔を思い描いた。
心から生き返らせたいその人物の名を、口にした。
「よし……。生き返れ、ヤン・ヤーヤ」 言い終えてから思った。
あの娘もモブキャラだろうか。
生き返らせられるキャラの条件、物語に影響を与えるほど活躍することというのを満たしていないよな……。
しかし、そんな茨木の考えをよそに、ヤーヤはあっさり目の前に現れた。 現れるなりヤーヤは言った。
「シャマ?(何?)」
そして部屋を見渡し、呟いた。
「ジューナァ?(ここ、どこ?)」
「おい……」
優太がブチギレ寸前の声で言った。
「おいオッサン……。コレ、てめーの趣味100%じゃねぇか!」
茨木は何も答えず、ただ甦った丸顔ショートカットの台湾人女子高生の姿を眺めて頬を赤らめている。
「しかも戦力にならねーどころか日本語も通じねー女の子生き返らせて何になんだよ!?」
喚く優太を押し退けて、中條あやが茨木に詰め寄った。
「誰よこのオンナ?」 茨木は中條に言った。
「妹みてぇなもんだ。すっこんでろ」
そして高速でまばたきをした。
「まぁ、俺、中国語喋れるから。任せて」
優太はそう言うと、ヤーヤに話しかけた。
「メイグヮンシー。ウォシ、ニダ、ポンヨー(大丈夫。僕は君の友達だよ)」
「ア!!??」
ヤーヤはあからさまに嫌悪を顔に表した。
「シャンシャーニー!(てめー殺すぞボケ!)」 ヤーヤは茨木と目をあわすやいなや、絶叫した。
目の前にはかつて友を殺そうとしたあの男がいるのだから当然である。
「おっおい、おち…落ち着けって」
茨木はヤーヤを落ち着かせるため近づくも、
彼女は茨木に対し外国語でわめき散らし、
部屋の扉に向かって逃げた。 「何喋ってんのか知んねーけど」
中條がヤーヤの鼻に鼻をぶつけてメンチを切りながら、言った。
「可愛い顔してんじゃねーぞ、このドブスが!」
「矛盾してるぞ」
茨木が突っ込んだ。
「通訳を生き返らせよう」
優太が言った。
「キンバリーさんを生き返らせよう!」
明らかに下心があった。 優太の頭に美しい25歳の台湾人、日本語も堪能なおねいさん、キンバリー・タオの全裸姿が浮かんだ。
「うん。そうだな。キンバリーさんなら、俺も賛成だ」
茨木は頷くと、唱えた。
「よし。生き返れ、キンバリー・タオ」 キンバリーが生き返れば、ヤーヤも安心することだろう。
茨木はそう思ったのだが、キンバリーは現れなかった。
「ムゥ?」
「もしかして……」
優太が言った。
「キンバリーさん、生きてるのか?」 「よし! じゃあ、メイにしよう」
優太が提案した。
「アイツ日本語喋れねーけど、俺、アイツとだったら日本語と中国語で会話できるぜ」
「すまんな」
茨木は言った。
「俺はそいつとは面識がない」
「まじで!?」
残念がる優太を眺めながら、部屋の隅にずっと座っていたクロがフッと笑った。 「仕方がない」
茨木はヤーヤに詰め寄った。
「こうなったらお前に日本語を話せるようになって貰う」
顔中傷だらけの、かつて親友を撃ち殺そうとした男の急接近に、ヤーヤの恐怖が最高潮に達した。
「何濃厚接触しようとしてんだゴルァ!!」
中條が包丁を手に取った。 その時、扉の向こうで恐ろしい声が響いた。
「たちまちお茶して行かんね?」
まるでマウンテンゴリラの咆哮のごとにその声は、部屋中を揺らし、脳をも激しく揺らした。
「な、なんだ、この声は!?」
茨木が苦しそうに言った。 扉を蹴破ってソラマメのような顔のショートカットの女が姿を現した。
それに続いて侍頭のゴリラとロングストレートの目の小さな女が乗り込んで来た。
「ああっ……!」
中條は包丁を落とし、怯えて叫んだ。
「みんな! この女達の言葉を聞いてはダメ! コイツらは言葉だけで聞いた者の脳を破壊し、死に至らしめるバケモノどもよ!」 苦しむ3人をよそに、ヤーヤだけがキョトンとしていた。
「なんじゃコンナわぁ!?」
ボッチが凄んだ。
「私だけ広島弁じゃのぅて福山弁じゃけぇ、バカにしよんのかぁ!?」
「ほぅじゃほぅじゃ」
殺ゆかがハムスター声で威嚇した。
「あたしらの恐怖の広島弁耳にして生きておったモンは1人もおらんのじゃけぇ」
「『殺すぞ』以上の言葉があればいいのに」
ヤ〜ちゃんが必殺の台詞を繰り出した。
しかしヤーヤは相変わらずノーダメージでキョトンとしている。
「コイツ……」
3人は声を揃えた。
「私らの恐怖の広島弁が通じない!?」 あっさり地獄のテクノポップユニット『バフューム』の3人はその場に土下座した。
「すげーわ、お嬢ちゃん。私らの広島弁を浴びて何ともないとは……」
「私らブスじゃけぇ、これしか取り柄がないんよ」
「は?」
優太が思わず声を上げた。
「ブスって、誰が? お姉さん達、もしかして自分達の魅力に気づいてない?」 「君は……」
優太はボッチに言った。
「ずっと『殺すぞ』みたいに顔を歪めてるから気づかない。本当はとても綺麗なことに」
「え……っ?」
ボッチの顔から凶悪さが消えた。たちまちクールビューティーな美女が出現した。
「君は……」
優太は殺ゆかに言った。
「とても個性的でキュートだ。少なくとも俺には、とんでもなく可愛く見える」
「ヒョッ!?」
殺ゆかは開花した。
「そして君は……」
優太はヤ〜ちゃんに言った。
「見ている俺の目の前でどんどん可愛くなる」
「ウホッ!?」
ヤ〜ちゃんはそう言うと、正体を現した。
正体を現したヤ〜ちゃんは天使だった。 「よし。俺の部屋に行こう」
そう言うと優太は3人を連れてラブホへ出掛けて行った。 「ヤーヤが広島弁どころか日本語がわからなくて助かったぜ」
優太が出て行くと、茨木が言った。
「メシにするか。中條、何か作ってくれ」 茨木は旨そうに食べ、さらにおかわりまでした。
「あ〜、おいちかった。・・・ん、ヤーヤがいない!?」
茨木は辺りを見渡した。ヤーヤは脱走していた。
「敬くぅ〜んが、食べてる合間に出てったわよ」
中條は少し不機嫌だった 苦しむ3人をよそに、ヤーヤだけがキョトンとしていた。
「なんじゃコンナわぁ!?」
ボッチが凄んだ。
「私だけ広島弁じゃのぅて福山弁じゃけぇ、バカにしよんのかぁ!?」
「ほぅじゃほぅじゃ」
殺ゆかがハムスター声で威嚇した。
「あたしらの恐怖の広島弁耳にして生きておったモンは1人もおらんのじゃけぇ」
「『殺すぞ』以上の言葉があればいいのに」
ヤ〜ちゃんが必殺の台詞を繰り出した。
しかしヤーヤは相変わらずノーダメージでキョトンとしている。
「コイツ……」
3人は声を揃えた。
「私らの恐怖の広島弁が通じない!?」 黒いビニールのコートに赤いブーツを履いた女が、ギターのハードケースを手に、ビルの階段を昇って行った。
年頃は30歳代前半位だろうか。サングラスをしていてもいい女だというのがわかる。
彼女を見かけたスケベな男達は口々にザーメン臭い言葉を交わしていた。
「おっ、おい。今のAV女優の大槻ひびたんじゃないか?」
「似てたな〜。ズボンの前がいきなり膨らんだぜ」
話が聞こえたのか、女はピンク色のルージュを塗った唇を柔らかく笑わせた。
男達はそれだけで昇天してしまった。 3人は揃って振り向いた。
ポリリズムならぬポリバケツの生ゴミを漁って奪い合っていたのだ。
ゴリラのような顔をしたガーリーな女が言った。
「なんじゃコンナは! 気安く声かけよると潰すけんね! 菅原文太はアサヒソーラーじゃけん!」
最後の言葉は意味不明だった。
ソラマメのような顔の人相の悪すぎるショートボブの女が言った。
「殺すよ!?」
目がどこを向いているかわからなかった。
三角形の目をした前髪パッツンロングストレートの女がハムスターのような声で言った。
「ほぅよほぅよ!」
3人の広島弁を浴びた途端、中田はヘビー級の精神ダメージを受け、「はぅあ!?」という言葉を残し、帰らぬ人となった。 影響受けやすい人が多いな
金かけてる方が納得いかないとキレて辞めるよな
心に余裕が無さ過ぎ
無微はガタガタ言わずじっくりやってる
盆栽なんだから山あり谷あり楽しめば良い 平成26年3月
「いつかばれるんじゃないかという気持ちはあった」(作曲家として活動した佐村河内(さむらごうち)守氏)
「両耳が聞こえない作曲家」として知られた佐村河内氏(50)が、大学非常勤講師の男性(43)に楽曲を代作させていたことが分かり、佐村河内氏は7日、東京都内のホテルで会見して「私の嘘でご迷惑をおかけしました」と謝罪した。
「テレビで取り上げられてから、自分が制御できないくらい大きな存在になってしまい、言い出せなかった」と胸中を吐露した佐村河内氏。NHKは「取材過程で気づけなかった」と異例の謝罪を行った。 「山中教授がiPS細胞を発表したほぼ同時期に、アメリカのベンチャー企業が、同じ内容の論文を発表しています。
これはつまり、アメリカが京都大学のデータを盗んでいたということを意味します。
この時に京都大学がとった措置は、アメリカで裁判を起こすと不利になるため、アメリカでの特許権を放棄する代わりに、アジア・ヨーロッパで認めてもらうように図らうことでした」
「実際、これと同じようなケースは過去にも見られます。
その代表例は、日本生まれのOS『トロン』です。
開発者らは日本で無料配布を画策し、普及を試みましたがアメリカは日本に圧力をかけて、トロンと比べれば欠陥商品にすぎない『ウィンドウズ』を売りつけた。
そしてアメリカによる日本へのプレッシャーは、今も脈々と続いている。
すべては利権のためなのです」
「ちなみに、STAP細胞のような簡単な手法で万能細胞ができる可能性について、科学界ではあって当然のものとして誰もが認めています。
まさに基本中の基本であり、それを誰が最初に見つけるかを争っているのです」
「また、2014年に香港・中文大学でSTAP細胞実験が成功したという報告もありますが、後に教授自らが結果を否定。
これもアメリカの圧力によって潰されている可能性があります」
「今回の発表は、まだ資料が少なくFakeである可能性は否めません。
ただ、STAP細胞あるいはSTAP細胞と似た細胞は必ずあり、また日本が発見すればアメリカは潰しにくるという事実だけは確かなのです」 確かに、京都大学の山中伸弥教授が応じた『週刊朝日』のインタビューでは、この構造が「仁義なき戦い」と形容され、山中氏自らこう語っている。
「簡単に言いますと、ヒトのiPS細胞は自分たちのほうが先に作っていたんや、とアメリカのベンチャー企業が主張しました。
同社の特許の請求内容を見たら、京大が先に出願していた請求内容とほとんど違わない。
もう完全に戦争するつもりできているわけですね」 「南風よ!キリストの名の下に、熱で焼き尽くすのだ!」「COVID-19よ、貴様に神の風を吹く!永遠に破滅するのだ!」と力強く語ると、フーッ!と強く息を吹きかけた。 1. 韓国人
何を言っても国民は関心ありません
20代は、国から与えられる税金を受け取り、未来の年金が払い戻されていると考えてください
586世代は、年金をもらって死にます
1990年代生まれまでは、元金保全が可能でしたが、2000年以降に生まれた人は損をします
事実を話しても、土着倭寇、極右、親日派になるだけです
雪国列車が出発したので、みんな乗ってください
共感:8564|非共感:453 「家に帰りたい……」
街を彷徨いながら、ヤーヤは呟いた。
「お腹空いた……」
着ている服は死んだ時に着ていたもので、短パンの後ろポケットには財布も入っていた。
中身を確認すると九百元(三千円)ぐらいあったが、日本円に交換するためのパスポートを持っていなかった。
美味しそうなクレープやパフェ、タピオカミルクティーのポップを横目に見ながらヤーヤは通り過ぎた。
「ムーリンに会いたい……」 もしかしたら台湾元でも買えるかもと、ヤーヤはクレープ屋さんに交渉を持ちかけた。
言葉は通じなかったが、100元札を見せると店員は理解したようで、手と首の動きで無理無理と言った。
「困ってるのか?」
後ろからカタコトの中国語で話しかけられ、ヤーヤは振り向いた。
そこには黒いスーツ姿の若い男がいて、ヤーヤを美しい目で見つめて微笑んだ。
「僕が日本円と交換してあげようか?」 「助かった、ありがとう」
ヤーヤは苺と生クリームのたっぷり入ったクレープを手に、男に礼を言った。
「どうしてパスポート持ってないの?」
男は並んで歩きながら、冗談を言うように聞いた。
「不法入国者?」
一度死んだが、なぜか生き返った。生き返ってみるも、なぜか日本にいた。
そんなことは言っても信じて貰えるわけもないので、ヤーヤは曖昧に頷いた。 男はとても美しい顔をしていた。
ヤーヤはこんな美しい男の人を見たことがなかった。
特に目の輝きが常人離れしていると感じた。
彼の目を見て話していると、いつの間にかそこへ吸い込まれて行きそうになるほどだった。
「あたし、ヤーヤ。ヤン・ヤーヤ。台湾人だよ。あなたは?」
男はすぐに名乗った。
「僕の名前は山本サアヤ」 ヤーヤに日本人の名前はわからなかった。
それが男らしい名前なのかどうかも知らなかった。
「あの」
ヤーヤは山本に相談した。
「あたし、住むとこもお金もなくて……。お兄さん、身分証明できなくても働けるとことか……知らないかな」
「うーん」
山本は考えた。
「クレープが台湾の高級料理ぐらいの値段するから……九百元なんてすぐになくなっちゃう」
「ないこともないけど……」
山本はカタコトの中国語で言った。
「やめといたほうがいいだろうね」 「行くところがないなら、僕の家に泊まるといい」
山本は言った。
ヤーヤはびっくりして首を横にぶんぶん振った。
「ああ」
山本は意地悪そうに微笑むと、言った。
「そうか。さっき、僕のことを『お兄さん』って呼んだよね?」
そしてヤーヤの手を取ると、自分の胸を触らせた。
いきなりのことにびっくりしながらも、ヤーヤはすぐにその胸の柔らかさに気づいた。
「『お姉さん』だったの!?」 山本サアヤの部屋に入ると、ヤーヤは思わず声を漏らした。
「……カッコいい」
白と黒で統一され、少しだけブルーの混じった部屋だった。
ベッドの向こうにはスタンドに立て掛けてあるアコースティック・ギターが見えた。
「ギター弾くの?」
「あぁ。一応プロでもあるんだぜ」
「すごい! あたしもプロのシンガーソングライター目指してるんだ」
「あ。ごめん、もう少しゆっくり話してくれるかな」
「そう言えばどうして中国語喋れるの?」
「中国や台湾でライブすることが多いからね。それで勉強した」 スケールの大きな話に、しかしヤーヤはミーハーな反応はしなかった。
「弾いていい?」
そう言うと、返事も待たずに山本のギターを手に取った。
「これ……ギブソンJ45の、しかもヴィンテージじゃん」
「先輩に貰ったんだ」
山本はヤーヤに興味をそそられているような顔で言った。
「斎藤まさよしって人に」
「へぇ、有名人じゃん」
ヤーヤはびっくりもせずに言った。
「すごいね」
「ふうん」
山本はまじまじとヤーヤの顔を見つめながら、微笑んだ。
「君は稼げそうな娘だね」 説明鬱陵島は、大韓民国慶尚北道鬱陵郡に属する日本海に浮かぶ直径10km程度の火山島である。 朝鮮半島から約130km沖合いに位置する。
この島の最高峰は聖人峯で標高984m。平地はほとんどなく、道が悪いので車はほとんどが四輪駆動車である。
住民は約1万人で、4割が漁業、2割が農業に従事している。 FINAL FANTASY VII REMAKE(ファイナルファンタジーVII リメイク)
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面白いのかマジに聞きたいわ。 「南風よ!キリストの名の下に、熱で焼き尽くすのだ!」「COVID-19よ、貴様に神の風を吹く!永遠に破滅するのだ!」と力強く語ると、フーッ!と強く息を吹きかけた。 父親との軋轢に悩むシンジ(CV:緒方恵美)、眼帯姿が印象的な綾波レイ(CV:林原めぐみ)、「あんた、バカぁ?」が口癖のアスカ(CV:宮村優子)、シンジの保護者となる葛城ミサト(CV:三石琴乃)……。
貞本義行氏の描くキャラクターたちは、いずれも欠点を抱えていましたが、それゆえに人間的魅力を感じさせました。
また、エヴァを襲う使徒の正体や「人類補完計画」をめぐる謎めいたストーリー設定に、視聴者はハマらずにはいられませんでした。
そして、大きな波紋を呼んだのがシリーズ終盤を迎えた第25話「終わる世界」、最終話「世界の中心でアイを叫んだけもの」です。
それまで緻密なSFアニメとして進行していた『エヴァ』が、ラスト2話でシンジを中心にした「集団カウンセリング」を思わせる予想外な展開となったのです。
静止画、文字とナレーション、さらには絵コンテ、線描されたヒョロヒョロのシンジ、細かく字が書き込まれた台本までもが画面上にさらけ出されました。
「放送事故か?」と叫びたくなるようなシーンの連続でした。
使徒や「人類補完計画」の謎は明かされることなく、心の世界で葛藤を繰り返したシンジが「僕はここにいてもいいんだ」と自己肯定し、みんながシンジを祝福するシーンでTVシリーズは完結したのです。 あまりにも多くの伏線が未回収のままだったため、TVシリーズとは異なる形の第25話と最終話を描いた『劇場版 新世紀エヴァンゲリオン Air/まごころを君に』が1997年に公開されます。
賛否両論となったTV版の結末ですが、改めて見直すとシンジの心の世界を編集テクニックでうまく表現し、また制作スケジュールに追われる庵野監督自身の内面を生々しく反映していたことも感じさせます。
経済破綻、マスコミで連日報道される大震災の惨状、カルト教団による無差別テロ……。
それまで当たり前と思っていた日常風景はあっけなく消滅し、1990年代後半の日本には終末感が漂っていました。
そんな社会状況と、ひっ迫した『エヴァ』の制作事情、庵野監督の心理状態がシンクロしたことで、TV版『エヴァ』の伝説の最終回は生まれたのではないでしょうか。
新世紀を迎え、世界はさらに混沌化し、それまでの社会常識はますます通用しなくなっていきます。
庵野監督は2011年に起きた福島第一原発事故をモチーフに、実写映画『シン・ゴジラ』(2016年)を撮り上げます。メルトダウンした原子炉のメタファーとして破壊神ゴジラは暴れ回り、首都・東京と旧世代の政治家たちを壊滅に追い込みました。
シリーズ完結編となる『シン・エヴァンゲリオン劇場版』ですが、『エヴァ』が誕生した1995年以降の「失われた時代」を、庵野監督がどう総括して描くのかにも注目したいと思います。 黒いビニールのコートに赤いブーツを履いた女が、ギターのハードケースを手に、ビルの階段を昇って行った。
年頃は30歳代前半位だろうか。サングラスをしていてもいい女だというのがわかる。
彼女を見かけたスケベな男達は口々にザーメン臭い言葉を交わしていた。
「おっ、おい。今のAV女優の大槻ひびたんじゃないか?」
「似てたな〜。ズボンの前がいきなり膨らんだぜ」
話が聞こえたのか、女はピンク色のルージュを塗った唇を柔らかく笑わせた。
男達はそれだけで昇天してしまった。 「家に帰りたい……」
街を彷徨いながら、ヤーヤは呟いた。
「お腹空いた……」
着ている服は死んだ時に着ていたもので、短パンの後ろポケットには財布も入っていた。
中身を確認すると九百元(三千円)ぐらいあったが、日本円に交換するためのパスポートを持っていなかった。
美味しそうなクレープやパフェ、タピオカミルクティーのポップを横目に見ながらヤーヤは通り過ぎた。
「ムーリンに会いたい……」 冷蔵庫で保存している期間すら把握していなければ、卵を使い切る前に腐らせてしまうことはありがち。
販売期限は目安にならないので、自分で卵を調べる必要がある。
チャップマン博士いわく、もし卵が悪くなっている場合は、卵の外側に水滴がついていたり、粘りが見られる。このような卵の変化に気づいたときは、すぐに処分するように。
また、疑わしい卵は、水を注いだグラスの中で割ってみるようにチャップマン博士は勧めている。「その卵が水に浮いたら、悪くなっている可能性があります。それでも、一度割ってみて卵の匂いを確かめてください」
不快な匂いに加え、卵が腐ると、卵白がピンク色や虹色に変色することがあり、これは卵白にいる細菌の存在を示している。
「腐った卵に熱を通したとしても、匂いや異臭が軽減することはありません」と、チャップマン博士。厄介な細菌は死滅するけれど、それでも卵は処分するべき。 苦しむ3人をよそに、ヤーヤだけがキョトンとしていた。
「なんじゃコンナわぁ!?」
ボッチが凄んだ。
「私だけ広島弁じゃのぅて福山弁じゃけぇ、バカにしよんのかぁ!?」
「ほぅじゃほぅじゃ」
殺ゆかがハムスター声で威嚇した。
「あたしらの恐怖の広島弁耳にして生きておったモンは1人もおらんのじゃけぇ」
「『殺すぞ』以上の言葉があればいいのに」
ヤ〜ちゃんが必殺の台詞を繰り出した。
しかしヤーヤは相変わらずノーダメージでキョトンとしている。
「コイツ……」
3人は声を揃えた。
「私らの恐怖の広島弁が通じない!?」 ヤーヤに日本人の名前はわからなかった。
それが男らしい名前なのかどうかも知らなかった。
「あの」
ヤーヤは山本に相談した。
「あたし、住むとこもお金もなくて……。お兄さん、身分証明できなくても働けるとことか……知らないかな」
「うーん」
山本は考えた。
「クレープが台湾の高級料理ぐらいの値段するから……九百元なんてすぐになくなっちゃう」
「ないこともないけど……」
山本はカタコトの中国語で言った。
「やめといたほうがいいだろうね」 現れるなりヤーヤは言った。
「シャマ?(何?)」
そして部屋を見渡し、呟いた。
「ジューナァ?(ここ、どこ?)」
「おい……」
優太がブチギレ寸前の声で言った。
「おいオッサン……。コレ、てめーの趣味100%じゃねぇか!」
茨木は何も答えず、ただ甦った丸顔ショートカットの台湾人女子高生の姿を眺めて頬を赤らめている。
「しかも戦力にならねーどころか日本語も通じねー女の子生き返らせて何になんだよ!?」
喚く優太を押し退けて、中條あやが茨木に詰め寄った。
「誰よこのオンナ?」 ツメバケイ
体臭がもっとも臭いと言われている鳥。野生動物が悪臭を放つのは、防衛のためだが、ツメバケイの悪臭は食物の消化方法のせいだ。
この鳥は、食べたものを前腸発酵の助けをかりて消化する。牛などの反芻動物に通常見られるように、発酵専用の消化管でバクテリアが摂取した食物を分解する。
そのため、この鳥は牛の群れのようなにおいがする。肉はおいしいし、飛ぶのが下手で捕まえやすいのに、このひどい悪臭のため、よっぽど飢えていない限り、食料にしようとする人はいないようだ。 シール島
魚は最高のタンパク質源かもしれないが、最悪のタンパク質のにおいも発する。
魚の肉のにおいはいいが、腐った魚のにおいは耐えられないという人も多いだろう。
魚の悪臭は、魚の肉が酸化することによって、トリメチルアミン-N-オキシドという化学物質が分解されアンモニア誘導体に替わるせいだ。
南アフリカの海岸の狭い場所で、一匹だけでなく、たくさんの魚の死骸が腐っているところを想像してみて欲しい。
シール島は小さな島で、アザラシだけでなく、たくさんの魚の死骸やアザラシの糞のせいで、吐き気をもよおすとてつもない臭いが充満している。 腐敗した人肉
運悪く死体や腐敗が進行している人体に遭遇したことがないとしても、このにおいは決して忘れることはできないだろう。
研究者による実験で、腐りつつある人間の死体のにおいに近いのはブタの腐肉だけだということがわかったという。
腐敗中の人体は酵素やバクテリアなどさまざまなものが分解するため、生じるにおいはそれはひどいものになる。
不明遺体を捜索する仕事にたずさわっている人たちはしかたがないが、そうでない人は最後に食べたものを吐き出したくなかったら、極力避けるべきにおいだろう。 シュールストレミング
臭いにおいと言えば、最初にこれを思い浮かべる人が多いかもしれない。
主にスウェーデンで食される塩漬けのニシンの缶詰、シュールストレミングはその強烈なにおいから、「世界一臭い食べ物」と称される。
気密性が高い缶の中で二次発酵を進めているのは、Haloanaerobiumと呼ばれる嫌気性細菌の一種である。
この細菌が醗酵の過程で、強い悪臭を生成している。その強烈な臭いは、魚が腐った臭い、または生ゴミを直射日光の下で数日間放置したような臭いともいわれる。
臭気指数計ではくさやの6倍以上 (8070 Au) の値を示す。
開缶と同時に噴出するガスに失神する人までいる程で、内容物が衣服などに跳ねた場合、その異臭を完全に取り除く事はできないという。
それでも一度は食べてみたいという人、楽天などのネット通販で入手できる。 その辺の川や湖で取ったザリガニは食べない。
調理するときに、死んでるザリガニは食べない。
綺麗な水の中で、24〜36時間飼育してから食べる
ザリガニは殻が固く、煮こむのに時間が掛かる。しっかりグツグツ煮込むこと。
高タンパク低脂肪なので、1度に大量に食べないこと。ビールと一緒に食べる時は痛風に注意。
頭は寄生虫が最も多いのであまり食べない。
ザリガニを食べてから24時間以内に体に異常が出た場合は病院へ。 少年少女の皆に守ってほしいことがある。
君たちの中にはザリガニを飼っている人もいるだろう。赤茶色で大きなハサミを振りかざすアメリカザリガニだ。
このザリガニを川や池などに放さないでもらいたい。絶対に、だ。 この夏、生物観察でアメリカザリガニを飼育していた人は、まとめが終わったことだろう。
新学期になったので彼らを自由にしてやろうと思うかもしれないが、それは厳禁だ。
自然界に出たアメリカザリガニは、雑食性で猛威を振るう。
トンボの幼虫のヤゴや、ゲンゴロウといった水生昆虫を食べてしまう。
貝類も被害を受ける。
タナゴは二枚貝に産卵するので、ザリガニが増えるとタナゴたちは姿を消してしまうことになる。
アメリカザリガニは水草類も盛んに食べる。
そのとき、ハサミで水草の茎を切る。
大型の個体ほど植物を好むので大変だ。
アメリカザリガニの増加によって、希少なオニバスが消えた例もある。
水生植物がなくなると底の泥土が舞い上がりやすくなり、それまで澄んでいた水が濁る。
水中では太陽光線が不足してプランクトンの顔ぶれも変わるなど環境は一変してしまう。
こうして日本固有のいろいろな生物が水辺の生態系から消えていく。
ペットとしても人気のあるアメリカザリガニが、これだけの悪さをするのは、彼らが外来生物であるからだ。
原産地では天敵も多く、むやみに増えることはないが、日本などの新天地では、歯止めのかかる仕組みがない。
日本には昭和5年ごろから入ってきていたが、近年の農薬使用の減少などで急速に増えだした。
分布の拡大には、ペットや飼育観察用のザリガニの放出が関係しているとみられている。
ザリガニのために良かれと思っての「善意の放流」が、里地の池沼や小川をはじめ、都会の公園の池の中の生態系を破壊する。
温暖化も作用して冬眠することなく活動する例もある。
アメリカザリガニ食を勧める声もあるが、寄生虫がいる場合も考えて十分な加熱と調理器具を別にするなどの注意が必要だ。
繰り返すが、アメリカザリガニを自然界に放してはいけない。
学校や家庭での指導の徹底も期待したい。 老いたホワイト夫妻と彼らの息子ハーバートは、インドの行者が作った猿の手のミイラを、知り合いのモリス曹長からもらい受けた。
モリスが言うには、猿の手には魔力が宿っていて、持ち主の望みを3つだけ叶える力があるらしい。
だがそれは、「定められた運命を無理に変えようとすれば災いが伴う」との教訓を示すためのものであり、自分も悩まされたという理由で渡すことを渋るモリスから、ホワイトは半ば強引にもらい受けたのだった。
ハーバートが冗談半分で家のローンの残りを払うのに200ポンドが欲しいと言ったため、ホワイトはそれを願うが、その時は何も起こらなかった。
翌日、ハーバートが勤務先の工場で機械に挟まれて死んだとの知らせがホワイト夫妻のもとへ届く。
会社は賠償を認めないが、日頃の勤労の報酬として金一封である200ポンドをホワイト夫妻に支払った。
ホワイト夫妻はハーバートの死を嘆き悲しんだ。
そしてある夜、どうしてもあきらめきれない妻は、ホワイトにハーバートを猿の手で生き返らせてほしいと懇願する。
ホワイトはハーバートの凄惨な死体を見ていたので懸命に妻をなだめるが、半狂乱になって訴える彼女を断り切れず、2つ目の願いをかけた。
しばしの後、ホワイト夫妻は自宅のドアを何者かがノックする音に気付く。
ハーバートが帰ってきたと思った妻は狂喜して迎え入れようとするが、その結果を想像して恐怖したホワイトは猿の手に「息子を墓に戻せ」と最後の願いをかける。
すると、激しいノックの音は突然途絶えた。
結局、平凡な日常にささやかな抵抗を試みたホワイト夫妻は、大きな代償を払って元の日常に戻った。 新種のバクテリアが、空気感染によって全世界の人間に爆発的に寄生・感染したことで世界は急変した。
感染者は未感染者を襲うようになり、世界中で暴動と虐殺が行われた。
裕福な暮らしから一転、感染者から追われる身となったアントニオ猪木は、従者の谷津嘉章とともにあてのない逃避行の旅を続けることになる。 アントニオ猪木
異常に突き出したアゴが特徴的な老人。
外見は普通の人間と変わらないが、数百年以上生きている魔族であり「燃える闘魂」の異名を持つ。
巨人に変身して敵を握りつぶす怪力、もみ上げを羽根に変形させて空を飛ぶ機動力、全身をバラバラに引き裂かれても再生する生命力など、多彩な能力を持つ。
人間が神を信奉するように、彼は大暗黒神を信奉している。
口癖は「元気ですかー? なんだ馬鹿ヤロー!。よ〜しよしよし。来いっコノヤロー! 1・2・3、ダーッ!」
谷津嘉章
アントニオ猪木の従者の男。
感染者の襲撃によって右足を失い、その後は義足をつけている。
肉体は既に死んでいるが、アントニオ猪木の魔力でゾンビとなって活動している。
口癖は「大丈夫だって、こんなこれえ。 オリャー!」 「ウッ!?」
茨木敬の傷だらけの頬を冷や汗が滴り落ちた。
ドスの手入れをしている時に、うっかり指を切ってしまったのだ。
それだけならば大したことではない。
その傷が、すぐに治らなかったのである。
血がぽたぽたと畳に落ち、中條が救急バンを貼ってくれても隙間から溢れて来た。
「……不死身ではなくなってやがんのか?」 そう言えばクロが言っていた。
主人公でも物語の中心から外れれば死ぬこともあると。
「つまり誰かがこの物語の中心に、俺にとって変わりつつあるのか?」
「どうしたの、敬くん?」
中條あやが茨木の太い腕を白い手で撫でながら、顔を覗き込んで来た。
が、すぐに興味を失ったかのように冷めた目をすると、自分のスマホを弄りはじめた。
「やべぇな……」
茨木は呟いた。
「今、剛力組に襲われたら、ひとたまりもねぇぞ」 あれから何人かの生き返りを試し、仲間を増やそうとした。
しかし、敵であるタオ一家は除き、兵藤直樹をはじめ仲間にしたい者は1人も生き返らなかった。
どいつもこいつも生き返りの条件を満たしていなかったのである。
物語の根幹に影響を与えて死んだか、あるいはどいつもこいつもモブだったのだ。 【主な登場人物まとめ】
茨木 敬(イバラキ ケイ)……この物語の主人公。「ステゴロの鬼」「不死身の茨木」などの異名を持つ全身傷だらけのヤクザ。
ヤン・ヤーヤ……茨木が一目惚れした台湾人の女子高生。丸顔ショートカットのロックに生きる美少女。台湾でタオ・パイパイに殺されたが、茨木によって生き返らされる。
飛島 優太……見た目は普通に18歳の少年だが、実は最恐最悪のヤクザ。マルコム・タオから奪ったジェット噴射機能つきのリーガルシューズを履いている。スケベ。
中條あや……茨木のオンナ。元剛力組の兵隊だったが、茨木にキュンして裏切る。組で1、2を争う美人。料理がうまい。
剛力あやの……剛力組組長。マロ眉をしており、喋り方も平安貴族調。その実力は未だ未知数。
上戸あやこ……剛力組若頭。気が短く、動きが唐突で、何かあるとすぐに手近なものを壊す。
高島あやみ……剛力組の誇る最強のスナイパー。魅惑のエロス漂う30女。優太にメロメロにされ、奴隷となっている。
バフューム……西脇あやや、大本あやよ、樫野あやゆかの3人による地獄のテクノポップユニット。広島弁を口から放つだけで人を殺せる。優太によって調教中。
山本サアヤ……剛力組の誇る戦闘系アイドル。黒いスーツに身を包み、男装している。ヤーヤと街で知り合い、自分の部屋に泊まらせている。
クロ……全身真っ黒な謎の人物。常時全裸なのに性別すら判然としない。茨木を立派な主人公に育て上げようとしている。 茨木「この登場人物まとめの一番上から外れたら……俺は死ぬのか」 「…なんで俺、ドスの手入れなんてしてるんだろう」
茨木はなにかがおかしいことに気が付いた。
そう、彼はこれまでの任務では銃器や山刀といった得物は使うことはあった。
しかし、ドスや日本刀は使ったことはなかったのだ。 「何? アンタ、主人公なんかに固執してんの?」
中條が白い目を送って来た。
「意外とみみっちぃのね。見損なったかも」
「俺は主人公でなきゃいけねぇんだよ」
茨木は静かに言った。
「もう誰も死なせたくねぇんだ」 そして手下からの連絡を待っていることに耐え切れなくなり、部屋を出た。
「ヤーヤ……。どこにいるんだ」
歩き出しながら呟いた。
「お前が嫌でも俺はお前を守るって決めてんだ」 TVを観ながら山本サアヤが言った。
「君の国、大変なことになっているね」
TVには台北の町を破壊して暴れ回る謎の大怪獣の姿が遠くに映し出されていた。
それが自分の親友の変身した姿だなどとは、ヤーヤには思いも及ばなかった。
台湾には帰れないのだ、これからはこの日本で生きて行くしかないのだ。
ヤーヤは決意せざるを得なかった。
「サアヤ」
ヤーヤは言った。
「日本語、教えて」 国際電話もかけた。LINEも送った。
しかし台湾にいる親友のムーリンからは何の返事もなかった。
バンド仲間のウー・ユージエには電話が繋がった。彼は香港へ逃げていた。
ムーリンも逃げてくれていると信じるしかなかった。
お姉さんであるキンバリーの存在、そして自分を殺したあの強大なパパがついてくれていることが何よりの望みだった。
ヤーヤは心配で胸が張り裂けそうになりながらも、台湾へは帰れなかった。 数日後、高い人気を誇る武闘派アイドルグループ『DTB48』は、新メンバーの加入を紹介した。
台湾からやって来たヤンちゃんは、得意の歌とギター、そして明るいキャラとナチュラルな美貌で瞬く間に主要メンバーに躍り上がった。
センターを務める山本さあやが彼女のことをフォローした。
「ヤンちゃんはまだ日本語上手に喋れないんで、私が通訳しながらやって行きます」
「日本語喋れないのに日本語の歌なら綺麗な発音で歌えるヤンちゃんだから、すぐに自分でも日本語喋れるようになると思いますよ」 TVカメラに向かって微笑みかけながら、ヤーヤは思っていた。
『ムーリン、私を見つけて』 「ぶーーーッ!?」
TVを観ていた茨木敬はお茶を噴いた。
「汚ぇな!」
全身にお茶を浴びた中條あやがキレた声を上げた。
「あぁ畜生! 行くあてさえありゃ、こんな汚い男の部屋なんかすぐ出てってやんのに!」
「ヤーヤ……! スターになったのか!」
茨木はTVに釘付けになっていた。
「……なら、俺が守ってやるもクソもないのか? 幸せなのか?」 「へー」
ホテルの一室で、眠る女と並んでタバコのようなものを吸いながら、TVを眺めていた飛島優太が独り言を漏らした。
「今はヤーヤちゃんが主人公ってわけか」
主人公の特権がヤーヤに移りはじめているのを優太は何となく感じた。
そして、ふと気づいた。
「あっ。それならこの俺にもチャンスはあるんじゃね?」
タバコのようなものの火を消すと、ベッドから飛び起きた。
「俺が主人公になれば、ララちゃんを生き返らせるかもしれねぇ! やんぞー♪」 窓から心霊のように優太のことを覗き見ていた影が、さっと身を隠した。
「さぁ、どうする茨木敬?」
クロは独りごちた。
「お前が真に主人公たりえるか、試される時だ。お前の根性見せてくれよ?」 TV局の前に立つと、飛島優太は拳銃の弾を確認した。
「ヤーヤちゃんブッ殺して、俺がダークヒーローになるのだ」
そしてさっさとTV局の中へと入って行く。
「そう、映画ナチュラルボーンキラーズの主人公、ミッキー・ノックスのように」
DTB48が収録を行っているスタジオを探して進む。
邪魔する奴がいれば即射殺するつもりでいた。
「ヒロインが必要だ。自由と暴力を共に表現してくれる娘。それはララちゃんしかいねぇ」 「おいっ。優太!」
いきなり後ろから太い腕に抱きつかれた。
「お前のしようとしてる事はわかってるぞ」
「あ〜ら、茨木のとっつぁ〜ん」
優太はおどけて見せた。
「何のことかしらぁ〜? 僕、わかんな〜い」 「ヤーヤの危機を未然に防いだことで、茨木の主人公ポイントが一気に6上がったな」
そう言いながら、クロはメモ帳に加算した。
そこには各キャラの総獲得主人公ポイントが記してあった。
茨木敬 33pt
ヤン・ヤーヤ 30pt
飛島優太 19pt
中條あや 5pt 「お帰り」
中條あやが、帰って来た茨木を三つ指ついて出迎えた。
「ご飯にする? お風呂にする? それとも……」 「お前の作る暗黒物質は本当にうまいな」
茨木はそれを口にかっ込んだ。
「絶品だ」 飯を食うと、就寝時間まで二人でテレビを見た。
たまにテレビの音が静かになると、窓の外からカエルの合唱が聞こえた。
「さて、寝るか」
茨木はそう言うと、布団を一枚、敷いた。 TVを観ながら山本サアヤが言った。
「君の国、大変なことになっているね」
TVには台北の町を破壊して暴れ回る謎の大怪獣の姿が遠くに映し出されていた。
それが自分の親友の変身した姿だなどとは、ヤーヤには思いも及ばなかった。
台湾には帰れないのだ、これからはこの日本で生きて行くしかないのだ。
ヤーヤは決意せざるを得なかった。
「サアヤ」
ヤーヤは言った。
「日本語、教えて」 「南風よ!キリストの名の下に、熱で焼き尽くすのだ!」「COVID-19よ、貴様に神の風を吹く!永遠に破滅するのだ!」と力強く語ると、フーッ!と強く息を吹きかけた。 アントニオ猪木
異常に突き出したアゴが特徴的な老人。
外見は普通の人間と変わらないが、数百年以上生きている魔族であり「燃える闘魂」の異名を持つ。
巨人に変身して敵を握りつぶす怪力、もみ上げを羽根に変形させて空を飛ぶ機動力、全身をバラバラに引き裂かれても再生する生命力など、多彩な能力を持つ。
人間が神を信奉するように、彼は大暗黒神を信奉している。
口癖は「元気ですかー? なんだ馬鹿ヤロー!。よ〜しよしよし。来いっコノヤロー! 1・2・3、ダーッ!」
谷津嘉章
アントニオ猪木の従者の男。
感染者の襲撃によって右足を失い、その後は義足をつけている。
肉体は既に死んでいるが、アントニオ猪木の魔力でゾンビとなって活動している。
口癖は「大丈夫だって、こんなこれえ。 オリャー!」 新種のバクテリアが、空気感染によって全世界の人間に爆発的に寄生・感染したことで世界は急変した。
感染者は未感染者を襲うようになり、世界中で暴動と虐殺が行われた。
裕福な暮らしから一転、感染者から追われる身となったアントニオ猪木は、従者の谷津嘉章とともにあてのない逃避行の旅を続けることになる。 堀江氏は頭がすごくいい、それは認める。ただ打開策もなくただ「馬鹿ばっか」と苦言を呈するのはいかがなものか。昔の堀江氏なら論破するぐらいの勢いがった。今はただの批判じーさん。どうしたものか 「サアヤ」
ヤーヤは日本語で言った。
「ありがとウ」
「何が?」
黒いソファーで寛ぎながら、山本サアヤも日本語で聞いた。
「アイドルに、してくれた」
「確かに僕は後ろ楯もあって、プロデューサーを顎で使える立場だけど、ヤーヤが短期間でのし上がったのは流石に僕の力じゃないよ」
紅茶を一口飲むと、山本は微笑んだ。
「君の実力だ」
「キミノ? シツリョウ……クダッ?」
「ははは。難しかったかな」
山本は笑うと、中国語で言い直した。
「ニシュ、ジャンダ、リーハイオ」 テレビでヤーヤの顔を見ない日はなかった。
歌番組だけでなく、バラエティー番組でも、クイズ番組でも、ニュース番組でさえもヤーヤを使いたがった。
現在災害中の台湾から来たことも持ち上げられる理由となり、どんどん上達するカタコトの日本語が可愛いことも人気に火をつけた。 「可愛いなぁ」
茨木はテレビを見ながら思わず呟いた。
しかし中條は嫌な顔ひとつせずに同意した。
「私もヤーヤちゃんみたいになりたかったなぁ」
「何言ってやがる」
茨木は笑った。
「お前はお前のままで可愛いよ」
「キモっ!!」
中條はドン引きした。
「気持ち悪いこと言うなやその顔で!!!!」 「また逆転したか……」
部屋の隅でメモ帳を見ながらクロが呟いた。
「茨木敬33pt。ヤン・ヤーヤ34pt。主人公じゃなくなると茨木は途端にオーラがなくなるな」 ミサトの「まあ〜ちょっち、散らかってるけど……」
谷津嘉章「綺麗なもんだよこんなこれえ〜」
アントニオ猪木「お邪魔します」 「なぁ、ヤンちゃ〜ん」
楽屋でメンバー仲間の福田明日香がヤーヤに声を掛けて来た。
「ちょっと頼みがあるんやけどォ〜」
「何?」
ヤーヤが微笑みを浮かべて聞くと、福田は言った。
「ちょっとその綺麗な髪の毛、触らせてくれへん?」
「触る? 髪の毛? いーよ?」
「ありがとォ〜」
そう言いながらヤーヤの髪に触って来た福田の掌にはべっとりとガムがくっついていた。 「あ〜! 気づかんかったわー!」
福田はわざとらしく大口を開けて言った。
「ごめんな〜。あ〜あ、髪にガムくっついてもた〜」
「こら、くっついたとこの髪の毛切らなアカンなぁ〜」
ニヤニヤしながら脇から黙って見ていた他のメンバー達が急に喋り出した。
「10円ハゲ出来るでぇ。みっともな!」
「研修生飛ばしていきなり本隊メンバーなんかなるからバチが当たったんやわ。きっと〜」
皆がヤーヤを取り囲んでクスクスと笑った。
山本サアヤだけが座ったまま笑っていなかったが、無表情にスマホを見つめ、助ける気はなさそうだった。 「ほらほら、こんなやで?」
福田は手鏡でヤーヤにガムの付いたところを見せた。
「どうする? アンタだけ頭にちっちゃいシルクハット付けて出るわけにも行かんやろ。切るしかないなぁ〜」
ふいに山本サアヤが立ち上がり、楽屋を出て行った。
ヤーヤはそれを目で追いもせず、ただうつむいている。 「切〜れっ!」
手拍子とともに皆の大合唱が始まった。
「切〜れっ!」
「切〜れっ!」
「いっそ手元誤って頬肉まで切ったれや!」
大爆笑が起こり、手拍子が拍手の速さになった頃、部屋中に怒声がこだました。
「黙らんかいッ!」 一気に静まりかえった楽屋の扉から声の主が入って来た。
ピーナッツバターを持って戻って来た山本サアヤは皆の間をすり抜けると、ヤーヤの髪の毛をチェックした。
ヘアバンドでガムのついたところの根本を縛ると、ガムにピーナッツバターを塗って行く。
「検索した情報ではこれで取れるらしいよ」
山本は厳しい表情でピーナッツバターを塗ると、ふいに優しく微笑んだ。
「よく我慢したね。偉いよ」
ヤーヤの握りしめていた拳が緩んだ。
爪が食い込み、少し血が滲んでいた。 「こういうのは当たり前でね。僕もよく経験した」
山本は中国語でそう言いながら、ガムを綺麗に取った。
「凄いな。本当に取れた」
そう言うと嬉しそうに笑った。
「ありがとござます」
ヤーヤは日本語でそう言ったが、顔はうつむいたままだった。
「まぁ、これを笑顔で乗り切れないようじゃ、やって行けないからね」
山本は言った。
「でも、どうしても我慢できない時は、腹を殴るんだよ? 顔はダメだ」
「なるほど」
「あるいは胸を強く掴んでねじってやるんだ」
「わかった」
「僕らはチームなんだからね。お互いに舐められてもダメだし、商品である顔に傷つけるのもダメだ」
山本は無表情にそう言うとヤーヤを洗面所に行かせた。 ヤーヤの姿が消えると、山本は皆のほうへ振り返った。
「何よ」
福田が山本を見下しながら言った。
「チャンコロ語喋れる同士、馴れ合い?」
そう言い終えた瞬間、福田は崩れ落ちていた。
腹を押さえながら、口から苦しそうに空嘔を出していた。
「髪の毛も顔の一部やろがいッ!」
山本は皆を恫喝した。
「誰かの顔の傷はチームの傷じゃ! 気をつけろッ!」 楽屋を出、皆で収録スタジオに向かう廊下で松浦が待っていた。
「山本」
松浦は二人きりになると、言った。
「仕事だ。茨木敬を殺れ」 「あぁ……。例の?」
山本は冷静に言った。
「何? みんな殺られたのかい?」
「あぁ。ヤられた」
松浦は違う意味で頷いた。
「しかし、お前なら奴らを殺れる」
「僕よりは高島さんやバフュームのほうが強いんじゃないかな」
「茨木敬は女を殴れない。しかし茨木の仲間に女を見るとパワーアップする奴がいる」
「へぇ」
山本は可笑しそうに言った。
「スケベなんだね」
「お前ならどちらにでもなれる」
松浦は言った。
「いいか。茨木の前では女になれ。スケベ野郎の前では男になれ」
「なるほどね」
山本はそう言うと、歩き出そうとした。
「わかった。今は本業あるから、後でね」 「本当ならお前に頼みたくはなかったと組長が仰っていた」
松浦は山本を呼び止め、言った。
「アイドルとして大成功しているお前に危険な仕事はさせたくないとな」
「気にしなくていいよと伝えといて」
山本は裏のない笑顔で言った。
「副業も立派な仕事だ。じゃぁね!」
収録スタジオへ向かって廊下を歩いて行く山本の後ろ姿を見送りながら、松浦は呟いた。
「世間が知ったら驚くだろうな。売れっ子アイドル山本さあやが副業でヤクザのヒットマンやってるなんて」
衣装の腰の後ろで結んだピンク色の大きなリボンが揺れた。 「最近おかしいんだ」
茨木敬は飛島優太と大衆食堂で向かい合って飯を食いながら、言った。
「前はこのスレに書いてあることなら自分がいない場所での出来事でも知ることが出来てたんだが、最近さっぱりわからねぇ……」
「弱体化してんな、オッサン?」
優太はニヤニヤしながら面白そうに茨木の話を聞いた。
そして思った。
(よーし。このオッサンはもはや敵じゃねぇ。邪魔者ですらねぇ。ヤーヤちゃんサッとブッ殺して俺様が主人公だぜ) 「あーあ」
離れた席で全裸で食事をしながら、クロが呟いた。
「相当差が開いちまったぞ」
そして主人公ポイントを記したメモを見た。
茨木敬 33pt
ヤン・ヤーヤ 41pt
中條あや 6pt
飛島優太 3pt 「問題は何よりここだな……」
クロはメモ帳に新たに現れた名前を見つめた。
山本サアヤ 33pt 面倒な事考えずほんの数タップだけで14000ダイヤ増えていた月々
もう帰ってこない 翌朝、優太は散歩に出かけた。
もう午前11時近くになる。 後ろをトコトコついて来る柴犬がいる。
優太「んだゴルァ? ついて来んじゃねーよ犬コロがぁ」 移動販売のフランクフルト屋があったので、2本買って並んで食べた。
「お前、野良犬か? 首輪ついてねーけど、今時そんなわけねーよな」
柴犬はまだ少し熱いフランクフルトに苦戦している。
「うわっ。しかし食うの早えーな。俺まだ2齧りしかしてねーのに……」
「ゆーた」
突然、後ろから少女の声がした。 振り向くと、白い少女が茂みの中に立っていた。
「……ララちゃん?」
優太は信じられないものを見るように、もう一度繰り返した。
「ララちゃん!?」
優太は急いで立ち上がり、茂みの側まで短いジェット噴射で移動した。
近くで見ても、確かにララだった。
柔らかそうな少し茶色がかった髪、何も塗っていないのにピンク色のぷよぷよした唇、優しく泣いた後のような大きな目。
優太が台湾で知り合った中国人の美少女、ラン・ラーラァそのものだった。
ただ、一点を除いては──。 優太はララの匂いを嗅いだ。
0.01秒でチ○ポがフル勃起した。甘い香りが優太の奥まで満たす。
「この香り……間違いなくララちゃんだ!」
早速ズボンのジッパーを下ろそうとする優太に、ララは言った。
「ゆーた。気をつけろ」
「!?」
「お前、主人公ポイントがだいぶん落ちてんぞ。日頃の行動に気をつけろ」
「ララちゃん……日本語喋れるようになったの!?」 ララ「とにかくだ。ヤン・ヤーヤを殺そうとかするな。それするたびにお前、主人公ポイントが落ちてんぞ」
優太「ラっ……ララちゃん? 転生して日本語身につけちゃったの? わーい」
ララ「他人を蹴落として自分が主人公になろうとかすんな。主人公になりたいなら自力で勝ち取ってみせろ」
そう言うと、ララはふっと消えてしまった。 「ララちゃん……?」
優太は呆然とその場に立ち尽くした。
足下に柴犬がすり寄って来た。
「幽霊? ……なわきゃない」
優太のチ○ポはまだギンギンにそれを欲しがっていた。
「生きてたんだ!?」
優太の顔に自然に笑顔が湧き上がった。
「勇気りんりん!」
優太は右拳を天に掲げると、アンパンマンのように飛び上がりかけた。
そこへ男の声が横から投げかけられた。
「ちょっとお兄さん、いいかな」 振り向くとイケメンがそこに立っていた。
黒いスーツに身を包み、吸い込まれそうな大きな瞳でこちらを見ている。
「飛島優太だね?」
男はなめらかな声で言った。
「あ??! 誰よ、テメー?」
優太がそう聞くと、男は名乗った。
「某組に雇われた。君を殺しに来た者だ」 「アホじゃねーの、テメー?」
優太は男の足下から頭のてっぺんまでジロジロ睨んだ。
「鉄砲玉なら自己紹介せんと、いきなり刺しに来んかい」
「鉄砲玉じゃないからね」
男はフッと笑った。
「僕と君と、どちらが強いか、それを知りたい。正々堂々と殺し合いたいんだ」
「ハァア!!??」
優太はの額にビキビキと血管が浮かび上がった。
柴犬を足で向こうへ行かせると、優太はいきなり前進のジェット噴射で間合いを詰めた。 「おっ? すごい」
男は少しびっくりしたようにそう言った。
男のムカつく顔面にめり込む筈だった拳は空を切り、優太は茂みに突っ込んだ。
「面白いものを履いているね、君」
男は体勢を崩した優太に追い討ちをかけることもなく、言った。
「これは手強いな」
『あれをかわすか!?』
優太は急いで体勢を立て直すと、構えをとり、余裕のあるフリをして見せた。
「なかなか見た目のわりにやるじゃん」 「誉められた。嬉しいな」
男はそんなことを言いながら、構えようともしない。
「今度そっちから来いや」
優太は構えながら挑発する。
「いいのかい?」
男は大きな目を楽しそうに見開き、言った。
『テメーの武器も見せてみろ』
優太はジェット噴射機能つきの革靴を履いている。
男が攻撃して来たらジェット噴射で横へかわし、カウンターの拳を顔面に打ち込むつもりだ。 男は優太の目の前で、いきなりダンスを始めた。
「は?」
優太は拍子抜けしてそれを見つめる。
やたらスタイリッシュな、美しいダンスだったが、優太はそれを見ながらただひたすらにムカついて来た。
「テメー! ふざけん……」
優太の腹部に男の拳がめり込んでいた。
優太はさっき食べたフランクフルトを吐き出しながら、15メートル後ろへ飛ばされた。 すぐに男は追い討ちをかけて来た。
ジェット噴射よりも速いスピードで、空を飛ぶように優太の顔面を正確に狙いに来た。
「わんっ!」
柴犬が急に飛び出して来て、優太の前に立ち塞がった。
それを見て男の動きが急ブレーキで停まる。
「邪魔だ!」
優太は柴犬を追い払うと、立ち上がり、すぐに身を屈めてのジェット前進からアッパーを狙う。 避けようとした男の肩に優太のアッパーがヒットした。
男はまるで女のような苦痛の声を上げると、斜め横へ飛んで逃げた。
「砕けたな、骨」
手応えのあった優太はほくそえんだ。
そして追い討ちをかけようとした時、気づいた。
「あっ。俺もあばら骨砕けてんじゃねーか!!」 ジェット噴射の推進力に身体が耐えられなかった。
執拗に男の顔面を狙いに行った優太の拳は地面を殴り、そのままの勢いで3回転して優太は倒れた。
そこへ男のフライングボディーアタックが降って来る。折れたあばらを狙っている。
「どえー!」
と言いながら優太は無理やり靴底からのジェット噴射で逃げた。
フランクフルト屋が呼んだようだ。警察官が二人、こちらへ向かって駆けて来る。 「僕の負けだ」
男は肩を押さえながら言った。
「3秒で君を殺れなかった」
「抜かせ!」
優太は立ち上がる。
「また、殺しに来るよ」
「うるせぇ!」
言葉をかわすと、二人はそれぞれ別の方向へと逃げ出した。 「どうした、優太」
向かい合って飯を食いながら、茨木敬が言った。
「後頭部がハゲてるぞ?」
「うるせー! オッサン! 黙ってメシを食え!」
優太はジェット噴射で地面をひきずって逃げた時に、後頭部から尻尾にかけてズルムケになっていた。
「ムカつくヤローに狙われた。ムカつくが腕は立つ。オッサンのことも狙って来るかもしんねーぞ」
「そうか」
茨木は少し寂しそうに飯を口に運んだ。
「俺より先にお前のほうを狙って来たのか」 テレビには今日もヤーヤが映っていた。
食堂の上のほうに設置されたテレビの中で、ヤーヤの所属する人気アイドルグループDTB48が踊り、歌っていた。
「ムカつくから可愛い女の子の生足でも眺めて癒されるとするか」
優太がテレビ画面に目をやった時、ちょうどセンターの山本さあやの顔がアップで映った。
思わず優太は口に出した。
「あぁ……さあや。君は超可愛い。」
「あの娘、肩を痛めているな」
茨木もテレビ画面を見つめ、言った。
「平気そうな顔をしているが、隠せてねえ」 気が付くと優太は街の中心を歩いていた。
そこは昼間だというのに自分以外の人影は見当たらなかった。
生活感というものがなく、信号機すら動いていない。
「…俺が地獄にいる間、何が起こったんだ?」 気が付くと優太は街の中心を歩いていた。
そこは昼間だというのに自分以外の人影は見当たらなかった。
生活感というものがなく、信号機すら動いていない。
「…俺が地獄にいる間、何が起こったんだ?」 茨木が部屋に帰ると、中條あやがいなかった。
置き手紙すらなく、荷物をまとめて出て行ったようだ。
「主人公から転落するとこうなるんだな」
茨木は自分で卵かけご飯を作ると、ビールと一緒に食した。 「いい加減にしろ、茨木敬」
クロはベランダに隠れてメモ帳を見ていた。
「あれから主人公らしいこと一つもしてねーじゃねーか」
そして主人公ポイントを確認する。
茨木敬 33pt
ヤン・ヤーヤ 43pt
飛島優太 36pt
山本サアヤ 37pt 【主な登場人物まとめ】
ヤン・ヤーヤ……茨木が一目惚れした台湾人の女子高生。丸顔ショートカットのロックに生きる美少女。山本サアヤに拾われ、人気アイドルの道を驀進中。カタコトの日本語が喋れる。
山本サアヤ……本業は人気アイドルグループDTB48のセンター山本さあや。裏の副業として剛力組のヒットマンをやっている。男装すると男にしか見えない。
飛島 優太……見た目は普通に18歳の少年だが、実は最恐最悪のヤクザ。マルコム・タオから奪ったジェット噴射機能つきのリーガルシューズを履いている。スケベ。
茨木 敬(イバラキ ケイ)……この物語のかつての主人公。「ステゴロの鬼」「不死身の茨木」などの異名を持つ全身傷だらけのヤクザ。
中條あや……茨木の元オンナ。元剛力組の兵隊だったが、茨木にキュンして裏切る。組で1、2を争う美人。料理がうまい。家出した。
剛力あやの……剛力組組長。マロ眉をしており、喋り方も平安貴族調。その実力は未だ未知数。
上戸あやこ……剛力組若頭。気が短く、動きが唐突で、何かあるとすぐに手近なものを壊す。
高島あやみ……剛力組の誇る最強のスナイパー。魅惑のエロス漂う30女。優太にメロメロにされ、奴隷となっている。
バフューム……西脇あやや、大本あやよ、樫野あやゆかの3人による地獄のテクノポップユニット。広島弁を口から放つだけで人を殺せる。優太によって調教中。
クロ……全身真っ黒な謎の人物。常時全裸なのに性別すら判然としない。茨木を立派な主人公に育て上げようとしている。 日本の墓石に使われている代表的な石といえば御影石(みかげいし)です。
石材店の広告やパンフレットにも「黒御影石」「白御影石」という表現が使われていることが多いと思います。
この御影石ですが、岩石としての分類では「花崗岩」(英語ではgranite)という名称が使われます。
理科や地学の授業で一度は耳にしたことがあるかと思います。
御影石というのは日本だけで使われている名称です。
名前の由来となった御影(みかげ)とは神戸市東灘区にある地名の一つで、旧兵庫県武庫郡御影町の一帯を指します。
澤之井という泉があり、神功皇后がその水面に御姿を映し出したことが「御影」という名前の起源とされています。
また、1933年(昭和8年)に建設された神戸市立御影公会堂は、建築当時のままの状態で残されており、映画やテレビドラマ化された野坂昭如原作の『火垂るの墓』の舞台にもなった地です。
大正から昭和初期にかけてこの地で採掘されていた本御影石が、花崗岩の代表的な銘柄として全国にその名前を知られたことで、日本では花崗岩を「御影石」と呼ぶようになったのです。 新種のバクテリアが、空気感染によって全世界の人間に爆発的に寄生・感染したことで世界は急変した。
感染者は未感染者を襲うようになり、世界中で暴動と虐殺が行われた。
裕福な暮らしから一転、感染者から追われる身となったアントニオ猪木は、従者の谷津嘉章とともにあてのない逃避行の旅を続けることになる。 アントニオ猪木
異常に突き出したアゴが特徴的な老人。
外見は普通の人間と変わらないが、数百年以上生きている魔族であり「燃える闘魂」の異名を持つ。
巨人に変身して敵を握りつぶす怪力、もみ上げを羽根に変形させて空を飛ぶ機動力、全身をバラバラに引き裂かれても再生する生命力など、多彩な能力を持つ。
人間が神を信奉するように、彼は大暗黒神を信奉している。
口癖は「元気ですかー? なんだ馬鹿ヤロー!。よ〜しよしよし。来いっコノヤロー! 1・2・3、ダーッ!」
谷津嘉章
アントニオ猪木の従者の男。
感染者の襲撃によって右足を失い、その後は義足をつけている。
肉体は既に死んでいるが、アントニオ猪木の魔力でゾンビとなって活動している。
口癖は「大丈夫だって、こんなこれえ。 オリャー!」 ヤーヤは山本サアヤのブラジャーを脱がせながら、言った。
「だいじょぶですか?」
「痛いよ」
山本は笑顔を見せて答えた。
「まぁでも全治一週間だ。大したことはない」
山本の肩は紫色に晴れ上がっていた。
やーいは下も脱がせてあげると、自分も服を脱いだ。
「ありがとう」
ヤーヤに導かれるままに山本は浴室へ入る。
「痛いな感じ……」
そう言いながらヤーヤは山本の肩を撫でた。
「かわいそう」
「だいぶん日本語上手になったね」
山本は身体を洗って貰いながら、後ろを振り向き、微笑んだ。
「それにしてもその健康的な色の肌、いいな。僕は白すぎる」
「さあやの色のがあたしは好き」
ヤーヤはにこっと笑った。
「女の子の感じ。いいな」 「アイドルは楽しい?」
風呂上がりのアイスミルクティーを飲みながら、山本が聞いた。
「楽しいよ」
ヤーヤは牛乳を飲みながら、笑顔で答えた。
「楽しいだけど、本当はあたし、Rockがやりたいだから」
「そうだったね」
山本はアイスミルクティーを一口飲んだ。
「ね、ヤーヤ。僕はもうすぐグループを卒業する。そうしたら一瞬にロックバンドをやらないか?」
ヤーヤは即答した。
「ダメだよ」
「どうして?」
「だって喧嘩するでしょう?」
「ははは。二人とも音楽にこだわりが強すぎるからね」
「さあや。アイドル、卒業するの」
「ああ。僕ももう23歳だ。アイドルとしては『とうがたっている』からね」
「とうがたっている?」
「オバサンって意味さ」
「オバサンじゃない!」
ヤーヤはびっくりして、言った。
「さあやがオバサン。なら、誰でも割オバサン」
「オバサンだよ」
山本は恥ずかしそうに微笑んだ。
「階段から転げ落ちて肩を骨折するなんて、さ」 「アイドル卒業する前にやるべき仕事がある」
山本は少し遠くを見るように言った。
「何?」
ヤーヤは芸能関係の仕事としか思わずに聞いた。
「ヤクザに勝つんだ」
「???」
「それを終わらせたら」
山本はミルクティーを飲み干した。
「卒業するよ」 中條あやのことも心配だった。
剛力組を裏切った身でどこに行ったのか。
裏切った家へ易々と帰れるわけもなかった。 茨木はタピオカミルクティーを売る店を見つけて立ち止まった。
店先にはちいさな行列が出来ている。
懐かしい気持ちになり、茨木は思わず行列に並んだ。
『ヤーヤと初めて会った時みたいだな』
遠目に看板を見て、その値段に少しびっくりする。
『高いな……。台湾の4倍近くするじゃないか』
「高いよー」と、列の先頭で大きな声がした。
茨木には見間違えようがなかった。
眼鏡をかけ、ドラゴンズの野球帽を被っているが、丸い顔、可愛い唇、少年のような特徴的な体型……。 商品を手に歩き出した少女に茨木は声をかけた。
「ヤーヤ!」
ヤーヤはその声に顔を上げ、茨木の顔を認めると「ヒッ」と高い声で叫んだ。
「ヤーヤ?」
「ヤーヤだって?」
他の客がきょろきょろと辺りを見回し、気づいた。
「DTB48のヤンちゃんだー!」
しかしヤーヤはもう走って逃げ出していた。
「待ってくれ!」
茨木はその後を追いかけた。 「けーさつ呼びますよ!」
ヤーヤは逃げながら大声で言った。
「待ってくれ! 俺は怖い人じゃない!」
茨木はその背中に声を投げた。
「怖いでしょ!」
ヤーヤは叫んだ。
「殺そうとするでしょ!」
『すごい!』
茨木は感動した。
『日本語で会話できてる!』 袋小路に追い詰めると、茨木は膝に手をつき、息を整えた。
ヤーヤはヒィィ……と絶望しながらそれでも諦めずに逃げ道を探している。
茨木は上着の内ポケットに手を入れると、何かを取り出した。
ヤーヤは教父に見開いた目でメイファンそれを凝視した。
茨木は白いハンカチを取り出し、言った。
「大ファンです。サインください」 「あ……ハイ」
ヤーヤはにっこり笑ってハンカチを受け取ると、小さなバッグからサインペンを取り出した。
山本サアヤから言われていた。ファンは神様だと。
どんな気持ち悪い人でも、どんな怖そうな人でも、ファンだと言われたらにっこり笑って仲良くしろと。
そしてサインしたハンカチを返すと、手を差し出した。
「ありがとう。応援してくださいね」
そう言うと、両手で茨木のごつい手を握りしめた。 『甘酸っぱい……』
茨木は思った。
『恋のかほり』
恋愛感情など久しく忘れていた。
まるで男子中学生のように茨木は頬を赤く染めた。
大学ノートを何ページかにわたって「好きだ」という文字で埋めたい気持ちだった。
中條あやのことが頭から消し飛んでいた。
綺麗な歯を見せてゴムのように伸びて笑うヤーヤの唇を見ながら、茨木は口にした。
「君の唇の形が大好きだ」
こんな日本語わからないだろうと思って言ってしまった。
ヤーヤは再び恐怖の表情を浮かべて答えた。
「くちびる? 好きだ? やだなんかいやらしい!」 「待ってくれ!」
茨木は、脇をすり抜けて逃げ出したヤーヤの背中を再び追いかけていた。
「誤解だけは解かしてくれ!」
ヤーヤは必死に逃げた。
「5階だけは溶かしてくれ」という意味が何となくわかったので、恐怖に火がついた。
なぜ自分の居候している山本サアヤの部屋が5階だと知っているのか、考えただけでおぞましかった。 飛島優太と向かい合って、飯を食う手もろくに動かさず、茨木敬は溜め息ばかり吐いていた。
「どうしたの、オッサン?」
優太は大盛の白飯をかっこみながら、聞いた。
「なんでもない」
と言いながら、茨木はまた溜め息を吐いた。
「あ、そうか。中條あやちゃんのことが心配なのか」
「そうだな」
と言いながら、茨木はまた溜め息を吐いた。
「実はさぁ……」
優太は何か言おうとして、慌てたように口をつぐんだ。
「あ! いや、何でもない、何でもない」
「そうだな」
と言いながら、茨木はまた溜め息を吐いた。 すると、部屋の灯りが消えた。
とうとう電気を止められたらしい。 茨木「説明不足ですまん。ここは俺達行きつけの大衆食堂なんだ」
優太「おじさーん。電気料金滞納してんのかよ? 電気消えたよー?」
店主「すっ、すみまっとぇーん!」 ところで優太は後頭部のハゲを隠すために頭をスキンヘッドにしていた。
揃えて眉毛も剃り、これで少しは見た目も怖くなるかと思ったのだが、どう見ても野球部員にしか見えなくなってしまった。
それから約一週間が経ち、少し毛が伸びるとさらに可愛くなった。
誰がどう見ても彼がヤクザだとは思うまい。 その夜、優太はあるマンションの前に立った。
5階の灯りがついている窓を見上げると、呟いた。
「間違いねぇ」
優太は1度覚えた魅惑的なフェロモンなら少し遠くからでも嗅ぎ分けられる能力があった。
「やっぱこれ、中條あやちゃんの匂いだ!」 「でも、サアヤを信じて頼って来てよかった……」
赤ワインを入れたグラスを弱々しく回しながら、中條あやが言った。
「組に通報されるかもって少しは思ったから……」
「そんなことはしないよ」
山本サアヤが紅茶を手に、笑った。
「僕は剛力組とはただ雇われてるだけの関係だし、あやは僕の友達だろ」
「友達。いいね!」
ヤーヤが白と黒のストライプのクッションを抱いて、羨ましそうに言った。
「でも本当、ヤーヤちゃんにも会えるなんて予想外のラッキー」
中條はヤーヤにサインを貰った色紙を嬉しそうに掲げて、言った。
「大ファンよ」
「ありがとございます」
ヤーヤはにこっと笑った。 「でも、いつまでもここに居させて貰うわけにもいかないし……」
中條は俯いた。
「これからどうしよう……」
「いい方法があるよ」
山本が微笑みながら提案した。
「茨木敬の首を持って組長に謝りに行くんだ」
ヤーヤは日本語が難しくなって来たので黙ってスマホでゲームを始めた。
イバラキケイの名前とあの顔面傷だらけの恐ろしい男のことも結びついていなかった。
「でっ、でも……」
中條は狼狽えた。
「あっ、あの人……悪い人じゃないのよ?」 「それが一番いい方法だと思うぜ?」
山本は笑顔で続けた。
「それなら組長も許してくれる。何なら茨木敬の命を取るために、わざと裏切ったことにしとけばいい」
「でも……」
「まだ愛しているのかい?」
「……」
中條は暫く考え込むと、言った。
「だってサアヤの手柄を横取りすることになっちゃう。今はサアヤが茨木狙ってるんでしょ?」
「おいおい。知ってるだろ? どうせ僕は1度も……」
そこで山本は窓の外にいるものに気がついて、言った。
「……何だろう、あれ」
中條とヤーヤが揃って濁点付きの悲鳴を挙げた。
窓の外に、ヨダレを垂らしながらこちらを食いつくように見ている坊主頭の男がへばりついていた。 「ゆっ、優太くん!?」
中條はなんとか気がついた。
「髪型違うし、表情エロいから気がつかなかったわ!」
「ゆうた……? あぁ……」
山本は静かに呟いた。
「あの時と印象が違うな。僕がこんな格好してるからか」
山本サアヤは風呂上がりで、身につけているものはバスタオル一枚だけだった。
「どうしたの? なんでここにいるの?」
中條は窓のほうへ近づいた。
「今、開けるわ」
中條が窓を開けるなり、優太は中條に襲いかかった。
「あやさーーん!!!!」 中條は飛び退き、反射的にピストルを抜いた。
優太はピストルを構える中條の腕にニュルニュルと絡みつくと、動きを制して舌を口の中へ突っ込みにかかった。
「変態!」
後ろからヤーヤがフライパンで殴りにかかる。
優太は気持ち悪い足の動きでそれを弾き飛ばすと、今度はヤーヤの両手を掴み、口の中へ舌を突っ込みに行く。
「ヤーヤちゃんのこと正直何とも思ってなかったけど、連日テレビで観てたら勃起が止まらなくなったよ」
「フワーーッ!」
ヤーヤは猫のように悲鳴を上げた。
「いい加減にしたまえよ」
山本がハイキックを放った。
バスタオルの中から一瞬丸見えになった子猫ちゃんに目が釘付けになり、優太は山本の蹴りをまともに食らった。 しかしすぐに優太は立ち上がった。
「山本さあや!」
優太は愛を叫ぶように言った。
「ファンです! やらしてください!」
「気をつけて、サアヤ!」
床に膝をつきながら中條が叫んだ。
「そいつは性欲でムラムラすることでパワーアップするの!」
「ありがとう。でもサインはしないよ」
山本はステップを踏み始める。
「君はすぐに死ぬんだからね」 当店は、刺青・タトゥーのある方の入店OKです。
創業当時より70年以上に渡り、刺青・タトゥーの有るお客様によるトラブル無く営業して参りました。
しかし、時代の流れで、入店を断る入浴施設は増えています。
刺青やタトゥーが有るだけで、迷惑な風紀を乱すお客様ということにはならないと当店は考えます。
ですが、どうしても目立ってしまいます為、大声で話す、いつまでも裸でいる等、他のお客様が怖く感じてしまう恐れのある行為はお控え下さい。
どうぞご協力お願い致します…!
天然温泉 ちんぽ湯 店主 「マジか」
その頃、茨木敬はそんな銭湯を見つけてうかれていた。
「よし、入って行くか。大丈夫だ、俺はカタギの人達に気を遣える極道だから」
そして暖簾を潜ると、本当に久しぶりに入る銭湯に緊張するあまり、傷だらけの顔で番台の店員を睨みつけ、聞いた。
「タオルと石鹸と……あと、シャブはあるか?」 ひでぞう「シャブは売るもの。自分でやるのは三流よ」 幸い分身の幻影術が功を奏した。
ジュリアスはどれが本物かは全く分からないようで、片っ端から分身を襲っている。
たまたま本物にいきそうなときはセルフィがあらかじめ作っておいた光球を炸裂させ、目くらましを行う。
もちろんセルフィは術者なので本物を把握できるのだ。
暫し剣が風を切る音と閃光が炸裂する戦いが繰り広げられた――。
そしてついにトリスタンの剣筋がジュリアスを捉える……と、思いきや。
>「うぁっ…!ぐぁぁぁ!!!」「覚悟しろ、糞弟オォォォ!!!」
トリスタンは大剣を持ったままのジュリアスの首を絞めにかかった。
そのまま斬り込めば決着が着く間合いあったにも関わらず、下手をすれば形勢逆転される危険な行動。
トリスタンは相手の攻撃の直撃は受けていないはずだが、気付けば余波だけで満身創痍になっている。
もしまともに食らっていたら一たまりもなかっただろう。
「なっ……危険すぎる!」
今のうちに強力な単体攻撃が出来る攻撃魔法を撃ちこもうと一瞬思うが思いとどまる。
トリスタンがそこまでする理由として考えられるのはただ一つ。殺さずに気絶させるためだ。
「”誘ウハ深キ微睡”――Stun Magic」
唱えたのは、相手を気絶させる術。
気絶といっても衝撃を与えるわけではないので、強制的に眠らせる術とも言える。
雑魚相手に平和的不戦勝に持ち込む時のセルフィの定番技だが、強敵相手ではまず効かない。
駄目で元々、で放った術が少しは効いたのか
あるいはトリスタンが全て自力でやり遂げたのかは分からないが、ついにジュリアスは気を失った。
その脇腹にはいつの間にかボウガンの矢が刺さっている。司令官がボウガンを持っていた気がするが……
セルフィはこの時点では、トリスタンを撃とうとしてこちらに刺さってしまったのだろう、と解釈した。
>「こいつはしばらくは目を覚まさねぇ…どうか殺すのだけは止めてやってくれ。一応、弟なんだ。
それより、今逃げた司令官を殺すか、捕まえてくれ。それが終わったら、こいつを優先して回復を…毒があるかもしれねぇ…俺は…大丈夫…だ…」
「分かった、分かってるさ。大丈夫だから少しお休み」
攻撃魔法を撃たずに気絶の魔法に切り替えた―― 一瞬の判断だったが、殺さない事はその瞬間に決めてしまったのだ。
二人が兄弟なのだろうということは、二人の会話から察しがついていた。
とはいえ、トリスタンはジュリアスのような異常なオーラはまとっていない。
片親だけ一緒だとか、かなりワケありのようだ。
司令官はトリスタンが言ったように敗北を察して逃げたのか、いつの間にか姿を消している。もう一つの懸念事項は、ブッシュの無残な死を間近で見てしまったヴァネッサのことだ。 「山本さあや!」
優太は愛を叫ぶように言った。
「ファンです! やらしてください!」
「気をつけて、サアヤ!」
床に膝をつきながら中條が叫んだ。
「そいつは性欲でムラムラすることでパワーアップするの!」
「ありがとう。でもサインはしないよ」
山本はステップを踏み始めながら、優太に言った。
「君はすぐに死ぬんだからね」 「こらー優太くん! ここは室内でしょーが!」
中條が怒鳴る。
「靴を脱ぎなさい!」
「別に構わないさ」
山本は軽やかに左右に動きながら、言った。
「さあやちゃーんっ!」
優太は靴の後ろからのジェット噴射でまっすぐ抱きつきにかかった。
しかしあの時と同じように、山本は華麗に避け、優太は勢いあまってソファーに突っ込み脛を打った。
「君の弱点はもうわかっている」
山本は涼しい顔で言った。
「今度は本当に3秒で殺せるが、少しだけ遊んであげよう」 「ヤーヤちゃん」
気を利かせて中條がヤーヤの手を引いた。
「危ないから外へ逃げようね」
「感謝するよ、あや」
山本は笑顔で部屋を出て行く二人を見送った。
「さて優太くん。君の弱点はこれだろう?」
そう言うと山本サアヤは高く脚を上げ、踵落としを放った。
バスタオルがめくれ上がり、美しい毛の生えた子猫ちゃんが優太の眼前にその全貌を現す。
「これで君の動きは止まる。ジ・エンドだ」
優太の頭頂部に鎌のように踵落としが振り下ろされた。 優太はそれを左に避けると、イケメンな顔を作って突進して来た。
「ほう?」
山本はなんとか身体をひねって逃げながら、言った。
「あっという間に克服したかい?」
「マンコマンコマンコマンコ……」
優太は呪文のように言った。
「山本さあや倒したら山本さあやのマンコ見放題舐め放題入れ放題!」
「なるほど後のお楽しみを想像することで克服したのか」
山本は感心したように笑った。
「でも同じことだよ。君の弱点はやはり見抜いている」 飛島優太が履いているのは、台湾の殺し屋マルコム・タオから奪ったジェット噴射機能付きのリーガルシューズである。
優太は尻に生えた尻尾を振ることで、それを自在に操ることが出来る。
とはいえ7年かけてアクロバティックな動きを体得したマルコムと違って、優太はまだまだそれを使いこなしきれてはいなかった。
ジェット噴射から身体が動き出すまでにはわずかながらタイムラグがある。
マルコムはそれを敵に察知されることなく、フェイントも使った。
しかし優太は正直な予備動作で敵に動き出す方向を教えてしまっていた。
山本サアヤはそれを見抜いていた。 「マンコーーッ!」
優太は叫ぶと前身に備えて上体を屈めた。
「前進」
そう言いながら山本は脚を前に出した。
そして予測通り突進して来た優太の腹に山本の脚がめり込んだ。
完治しきっていないあばらに新たなヒビが入る。
「ゲボォ!?」
「終わりだ」
そう言うと山本サアヤは、前屈みになって苦しむ優太の上から両手を振り下ろした。
中指を立てた貫耳が優太の急所を捕らえ、骨の音が部屋に響き渡った。 「どうしたんだ優太のヤツ」
茨木敬はいつもの大衆食堂で、1人で飯を食いながら、呟いた。
飛島優太は毎日ラブホテルに泊まっている。そして昼飯時にはいつもここへ来て、茨木の向かいに座る。
しかし今日は姿を見せなかった。
「まさか……射精のしすぎで倒れてるんじゃないだろうな」
茨木は心配した。
しかし優太が毎日6回射精しても性欲の衰えないバケモノだということを思い出し、「まさかな」と笑った。 今日の公園は人通りも少なく、移動販売のフランクフルト屋には閑古鳥が鳴いていた。
捨て犬のまま大きく育ってしまった柴犬が、今日はご飯をくれる人も、遊んでくれる人もなく、空を見上げてクゥンと淋しそうに鳴いた。
植え込みの中で白い服を着た少女が暫く誰かを待つように立っていたが、やがて霧のように消えてしまった。 茨木は今日もパチンコ屋には行かず、中條あやを探していた。
警察にも探して貰っているが、その行方は杳として知れなかった。
中條を探しながら、茨木はまたばったりとヤーヤに出逢えることも期待していた。
彼は毎日、部谷で大学ノートに「好きだ」の文字を書き列ねていた。 茨木がオープンテラスのカフェでカフェフラペチーノを飲みながら街を見渡していると、スマートフォンに電話がかかって来た。
画面を見ると『中條』と表示されていたので、急いで出た。 『敬くん、元気?』
中條の声が親しげに言った。
「中條! どこにいるんだ? 心配してんだぞ!?」
『敬くん、ご飯、ちゃんと食べてる?』
「どこにいるのかって聞いてんだ!」
『えーと……』
茨木は答えを待った。
『そのね……』
イライラしてきた。
『これから、会えない?』
「おう! どこへ行けばいいんだ?」
『どこだったっけ』
と、電話の向こうで中條が誰かと話している声が小さく聞こえた。
そして電話口に戻ってくると、中條はなんだか言いにくそうに、言った。
『○○埠頭の第2創庫の裏』
「なんだってそんなとこだ!?」
『敬くん』
中條はひきつった笑いを浮かべているような声で言った。
『来ないで』
電話は切れた。 「中條……」
茨木は震える声で呟いた。
「剛力組に捕まっているんだなッ!?」
周囲の客が驚くほどの歯軋りを一つすると、茨木は立ち上がった。
大通りに出てタクシーを捕まえると、運転手に言った。
「○○埠頭の第2倉庫へ行ってくれ! 全速力でだ!」 中條は山本とヤーヤと3人で昼食のパスタを食べながら待っていた。
「このアサリ美味しいね」
「スープが絶品だ」
「日本のイタリー麺すごい」 「ところでこの格好、変じゃないかな?」
山本サアヤは立ち上がり、くるくると回って見せた。
「全然。さすがアイドルだわ。似合う似合う」
「サアヤかわいい」
山本は明るいブルーのセーラー服に身を包み、サラサラのストレートヘアーにリボンをつけていた。 「さて、そろそろ」
山本はヤーヤに言った。
「君はダンスのレッスンに行ってくれ」
「サアヤは?」
「僕も後から行くよ」
そう言うとその場で軽くウォーミングアップのためのダンスを始めた。
「これからここで済まさないといけない仕事がある」 茨木は○○埠頭第2倉庫の前に立つと、倉庫の看板を見上げ、拳を握りしめた。
裏へ向かって歩き出すと、静かに波の音が聞こえて来た。
「やあ」
セーラー服の少女が茨木を見て手を挙げた。
「待っていたよ」
剛力組は女ばかり。
茨木はその場にそぐわない姿の相手に驚くこともなく、歯を食い縛りながら聞いた。
「中條はどこだ?」
「敬くん!」
キャンプ用のテーブルでパスタとまだ向き合っていた中條が声を上げた。
「よかった……無事か」
茨木は安心して息を吐いた。 「私のことは知っていますよね?」
山本サアヤはいつもテレビの中で作っている山本さあやのキャラで言った。
「知らん!」
茨木敬は言い切った。
「あれだけ毎日テレビでDTB48を追っかけ見してたのに!?」
中條が驚きの声を上げた。
茨木はヤーヤだけを見ていたので、山本さあやの顔はおぼえていなかった。
それどころかヤーヤの他はみんな同じ顔に見えていた。
「わー。傷つくなぁ」
山本はアイドル声で言った。
「ま、いっか。これから死ぬ人に覚えてもらう必要、ないです」
そう言うなり、素早く動きで間合いを詰め、茨木の喉を狙って2本の指で突きを繰り出した。 「痛っ!」
山本は喉を正確に突いたその手を引っ込めた。
「……なんだかムチャムチャ硬い人ですねぇ?」
「中條は返して貰うぞ」
そう言うと茨木は山本に背を向け、歩き出した。
「敵に背を向けるなんて、おバカさんですか?」
山本は両手を広げると、背後から茨木のこめかみに貫耳を仕掛ける。
茨木は亀のように頭を引っ込め、それをかわした。
「こっちを向いてください」
山本は茨木の背中に連打を食らわしながら、言った。
「バカにしてるのか!? 君も攻撃して来いよ!」 茨木は山本を振り返ると、言った。
「俺は女は殴らん」
「それは差別だ!」
山本の顔に珍しく怒りの色が浮かんだ。
「僕は強い! 強い女は君と対等だ! 認めろ!」
「女は殴らん!」
茨木は山本を睨みつけると、また後ろを向いた。
「中條を連れて帰る」
「待て!」
山本は歯を剥いて叫んだ。
「舐めやがって! てめえは絶対今ここで殺す! こっち向けやオヤジ!」 「そんなに殺したいなら」
茨木は中條をお姫様抱っこすると、山本のほうを向き、仁王立ちした。
そして自分の額を指差し、言った。
「ここを狙え」
山本が気圧され、後退る。
「どうした? チャカぐらい持ってんだろ?」
茨木は山本を見下ろしながら、言った。
「ここだよ! ここがワシの急所じゃ! チャカでしっかり狙って撃ってみろや!」
「あ……ッ」
山本は自分の中に芽生えた見知らぬ感情に動けなくなってしまった。
「下ッ端が」
茨木は吐き捨てるように言うと、中條を抱いて歩き出した。
「二度とそのブサイクなツラ見せんな」 「おい中條、やめろ」
茨木は無表情に言った。
「敬くん! 敬くん!」
中條は自分を抱いている茨木の太い腕にキスの雨を降らせていた。
「敬くん! 敬ちゅ……っ、んっ!」
「怖くなかったか?」
「怖かったぁ!」
中條は茨木の分厚い胸に抱きつき、頬擦りした。
「ところで優太がいなくなったんだ。何か知らないか?」
「あ」
中條は途端に顔を曇らせた。
「優太くんなら……」
「知ってるのか」
「サアヤに……さっきの娘に……消されたわ」
「なんだと?」
中條は言い足した。
「……記憶を」 その頃、優太は動物園近くの公園でホームレスをしていた。
「俺は誰だっけぇ?」
ぶつぶつと呟きながら、拾ったうまい棒を食べた。
「俺は何かがとっても好きだったような気がする……」
公園を女子大生の群れが歩いて通ったが、優太は興味も示さず、死んだような目をして地べたに座っていた。 「サアヤの貫耳は食らった者の記憶を消す恐ろしい技なの」
中條は語った。
「自分の大好きだったものすら忘れさせ、廃人にするのよ」
「マジか」
茨木は口を開けた。
「今、どこにいるんだ」
「恐らくそんなに遠くにはいないわ」
「しかし……なぜ殺さなかった?」
「サアヤは実は」
中條は言った。
「1度も人を殺したことがないヒットマンなの」
「それ、ヒットマンって言うのか?」
「そうね。正しく言うなら『ヒット・アンド・リリースマン』かしら」 山本サアヤは自分の部屋に閉じ籠り、自分の中に初めて産まれた感情に戸惑っていた。
彼女は昔から、ある感情が自分には欠落していることに気づいていた。
中学時代、デートでお化け屋敷に入った時、付き合っていた男の子に言われた。
「お前、バカにしてんのか?」
高校生の時にも、付き合っていた男の子に言われた。一緒にホラー映画を観ている時だった。
「お前、何? 一番怖いとこで笑うなよ……」
30階建てのビルの屋上の手すりを歩いたこともある。
恐怖は一切感じなかった。
自分の中には「恐怖」という感情はないのだと思っていた。 山本サアヤはまた茨木敬の顔を思い出した。
顔だけではない。その全身から発された何かに、あの時産まれて初めての恐怖を覚えたのだ。
「ううっ……」
山本は鮮やかに思い出してしまい、頭がクラクラした。
足がすくみ、言うことを聞かない。
「乗り越えなければ」
山本は呟いた。
「これを乗り越えなければ……僕に未来はない!」 その頃茨木は公園のブランコに座る優太を発見した。
「優太お前!」
茨木は優太に駆け寄った。だが様子がおかしい。目は虚ろで精気が感じられない。
茨木に対し優太は言った。
「あんた誰」 茨木は神妙な表情を浮かべると、少し間を置いてから座り込んで優太にキスをした。
中條「ヒエッ・・・」 「どうだ? 優太」
茨木はそう言うと、優太の身体を抱き締めた。
「お前の嫌なことをしてやれば、何か思い出すだろ?」
新聞紙で辛うじて大事なところを隠している優太は、しかしそのまま茨木の胸に顔を埋めて、呟いた。
「あっ……あったかい」
まるで生気が抜けていた。
細いくせに筋肉の塊みたいだった身体も、捨て猫のようにフニャフニャと柔らかかった。 優太「パパなの? おじさんはぼくのパパなの?」
茨木「まぁ……15歳差だから、ギリギリ父親でもおかしくはないが……」
中條「おかしいだろ!!」 「め、メシだーーー!」
優太は目の前の見たこともない豪華な料理に思わず叫んだ。
茨木は優太に服を着せてやると、いつもの大衆食堂に連れて来ていた。
「いつもお前が食ってるメザシとハンバーグの定食だぞ」
茨木は言った。
「何か思い出さないか?」
しかし優太は何も言わず、5日ぶりの人間の食事を口にかっ込むと、思い切りむせた。 「これで5日目だ」
店長代理の仲本が言った。
「今日も店長出勤してこねーよ」
「これは由々しき事態ですわ」
従業員の高島あやみが下着にスケスケのピンクのガウン姿で言った。
「優太サマに何かあったのですわ!」
ソープランド「とびっこランド」は飛島店長行方不明で不在の中、今日も元気にオープンした。 (イバラキもゆーたも気が付いていないようだな。)
優太の中にいるララは彼の目を介して、部屋を見渡しながら今後の計画を考えていた。。
(私にはやり残したことがある…。彼らを利用してでも成し遂げたいことがある。)
そこへ中條がすり寄ってきた。
「優太くん、眠れないのぉ?」
むわっと彼女の口から酒の匂いが漂ってきた。
中條は酔っているらしい (山本さあやとヤン・ヤーヤが一つ部屋で、一箱のポッピーチョコを分け合って食べている)
(部屋は可愛らしいピンクやブルーのインテリアで明るく飾られている)
ヤンちゃん「ねぇ、さあや。あたし達、仲良しだよね?」
さあや「うん、ヤンちゃん。いつまでも仲良しでいようね」
ヤンちゃん「じゃ、これ、あたし食べていいよね?」
(ヤンちゃん、箱の中で残り1本になったポッピーチョコを見せる)
(箱の中身アップ)
(さあやの顔アップ、可愛く言う)
さあや「んだと? ゴルァ!」
(二人、喧嘩になる)
(クッションを使ってじゃれ合うように)
(商品アップ、ナレーション入る)
ナレーション「どんな仲良しでも喧嘩になっちゃうほどの美味しさ」
(さあやとヤンちゃん、並んで声を合わせる)
(二人、1本のポッピーを半分に分けて手に持っている)
さあや&ヤンちゃん「さあやもヤーヤも大好き! ぐりながポッピーチョコレート!」
(二人、揃ってポッピーを噛る) 「じゃあ俺も大好き!」
テレビCMに向かって笑いながら、茨木は買いだめしているポッピーチョコを噛った。
「あのさぁ……」
中條は缶ビールを片手に、突っ込みを入れた。
「気づいてないの?」
「何が?」
茨木はポッピーをかじかじしながら、振り向いた。
「ヤーヤちゃんと共演してるの、山本さあやだよ?」
「それが何か?」
「よく見てよ」
中條はYouTubeで今見たCMの動画を見せながら、言った。
「さあやの顔。見覚えない?」
暫く不機嫌そうに動画を眺めていた茨木は、ようやく気づいて、あっと声を上げた。 「あの人ヤーヤのお友達だったのか!」
茨木は顔を覆って懺悔した。
「ブサイクとか言っちまったよ!」
「っていうかさ」
中條はゲップをしながら、酔っぱらった顔で言った。
「あのコ、あたしとも仲のいい友達なんだよね。敬くんも仲良くできないかな?」
茨木は少し考え込むと、言った。
「しかしアイツは俺の命を狙っている」
「どうしたの、パパぁ?」
優太が赤ちゃんのように言った。
「怖い顔しないでぇ。ゆーた、泣いちゃう!」
「とりあえず」
茨木は言った。
「アイツは優太の記憶を戻す方法を知っているかもしれんな」 「このCM、嘘のないから、好きだ」
黒と白に統一された山本サアヤの部屋で、ちょうどテレビで流れたポッピーのCMを見ながら、ヤーヤが言った。
「嘘『が』ないから。ね?」
山本が紅茶を飲みながらヤーヤの日本語を訂正した。
「でも嘘はあるだろう? 二人とも可愛い子ぶっている。チャンズォ、クーアイ」
「ああ、うん。真的。装做可愛」
ヤーヤは笑った。
「でも仲良し。嘘がない」
「その場合は、嘘『じゃ』ない、ね」
訂正を加えながら山本も笑った。
「うん。僕らは本当にとても仲良しだ。まさか本当に一緒に住んでいるとは皆思うまいね」
「あ。もう一つ、嘘、ある」
ヤーヤは言った。
「あたしの日本語、ほんとは、へた」 ヤーヤはテレビでは台本通りに喋っているので、スラスラと綺麗な日本語を喋っていた。
しかし台本なしではまだまだカタコトだ。
「発音が綺麗なだけでも凄いと思うよ」
山本は誉めた。
「君は音に関するセンスが天才的だね」
「サアヤのおかげ」
ヤーヤはぺこりと頭を下げた。
「サアヤといつも会話。それで。就是、楽しい」
「変な日本語になってるよ」
山本は吹き出した。
「『就是』は使うな。日本語で言うなら『えっと』だ。あと『楽しい』も変。何て言いたいんだい?」
「不錯」
「『いいね!』だ」
「いいね! いつもありがとうございます」
「固いよ」
山本はまた吹き出した。
「それにそんなのは要らない」
「那、該怎麼說呢?(じゃあどう言ったらいい?)」
「何も言わなくていいよ」
山本は微笑んだ。
「仲良しの友達同士でいちいちお礼なんて言うかい?」 山本は紅茶を飲みながらも、鉄アレイを離さずずっとトレーニングをしていた。
「それ、何してる?」
ヤーヤが聞いた。
「明日のライブのためのトレーニングさ」
山本は嘘を吐いた。
そこへ山本のスマートフォンに電話がかかかって来た。
画面には『剛力あやの』の名前が表示されていた。 「やぁ、組長」
山本は出にくそうに電話に出ると、言った。
『茨木の件、どうなっているでおじゃる?』
剛力組長の声は穏やかながらも、明らかに苛立ちを帯びていた。
「一度、接触した。しかし、逃げられた」
『なぜ逃がしたでおじゃる?』
「うまく逃げられたんだ。次は必ず殺る」
『殺れる見込みはあるでおじゃるか?』
「ある」
『では早急に……』
「明日、グループのライブなんだ」
山本は乞うように言った。
「今はそれに集中してる。終わったら……。それでいいかい?」
『わかったでおじゃる。では明後日、必ず殺るでおじゃる。よい報せを期待しているでおじゃるよ?』
そう言うと、剛力組長は電話を切った。 山本は暫く無言で考え込んだ。
そして顔を上げると、ヤーヤに言った。
「決めた。明日のライブを最後に僕はグループを引退する」
「ええ!?」
ヤーヤは驚き、中国語で言った。
「そんな、いきなり急に……。そんなこと事務所が許してくれるの?」
「どうせ僕らから搾り取ってる事務だ。知ったこっちゃないさ」
思い詰めたような顔で立ち上がると、山本は歩き出しながら、言った。
「少し表をランニングして来る」 外へ出ると、山本は月を見上げた。
やたらと白い、髑髏のような月だった。
「僕は決めた」
山本は月に向かって呟いた。
「だから僕は明後日、死ぬかもしれない」 「や、やっぱり帰ろう」
茨木は尻込みした。
どう考えても自分は場違いだと感じた。
東京ドーム。DTB48ライブ「じめじめ梅雨をふっとばせ、んだと? ゴルァ! ライブ20○○」に中條と優太と3人でやって来ていた。
周りは気合いの入ったファンでいっぱいだ。 「何言ってんだ、ここまで来て。楽しめ!」
中條は茨木の後頭部を団扇でどついた。
「サアヤからバックステージパス貰ってるから、終演後会えるよ。優太の記憶、戻して貰おう」 ライブが始まると茨木はノリノリだった。
生で拙く可愛い日本語を披露するヤーヤを応援するため、サイリウムを渾身のパワーで振り回し、周囲の客にうざがられた。 楽屋は騒然となっていた。
アンコールの時に突然、今日限りで引退することを発表した山本さあやをメンバーが取り囲んでいた。
「どうしてだい?」
山本が涼しい顔で涙を拭きながら、言った。
「近々卒業するとは前から言ってたはず」
「突然すぎるわ!」
「冬本プロデューサーは知ってたの?」
「アンタいつもいつも自由勝手すぎるわ」
「さあやさん、やめないで」
1人輪に加わっていなかったヤーヤが、楽屋に入って来た中條を見つけ、笑顔を見せた。
が、その後から茨木が入って来るのを見ると、ぎゃっと声を上げ、向こうに隠れた。
「失礼。お客さんだ」
山本はそう言うと立ち上がった。 「この前は失礼しました」
茨木敬が深々と山本に頭を下げた。
「え? 何か謝られるようなこと、私されました?」
山本は笑顔で言った。少し緊張しているような笑顔だ。
「その……ブサイクとか」
「ブサイクですよ。間違ってない」
茨木は顔を上げ、山本の顔を至近距離で見ると、びっくりしたように声を上げた。
「やっ、山本さん! 顔がキラキラ……星みたいに光ってますよ!? びょ、病気か!?」
「そういうファンデ塗ってますんで」
山本は口だけ笑いながら言った。 「しかし……あなたみたいな人がなぜ、あんな仕事を……」
「私は雇われただけです」
山本はにっこりと笑顔を作った。
「もう、しません。仲良くしましょう」
「よ、よかった。ところで……」
茨木は優太の背かを押すと、前に出させた。
「コイツの記憶、戻せませんか」
優太は自分の記憶を奪った張本人の顔を目の前にし、指をしゃぶりながら呟いた。
「綺麗なひとだあ……」 すると優太の左手が勝手に動き、ズボンの中に手を入れまさぐり始めた。
「優太やめろ!」
茨木は慌てて彼のオナニーを止めた。
「ひっ左手が勝手に」 茨木は(記憶戻んなくていいかも? 今のまんまのほうがいいかも? )と思い始めていた。
こどものような今のまんまの優太のほうが正直好きだった。 ゆーた「パパー なんのお話してるのー?」
茨木(かっ、かわいい!) 中條「これっ! ゆーた! 汚い言葉やめなさい!(パァン!)」 すでに優太の左手はララに支配権を奪われていた。
「ああっ左手が止まらないよぉ!」
体の芯から湧き上がる快感に耐えきれず、
優太はパンツの中で特濃オチンポミルクを発射した。
「ヒェッ…!」
この光景には、さすがのサアヤもドン引き。 山本「むしろもう一度記憶消しましょうか」
不気味な笑いを浮かべて貫耳の体勢に入る山本サアヤを、茨木が止めた。
茨木「そっ、それはさすがにかわいそうだ!」
中條「ゆーたっ! アンタって子はっ!(パァン!)」
優太「あーー! またママがぼくを殴ったーー!」 「記憶を戻す薬があります」
山本は言った。
「おお!」
茨木は喜んだ。
「では……それを貰えますか?」
「すみません。今日は疲れていますので……」
山本は大袈裟なぐらいに疲れているアピールをした。
「明日、電話しますので、ご面倒ですけど取りに来ていただけますか?」 「わかりました。それは勿論。お疲れでしょうから……」
茨木は安心した顔で頷いた。
「では、今日はこれで失礼します」
茨木と中條は、優太を挟んでその手を両側から握り、帰宅態勢に入った。
親子のようだ、と言うには優太が大きすぎた。
「ヤーヤちゃん、またライブ観に来るね!」
中條が手を振ると、楽屋の奥でヤーヤも手を振った。
「ヤー……」と茨木が笑顔で言いかけた途端、ヤーヤは走って逃げて行ってしまった。
「なぜ……?」
茨木は愕然とした。
「嫌われた……のか?」 3人が帰って行くと、山本はサアヤは目を閉じた。
「嘘を吐いてごめんなさい」
誰にも聞こえない声で呟いた。
「薬なんてないですよ」
そして立ち上がると、引退発言に押し寄せるであろうマスコミから逃れるため、ステージ衣裳のまま、急ぎ足で1人楽屋を出て行った。 朝が来た。
山本サアヤは既に目を覚まし、静かに準備を始めていた。
マスコミの喧騒からは運よく逃れることが出来た。
ヤーヤは山本のダブルベッドで一人、まだ眠っている。 山本は引き出しから静かに武器を取り出した。
『チャカぐらい持ってんだろ?』
茨木の声が頭で響いた。
「僕は人を殺したことがないんだ」
山本は呟いた。
「だから拳銃なんてものも持ってないよ」
しかし、今回はそういうわけには行きそうになかった。
殺すつもりで行かないと、勝てない。
山本は覚悟を決めた。
引き出しから取り出した鋭利な刺のついたメリケンサックを、黒いスーツのポケットに入れた。 「あ、はい」
中條あやがスマホにかかって来た電話に応対している。
「えーと……。そうですか、はい。わかりました。その……。な、なんだってーー!?」
なんだか芝居臭い受け答えだなぁと思いながら、茨木は優太を膝に乗せて遊んでやっている。
「パパぁ。またチンコいじってぇ〜」
優太がベタベタしながらせがんで来た。
「そんな遊びしたことないだろ」
茨木は優太を叱ると、中條に聞いた。
「電話、誰からだったの」 「大変よ」
中條はあまり大変じゃなさそうな顔で、言いにくそうに言った。
「サアヤが……山本が剛力組のヒットマンに捕まった!」
「な、なんだってーー!?」
茨木は心からの声を上げた。
「薬が欲しければ、敬くん1人だけで潰れたパチンコ屋『OK牧場』の裏まで来いって」
「薬なんかどうでもいい!」
茨木はすぐに立ち上がると、上着を羽織った。
「山本さんを助けに行く!」 パチンコ店『OK牧場』の廃屋は蔦で覆われていた。
道路脇に停めさせたタクシーを降りると、駐車場入り口に張られた柵を越え、茨木は中へ入り込んだ。
人の気配はない。
裏へ回ると、そこだけ何かに使用されているかのように、アスファルトが植物に侵されていなかった。
「1人で来たぞ!」
茨木は辺りを見回し、大声を上げた。
「どこにいる!?」
「ここだよ」と、低い声がした。
柱の影から黒いスーツに身を固めた男が姿を現すと、緊張をほぐすかのように鼻をさすった。 山本サアヤは上げた前髪を侍のように後ろで結び、唇を血色の悪そうな紫色のリップで染めていた。
それだけで誰もが彼女を男と見間違う。
特に、女性の髪型が変わっただけで誰だかわからなくなる茨木敬には、気づくわけもなかった。
目の前にいるのが山本サアヤ本人だなどとは。
「山本さんはどこだ!?」
茨木は必死の形相で目の前の男を睨みつけた。
「さあね」
男は小馬鹿にするように、笑った。
「殺してないだろうな!?」
「僕を殺せたら、彼女を解放してやるよ」
そう言うと男は上着のポケットに両手を入れた。
「なんだと?」
茨木はなんだかよくわからない話に眉をひそめた。
「本気で闘ろう」
男は両拳にメリケンサックをはめると構え、まるでダンスをするようにステップを踏みはじめた。
「お前を殺す、茨木敬!」 男は凄まじく速い前身で間合いを詰めると、いきなり茨木のこめかみを狙い行った。
メリケンサックに装着された鋭い刃が、左右から茨木のこめかみに突き刺さるその寸前、男は目を見開いた。
茨木敬は無言だった。
しかし男は確かにその声を聞いた。
「この、ザコが!」
両手の動きが止まる。
山本のこめかみを冷や汗が伝う。
固く結んだ唇が開き、わなわなと震えが止まらなくなる。
足がすくんだ山本の腹部に、茨木の剛腕がめり込んだ。 「ぐわぁっ!」
山本は10メートル後ろに吹っ飛ばされ、パチンコ屋の壁に背中から激突した。
そのまま地面に倒れると、もう身体が動かなかった。
口から血を吐いてふるえている男に、茨木敬がゆっくりと歩いて近づいて来る。
「おい」
茨木は倒れた男を恐ろしい目で見下ろすと、聞いた。
「山本さんはどこだ」
男は震えながら、眩しそうな目で茨木を見上げると、笑った。
「笑ってんじゃねえよ!」
茨木は男の胸ぐらを掴んだ。
掴んだ腕が、男の柔らかい胸に触れた。
茨木はその感触に気づき、思わず声を上げた。
「あれっ!!??」 「お……お前、お前、お前……女!?」
「男だよ!」
山本はムキになって言った。
「殺せよ! 殺さねーと、山本サアヤ返してやんねぇぞ!」
「俺……女を殴っちまった……?」
茨木は泣きそうになっている。
「僕は君への恐怖を乗り越えられなかった!」
山本はまるで罵声を浴びせるかのように言った。
「負けて生きるぐらいなら殺されたほうがマシだ! 殺せ!」
そう吠えながら、少し頭を上げると、後ろで結び、結んでいた髪がほどけた。
血で唇が赤く塗られると、そこに山本サアヤの顔が現れた。
「やっ……!?」
茨木は叫んだ。
「山本さん!」 「どうしてこんなバカなことを……?」
茨木は山本を抱き起こしながら、言った。
「君はどうしても僕をバカにするんだな……」
山本は息を切らしながら、言った。
「僕はトップアイドルであり、同時に一流のプロの殺し屋だ!」
「喋らないで。今……」
「サアヤっ!」
中條が姿を現した。
心配で見に来たようだ。
「中條! 救急車を呼んでくれ!」 「認めろ! 茨木敬!」
山本は茨木を睨みつけながら、言った。
「僕を一流の殺し屋だと認めて殺せっ! これ以上僕をバカにするな!」
「あぁ。認めるよ」
茨木は山本の目をまっすぐ見ながら、言った。
「アンタは漢(おとこ)だ」
その言葉を聞くと、山本は穏やかな表情を浮かべ、笑った。
「ありがとう。では、殺してくれ」
「殺さねぇよ」
「なんだと? やはり貴様……」
「バカにしてねぇよ」
茨木は山本の頬をごつい手で撫でた。
「アンタのこと、好きになったんだ。俺の仲間になってくれ」 山本「きゅん!」
茨木「え?」
山本「な、何の音だ?」
茨木「腹減ったんだな? うまい大衆食堂があるんだ。後で食いに行こう」
山本「いいな」
救急車のサイレンが聞こえて来た。 茨木の住むアパートの隣室に入居者がやって来た。
「お世話になります」
山本サアヤがぺこりと挨拶した。
「おしぇわに……なります」
ヤン・ヤーヤが茨木敬から怯えた目を離さず、真似して挨拶した。 山本は剛力組の金で豪華なマンションに住んでいた。
しかし茨木敬殺害に失敗し、逃げるようにマンションを引き払った。
「ここにいれば安全だ。俺が守ってやる」
茨木はそう言って胸を張り、にっこりと笑った。
「これから毎日一緒にごはん食べようね」
中條あやもにっこり笑った。
「おふろぉ、いっちょにはいろぉね、おねえちゃん!」
飛島優太はどんどん幼児退行していた。 薬の話が嘘だったと聞き、茨木はただ残念がった。
「もう一度貫耳を食らわせれば記憶戻るかもしれません。やったことないけど」
そう言う山本のことは止めた。
医者にも診せた。しかしどの先生も匙を投げるばかりだった。
「どうにかして優太を治してやれないものだろうか……」
茨木はそう考えながらも、まぁ、別にこのままでもいいかな? とも思い始めていた。 その夜、廃パチンコ店『OK牧場』の裏に皆で電飾を吊るし、5人でパーティーをやった。
中條「暗黒物質を使って色々な料理を作ったわよ。いっぱい食べてね」
ヤーヤ「わぁ! 見たこともない料理だ」
山本「この世のものとは思えない味だね。美味しいよ」
茨木「中條の料理はいつもながら絶品だな」
優太「ママー。このメロンみたいなキャベツ、おいしいー」
中條「違うわ、ゆーた。それはキャベツみたいなメロンなのよ」 山本「茨木さん、盃を交わしましょう」
茨木「赤ワインでか。まぁ、いいか」
二人は一つの紙コップになみなみと注いだワインを半分ずつ飲み干した。
茨木「これで俺達は兄弟だ」
山本「末永く宜しくお願い致します」 山本とヤーヤがそれぞれのギターを持ち、二人で橋幸夫の『雨の中の二人』を歌った。
聴き終えて皆で拍手する中、茨木が聞いた。
「なぜにその選曲?」
「台湾で有名だ」
ヤーヤが笑顔で答えた。
「お母さんの好き」 「サアヤ」
ヤーヤが言った。
「やっぱり二人でロックバンド組む」
「おっ? やるかい?」
山本は身を乗り出した。
「僕も引退して何かやりたかったところだ」
「すごいな。期待してるぞ」
茨木がワクワクしながら言った。
「バンド名は何にする?」
中條が聞いた。
ヤーヤが即答した。
「ヤーヤバンドでしょ」
山本が即突っ込んだ。
「それは許さん!」
「それ、いいね!」
茨木がヤーヤに賛成した。
「でしょー!?」
ヤーヤは茨木に笑顔を見せた。 山本がソロでONE OK ROCKの『完全感覚ドリーマー』を弾き語った。
キレのいい山本のシャウトに合わせ、優太が子供のようなヘッドバンキングをしながら踊った。
続いてヤーヤがソロで五月天の『OA OA』を弾き語る。
可愛くも強く歌うヤーヤの歌声に、優太が笑顔で首を横に振りながら踊った。
ヤーヤが終えると山本が言った。
「君のはまるで幼稚園児のお遊戯だね」
ヤーヤも負けずに言った。
「サアヤのはかっこつけすぎでカッコ悪い」
「んだと? ゴルァ!!」
「やんのか先輩!!」
「あーあ」
中條が笑いながら言った。
「バンド始める前からもう音楽性の違いで喧嘩しちゃってるよ」 最後に優太がヤーヤのギターを借りて魂の叫びを叫んだ。誰も聞いていなかった。
「山本」
茨木が日本酒を飲みながら、聞いた。
「剛力組はまだ俺を狙って来るだろうか?」
「もう大した兵隊が残っていない」
山本は赤ワインを飲みながら、答えた。
「あとは松浦あやな。それと坂本魔あや……ぐらいだけど、二人とも高島さんやバフュームに比べればヒットマンとして数段落ちる」
「フム」
「鉄砲玉を差し向けるかもしれないが、茨木さんの敵ではないだろう」 「平和になったと見ていいのかな」
茨木はそう言うと、紙コップの中の日本酒をくるくる回した。
「わからない」
山本は言った。
「明日、組長のところへ顔を出しに行こうと思っている」
「何をしに?」
「仕事の失敗の謝罪と……正式に剛力組のヒットマンを辞めさせて貰いに、ね」
「やめろ。極道をバイト先みたいに考えるな。そんなものは要らん」
「組長は優しい人だよ」
山本は赤ワインを飲むと、言った。
「それに礼を尽くしておいたほうが後腐れがないだろ?」 茨木は剛力組組長、剛力あやのという人物をよく知らなかった。
「組長は何よりも礼節を重んじる。きちんと筋を通しておけば、僕も晴れて茨木組の仲間になれるさ」
山本のその言葉を茨木は信じた。
「コラー! 優太うるさい! やめなさい!」
中條が遠くから優太を叱る、優太は魂の叫びを続けている。
「おとうさん」
ヤーヤが茨木の側に来て、腕に触れて来た。
「ケイちゃん、私の日本のおとうさん」
「コラー!」
中條が今度はこちらに声をなげて来た。
「そこ! 何を触れ合っとるかー!?」
「俺の娘だ」
茨木は鼻の下を伸ばしながら、言った。
「親娘でイチャついて何が悪い」 『これだ。これこそ茨木敬の日常だ』
茨木は月を仰ぎ、思った。
『こんな平和で楽しい日々がいつまでも続くといいな』
そして紙コップの日本酒を一口呷った。 翌日、山本サアヤは剛力組の本部屋敷を訪れた。
ビルの一室とかではなく、都会の真ん中に豪華な庭つきの和風家屋が建っている。
山本は開かれた大きな木の門を潜ると、友人宅を訪れたような顔で、組員に導かれて中へ入って行った。 「わかったでおじゃる」
肘掛けつきの座椅子に座った剛力あやの組長は穏やかに言った。
「お前との契約を切るでおじゃる。これからはお前はただのアイドル……」
「アイドルは卒業しましたよ」
山本は姿勢よく正座し、笑顔で言った。
「これからはシンガーソングライターでやって行くつもりです」
「頑張るでおじゃるよ」
「ありがとうございます」
山本は丁寧に頭を下げた。 「ひとつ教えてたもれ」
剛力組長は帰ろうとした山本の背中に声を掛けた。
「茨木敬はそんなに強いでおじゃるか?」
「……強い」
山本の笑顔が消えた。
「強い以上に、恐ろしいです。その得体の知れない恐ろしさが何よりの武器です」
「ほう。お前が恐ろしがるなんてことがあるとは……それは相当でおじゃるね」
「それで攻撃しようとした身体の動きを金縛りのように止められてしまう」
山本はアメリカ人のように大袈裟なジェスチャーで言った。
「あれを殺すのは誰にも無理だ」
「なるほど」
剛力組長は考え込むような顔をして、言った。
「ところで茨木組のヒットマンになって、お前がマロを殺しに来るなどということは……」
「茨木敬は平和を望んでいる」
山本は微笑んだ。
「放っておいてあげてください。あの人は何かされなければ害などない」 帰り道、山本サアヤは自由な空気の中を歩いた。
空はよく晴れていて、風は涼しかった。
ふと可愛らしい店構えのケーキ屋さんが目にとまった。
「あの人、甘いものが好きなんだよな」 「いらっしゃいませ〜」
ケーキ屋に入ると可愛らしい笑顔の女性の店員が、明るく言った。
黒いスーツに身を固めて男装をしているので、入って来たのがDTB48を引退したばかりの山本サアヤだとは気づいていないようだ。
ショーケースの中には目にも楽しい甘そうなお菓子がいっぱい並んでいる。
山本はビターチョコなどには目もくれず、女の子らしい『キラキラ☆フルーツスプラッシュ』という商品に目を止めた。
「あの人、こういうのが好きなんだよな」
顔を上げ、注文しようとしたところで背後の扉が乱暴に開けられた。
「あうっ……! ああおとぉっ!」
そんな声がして、山本が振り向くと、そこに剛力組の兵隊、坂本魔あやが拳銃を構えて立っていた。 避けるのは簡単だった。
しかし、避ければ当たる位置に店員がいた。
店員は、しゃがみ込んでくれればいいものを、山本の後ろで固まってしまっていた。
「ん?」
山本は微笑み、坂本の顔を見つめながら、首を傾げた。
「なぜ?」
そしてゆっくりと店員の前から左へ身体をずらすため、山本が動こうとした瞬間、坂本は発砲した。
「ウキャーッ!」
猿のように咆哮しながら坂本は3発撃った。
銃弾は、山本の頬をかすめ、肩に当り、3発目が新造に命中した。 警察が来た時、坂本魔あやはケーキ屋の床に座り込み、商品のケーキを貪り食っていた。
店員を拳銃で脅し、ショーケースから次々とケーキを出させると貪りつき、コーヒーも出させていた。
その横には綺麗な姿勢で床に倒れ、胸から血を流して死んでいる山本さあやの姿があった。
男装は解かれてあった。
警察の取り調べに坂本は素直に答えた。
自分は山本さあやの熱烈なファンだが、冷たくあしらわれたので殺した、拳銃はネットで手に入れた。
誰の命令でもなく、動機は怨恨だ、自分はヤクザなどではなく一般人だと言い張った。 茨木が病院の霊安室に駆け込むと、中條が泣き崩れ、ヤーヤが茫然と立っていた。
山本サアヤは安らかな顔で死んでいた。
その顔に恐怖の痕跡はまったくなく、ただ少しだけ悔しそうだった。
「誰も死なせねぇって言ったろう……」
茨木は呟くと、主人公のとっけんを使った。
「山本サアヤ、生き返れ」 しかし山本は生き返らなかった。
「クロ!」
茨木は周囲を見回し、言った。
「どういうことだ!?」
あれだけいつも近くどこかにいたクロが、最近は姿を現した消していた。 「捕まった犯人は剛力組のチンピラよ」
中條が涙にびしょ濡れた顔を上げ、言った。
「やはりあの時、止めるべきだった」
茨木が悔しがる。
「私の、好きになった友達、みんな死ぬ……」
ヤーヤは崩れ落ち、その場に座り込んでしまった。 入って来た時から変な客だとは思っていた。何も喋らない。
「お兄さん、どこから?」
「……」
「どんなプレイが好きなの?」
「……」
ソープランド『とびっこランド』は格安店ではない。
むしろ高級店に位置づけられ、やって来る客も変なのはそうそういなかった。
高島あやみは早く終わらせようと思い、早々にベッドに誘った。 正常位で仕事をしていると、客の男が口から血を何か吐き出した。
吐き出したドスを握ると、男は血走った目で高島を見下ろす。
「……っ!」
逃げようとする高島の胸に、客は何度も刃を突き立てた。 ベッドに血まみれで横たわる高島あやみを背に、客はタバコを吸いながら、待った。
まだプレイ終了時間まで時間はあった。
いきなりドアが開き、警官隊が雪崩込んで来た。
「やっぱり隠しカメラ、あったんかい」
そう言いながら客は満足そうに笑った。
「それともこの鏡がマジックミラーか?」 「今日は不発じゃね」
「ショボすぎるわ、こんなん」
「今日はチーズタルトの残飯ないのォ〜?」
バフュームの3人が近未来風の服に身を包み、ポリバケツの残飯を漁っていると、背後の3人の女が立った。
3人は相手に恐怖の広島弁を使わせる暇も与えず、一斉に発砲した。 「剛力組に話つけに要って来る」
茨木敬はそう言いながら靴を履いた。
そして振り返ると、中條あやに厳しく言った。
「いいか? 外には絶対に出るな。誰かきても居留守を使え」
中條は頷いた。
裕太は鉄道のオモチャで遊んでいる。
窓はすべて金属の板で塞いである。
「では行って来る。鍵を頼む」
茨木はそう言うと、扉を開けた。
「夜9時までに戻らなかったら、警察に連絡しろ」 チャイムが鳴った。
「郵便でーす」
「ハイハーイ」
ドアに向かって大声を上げて駆け出した優太を中條は止めた。
ドアの覗き窓を覗くと、いつも郵便を届けてくれるお兄さんの顔が見えた。
「ま、いっか」
中條は二重ロックを解除し、ドアを開けた。
「小包ですよー。ここにサインをお願いします」
サインをし、中條は荷物を受け取った。 荷物はそんなに大きくないが、重かった。
差出人の名前はない。
「お母さんかしら?」
中條は箱を開けた。
「たべものー?」
優太が隣に寄り添う。
「こら優太。ケツ触るな」
そう言いながら箱を開けるとすぐに現れた発泡スチロールの蓋を取る。
時計の音のような、秒刻みのチッチッチッチッという機械音が聞こえて来た。 箱から爆発音がし、ピエロのような顔が飛び出した。
バネの首を揺らしておどけるピエロの口から垂れ幕が降りる。
誕生日おめでとう 敬
「バッ……バッカじゃないの?」
中條は嬉しそうに笑いながら、呆れた。
「配達中に爆発してたらどうなってたのよ、バカ」 「エッ!?」
中條が振り向くと、誰かが倒れていた。
女性だ。自分そっくりの女性だ。
「エッ!?」
彼女はさらに驚愕した。優太が倒れてる人物を揺すりながら自分の名を呼んでいる。
やな予感が頭をよぎる。
「・・・まさか」
中條はびっくりしたショックで心臓が止まってしまったのだ 「ねぇママ、起きてよ!」
優太は中條の死体を揺すっているうちに、なんだか変な気分になってきた。
頭では忘れていても、体が覚えていた。彼は美女の死体に最も興奮するド変態だったのだ。
「ママ! チンコが大きくなりすぎて痛いよ! どうにかしてよ!」 茨木敬は剛力組の本部屋敷の前に立った。
インターフォンを鳴らすと、上品な年輩の女性の声がした。
「はい。どちら様でしょう」
「茨木敬が来たと伝えてくれ」 剛力組長の前にはあっさり通された。
剛力あやのは肘掛付きの座椅子に悠然と座り、茨木を出迎えた。
脇にはボディーガードが二人だけ付いていた。 「茨木敬と申します。……もちろん御存知でしょうが」
茨木はそう言うと、胡座をかいて座った。
茨木にはわかった。
目の前のマロ眉をした初老の女性の強さが。
体中からおどろおどろしいオーラが沸き上がっている。
「して」
剛力組長は口を開いた。
「茨木敬がマロに何用でおじゃる?」
「率直に申し上げます」
茨木は剛力を睨みつけ、言った。
「俺はアンタに刃向かうつもりはない。これ以上俺の周囲に手を出さないで貰いたい」 中條は必死に身体に戻った。
優太がズボンを脱ぎ、パンツを脱ぎ、息を荒くして自分の身体に何かしようとしていたからだ。
身体に戻るなり中條は優太にビンタを食らわせた。
優太は吹っ飛び、泣き出した。 「家の内部の問題でおじゃる」
剛力あやのは澄ました顔で言った。
「おまえが口を出すことではないと思うが?」
「これはまたご冗談を」
茨木は鼻で笑った。
「彼女らは皆、最初は俺を狙って来た。剛力組の狙いがこの俺だということはわかっています」
「それを山本らは裏切ったのじゃ」
剛力組長は扇子で口を隠しながら、言った。
「裏切り者の処理は家の内部問題であろう」
「おい」
茨木はキレかけた自分を何とか制した。
「裏切り……。そうかもしれない。しかし俺はアンタに刃向かうつもりはない、と……」
「しかしマロは引き続き貴様を狙うであろう。その時にそちらの兵力となられてはいささか困る」
「なぜ俺を狙うんです!?」
剛力は呆れたように笑った。
「身に覚えがないとでも言うでおじゃるか?」
「ない!」 「ヒマー!」
優太が駄々をこね出した。
「お外行くー! お外行きたーい!」
「お家で遊びなさい」
中條が優太を叱る。
「不要不急の外出は今は自粛しないとダメなのっ!」
「ぱくぱく亭のソフトクリーム食べたーい! たこやき食べたーい!」
優太は床に仰向けに倒れ、手足をジタバタさせる。
「冷凍食品のずんだ餅で我慢しなさい!」
「やだー! つまんなーい! ぱくぱく亭のソフトクリームとたこやきがいーい!」 「俺はアンタの組とは関わったことすらない」
茨木は剛力組長を睨んだ。
「是非、お聞かせ願おう。俺を狙う理由は一体、何なんだ?」
「知れたこと」
剛力組長はニヤリと笑うと、言った。
「主人公の座でおじゃる」 「なんだと?」
茨木敬は拳を震わせた。
「そんなことで……」
「主人公は素敵じゃ」
剛力あやのはうっとりしながら言った。
「死んだ者を生き返らせ、ここに書かれたことなら、自分のいない場所での出来事でも知ることが出来る」
「貴様……」
「おまえを殺した者が主人公になれるのじゃ。狙われるのは当然の字画があると思っておったが……」
「そんなことで山本達を殺したのかーーっ!?」
茨木は叫んだ。
剛力組長を守る二人のボディーガードがビリビリと震え、金縛りにあったように固まった。 しかし剛力組長は平然として言った。
「そんなこと……とは? おまえは主人公というものをそんなに軽く見ているのでおじゃるか?」
「人の命よりも大切なわけがあるか!」
「ならば」
剛力は欲深そうに笑う。
「マロにそれを譲っておくれませ」 「ああ」
茨木は答えた。
「もっと早く言ってくれてりゃ、いくらでも譲ってやったさ」
「ふむ?」
剛力のマロ眉が困り眉に変わる。
「もう出遅れだ!」
茨木は『気』をぶっ放した。
「俺はてめぇを許さん! てめぇだけには死んでも譲らん!」
二人のボディーガードはそのあまりの気力にたちまち気絶してしまった。
「ほう」
一瞬笑うと、剛力組長も『気』をぶっ放し返した。
「そんじゃあ何か!? 剛力組とてめぇ1人とで戦争ってことでいいんだなぁ!?」 「ぱくぱく亭のソフトクリームとたこやき食べたーい!」
「ダメよ」
「つるっつるの甘ーいバニラソフトクリームとトロットロであっつあつのたこやき食べたーい!」
「ダメだって」
と言いながら、中條の口の中にはヨダレが溢れて来ていた。
「ねー! 行こうよー! ちょっとぐらいなら大丈夫だよー! 近所なんだしさー!」
「……そうね」 襖が勢いよく開き、剛力組の兵隊達が雪崩れ込んで来た。
茨木はぐるりを睨み回しながら声を上げた。
「ザコは引っ込んでろぃっ!」
その希薄に兵隊達が何もされていないのにバタバタと倒れて行く。
「ザコはおまえじゃろが!!」
剛力組長の希薄が襲いかかる。
茨木は倒れそうになるのを必死で堪えていた。 「『希薄』って何じゃい! 『気迫』だろうが!!」
茨木はやり返す。
「アク禁中で会社のスマホ使って書き込みしとんじゃ!」
剛力組長の気迫は茨木を上回った。
「慣れてないんじゃ!! 文句あるなら5ちゃんに言えや!!!」 「わーい」
優太はソフトクリームを手に公園を駆け回った。
「あとでたこやきー」
中條は溜め息を吐きながら、思わず笑いが漏れた。
外の世界は平和だった。
鳩が群れ、猫が呑気にそれを狙っている。
猫が駆け出すと、鳩の群れは飛び散って逃げた。
暗い部屋でびくびくしていたのが馬鹿らしく思えた。
「もっと早く外出すればよかったね」
優太の背中に声をかける中條の肩を誰かが掴んだ。
振り向くと、すぐ目の前に銃口があった。
中條に物も言わせず、それは火を吹いた。 顔が潰れ、血まみれで地面に倒れた中條を松浦あやなは見下ろした。
「お疲れさん。アンタの出番はこれで終わりだよ」
「……ママ?」
優太が振り向いた。
「ママ!!」
「飛島優太……。見かけに騙されてはいけない凄腕のヒツトマン……ね」
松浦は呟いた。
「でも、今はただの子供だわ」
「ママーーあーんあんあん!」
中條の死体にしがみついて泣きじゃくる優太の後頭部に松浦は銃口を向けた。
「悪く思わないでね」
そう言うと、引鉄を引いた。 「なんじゃゴルァ!!!!」
茨木は細大の希薄をぶっ放した。
「笑止千万でおじゃる」
落ち着きを取り戻すと、剛力組長の気迫は倍加した。
茨木は嵐に吹っ飛ばされたように襖を突き破り、外に投げ出された。 足。
引き金を引いた松浦の顔面に優太の踵がめり込む。
「ぶっ!?」
松浦はなにが起きたかも分からず、そのまま後ろに尻餅をついた。 松浦は潰れた鼻を押さえて起き上がる。
「お前…誰だ!?」
目の前には優太が立っていたが、その肌は死体のように白く、先程の人物と同一人物とは思えなかった。
「…」
目の前の人物はニタニタ笑っているようにも、
泣いているようにも見えるが、なにも答えない。
意識がハッキリした松浦は拳銃を拾い、発砲する。銃弾は優太の体に命中し、弾痕を創るものの、みるみるうちに再生した。
松浦は弾切れになるまで発砲を繰り返すも、
なにも変わらない。与えた銃創は再生し、跡形もなく綺麗に消えた。 優太はロボットのように口を開いた。
「アイ・アム・ホワイトゆーた」
松浦は思わず叫んだ。
「キモっ!」 中庭に吹っ飛ばされた茨木は、なぜかこんな時に思い出した。
今日が中條の誕生日だった、と。
『びっくり箱の小包が午前中に届いている筈だが、受け取らなかっただろうな』
「お撃ちなさい」
剛力の命令で兵隊達達が一斉に銃撃して来る。
茨木は防弾チョッキと鋼の肉体でそれを受け止めると、吠えた。
「やかましいぞ雑兵どもがァ!」 気迫の勝負ではザコは倒せても剛力には敵わない。
「仕方ない」
茨木は剛力を殴ることを決意した。
「なんと。か弱い女性のマロに暴力をふるうつもりでおじゃるか?」
「誰が女だ!」
茨木は剛力の気迫をかいくぐり、その胸ぐらを捕まえた。
「てめぇは女と思わねぇ! 飛べ!」 しかし飛ばされたのは茨木のほうだった。
「ふしゅるるる……」
口から白い息を吐きながら、剛力組長の前に、若頭の上戸あやこが剛腕を突き出して立ち塞がっていた。
「何者もこの私には勝てぬ。私よりも強力な♂などおらぬ!」 「化物め」
茨木は上戸を睨む。
「てめぇも女とは思わねぇ! ぶっ飛ばす!」
「ぬかせヒヨッコがーーッ!」
上戸は凄まじいいきおいで突進して来ると、茨木に体当たりを食らわせた。
茨木の岩のような身体が吹っ飛ぶ。 辛うじて持ちこたえると、茨木はタックルの姿勢に入る。
「次はこっちの番だ、化物ババァ!」
「金縛りにあうがよい」
剛力組長の気迫が襲いかかり、茨木はうごきを封じられる。
そこへ上戸の剛腕ストレートが襲いかかる。
上戸はまっすぐ茨木の眉間を狙っていた。 『俺はこんなところで死ねねぇ』
茨木は強く思った。
『中條と所帯を持つんだ! 俺の平和な日常を取り戻すんだ!』
茨木の気迫のレベルが上がった。
「ムウッ!?」
上戸が防御の構えをとる。
「これ……は!?」
「主人公の特権のひとつ!」
剛力組長は嬉しそうに言った。
「『闘いの最中で急激にパワーアップする』じゃな! まさかこんな間近でお目にかかれるとは……!」 上戸「ぬおおおお!!」
剛力「ほお! あの上戸をぶっ飛ばしおるとは……」
茨木「てめえも吹っ飛べ!!!」
剛力「しかし……まだまだ甘い!」 剛力は着物の上をはだけた。
婆のわりには綺麗な乳が露わになる。
くるりと背を向けると、そこに金剛力士の彫り物があった。
その目が赤く光り、口から業火が放たれる。
「死ぬでおじゃる」
茨木は地獄の炎を目の前にして、自分も上着を脱いだ。
「とくと見さらせや!」
ブルーとピンクのパステルカラーで描かれた桜吹雪の刺青が姿を現した。 「なんとかわいいでおじゃる」
剛力は鼻で笑った。
「遠山の金さんのかわいい版でおじゃるな!」
「なめるな」
茨木は低い声を響かせた。
「これが何だかわからんのか!」
「何だ……とは?」
茨木はリクエストに答えてキュピン☆としたポーズを作り、ウィンクをしながら、言った。
「サクラだもんっ☆」 「げええーーッ!?」
上戸が狼狽えた。
「そそそそれはーーッ!?」
茨木の背中の桜吹雪が渦を巻き、その奥から絢爛たる大扉が現れた。
暗い扉の中から何かが湧き出して来る。
統率された足音を響かせ、武装した修羅達が現れ、棍棒を手に剛力組を制圧にかかる。
しかし剛力組長はそれでもひるまなかった。
「それが何でおじゃる」
「な……何っ!?」
さすがに茨木もこれは意外であった。
「これにひるまないとは!?」
「主人公願望の前にはすべてが無力でおじゃる」
剛力組長の金剛力士が巨大化し、茨木の修羅達を薙ぎ倒した。 「ぬがぁ!」
茨木は悲鳴を上げて弾き飛ばされた。
「さぁ、死ぬでおじゃる」
剛力組長の金剛力士が金棒を振り上げ、茨木の脳天めがけて振り下ろした。
骨が砕け、肉の飛び散る音が響き渡った。 「殺ったでおじゃる」
「……クォン」
「クォン……?」 それは不死鳥の声の轟きであった。
茨木は不死鳥となってすぐさま甦り、きんいろの光を放った。
「なっ……なんとっ!?」
さすがの剛力組長もたじろぐ。
「主人公というのは殺されても死なないでおじゃるか!?」 「いや、死ぬ」
そう言いながらいつの間にか後ろに立っていた影に、剛力組長は振り向いた。
「クロ!」
「しかし、物語の中心から外れない限りは、死なない」
「そういうものでおじゃるのか!?」
「ああ」
クロは全裸で腕組みをしながら、言った。
「理不尽な奇跡を味方につけ、いくらでも甦る」 「しかし、今は、アンタに勝つ術がない」
クロは不死鳥を見ながら、言った。
「だから今は、逃げるしかない」
クロが言った通り、不死鳥はその羽根を広げると舞い上がり、逃げはじめた。
金色の炎を降らせて飛んで行く不死鳥茨木敬の姿を、剛力組長は憧れるような眼差しで見送るしかなかった。 「欲しい……」
剛力組長は呟いた。
「あの力が欲しい……」
「そうか」
クロは剛力あやのに命じた。
「なら、次こそは奪い取れ」 茨木敬は意識を失っていた。
気がつくと、自分の部屋にいた。
テーブルの上には自分が中條に送ったびっくり箱が置いてあり、ピエロの顔が微かにびよんびよんと首を振っていた。
優太が遊んでいた鉄道のオモチャが散らかったままだ。
「中條?」
茨木は気配がないことを知りながら、その名を呼んでみた。
「優太!」 隣の部屋を叩いてみたが、ヤーヤもいなかった。
「どこだ?」
茨木は近所を駆け回った。
「どこへ行った!?」 二人が行きそうな場所は限られていた。
茨木はディスカウントスーパーに隣接したおやつショップ『ぱくぱく亭』に息を切らして辿り着くと、店員に聞いた。
「ウチの女房と池沼の息子が来なかったか?」
「あ……」
店員は茨木の顔を見るなり、気の毒そうに言った。
「あっちの公園で……」 公園に着くと、パトカーが何台も停まり、現場は封鎖されていた。
「入れてくれ!」
現場に入ろうとする茨木を警官が止めた。
「ダメです! 関係者以外は……ああっ!?」
警官を投げ飛ばして中へ入ると、顔見知りの速水刑事がいた。
「おお、茨木じゃないか」
歩道にチョークで人間の形が3つ、書いてあった。 警察病院で茨木は3つの遺体と対面した。
一人は知らない女だった。
もう一人は優太だ。胸を何発も拳銃で撃たれ、何かほくそ笑むような顔をして死んでいた。
中條は変わり果てていた。
美しかった顔の真ん中に穴が空き、倒れた時に強打した後頭部がへこみ、自慢の髪も血でべっとりと濡れていた。 「中條」
警官が見ているのも構わず、茨木は主人公の特権を使った。
「生き返れ!」 しかし中條は固い死体のまま、動き出しはしなかった。
茨木は何度も繰り返した。
「中條! 生き返れ!」
「中條っ! 生き返れよ!」
「おい中條! てめぇ! 生き返れっつってんだ!」
「バカかてめぇは! あれほど外に出るなっつったろォが! 責任とれ! いきおいで!」
「中條ォォー……! 生き返ってくれ……」 「なぜだ……」
茨木は中條の胸に突っ伏した。
クロの言ったことが頭に甦る。 クロは言ったのだった。
「物語の根幹に『そいつが死ぬことが必要』とされた場合は、そのキャラは生き返れない」
「例えばな、そいつが死んだことで主人公のお前の怒りに火がつき、お前がパワーアップしたために強敵に勝った、とかの場合だ」 「まさか……」
茨木は怒り狂うほどの憎しみに満ちた目で虚空を睨んだ。
「まさか……。この怒りでパワーアップして剛力に勝てってのか……?」
そしてザクロのようになってしまった中條の顔を両手で抱えると、涙の雨を降らせた。
「馬鹿野郎! そんな物語なら俺はいらねぇ! 俺が欲しいのはお前だけだ! 中條!」
そう言うと、どこが口だかわからない中條の顔にキスをした。 部屋に帰った茨木は仰向けに倒れたまま、じっと動かなかった。動けなかった。
隣室のヤーヤはアイドルの仕事に出ているらしく、相変わらず気配がなかった。
剛力組への怒りよりも、悲しみと、そして作者への怒りが勝っていた。
この物語に乗ることに激しく反抗してやりたい気持ちだった。 ふと床に散らかった鉄道のオモチャを見て、ようやく思い出した。
こっちもたぶん無理だろうと思いつつ、まだやっていなかったので、やってみた。
「優太」
茨木は口にした。
「生き返れ」 しかし、なにも起きなかった。
茨木「…」
優太は死んでいなかった。
正確には何者かが彼の精神を乗っ取り、
死んだふりをしていたのだ。
茨木(生き返れ…!生き返れ…!)
そうとは知らぬ茨木は祈り続ける。 疲れ果てた。
すべてを失ってしまった。
茨木は暗い部屋で、死んだ目をしながら、幸せだった日々のことを思い出していた。
優太はまるで本当の息子のようになっていた。
しかも実年齢の18歳ではなく、5歳ぐらいの。
そいつを二人で育てている気分だった。
籍は入れていなくても既に夫婦のように思えた。
優太が「パパ」「ママ」と呼んでくれるせいもある。
二人の気のいい隣人が自分らを頼りにし、慕ってくれていることもある。
しかし茨木はそれらがもしなかったとしても、中條との日常を、心からかけがえのないものとして感じ始めていた。
顔の美しさなどもうどうでもよかった。
自分に不釣り合いだなどとはもう思っていなかった。
自分の人生を歩いて行くのに、伴侶はもうコイツしか考えられなくなっていた。 「すべて……失くした」
茨木は呟いた。
「……俺も死ぬか」
その時、玄関でチャイムが鳴った。
出る気にもならず放置していると、ドアの鍵がカチャカチャと音を立てて開き、誰かが入って来る。
『……中條?』
茨木が思っていると、入って来たヤーヤが明るく笑顔で振り向いた。
「おとーさん、甘いのケーキ、あるよ。いっしょに食べる!」
その丸顔が、茨木には太陽が入って来たように見えた。 「ヤーヤ!」
茨木は思わず飛び起き、泣き顔で抱きついた。
「フギャーー!?」
ヤーヤはケーキの箱をぺしゃりと落とした。 その後、優太の遺体は安置場から姿を消した
という報が茨木宅に届いた。
茨木「優太は生きていた…いや、誰かが優太の死体を持ち去ったのか…?」 まだ17歳の少女なのに、ヤーヤは人の死を身近で見すぎていた。
まず台湾で、親友のムーリンの目の前で、自分自身が殺された。
親友の父親に、身体を八つ裂きにされて。
茨木敬の『主人公の特権』により日本の地に甦らされ、親友でありライバルでもある山本サアヤと出会った。
しかし彼女は狂ったファンにより射殺された。
そして若すぎるが、日本での母のように慕っていた中條あやがまた殺された。
ヤーヤはそれを茨木の口から聞かされた。 「ヤクザだ」
茨木は言った。
「中條はヤクザだったんだ。組を裏切ったため、同じヤクザに殺されたんだ」
「ヤクザ……」
ヤーヤは愕然としながら聞いた。
「そして今だから言うが、山本はファンに殺されたんじゃない。山本はヤクザのアルバイトをしていたんだ」
「サアヤが……ヤクザ?」
「ああ」
茨木は俯いた。
「そして、すべては俺のせいだ。俺がヤクザに狙われたから、彼女らは……」 「おとーさんは」
ヤーヤは真面目な顔で聞いた。
「けいちゃんは、ヤクザか?」
「そうだ」
茨木は俯いたまま、答えた。
「だが、争いたくはなかった。中條とも山本とも、やり合うつもりはなかった」
ヤーヤは茨木の日本語を理解しているのかいないのか、黙って聞いていた。
茨木は構わず話し続けた。
「俺は彼女らと平和に過ごしたかっただけなんだ。たったそれだけの願いが、なぜ……」
「なら、私も、ヤクザになる!」
「へ?」
茨木は思わず顔を挙げた。
ヤーヤは真剣な顔をしていた。
「お願い、けいちゃん。ヤーヤに教える。人の殺し方」 「バカ言うな!」
茨木は叱る口調で言った。
「お前に話したのは敵討ちをさせるためじゃねぇ!」
「やだ! ヤーヤ、闘う! 闘いたい! サアヤとあやちゃんと、ゆーたのカタキもする!」
ふと茨木は思い出した。
台湾で、ヤーヤは細い身体で自分の巨体を突き飛ばしたことがあった。
中国拳法を習ったことがあるとも聞いた。
仲間が出来れば、剛力組と闘う気にもなるかもしれない━━ 『待て待て……』
茨木は自分の部谷に顔を叩いた。
『17歳の少女だぞ』
「お願い、おとーさん! ヤーヤに教える!」
「変なこと考えるな」
茨木はヤーヤの肩を掴んだ。
「お前はアイドルに専念するんだ」
「1000年もできないよ!」
ヤーヤは首を横に振った。
「それに、こんな気持ちで笑えない。明日アイドルやめる!」
「じゃあ、ひとつだけ、お前に話したのは出来ることをお願いしていいか?」
「なに?」
ヤーヤは身を乗り出した。
「俺をサポートしてくれ」
「さぽ……? あ、support? なにする?」
「笑ってくれ」
茨木は言った。
「お前の笑顔を守るため、俺は闘う気になれる」 「だから!」
ヤーヤはさっき言ったことを聞いてないのかと言わんばかりの剣幕でまくし立てた。
「こんな気持ちで笑えない! 笑えないでしょう!? おとーさんは笑えるの!?」
「わかってるさ」
茨木は言った。
「それを笑うのがアイドルってもんじゃねぇのか? お前の闘いを見せて欲しいんだ。悲しくてやりきれない心を隠して、笑ってみせてくれ」
「いやだ!」
大きな瞳から音を立てる勢いで涙を流すヤーヤを、たまらず茨木は抱き締めた。
「それがお前の闘いだろうが」
茨木も泣きながら、ヤーヤの背中を優しく叩いた。
「お前が頑張ってるのを見たら、俺も頑張れる。敵討ちのことはすべて俺に任せてくれ」 自分の部屋に戻ると、ヤーヤはまっすぐ箪笥に向かい、引き出しを開けた。
知っていた。鍵のついた小箱を開けると、それがそこにあることを。
小箱から山本サアヤの使っていた刃物付きのメリケンサックを取り出すと、ヤーヤは拳にはめた。
「サアヤ、敵はとるよ」
ヤーヤは中国語で呟いた。
「けいちゃんが何と言おうと、私はやる! 台湾のムーリンのためにも、私は強くなるんだ!」
茨木は知らなかった。
主人公の特権により生き返った者は、ある不思議な力を持っていることを。 その時、大きな音とともに部屋は煙と炎に包まれた。
剛力組の襲撃である。剛力組は離反者や敵対者とその身内を徹底的に殲滅することは有名だった。
「ぬわー」
ヤーヤの悲鳴が聞こえた。
「ヤーヤ!」
茨木が叫んだ。
(・・・また、おれは助けられないのか・・・?) ヤーヤはくるくると空中で3回転すると、裸足でアスファルトに降り立った。
敵を見る。
敵は7人の女。
歪んだ顔をして、姿を現したヤーヤを睨みつけている。
武器は……よくわからなかった。知識がなかった。
ヤーヤには『部屋を吹っ飛ばすやつ』としか言えなかった。
恐くはなかった。
身体の奥から何かが湧き上がって来た。
というよりも、身体の中に、何かが、いた。
「たった7人かよ?」
ヤーヤは流暢な日本語で言った。
「私を殺るのにそれじゃ足んねーだろ」
そして顔の前で拳を交差させる。
ヤーヤが『気』を流し込むと、はめているメリケンサックが形を変えはじめる。 「うわっ?」
「なんだあれ!」
剛力組の兵隊達がざわめいた。
ヤーヤの拳から猫のように、ジャキンと音を立てて爪が伸びた。 「あれっ?」
「あれってDTB48のヤンちゃんじゃね?」
女ヤクザ達がざわつき始めた。
「違う」
ヤーヤは否定した。
「私の名前は……貓拳少女ヤンちゃん!」 「文字化けた! やりなおし」
ヤーヤは仕切り直した。
「私の名前は……猫拳少女ヤンちゃんだ!」 しかしそのツメは柔らかく、ゴムのようにびよんびよんしている。 「やっぱりヤンちゃんなんじゃねーか!」
「ファンなんだよ! サインくれや!」
「握手させろやゴルァ!!!」
凶悪そうな顔で迫って来る女ヤクザどもにもヤーヤは怯まなかった。
しかし爪が柔らかい。
こんなもので人は殺せない。
「フッ。これはこうやって使うんだよ」
ヤーヤの口がそう言うと、ヤーヤの手が動いた。
腕を振るとその勢いで爪はさらに長く伸び、それは鞭のように女ヤクザどもに襲いかかった。 長く伸びた爪が当たると、ぶるるんという音がした。
爪に撫でられた女ヤクザはたちまち猫になった。
見た目は人間のままだが、目があどけなく黒目がちになり、口が三口になり、そしてその口が鳴いた。
「みゃお」
「みゃお」
「みゃーん」
「はい、猫ちゃん達、並ぶ」
ヤーヤは猫を一列に並ばせると、言った。
「一匹ずつ、握手する。で、サイン。OK?」
「みゃーん!」
猫達は嬉しそうに鳴いた。 外に駆け出して来た茨木は、それを唖然としながら見ていた。
「なっ……」
茨木は声に出した。
「なんて可愛いんだ!」 ヤーヤの部屋は大破した。
隣の茨木の部屋は奇跡的に無事だった。
狭い部屋の真ん中にカーテンをかけ、その向こうでヤーヤが着替えをしている。
茨木は心を無にし、石になることに努めた。 その夜、茨木は夢を見た。
まずは紺に赤の入った法被を着た一人の男が現れた。
華奢だがバネのように力強いその男は、茨木が若い頃に世話になった迎良 菊二郎親分その人だった。
「何メソメソしてんでィ、敬坊」
菊二郎親分はハッパをかけるように、腕組みをしながら言った。
「泣いてる場合じゃねェだろォが!?」
菊二郎親分が消えると、麦わら帽子を被った一人の少女が現れた。
7歳ぐらいの少女は風の中に立ち、横を向いていた。
顔が見えそうで、見えない。
「あや」
茨木は少女の名前を呼んだ。
「あや……だよな?」
「敬くん」
少女が振り返った。 「中條……」
茨木はその頭を抱き、髪を撫でた。
柔らかくウェーブした長髪が、なんだか短く、お陽様の匂いがした。
目を開けると、カーテンの向こうで優太の布団に寝ている筈のヤーヤの顔が、すぐ目の前にあった。
茨木はヤーヤの頭を撫でていた手をそっと引くと、無言でその寝顔を見つめた。
鼻筋が綺麗に通り、頬がふっくらと丸く、健康的に黒い肌がところどころ赤みを帯びていた。
閉じた瞼の向こうにキラキラとした大きな瞳を想像した。
小さな唇がわずかに開き、寝息を立てていた。
茨木は無意識にその唇に向かって人差し指を伸ばしていた。 いきなり目を開けると、ヤーヤは言った。
「おとーさん」
「……おはよう」
そう言いながら、茨木は伸ばした指をヤーヤの顔の前でゆっくりと回した。
「怖い夢、ヤーヤ見た。タコが、たこやき、食べてた」
「そうか」
茨木はくるくると指を回した。
「この指、なに?」
「……催眠術」 【主な登場人物まとめ】
茨木 敬(イバラキ ケイ)……主人公。「ステゴロの鬼」「不死身の茨木」などの異名を持つ全身傷だらけのヤクザ。
ヤン・ヤーヤ……17歳の台湾人の少女。アイドルグループDTB48の人気メンバー。茨木を『おとーさん』と呼ぶ。
飛島 優太……18歳の若さながら最凶最悪と呼ばれる殺し屋でヤクザ。とんでもないスケベで変態。
剛力あやの……剛力組組長。主人公の座を欲しがり茨木を狙い、茨木の恋人中條あやを殺させた。公家言葉を使う。
上戸あやこ……剛力組若頭。男100人をまとめて吹っ飛ばす剛力の持ち主。 【死亡した人達】
中條あや……茨木の恋人。
山本サアヤ……ヤーヤの親友であり、ライバルだった。
高島あやみ……剛力組のスナイパー。
バフューム……西脇あやや、大本あやよ、樫野あやゆかからなる地獄のテクノポップユニット。
【よくわからない人物】
ヨコヤ……ほぼ名前しかわかっていない。 【謎の人物】
クロ……全身真っ黒でいつも全裸なのに性別すら不明。『主人公』の秘密を握る人物。
ララ……優太の中に入り優太を操っているらしき人物。 「昨日、見たよね?」
ヤーヤは歯磨きをしながら、茨木に言った。
「ヤーヤも闘うの」
「ああ……」
茨木はヤーヤの尻から慌てて目をそらして、言った。
「仲間を集めるぞ」 とりあえず茨木は夢に出て来た迎良(げいら)菊二郎親分を頼るつもりでいた。
「親分ならきっと、力を貸してくれる……」 チャイムが鳴った。
出てみると、ハーフのような美しい顔をしたおばさんがお辞儀をし、言った。
「中條あやの母です」 中條の母、中條かなこは娘の遺骨を引き取りに来たのだと言った。
「そうですか」
かなこは茨木の話を聞くと、言った。
「あの子、私には『女優をやっている』と言ってましたのよ」
「あ」
茨木は口を押さえた。
「まずかったかな」
「いえ。おかしいと思っていましたもの。親が言うのも何ですけれど、あの子の器量でいつまでも
端役をやらせて貰ったという話もないし、何よりあの子の演技力で女優が務まる筈ありませんもの」
茨木は思い出した。
山本が捕まったと自分に嘘をついた時の、中條のひどすぎる演技を。 「そうですか。あの子がヤクザを」
そう言うと、中條かなこは着物の上着を勢いよく捲った。
「ちょ……お母さん!?」
茨木が慌てた。
「わー」
ヤーヤが喜んだ。
中條かなこの晒した背中には、天に昇る蒼い龍の彫り物があった。
「血は争えませんわね」 「それにしても……剛力組とか言いましたか?」
中條かなこは半分据わった目で、言った。
「そんな聞いたこともない、女ばかりだとかいうふざけた組に、舐められたままではおられまへんどすえ」
「ど、どすえ?」
茨木がたじろぐ。
「どっすえー!」
ヤーヤが喜ぶ。
「天下の緒方組組長未亡人の娘に手ェ出しよったらどないなるか、教えてやらなあきまへんなッ!!!!」
中條かなこは鬼子母神のごとき顔で言った。 とりあえずみんな腹ペコだったので、飯を食いに3人で街へ出た。
「何食べたい?」
「パンケーキ」
「パンケーキが食したいどす」
「俺もパンケーキだ。……俺達、息が合ってるな」
一発で意見が一致し、喫茶店に入ることになった。 喫茶店に入ると、奥の席に見慣れた顔があった。
グレーのジャンパーを着て、男装した山本サアヤがパンケーキを食べていた。
「さ、サアヤっ!?」
ヤーヤが思わず大声を出すと、山本サアヤは振り向き、気だるそうに笑いながら、言った。
「ヤンちゃんじゃないか」 「山本……!? お前、生きてたのか!」
茨木も驚いて駆け寄る。
「待つ!」
ヤーヤが『待って!』のつもりで言った。
「サアヤちがう」
「山本サクヤと言います」
グレーのジャンパーを着た男は、弱々しく笑うと、自己紹介した。
「山本サアヤの弟です。姉の遺骨を引き取りに引き取りに昨日、山形から出て来ました。」 「これで四人か」
一気に仲間が増え、茨木は喜んだ。
「出来れば、七人は欲しいな」 茨木は優太の父親に電話してみることを思いついた。
優太の父親は暴力団飛島組の組長である。力を貸してくれるかもしれない。
電話口に出た女性に事情を話すと、飛島組にはまだ優太の死亡が伝わっていないようだった。
取り次いで貰うと、飛島組長はひどく取り乱した様子ですぐに電話に出た。
「む、息子が殺されたというのは本当か!?」 茨木は自分の素性とご子息との関係を告げると、剛力組のことを話した。
茨木の話を聞きながら、飛島組長が悲嘆に暮れているのがわかった。
「心中お察しします」
「あああ……なんということだ」
飛島組長の声は涙に湿っていた。
「飛島組長。息子さんの敵を一緒にとりましょう!」
「うむ。その剛力組とかいう奴ら、許せん!」
「では……! お力を……」
「正太の敵、必ずや!」
「え。なんて?」 「正太が殺されたのだろう?」
「いえ、優太くんです」
「優太? ……ああ! なんだ!」
飛島組長は安堵の声を漏らした。
「優太なのか。優太が殺されたのか……ああ、よかった」
「よ、よかった?」 「私の息子は長男の正太だけです」
飛島組長は嬉しそうに笑いながら、言った。
「二男の優太というのが確かにおりましたが……」
「は、はぁ……」
「アイツは未成年の分際でフロ屋の経営に手を出したり、兄弟分の娘を強姦したり、親を危険な目に遭わせてくれてばかりなので縁を切りました」
「……はぁ」
「茨木さんと言いましたか。ウチでアイツの葬式を出すつもりはありませんし、ましてや敵をとるつもりなどみじんもござんせん」
「そうなんですか……」
「ご面倒をかけますが、死体の処理はそちらに任せます。海にでも放り投げてやってくだせぇ」 「ヤッター! 優太が死んだー!」
と言いながら、飛島組長は電話を切った。
茨木は呟いた。
「だめだこりゃ」 茨木はやはり迎良菊二郎親分を頼ることにした。
「よく来たな、敬」
菊二郎親分は茨木を迎え入れると、笑った。
10年ぶりくらいに会うのだろうか、黒々としていた髪はゴマ塩のように白髪が混じっていた。 「わかった」
菊二郎は話を聞くと、すぐに言った。
「力を貸そう」
「ありがてぇ!」
茨木が顔を明るくする。
「ただ、その代わりといっちゃ何だが、こちらにもちと力を貸しちゃくんねぇかな」
「どうしたんです?」
「近々、恒例の『極道大運動会』があるんだが……」 極道大運動会とは、文字通りヤクザばかりの運動会である。
ただし、それはただの運動会ではない。
その勝敗によって、それぞれの組の覇権やシマの大きさが決まってしまうのだ。
いわばそれは無血の抗争とも言えるものだった。
いや、実際には競技がエスカレートしすぎて殺し合いとなることもよくあった。 「ウチの組員はジジイばっかりになっちまってな」
菊二郎親分は打ち明けた。
「平均年齢が70歳を超えてる。これでイキのいい敵の若いモンに立ち向かうのは正直、辛ぇ……」
「はぁ……」
茨木はもちろんそのことに気づいたが、敢えて何も言わなかった。
「力を貸してくんねぇか」
茨木の組は訳あって毎年運動会には不参加だった。
そのことを知っていて、菊二郎は茨木に助っ人を申し出たのである。 「わかりました」
茨木は即答した。
「力を貸しましょう」
「ありがてぇ!」
菊二郎は両手を前で打って感謝した。
「じゃ、早速、練習だ!」
これでもし運動会でいい成績を残しても、茨木には恐らく何の得もなかった。
迎良組にジジイしかいないのなら、剛力組と争うのに力を貸して貰ったところで、ほぼ役に立ちそうになかった。
しかし茨木は菊二郎親分に返しても返しきれない恩義があった。 一方、剛力組では、茨木敬の抹殺を一旦中止して、極道大運動会の練習にみんなで励んでいた。
「今年こそ優勝して、シマを大幅に拡大し、組の知名度をぶち上げるでおじゃる!」
剛力組長の檄に組員達はハイテンションなシャウトで答えた。
しかし剛力組は山本サアヤはじめ力のある選手を茨木との闘いで多く失っていた。
「助っ人を雇うでおじゃる」
剛力組長は組の中でも中條あやに次ぐ美人と評判の藤あやみに命じた。
「強い男をお前の色気でたぶらかし、ウチの選手にするでおじゃる」 「お任せあれ」
藤あやみは40歳女の色気をプンプン漂わせながら、言った。
「私の艶歌とこぶしで必ずや」 剛力組が美熟女を使って他の組から次々と主力選手を引き抜いている、という噂は、迎良組にも伝わっていた。
「ウチにも来ねェかな」
「どんな美人か一目見てェな」
迎良組の組員達は口々に噂したが、ジジイばかりの迎良組は完全に無視されていた。 「剛力組め。相変わらず汚ぇ手を使いやがる」
茨木敬はタマ入れの練習に励みながら、舌打ちした。
「奴らにだけは絶対に負けねぇぞ。お前らの根性見せてくれ」
「おー」
ヤーヤが拳を挙げた。
「はい」
中條母がおしとやかに言った。
「……」
山本弟は何も言わずにスマホを見ていた。 「ククク」
ヨコヤが現れた。
選手として使って欲しそうだ。
しかし茨木達は誰も気づかずに、それぞれに練習をしたりスマホを見たりしていた。 「ウフフ」
藤あやみは他の組の屈強な男をまた1人虜にし、助っ人契約を結んで帰るところだった。
「私の魅力、歳を重ねてさらに増したようね」
ふと公園のベンチに座っている男が気になった。
ヨレヨレの白いスーツを着て、やる気などまったくなさそうにだらしなく座っているが、
只者でないことは藤には容易にわかった。 「あの子……素敵」
藤は舌なめずりをした。
「きっと名のある選手だわ。私の魅力で虜にしてやろうっと」
「もし」
藤が声を掛けると、死人のような顔をした男は顔を上げた。
「あなたのお名前、聞かせてもらってもいいかしら?」
藤がそう言うと、男は名乗った。
「とびしま……とびしまゆーた」 肉を打つ音が部屋にこだましていた。
藤あやみの尻の穴が丸見えになっていた。
その下で滅茶苦茶に濡れた裂け目に激しく出入りしている自分の肉棒を、優太は見つめた。
「こっ……こんな!」
藤あやみは悔しそうに歯を食い縛った。
「こんな若僧に……!」
自分が虜にする筈だった。
今、自分が虜にされようとしている。 藤あやみを後ろから突き上げながら、優太の顔にどんどん生気が戻って来る。
「アハハッ」
優太は殻を破るように笑った。
「そーだったよ、俺はこうやって女をいたぶるのが喧嘩と同じぐらい好きだった」
腕を広げ、胸を張りながら腰を動かす。
さらに励み強くなった律動に、藤は碑銘を上げた。
真っ白で新鮮なザーメンを大量に膣内に発射すると、飛島優太は言った。
「おれさま、完全ふっかーつ!」 「おばさん、なかなか締まり、よかったよ」
そう言いながら、優太はズボンのベルトを締めると、ホテルの部屋を出て行った。
「じゃあね」
「ま……待って」
藤あやみは完全に依存性にされていた。
「おばさんって呼ばないで……。行かないでェッ!」 背が低く気味の悪い男が言った。
「ぷきょきょ……。ここは40年も使われず、ほったらかしになってますてにぃ……」
聞き取りにくい方言まじりの言葉だった。
「なぜ、そんなにも長い間、誰も使わなかったんだ?」
痩身片眼の男が聞いた。
「変なモンでも出るのか?」
「部屋が拒否しておりますてにぃ……」
背の低い男は何やら嬉しそうに言った。
「あんた方のような連中に使われるのを待っておったんですて」
「部屋がか?」
片眼の男は思わず失笑した。
「馬鹿馬鹿しい!」
「いや」
飛島優太は片眼の男をたしなめた。
「俺達にはそれほどの価値があるのさ」
「そうですて」
背の低い男が優しい笑顔を見せた。
「これはきっと、運命ですてにぃ……」 古いビルのいわくのありそうな部屋だったが、優太はここを気に入り、借りることに決めた。
「昭和の匂いがするわ」
藤あやみが言った。
「もっとムードのある綺麗なところがよかったなぁ」
「俺がいればどこでも楽園っしょ」
優太が陽気に言う。
「ん……。そうね」
藤は優太の肩に抱きつくと、笑顔を見せた。
「これからここで……始まるのね」
「おうよ。新飛島組の立ち上げじゃ」
優太は拳を握り、藤あやみが引き連れて来た男達に言った。
「俺が初代組長飛島優太だ! 文句のある野郎はいるか?」 「誰も文句などございませんよ」
片眼の男が代表して言った。
「飛島さんは若いが、ここの誰よりも力があり、そして金があるということはもう皆存分に思い知ってるんでね」
「まぁ、それでも俺1人だったら『こんな若僧に偉そうな口利かれてたまるか』みたいな奴、多かったろうね」
優太は片眼の男に言った。
「本多さんが若頭引き受けてくれたおかげだよ」
「いえいえ」
本多は照れ臭そうに鼻の下をさすった。
「坊っちゃんのことは飛島組にいた時から、何かでかいことをおやりになる方だと思ってましたからね」 「とりあえず今度の極道大運動会で優勝すれば……」
藤あやみがウフフと笑いながら言った。
「一気に広大なシマをゲット。組の知名度もいきなり天下に轟くわ」
「それを充分可能にするだけの戦力がここにある」
優太は藤あやみがたぶらかして引き抜いた各組の猛者どもを目の前に、言った。
「おばさんにも大感謝だ」
「『おばさん』はやめてぇ」
藤あやみは泣きそうな顔をして優太に抱きついた。 「なんと」
剛力組長はマロ眉の下の小さな目を見開いて、言った。
「藤が裏切ったとな?」
報告を届けた組員の若尾あやせは言いにくそうに言った。
「若い男の肉体に虜になり……その男とともに新しい組を立ち上げたらしく……」
「どんな肉体だーーッ!」
若頭の上戸が暴れた。
「あの藤を逆に虜にするほどの肉体ってどんなだァーーッ!?」
「では……引き抜いた精鋭達はそいつに全員取られたということでおじゃるか……」
剛力組長は暫く考え、言った。
「仕方ない。面倒ではあるが、マロと上戸も出場するでおじゃる」 「私どもが出場するのですか!!!!」
上戸はびっくりして言った。
「死人が続出しますぞ!!!??」
「仕方がないでおじゃろう」
剛力組長は頬をポリポリ掻きながら言った。
「他にろくな戦力が残っておらぬでのう……。マロ達二人だけで軽〜く優勝するしかあるまい?」
「では、本気を出してもよいのですなッ!!??」
「おじゃる」
剛力組長は仕方なさそうに頷いた。
「敵の選手が死体の山となるのは気の毒ではあるがのう……ホッホッホ」 かくして極道大運動会が始まった。
場所は関ヶ原古戦場跡を勝手に借りて行われた。 茨木が帰国してまもなくこの国の秩序は崩壊した。
理由は謎の集団失踪事件が多発し、それに合わせ地殻変動により既存のインフラも壊滅したからである。
極道大運動会・・・この戦いを制した者が日本の新たな支配者となるのだ! 選手宣誓を務めるのは花山組直系の若月組が誇るフレッシュな新人、なかやまくんだ。 なかやまくん「宣誓! 我々は極道精神に則り、正々堂々などとは言わず、相手の弱みにつけこみ、
水面下で工作を図り、利益の見込める相手にはへつらい、仁義を通し、血みどろの権力抗争に努めることを誓うぞゴルァ!!!!」 その時、運動会会場は大雨に襲われた。
「うわっ」
「中止だーっ中止ーっ」
豪雨と激しい落雷に浮き足立つヤクザたちの耳になかやまくんの宣誓は届かなかった。 「むむうぅ」
剛力あやの組長は大きな蕗の葉で雨を避けながら、それでもびしょ濡れになりながら言った。
「マロは殺る気マンマンであったのに……。なんとかならぬか? クロ」
「大丈夫」
クロは豪雨を物ともせぬ全裸で言った。
「ここには主人公が来てる。主人公の特権その四が発動するさ」 「ふぅ……」
迎良菊二郎親分は威厳のある表情を保ちながらも、明らかに絶望の籠る溜め息を吐いた。
「……これでウチの組は終わりだな」
迎良組の老組員達も口々に絶望の言葉を漏らした。
「あぁ……。この大運動会に賭けてたのに……」
「さすがワシら、賭け事にも最弱じゃのう……」
「これでいい成績を残す以外、生き残る道はなかったのに……」
「もはや若い新兵力を募る道は閉ざされ、老いとともに潰れ往くしかあんめぇ」
菊二郎親分は眩しそうに暗い空を見上げた。
「ま、これも運命だ」 茨木敬はそんな親分の横顔を見つめた。
何がなんでもこの人を助けたかった。
半ばヤケクソで天に向かって怒号した。
「止まんと殺すぞ、このクソ雨が!」
晴れた。 「発動したようだ」
クロが笑った。
「主人公の特権その四『決戦の日はいつも都合のいい天気』が」
「素晴らしい」
剛力組長はうっとりと晴れた空を仰いだ。
「茨木が参加しているとは……。是非とも殺してこの力を奪い取るでおじゃる」 極道大運動会が始まった。
参加組は全国から選りすぐられた33組。
これから行われる緒戦の種目の結果により、あっという間に4組まで絞られる。 まずはパンチパーマ早がけ競争が行われた。
元々パンチパーマをきつくかけている者ほど有利だ。
スキンヘッドに勝ち目はない。
そして女ばかりの剛力組にも不利なように思われたが、ショートカットの女組員達が組長の命令によって駆り出され、
髪は女の命、パンチパーマなんぞにしてたまるかと泣き叫びながらも、見事なパンチパーマに仕上げられて行った。
茨木が助っ人を務める迎良組は、髪の薄い老人達がその持ち前の髪量の少なさを活かし、
凄まじいスピードで格好悪い白黒まだらのパンチパーマを作って行った。
「見た目がナンボのもんじゃ! 速けりゃいいんじゃ!」 注目を集めたのは興ったばかりの新勢力、新飛島組であった。
元々気合いの入ったパンチパーマをもつ精鋭の組員達が、一旦ほどいて80年代ヴィジュアル系みたいになった髪を、
神業のごとき速さで元に戻し、観客の喝采をさらった。
「マロより目立つとは赦せんでおじゃる」
剛力組長は自ら競技に出場しながら妬ましい視線を送った。
「新飛島組だと?」
本家飛島組組長は苛立ちながら呟いた。
「まさか……優太か!?」
「おいおい」
茨木敬は嬉し涙を浮かべながら、言った。
「生きてたのかよ。でも容赦はしないぞ」 次いで『頭突きで氷柱割り』が行われた。
ヤクザとあまり関係なさそうながら、頭の固さ地面の各組組員が喜んで前へ出た。
しかし二人の選手があまりにも突出しており、他は霞んでしまった。
「おりゃ!」
茨木は11個目の氷柱を頭突きで割ると、吠えた。
「次! 持って来いやぁ!」
「ガハハハハハ!!」
剛力組若頭、上戸あやこは12個目の氷柱を頭突きで粉砕すると、豪快に笑った。
「ワシに勝てる♂などおらんのじゃあああ!!!」 薬物ハードル(次の段階)競争。
これは参加者が少なかった。
これに参加すると後の種目で使いものににならなくなるからだ。
各組でも一番下っ端の者が駆り出され、次々と廃人になって行った。
「やらないの?」
藤あやみが優太に聞いた。
「あなた、好きでしょ?」
「俺は酒とマリファナぐらいしかやらないからなぁ」
優太は悔しそうに頭を掻いた。 匕首リンゴ剥き競争。
これは剛力組が完全有利だった。
得物を人殺しにしか使ったことのない男達に対し、剛力組の女組員達は家事も心得ていた。
「バカね。リンゴのほうを回すのよ」
女組員は刃物のほうを動かして剥こうと苦戦する男達を蔑むように笑いながら、くるくると剥き、クリアーして行った。 小麦粉リレー。
純度の高い小麦粉をバトンのように手渡しながらリレーして行く。
これには迎良組の助っ人、中條母が特別な才能を発揮した。
「緒方組組長夫人だった頃は、毎日こればかりしていましたもの」
着物の袖を揺らしながら、鮮やかな手つきで小麦粉を捌いて行くその姿に観衆は見惚れた。 ヤクザとカタギの二人三脚。
債務の滞っている一般人が泣き顔でヤクザと肩を汲んで走らされた。
「ううっ……! く、屈辱っ!」
カイジも泣き顔で、しかし全力で走った。
ここまでで参加33組は篩に掛けられ、ベストエイトまで絞られていた。
「楽勝でおじゃる」
剛力組長は扇子で顔を扇いだ。
「みんなのおかげだ」
飛島優太は藤あやみの尻を触りながら言った。
「ここまで来れたな」
茨木敬は笑顔で言った。
「こうなったら狙うは優勝だ」
「め、めっそうもねぇだ」
迎良組の老組員達は首を横に振った。
「これで充分だ。これ以上は望まねぇだ」
「てめぇらッ!」
迎良菊二郎親分がハッパをかける。
「どうせやるなら天下を取ろうぜ、死に損ないども!」 「でっ……でも……」
老組員達は及び腰だ。
「ここからは流血の抗争種目ばかりになるだ」
「さて、虐殺するでおじゃる」
剛力組長が目を光らせながら、着物を脱いだ。
「さて俺もそろそろ出るかな」
飛島優太が革靴を磨きながら、言った。
「殺さん程度に暴れるぞ」
茨木敬が拳を鳴らす。
「私も出るね」
ヤン・ヤーヤがメリケンサックを拳にはめた。
「やりたいな……」
山本サアヤの弟、サクヤが物憂げにやる気を見せた。
「殺してもいいんですよね……?」 山本サアヤを射殺した剛力組の坂本魔あやは、剛力組長の権力により、あっという間に釈放されていた。
山本を仕留めた褒美として、組から毎日豪華なケーキを支給され、豚のように太っていた。
「私はこの可愛い声が命なんだよ!!!」
坂本は吠えた。
「体型なんぞ豚で構わんのじゃ! 豚でも出来る競技寄越せやゴルァ!!!」
剛力組長は坂本に命じた。
「ではロシアンルーレットに出よ」 坂本魔あやは対戦相手の顔を見て、愕然とした。
「やっ……山本サアヤ!?」
山本サクヤは気怠そうに笑った。
「やぁ。君に殺されたけど、地獄から戻って来たよ」
「ヒッ……ヒィッ!?」 「弾は運営に頼んで実弾に替えさせてもらった」
山本サクヤはうっすらと微笑むと、言った。
「相手が君じゃないとやる気が出ない。さっさとやろう」
そう言うとリボルバー式拳銃の弾倉を回転させ、自分のこめかみに押し当てると、さっさと引鉄を引いた。
「チェッ……。外れだ。次は君の番。さぁ、どうぞ」 「ウッ……ウヒィッ!」
坂本魔あやはたじろいだ。
「べ、ペイント弾でやるのがルールだろ? こんなキチガイみたいなこと、誰がやるかよっ!」
「あれ? 僕はもうやっちゃったけど?」
サクヤは面倒臭そうに言った。
「じゃあ僕、あれで死んでたらバカみたいだったじゃないか」
「変えろ! 弾を変えろ! 運営ッ!」
喚く坂本のこめかみにサクヤは銃口を突きつけると、引いた。
撃鉄の音だけが響いた。
「根性なさそうだったから僕が代わりに引鉄引いてあげたよ」
サクヤはうっすらと微笑んだ。
「おめでとう。弾は出なかったね」 そしてすぐに自分のこめかみに銃口を当て、躊躇なく引鉄を引いた。
「チェッ。また外れだ。お姉さん、どうぞ」
「幽霊なのか?」
坂本は震えながら聞いた。
「幽霊だったら弾が出ても死なねぇだろ! 不公平だ!」
「地獄から戻って来たって言ったでしょ? お姉さんと同じ生身だよ」
サクヤは冷たい目で睨むと、言った。
「自分で引けないの? なら、また僕が引いてあげる」 「やっ……やめろーーっ!」
抵抗する坂本を押さえつけ、サクヤは引鉄を引いた。
銃声は起こらなかった。
「おめでとう。これで4回目で弾は6発だから、次かその次でどちらかが死ぬね」
「山本……っ! 貴様……! 貴様ぁっ!」
坂本は恨むように言うと、一転、許しを乞いはじめる。
「すみませんでした! 私が悪かった! 許してくださあいっ!」 「タネ明かしをしよう。僕は君が殺した山本サアヤの弟だ」
サクヤは拳銃を指でくるくる回しながら、言った。
「姉貴とはそれほど仲がよかったわけじゃない。カタキ討ちだなんてするつもりはない」
「なんだ、弟かよ」
坂本は安心したように笑った。
「仕事でやっただけだ。私を恨むのは本当、お門違いだよ」
「でもね」
サクヤは銃口を自分のこめかみに当てると、言った。
「姉貴は誠実に夢を追い、そのために人の知らない努力を重ねてた。そんな命を途中で他人が折ることは……」
サクヤは引鉄を引いた。
弾は出なかった。
「僕の正義が許さない」 「さ、君の番だよ」
サクヤは坂本に拳銃を手渡した。
「次は確実だね」
「ど、どうせ弾は入ってないってオチだろ!?」
坂本はバカにするように笑う。
「撃ってみればわかるよ。でも弾が入るないんじゃ競技にならないんじゃない?」
「う……」
「さ、早く。最後だけは自分で引鉄を引いてね」
「うう……」
「根性見せてよ、お姉さん」
サクヤは冷たい目で坂本を見つめた。
「うわーーーっ!」
坂本は引鉄を引いた。
自分のこめかみではなく、山本サクヤを狙って。 銃声が轟いた。
発射されたのが実弾であることを示す硝煙が銃口からたなびく。
山本サクヤは無言で立っていた。
「僕と姉貴は似た者姉弟でね」
サクヤは表情を変えずに言った。
「怖いものがないんだ。だからか、死神も僕を避けて通る」
銃弾はサクヤの身体を外れ、後ろでペイント弾を使って競技をしていた若月組のヤクザの肩に当たっていた。
「お姉さんの射撃の腕がヘタクソすぎるだけかもしれないけどね」
「撃ちよったんは誰じゃあッ!」
若月組の戦闘員が駆けて来ると、坂本魔あやに銃を突きつけた。
「お前か、デブ女!!」 坂本魔あやはルール違反により失格。若月組の事務所へ連れて行かれた。 次いで障害物競争が行われた。
ゴールはもちろん敵の親分、障害物となるのはその組のボディーガードである。
ただしどこの組も親分には影武者を立てた。
「いや。ウチは本物の俺が立つ」
迎良菊二郎親分が言った。
「親分! こんなんでタマとられたら洒落になりませんだ!」
「オラが代わりにゴールに立つだ! 親分は安全なところで……」
「バッカ野郎ッ!」
菊二郎親分が怒号した。
「お前らの誰が殺されても困るだろうがッ! 一番殺されそうにない俺に任せやがれ!」 「ところでウチの選手はそいつらで大丈夫なのかい?」
菊二郎親分は茨木に聞いた。
「女二人とはよ」
「俺が出たいところだが、俺は足が遅いんだ」
茨木は答えた。
「それにコイツらに任せれば安心だ」
「まーかせなさい」
ヤーヤが胸を叩いた。
「するりとゴールへ辿り着いてみせるどす」
中條母の目が静かに燃えていた。 対戦相手は京都の埜武謙組。
中條母の夫を暗殺し、京都の覇権を奪った憎むべき相手であった。
「修羅の道 血の花咲かせて みせましょう」
そう詠いながら、中條母は匕首を抜いた。 埜武謙組のランナー二人は易々と障害物を排除しながら走った。
カタギだったなら間違いなくいたわられる立場だった老用心棒達は、紙のように吹っ飛ばされて行った。
「なんだ、この組。楽勝だぜ」
「ウンコしながらでも勝てるよな」
バカにしながらゴールを間近にした埜武謙組ランナー二人の前に、茨木敬が立ち塞がった。 「アイツ倒せばゴールだぜ!」
駆け寄る埜武謙組ランナー達に茨木は焦りながら言った。
「ちょっと待て! 今、ご覧の通り、立ち小便中だ!」 「イチバンとるぞっ、イエーイ!」
そう言いながらヤーヤが駆け出した。
「後ろは任せておくれやす」
中條母がそれに続く。 屈強な埜武謙組の用心棒どもをヤーヤのカギ爪(ゴム製)が次々と猫にして行く。
中條母が神速の手捌きでそれにマタタビを与え、あっという間に倒して行った。
中條母「おまえらに怨みはない。私がとりたいのはただ1人、組長の埜武羅 謙次郎の首ぜよっ!」 「おいおい、コイツ、戦いの最中に立ち小便してるぜ」
「コイツもウンコしながらでも勝てそうだな」
バカにしながら襲いかかって来るチンピラ二人に、茨木はぶっといチンポを向けると、気迫をぶっ放した。
「立ち小便中だって言ってるだろうが!!」
「ぐわあぁあっ!?」
チンピラ二人は吹っ飛んだ。 優太率いる新飛島組の相手は本家飛島組だった。
選手として出場した優太は、楽々障害物を乗り越えると、ゴールに辿り着いた。
「誰だ、アンタ?」
「ぼぼぼぼぼくは知りましぇ〜ん!」
ゴールにいたのは組長である父親ではなく、油ぎった髪の長いオッサンだった。
「親父、どこよ?」
「しししし知りまっしぇ〜ん!」
「……まぁ、どーでもいいけどよ」
優太はオッサンをぶっ飛ばすと、くるりと背を向けた。
「これで俺達の勝ちだ。新飛島組改め、ウチが本家飛島組の看板、貰うぜ?」 『いい子にしてるから』
クリスマスイブのこと。
「今年もぼうやにサンタさんは来てくれるかな」
「ぼく、いい子にしてるから。きっとサンタさんはきてくれるんだ」
ある親子がそんなやり取りをしていた。
その晩、日付は変わってクリスマス。
ぼうやの部屋に、煙とともにサンタが現れた。
サンタはそっと、プレゼントを置こうとした。
「困ります。本物のサンタが来てプレゼントを置いていくなんて」
サンタが驚くと、すやすや眠っていたはずのぼうやがこちらを見ている。
「親はサンタを信じていないから、クリスマスプレゼントを用意するんです。
全員がサンタを信じたら、親はプレゼントを用意しなくなってしまう」
見つかってしまった。この子もサンタを初めて見たはずだが、その反応は非常に乏しかった。
最近のこどもたちに、増えているタイプだ。
「ぼくたちこどもはサンタを信じているふりを長く続けて、一回でも多くプレゼントをもらいたいんです」
「去年来てくれなかった本物が、来年も来てくれるでしょうか。本物に気まぐれで
クリスマスにプレゼントを配られると、長い目で見て損になるかもしれないんです」
「ですから、ぼくたちこどもとしては、26日の夜にでも配ってもらえると助かります」
サンタは何も言えず、プレゼントとともに煙と消えた。 「さ、君の番だよ」
サクヤは坂本に拳銃を手渡した。
「次は確実だね」
「ど、どうせ弾は入ってないってオチだろ!?」
坂本はバカにするように笑う。
「撃ってみればわかるよ。でも弾が入るないんじゃ競技にならないんじゃない?」
「う……」
「さ、早く。最後だけは自分で引鉄を引いてね」
「うう……」
「根性見せてよ、お姉さん」
サクヤは冷たい目で坂本を見つめた。
「うわーーーっ!」
坂本は引鉄を引いた。
自分のこめかみではなく、山本サクヤを狙って。 >>537書き直し
銃声が轟いた。
銃口から白い硝煙がたなびく。
それは物語っていた、発射されたのが紛れもなく実弾であることを。
山本サクヤは無表情で立っていた。
「お姉さん」
怠そうに口を開くと、サクヤは言った。
「銃、ヘタだね」
銃弾はサクヤの左頬をかすめ、後ろでペイント弾を使って競技をしていた若月組のヤクザの肩に当たっていた。
「姉貴のこともそんな風に撃ったの?」
坂本とサクヤの距離は約3m。姉のサアヤを射殺した時とほぼ同じ距離だった。
「3発撃ってようやく当たったらしいよね?」
「撃ちよったんは誰じゃあッ!」
若月組の戦闘員が駆けて来ると、坂本魔あやに銃を突きつけた。
「お前か、デブ女!!」
「な、なななんで……!?」
坂本魔あやは若月組に連行されながら、サクヤに向かって叫んだ。
「なんでお前、躊躇なく引鉄を引けた!?」
「僕と姉貴は似た者姉弟でね」
サクヤは左頬の傷から血をとり、舐めると、言った。
「怖いものがないんだ。だからか、死神も僕を避けて通る」 ヤーヤと中條母は簡単にゴールに辿り着くと、影武者の首をポコンと叩き、猫にした。
「オルァ!! ノムケン、出てこんかいッ!」
中條母は悔しさに吠えた。
「越戸のカタキ、取らせんかいッ!」 遂に出場組はベスト4に絞られた。
若月組(日本最大暴力団花山組直系)
剛力組(女ばかりによる新興勢力)
新飛島組(指定暴力団飛島組を乗っ取った)
迎良組(最弱の老人暴力団) 準決勝の種目は騎馬戦である。
勿論上半身裸、流血上等だ。
競技は2組ずつのタイマンで行われ、対戦相手を決めるためのくじ引きが行われた。 「チッ。女かよ」
くじを引き、剛力組との対戦が決まった若月組の幹部は言った。
「手加減なんか出来ねェけど、いいかな、婆さん?」
「敵にとって不足ないでおじゃる」
剛力あやの組長が無表情に言った。
「大きな組織を喰うことで、マロ達の名は天下に轟くでおじゃろう」 自動的に新飛島組と迎良組の対戦が決まった。
「優太」
茨木が飛島優太組長に歩み寄る。
「おお、オッサン。おひさ〜」
優太は笑いながら、偉そうに腕を組んだ。
「握手とかはできねーぜ? 俺様、偉くなったんだからな! 握手したけりゃ五千万用意せぇや」
「お前……」
茨木はそれには答えず、聞いた。
「中條が殺された時、お前、側にいたんだよな?」 優太の顔色が変わった。
「あやちゃん……殺されたの!?」
「……そうか」
茨木は拳を下ろした。
「あの時のお前は……お前じゃなかったもんな」
「ちょっと待てよ! あやちゃん、どうして……!?」
「後で話す」
そう言うと、茨木は背中を向けた。
「今はただ、正々堂々と闘ろう」 「さぁ、行くぜ」
若月組の兵隊、ノンスタイルいのぼは騎馬に乗り、やる気を見せた。
「触って、触って、触りまくるぜぇ!」
向こうに見える敵側の騎馬は女ばかりで出来ていた。
結構若くて可愛いのもいる。
「でも兄貴、あれはやめときましょうね」
騎馬の先頭を務める新人のなかやまくんが言った。
なかやまくんが指すところには弁慶のような女の背に乗った剛力あやの組長の姿があった。
「ババアは他のモンに任せよう」
いのぼは言った。
「狙うのは若くて可愛い馬と騎手じゃあ!」 「恐らく」
迎良菊二郎親分が言った。
「俺ら以外は1分ともたねェだろうな」
迎良組の老組員達の作る馬は、どれも戦闘前からヨレヨレと崩れそうになっていた。
中條母は前の競技で頑張ったので休み、山本サクヤは「やる気が出ない」とスマホゲームをしている。
「いや、あそこの馬はやるかもしれんですよ」
菊二郎親分を乗せた馬の先頭に立つ茨木敬が言った。
茨木が指す先にはやたら張り切って馬を支える老人達がいた。
その上にヤーヤが乗っていた。
「おじーちゃん、みな、お願〜い!」
ヤーヤはメリケンサックの爪を伸ばしながら、言った。
「ヤーヤがんばる。おじーちゃんもがんばる!」
「うおー!」
やたらやる気ビンビンのジジイどもが鴇の声を上げた。 「ジジイばかりとなめんなよ、お前ら!」
飛島優太は馬の上で腕組みをしながら、声を上げた。
「あそこの傷だらけの男は強いぞ。まず真っ先にアレを潰す!」
しかし新飛島組の精鋭達は、別の馬のことで話題騒然となっていた。
「なんでDTB48のヤンちゃんがいるんだ」
「俺、あの馬とやりたい」
「真っ先に狙うならあの馬だ」
「よーしやっちゃうぞ〜」
「ええ加減にせんかいお前ら!」
優太が怒号した。
「ヤンちゃんやんのはこの俺じゃ!」
「なんだと!?」
組員達の額に血管が浮き上がる。
「若造が! 組長だからってチョーシ乗るなや!」
「ブッ殺すぞ、たかが組長の分際でよ!」
「ヤンちゃんはワシのじゃ!」 戦闘開始の銃撃が空に響いた。
若月組の馬達はまさに獲物を狩るように駆け出した。
剛力組の女達も突進する。
剛力あやの組長の馬は動かなかった。
上半身裸の剛力組長は、どこからともなく般若の面を取り出すと、被った。
そしてとても穏やかな、しかし敵軍の元まで響き渡る声で、言った。
「滅びるでおじゃる」
気迫を込めたその一言が、爆弾のように敵も味方も巻き込み、吹っ飛ばした。 若月組は剛力組を舐めきっていた。
次の決勝に備えて主戦力を温存していた。
剛力組長の気迫爆弾にすべての騎馬はバラバラに崩れ、立っている馬は一騎もなかった。
それは剛力組の馬も同じだった。
しかしただ1人、剛力組長を背中に乗せた剛力組若頭、上戸あやこだけが足を踏ん張り、立っていた。
「今のはキツかったですぞ、組長ッ!」
爆風の煤で汚れた顔で、上戸は豪快に笑った。
「さすが上戸じゃ。よくぞ耐えた」
剛力あやの組長は般若の面を外すと、褒めた。 開始の銃撃とともに新飛島組の騎馬すべてがヤーヤに押し寄せた。
「エー!?」
「やっ……ヤンちゃんを守るだーーッ!」
血走った目をして襲い来る精鋭ヤクザ達に、しかしヤーヤも老騎馬も為す術もなかった。
一騎を猫に変えただけで、雪崩のように押し寄せる敵に呑み込まれ、ヤーヤはあっさりと騎馬の上から落っこちた。
「よし!」
「ワシが抱く!」
精鋭ヤクザどもはヤーヤに群がった。
「ワシのもんじゃーッ!」 暫く呆気にとられて少し離れた位置から見ていた茨木が、叫んだ。
「その娘に手を出すな!」
その声は剛力あやのの気迫爆弾のように、空気を激しく震わせた。
「おうッ!?」
「ぬぐゎ!」
新飛島組は気圧されたが、さすがは精鋭というべきか、ほとんどの騎馬が崩されることなく耐えた。
一騎だけ、ヤーヤに飛びかかろうとしていた飛島優太組長があっさり崩れたのを除き、堪えた騎馬達は一斉に茨木のほうを睨む。 「アイツ倒してみんなでヤンちゃんのマンコ見んぞ!」
「うおー!!」
新飛島組チームの心がひとつになった。 波のごとくこちらへ向かって押し寄せる新飛島組の騎馬群に、茨木はなおも気迫を飛ばした。
「散れや、ザコども!」
しかし騎馬は止まらなかった。
「ザコじゃねーわ!」
「俺らヤンちゃんのマンコ見るまで止まらんぞ!」
「凄まじい……」
迎良菊二郎親分が感心したように呟いた。
「まさしく修羅の群れよ」 「敬坊、ここは俺に任せてくれるか」
菊二郎親分の言葉に茨木敬が震えた。
「まっ……まさか! 親分の『気迫弾』が出るのか!?」
「あぁ。超久し振りだから、うまく出せるかわからんが」
「俺に気迫の何たるかを教えてくれた親分の……ああ! 15年振りに見られるのか!」
「行くぜぃ」
菊二郎親分は思い切り息を吸い込んだ。 「このエロガッパどもがぁぁあッ!」
茨木の身体がビリビリと震えた。
それはまさしく言葉の爆弾であった。
しかし、茨木にはわかってしまった。
『これは……俺より少し……弱い』
新飛島組の騎馬達は少しも揺るがなかった。
「その通りエロガッパじゃああぁ! エロガッパで何が悪い!」
そのままの勢いで敵大将の元へ辿り着くと、体当たりをかまして来る。
「負けるか!」
茨木も押し返す。
しかし、敵の騎馬はあまりも強かった。
さすがは藤あやみのエロいテクにそれぞれの組を簡単に裏切ったスケベどもというべきか、
ヤーヤのマンコがかかるととんでもないパワーを発揮した。 「ぐあああ!」
茨木は吹っ飛ばされた。
「フン。褒めてやるぜ、若造ども」
菊二郎親分は余裕の笑みを浮かべながら騎馬の上から振り落とされた。
その後、全身を打ったショックでチンポが不能となり、急に老け込むこととなるが、それはまた別のお話である。 この瞬間、決勝戦は剛力組と新飛島組で行われることが決定した。 「さあ! ヤンちゃんのオマンコご開帳と行きますか」
「仕事終わりの楽しみだ」
ヤーヤの身柄は二人の組員が確保していた。筈だった。
しかしその二人はボロボロになってじめんに倒れ、ヤーヤはいなかった。
「す、すまん。ジジイどもがなんか火事場のバカ力出しやがって……」
「クソ。あの細ェ身体のどっからあんな力が……」
楽しみにしていた組員達は発狂した。
優太はエロ禁断症状の発作に襲われた。 藤あやみ「あたしので我慢しな!」
組員A「ダメだ嫌だ! もうヤンちゃんのマンコにしか今は興味がねぇんだ!」
組員B「アンタのマンコは見慣れてる!」
組員C「俺達は秘密の花園に憧れてんだよ!」
優太「マンコー、マンコー……」 決勝戦を前に、昼食タイムに入った。
剛力あやの組長はサンドイッチをおちょぼ口で食べながら、漏らした。
「茨木敬が負けよった。せっかく決勝戦で殺して主人公の座を奪おうと思っておったのに」
「まぁ、殺すのはいつでも出来ます」
上戸あやこが笑いながら言った。
「それより新飛島組とかいうザコどもを軽く蹴散らして天下を奪いましょうぞ」 優太はじめ新飛島組の兵隊達は、弁当にありついて平静さを取り戻していた。
負けた茨木も、優太と向かい合って弁当を食った。
「それにしても」
茨木が優太に聞く。
「どうやって記憶戻ったんだ?」
「さぁ」
優太は答えた。
「気がついたらセックスしてたわ」 「ところでオッサン」
優太が言った。
「新飛島組組長として、アンタをこの運動会の助っ人としてスカウトしたいんだが、どう?」
「そんなこと出来るのか?」
茨木は顔を上げた。
「だってオッサン、迎良の組員じゃないじゃん。俺ら迎良組倒したから、そこの助っ人ゲットってことでいいんじゃね?」
「ふむ」
「俺ら目指すのは当然優勝だからさ、オッサンの力が是非とも欲しい」
「そうか」
茨木は乗り気になった。
「俺も剛力組を倒したい」
「ま、引き抜きが出来るかどうか次第だけどね」
優太は卵焼きを口に運びながら、忌みが。
「運営と、対戦相手の剛力組にも聞いてみるよ」 その頃、ヤーヤを助けた迎良組の老人達は、茂みに身を潜めていた。
「ここにいれば大丈夫だ」
「危なかったな、ヤンちゃん」
「ありがとー、おじーちゃん」
ヤーヤは両手を前で合わせた。
「ヤーヤ、あぶなかった」
老人達はそう言うヤーヤのショートパンツから覗く小麦色の脚を見つめると、生つばを飲み込んだ。 「助けたお礼が……欲しいな」
「んだんだ。ヤンちゃんからお礼が欲しいだ」
「うん。なんでもする」
ヤーヤは笑顔で頷いた。
「何する? 言って。なんでも」
老人達は立ち上がった。
「ヤンちゃんのマンコが見てぇだ!」
「助けたお礼に見せてくれろ!」
「エー!?」 剛力あやの組長は、運営から話を聞くと、即答した。
「茨木敬を? 新飛島組に? よろしいでおじゃるよ」
そして笑ってしまう口元を扇子で隠した。
「むしろ願ってもないでおじゃる」 そして決勝戦が始まる。
種目は『タトゥー睨めっこ』。
ちなみに運動会種目のアイデアはこちらのスレからいただきました。
どうもありがとうございました。
ヤクザの運動会にありそうな種目
https://egg.5ch.net/test/read.cgi/owarai/1590609498/ タトゥー睨めっこはただのにらめっこではない。
相手の睨みに心が負ければ死んでしまうこともある、大変危険なにらめっこだ。
そして運の要素が入り込む余地がなく、実力こそが物を言う、最後に相応しい競技と言えた。
それぞれの組から3人ずつ、代表選手が出て争う。
2本先取したほうが優勝となる。 「1本は捨てるしかないでおじゃるね」
剛力あやの組長は自分のチームの顔ぶれを眺めると、仕方なさそうに言った。
「まぁ、後はマロと上戸だけで楽勝でおじゃる」 「誰が強いのかわからん」
優太は首をひねった。
「俺、自分の組のこと、まだ知らなすぎだわ」
「自信のある人、手を挙げて?」
藤あやみが促した。
しかし誰も自信がなさそうに、手を挙げる者は誰もいなかった。 「ウチが出ますどすえ」
唯一手を挙げたのは中條母だ。
「ええ? おばちゃんにはキツいでしょ」
優太はそう言うと、茨木敬の顔を見た。
「どうなの? 強いの?」
「さあ?」
茨木も首をひねった。
「だが、見事なモンモンなのは確かだ」 「本多さんは? 」
優太は自分の組の若頭に声を掛けた。
「立派な鯉のモンモンじゃん?」
「しかし……たかが鯉でさあ」
本多は首を横に振った。
「カープが野球で強いようには、私の鯉は強くありません」
「ゆーたはどうなの」
ヤーヤが横から聞いた。
「組長さんでしょ。強い」
「いや、コイツはダメだ!」
茨木が即答した。
「この競技には絶望的に向いてないわ」
藤あやみも即答した。
「エヘヘ……」
優太は恥ずかしそうに笑った。 結局、元東城会のエースだった桐生という男が先鋒を務めることに決まった。
次鋒は中條母こと中條かなこ。
「大将は決まりだよな」
優太が当然のように言った。
「オッサン、頼むぜ」 茨木敬の脳裏にあの夜のことが浮かんだ。
剛力あやのの金剛力士に、自分の桜吹雪は勝てなかった。
おそらく……いや間違いなく、剛力組の大将には奴が出て来るだろう。
自分は……勝てるのか?
自信がなかった。 「いや……俺は……」
「確実に勝てるのオッサンしかいねーよ。任せたぜ」
優太は茨木の背中を叩いた。
「それに……。あやちゃんのカタキ、取るんだろ?」
「……そうだな」
茨木は自分の頬を一発、殴った。
「俺がここで立たなくてどうする、茨木敬!」 相手チームの先鋒の姿を見て、新飛島組は騒然となった。
「剛力組先鋒、平山あやめ」
運営がその名を呼び、ショートカットにナイスバデーな20歳代半ばぐらいの美人が颯爽と前へ進み出た。
「かっ……可愛い!」
「俺の胯間がもこみちになっちゃった!」
「やっぱ俺が出る!」
「桐生、てめぇ代わってくれ!」 次いで次鋒、上戸あやこの名が呼ばれ、全身一揺れもしない筋肉の鎧のような、女とは呼びがたいものが前に進み出た。
「……アレはいかん」
「見たくもない」
新飛島組は意気消沈した。
「アレは中條のお母さんにあげる」
「大将、剛力あやの」
運営が名を呼ぶと、真っ白な化粧をしたマロ眉の婆さんがファッションモデルのような歩き方で前へ出た。
しかし新飛島組は誰も見ていなかった。
「先鋒、やはり私に行かせてください!」
若頭の本多が真っ赤な鯉の刺青を誇示しながら、喚いた。 続いて新飛島組チームの選手名が発表された。
「新飛島組先鋒、飛島優太」
茨木が飲んでいたスポーツドリンクを激しく噴いた。 「次鋒、中條かなこ」
名を呼ばれ、中條母が歩み出る。
匕首を両手で抱え、決死の表情だ。
「なんと……私の相手は♀ですかッ!」
上戸ががっかりしたように言った。
「屈強な♂をぶち殺すつもりで楽しみにしていましたのに……ッ!」
「瞬殺して差し上げろ」
剛力組長がつまらなそうな顔で言った。
「どんな男も敵わぬお前の敵ではないでおじゃる」 「大将、茨木敬」
「おうッ!」
気合いを充分に見せつけて茨木が前に出た。
「剛力ッ! この間の雪辱じゃ!」
「まんまと出て来おったわ」
剛力あやのは嬉しさについ歪んでしまう顔を扇子で隠しながら、言った。
「今日、主役はマロのものになるでおじゃる」 その頃、茂みの中では迎良組の老組員達が昇天していた。
さっき目にしたものを頭の中で反芻しながら、彼らは亡者のように呟いていた。
「菩薩様って本当にいただな……」
「ああ、冥土への最高のみやげになっただ……」
「もう、いつ死んでもいいだな……」 先鋒戦が始まった。
何もない関ヶ原の野に向かい合って立つと、両者は睨み合……いや見つめ合った。
「組長さんが相手だなんて光栄です」
平山あやめは恥ずかしそうに言った。
「どうせ私、捨て駒ですから……。うちの組長に『遠慮なく負けて来い』って言われてます」
「もっと自信を持ちなよ」
優太はイケメン顔で言った。
「君はとても魅力的だ」
「あ……ありがとうございます」
平山は長い睫毛をしばたかせて言った。
「では、よろしくお願いしますね」 「ゆーたの刺青って、どんなの」
ヤーヤが茨木に聞いた。
「どんなのも何も……」
茨木は答えた。
「アイツ、刺青入れてねぇんだ」
「刺青なんて時代遅れだ! とか言ってたけど……」
藤あやみが言った。
「単に痛いのは嫌だってだけよね」
「タトゥーシールは貼っときました」
本多が言った。
「それでも、アレじゃあ……」 「それでは……始めッ!」
戦闘開始の合図がかかった。
「さっさと終わらせて近くのファミマにふたりでしけこもう」
そう言いながら優太が着ているガウンに手をかける。
「あっ、ファミチキ食べたいです」
平山も自分のガウンに手をかけた。
「いくよっ!」
「勝負です!」
二人のガウンが宙に舞った。 平山あやめのタトゥーが晒された。
「あっ!」
「あれは……っ!?」
観客がどよめく。
平山の華奢な背中に乗せたあったのは真っ黒なヒラメの彫り物だった。
「……魚拓?」
「可愛いよ」
優太はそのヒラメよりも、腰のくびれと胸を隠すしているすべらかな二の腕に釘付けになりながら、言った。
「オリーブオイルかけて食べたいな」
そう言いながら後ろを向いた優太の背中は真っ白だった。
ただ左肩にひとつ、ピンク色の小さなハートがあるのを除いては。 「可愛い」
平山あやめは思わず笑顔を見せた。
「僕の負けだ」
優太は言った。
「早くファミマに行こう」
「はい」
「ファミマの駐車場にタクシー呼んで、そこから遊びに行こう」
「ふざけんな」
遠くで茨木が呟いた。
「次負けたら終わりなんだぞ!」 しかし優太は観客の罵声を浴びながら、平山あやめと手を繋いで会場を出て行った。
「なんと……ッ!」
上戸あやこが声を上げた。
「平山が勝ってしまいましたぞッ!?」
「よいでおじゃる」
剛力あやの組長は無表情に言った。
「お前は全力で対戦相手を潰すがよい」
「よいのですかッ!?」
「茨木敬はいつでも殺せるでおじゃる」
剛力組長は野望に燃える目で言った。
「この大運動会に優勝し、天下を取れる機会は今しかごじゃらぬ」 中條母が据わった目をして前にしゃしゃり出た。
上戸あやこもドスドスと地響きのような足音で前へ出る。
向かい合った二人を見て、茨木は声を漏らした。
「まるで柳の枝と檜の大木だ」
観客達も口々に呟く。
「あ〜あ、こりゃ闘る前から……」
「決まったな」
「目に見えてる」 「奥さん」
上戸が野太い声で言った。
「棄権するなら今のうちだ。無駄な殺生は好まん」
「あんさん達……」
枯淡の母といった趣で、中條かなこは言った。
「ウチの娘を殺らはったんどすなぁ?」
「中條あやのことか」
上戸は真面目な顔で答えた。
「あれは通り魔事件でしょう」
「黙りや」
中條母は着物の袖を口惜しそうに噛んだ。
「母の執念、とくと見さらせ」
その時、戦闘開始の合図がかかった。 上戸は着物を勢いよく脱いだ。
厨房まで筋肉と化した裸体が露になる。
「手は一切抜きませんぞ?」
そう言うと、ゆっくりと後を向く。
背中の仁王像の彫り物が姿を現した。
「これで終わりじゃあーーッ!」
仁王の目が赤く開き、三千度の炎がそこから発射された。
観客が悲鳴を上げ、思わず逃げ出す者も多くいた。 しかし中條母は身を紅蓮の炎に包まれながらも立っていた。
「ホホホ」
母は着物の袖で口元を隠し、余裕で笑う。
「確かに格闘勝負ならば、貴女に勝つ術などおまへんどしたろうなァ……」
「何……?」
一撃での勝利を確信していた上戸は動揺を隠せない
「言わばこの『タトゥー睨めっこ』は精神戦」
中條母は勢いよく着物の上をはだけた。
「とくと見や、我が50年の人生の詰まった刺青じゃ!」 それはまるで天へ向かって昇る大瀑布であった。
中條母の背中に描かれた昇り龍が目を開くと、轟音が鳴り渡り、激しい水流が上戸の足を地面から離しにかかる。
「く……ッ!」
しかし上戸は耐えた。
「なんのこれしきーーッ!」
観客が次々と竜巻に呑まれるように空へと放り上げられる。
茨木は飛んで行きそうなヤーヤをしっかりと抱き止めた。
「このようなものッ! 炎でかき消してくれるわ!」
上戸の仁王像が口を開く。
目から発射された炎よりも強い、七千度の業火がそこから吐き出された。 急に世界は静寂に包まれた。
中條母の大瀑布も、己の仁王像の吐く業火の音も消えた世界で、上戸は周囲を見回した。
「なんじゃ、ここは……」
暗闇の向こうから誰かが歩いて来る。
「上戸副組長……」
それは松浦が殺した筈の中條あやだった。
顔の真ん中が潰れているが、声とシルエットでわかる。
「はん!」
上戸は鼻で笑った。
「つまらんまやかしだ!」 「私をころしたのは……だあれ?」
中條あやは少し震える声で言った。
「通り魔だ」
「わわたしをこころしたたのは……だあれれ?」
「くだらん」
上戸は拳を振り上げた。
「さっさと地獄へ帰れ、フンッ!」
その時、上戸は気づいた。
中條あやの手が、誰かと手を繋いでいる。 「彼氏を連れて来たの」
中條あやは、顔のない顔で嬉しそうに笑った。
「ムウッ!?」
暗闇の中からだんだんとその姿が現れる。
姿を現しきらないうちから、その男の眩さが上戸の目を潰した。
「彼氏を連れて来たの」
中條あやが連れて来たのは、黄金の聖衣に身を包んだドラゴンであった。
「ぎゃーーッ!?」
目を潰された上戸が悲鳴を上げた。 黄金の聖衣を身に纏ったドラゴンは、言った。
「廬山昇龍波」
その言葉を口にしただけで、上戸は上空へ吹っ飛んだ。 300m空を飛び、地面に叩きつけられた上戸は、さすがに立ち上がれなかった。
「貴様……」
上戸は中條母に聞いた。
「なぜワシが『聖闘士星也』の……しかもドラゴン紫龍のファンだったと知っている……?」
「あなた、ウチと同世代ですやろ? 聖闘士星也世代……」
「そっ……それだけで!?」
「女のカンより強いモンはありまへん」
中條母は勝者の宣告を受けながら、目を細めて笑った。
「そして若い頃に憧れた存在には、誰も勝つことは出来まへん」 「お母さん……」
茨木敬は、その闘いを目に焼き付けながら、呟いた。
「あなたの闘い……俺の糧とさせていただきます」
そして向こう岸の対戦相手、剛力あやの組長を睨みつけた。
剛力はその視線に気づくと、馬鹿にするようにフッと笑った。 その光景を見つめる謎の男が居た。
名を「茨木 薪火太郎」。この物語の根幹に関わる超重要人物である 茨木敬にはまだ迷いがあった。
母が娘の敵を討ったようには、中條あやと山本サアヤを殺した剛力組への憎しみをパワーに変えることが出来ずにいた。
ぶっちゃけ作者の思い通りになることに反抗したかったのである。
『これで俺が憎しみで超パワーアップして勝ってしまったら、中條はまるでそのための単なる道具みたいじゃないか!』
中條との幸せだった同棲生活の日々が胸に甦る。
『中條は道具なんかじゃねぇ! 俺に平和で美しい日常をくれた、かけがえのない存在だったんだ!』 焚火太郎「ククク...哀れだな、兄者よ。まるで炎に向かう蛾の様だ。いつまで主人公を気取っているつもりだ?」 クロ「薪火太郎なのか焚火太郎なのかどっちだよ!?」 茨木敬と剛力あやのは向かい合った。
「上戸が負けたのは計算外であった」
剛力は悠々と扇子を動かしながら、言った。
「しかしこれでマロがおまえを殺せば、主人公の座と組の天下、どちらもマロの物じゃ」
「……」
茨木敬は何も言えなかった。
「どうしたでおじゃる?」
剛力は見下すように笑った。
「この前、派手に敗北したのが頭に焼き付いておるでおじゃるか?」 『しまった』と茨木敬は思っていた。
中條母があれ程だと知っていれば、中條母に大将を任せればよかった、と。
自分の最大奥義『さくらだモンッ☆』は剛力あやのには通用しなかった。
しかしあの時、若頭の上戸には、確実に効いていた。
自分が上戸と闘ればよかったのではないか。
中條母なら、亡き娘の敵を討つ執念と、強大な龍の力で、このバケモノにも勝てたかもしれない。
しかし、自分は…… 「おい」
剛力組長の背後でクロが言った。
「あいつ、チキンになってるぞ。お前の楽勝だな」
「ホホホ」
剛力は笑った。
「手羽先のごとく、真っ二つに折った後、むしゃぶりついてくれるわ」 「なぁ」
茨木は胸の中の中條あやに話しかけた。
「俺……負けてもいいか?」
「どうしちゃったのよ、敬くん」
中條は答えた。
「アンタらしくもない」
「だって、あのバケモノ殺したところでお前は帰って来やしないだろ?」
「……そうだけど」
「なら、俺が殺されて、お前の所へ行くよ」
「……敬くん」
「また、一緒に暮らそう。俺はそれが一番いいと思う」
「……おとーさん」
「お、おとーさん!?」 我に返ると、目の前にヤーヤがいた。
茨木の様子を見て、心配でたまらずベンチから駆け出して来たようだ。
「おとーさん」
ヤーヤは茨木の目をまっすぐ見つめて、言った。
「ヤーヤはおとーさんが好き」
「えっ?」
「好きだから、勝ってほしい。そして、一緒に暮らす」
「ええっ!?」
「おとーさんは、絶対、勝つ」
ヤーヤはそう言うと、両拳を強く握り締め、中国語で言った。
「加油(がんばれ)!」 ベンチへ戻って行くヤーヤの後ろ姿を見送りながら、茨木は思った。
『加油(ジァーヨゥ)、か。いい言葉だ』
『ヤーヤ、俺は君の……DTBのヤンちゃんの、ただの一熱狂的な大ファンのつもりでいた』
『しかし……今の言葉、そう受け取ってもいいんだな?』
『俺と……アイドルとファンの垣根を越えてもいいと……! そういう意味なんだな!?』 「中條! 俺はお前のことは絶対に忘れない!」
茨木は人目を憚らず叫んだ。
「しかし俺は、過去を振り返らない! 俺はあの娘と新しい愛の生活を始める! いいな!? 中條ッ!?」
ヤーヤの言葉が文字通り茨木敬に油を加えた。
「16歳差がなんぼのもんじゃいッ!!」 ベンチに帰ったヤーヤはそんな茨木の姿を見て、少し困ったように呟いた。
「あれ……。なんか。誤解されてる?」 自動車を買おう、茨木敬はそう思った。
思えば中條と暮らしていた時、なぜ自分は自動車を持たなかったのか。
彼女が出来れば自動車を持つのが当然じゃないか。
茨木の幸せな妄想はとどまることを知らぬ爆発のように広がった。
ヤーヤの言葉がまさしく火を注ぎ、真っ赤なオーラが天を赤く染めた。 「どうしたでおじゃる? 急に別人のようになりよったな?」
剛力あやの組長は言葉ほどには驚いた様子もなく、言った。
「それでなければ面白くないが」
「剛力」
茨木は対戦相手を睨みつけた。
「俺は次の段階へ行くぞ」
「そうでおじゃるか」
剛力は見下しながら、言った。
「お前の最大奥義はマロには通じん。それで果たして勝てるかなァ?」 ヨコヤがまだ出番を待っていた。
茨木薪火太郎なのか焚火太郎なのかは物語に関わるその時を待っている。
ヤーヤが胸の前で両手を繋いで組み、神様に祈った。
優太はファミリーマートからタクシーを拾って平山あやめとお城に遊びに行った。
それぞれの思いが交錯する中、ようやくのように、今、戦闘開始の合図がかけられた。
「はじめッ!」 「いきなり死ぬでおじゃる」
そう言うと、剛力あやのは着物を脱いだ。
相変わらず歳の割に綺麗な乳房が露になる。
そしてくるりと背中を向けると、金剛力士が2体に増えていた。
2体の目が同時に赤く光ると、そこから発射された一万三千度の炎が大地を覆い尽くした。
上着を脱いだばかりのところだった茨木は、思わず叫んだ。
「やめろや、この糞馬鹿野郎!」 茨木は背中の桜吹雪を逆走させた。
炎を吸い取った桜の花弁が、茨木の内へと舞い戻っ行く。
「ぬああああちぃ!」
一万三千度の炎を吸って苦しむ茨木を見て、剛力は呆れたように言った。
「……吸い取った?」
「あぶねぇじゃねぇか……」
茨木はベンチのヤーヤが無事なのを確かめると、剛力を叱った。
「観客を巻き込むな馬鹿野郎!!」 茨木の桜吹雪が剛力の身体を覆って渦を巻く。
「ぬおゎ!? これは……」
逃げ場のないピンク色の嵐に剛力は一瞬、慌てた。
しかしすぐに金剛力士が2本の金棒を振り下ろし、吹雪を切り裂く。
「無駄なあがきは見苦しい」
そう言うと、左右から金棒が茨木の身体を打った。 「ぬぐぉわ!?」
金棒の挟み撃ちに茨木の全身に衝撃が走る。
しかし茨木は背中の桜吹雪を全開でピンク色に咲かせ、剛力に送り続けるのを止めなかった。
「なんでおじゃる」
剛力はなおも2撃、3撃と茨木を打つ。
「主人公とはこんなもんか」
「剛力!」
血だらけになりながら、茨木は吠えた。
「主人公の何たるかをお前に教えてやる!」 「ほほう」
剛力は茨木の脳天を金棒で潰しながら、言った。
「聞こう。主人公とは何でおじゃる?」
「教えてやる」
茨木は言った。
「主人公とは、この俺のことだ!」
「ホホホ」
剛力は笑うと、茨木のこめかみを金棒でかち割った。
「今からはこのマロのことでおじゃるよ!」 最大の急所を攻撃された。
茨木は防御をすることも出来なかった。
大きく開いた口から桜の花弁を散らせながら、茨木敬は倒れた。
「おとーさん!」
ヤーヤが叫ぶ。
「おとーさん! 立つ!」
その声は茨木の耳に届いた。
しかし身体が言うことを聞かない。
立ち上がるだけのことが、出来ない。
「勝者、剛力あやの!」
審判がその掴み、高く掲げた。
「これにて極道大運動会は終了ッ! 優勝は、剛力組!」 「ホホホホ」
剛力あやのは遂に天下を手に入れ、満足そうに笑った。
「ホホホ……ぐ、ぐふっ!?」
その色白の身体が顔までピンク色に染まっていた。
「ぐ……これは……?」
鼻や口から入り込んでいた茨木の桜吹雪が、
剛力あやのの中で爆発を起こした。 それはまるで秋の大運動会に華々しく狂い咲きした桜の大樹のようだった。
剛力は自らの内部から沸き起こった大きな力に耐えきれず、身体を痙攣させると、その場で破裂した。
観客達は剛力あやのの死を見るというよりも、まるで大輪の花火を見るように、誰もが笑顔だった。 「ざまァ見ろ」
茨木は倒れたまま、言った。
「他人の夢や幸せをさんざん壊しやがった報いだ」
ヤーヤが慌てて駆けて来て、言った。
「病院よんだよ!」
「ありがとう。救急車、な」 「剛力……。てめえは死んでも悲しんでくれる人なんか1人もいねぇだろ」
観客がみな美しい花火を見て笑っている中、しかし悲しむ者はいた。
「ごごご剛力さん!」
紫色の髪をした、100歳ぐらいの老婆が杖をついて前に歩み出た。
「死んでしまうとは何事よ!」 「あれは……誰だ?」
茨木は応急処置をしてくれている藤あやみに聞いた。
「会長よ」
藤は答えた。
「先代組長。名前は殺屋(あやや)のりこ」 「ああ……貴女が死んでしまっては、せっかく大運動会に優勝しても、組を仕切ってくれる人がいないじゃないの!」
殺屋は悲嘆に暮れた。
「上戸はトップを任せるにはまだ若いし、何より脳味噌が筋肉だわ。私が再任するにも……この歳じゃ……」
「もし」
殺屋に横から声を掛けたのは、中條母だった。
「よろしければ、私が組長をやらせてはいただけまへんやろか」 上戸を破ったほどの実力の持ち主であり、元広島一の暴力団緒方組のおかみさんをやっていた中條母なら文句があろう筈もなかった。
殺屋のりこ会長はむしろ是非お願いしたいと逆に申し出た。
「可愛い娘を亡きものにした憎き剛力組でしたけれど……」
中條母は、殺屋会長に誓った。
「この私にお任せいただけるのならば、名実ともに日本一の任侠一族に育ててみせますわ」 救急車がやって来た。
「病院か……。苦手なんだよな」
担架で運ばれながら、茨木は呟いた。
剛力組の優勝に沸く関ヶ原の会場を、茨木はまるで主人公らしくなく退場した。
「まぁ……。ともかくこれで一件落着だ」 気を失っていた茨木敬が病院のベッドで目を覚ますと誰もいなかった。
「あれっ?」 しかしよく見ると病室の隅にクロがいた。
「お目覚めかい?」
「な……なんで……」
茨木は呆けたような声で言った。
「なんで……ヤーヤがいねぇんだ」
「仕方ないだろ」
クロは笑った。
「アイドルは忙しいんだ」 「しかしよくやったぞ、茨木敬」
クロは明るい声で言った。
「あの戦いでお前は覚醒主人公となった」
「覚醒剤みたいな言い方やめろや」
「これで遂にあの仕事を任せられる」
「仕事だと?」
「台湾へ再び飛べ、茨木敬」
「台湾へ?」
「滅茶苦茶になった台湾を、お前が救うんだ」 「……やめてくれ」
茨木はベッドに伏せたまま目を閉じた。
「俺は平和な日常を送りてぇんだ」
「なんだと?」
クロは大きな目で茨木を睨むように見た。
「もう血生臭いのは勘弁だ。俺はこれからヤーヤと愛の生活を送るんだ」
「バカ」
クロは叱るように言った。
「そのヤーヤの祖国を救うんだ」
「俺1人に何が出来るってんだよ。やめてくれ」 「まだあっちに救いたい人がいるだろう」
クロの言葉に茨木は少し考え、首を横に振った。
「ヤーヤと優太が生き返ったから別にいーよ。あとは親しかった奴、いねーし」
「キンバリー・タオはどうするんだ」
「腐れ外道女か。関係ねぇ」
「非道い奴だな、お前!」
クロは激怒した。
「台湾がどうなったっていいって言うのかよ!? お前こそ腐れ外道だ!」 「とにかく俺はヤーヤと平和に暮らすんだ」
茨木は言い張った。
「クルマを買って、毎日ヤーヤをテレビ局まで送り迎えして……」
夢見るような笑顔を浮かべた茨木に、クロは罵声を浴びせながら泣き出した。
「この人非人! 自分さえ幸せだったらどうでもいいってのか! ヤーヤに言うぞ!」
「ヤーヤも俺が台湾を救えるヒーローだなんて思ってねーよ」
「メイファンちゃんとララちゃんを助けてあげようとか思わんの!!?」
「なんでその名前が出て来んのか知らねーけど」
茨木は無関心な顔で言った。
「俺、全然親しくなかったし」 「よし。後悔するぞ?」
クロは病室を出て行きながら、茨木に何度も指を差して言った。
「お前は絶対後悔する!」
「するもんか」
茨木は飄々と言い放った。
「俺は絶対幸せになるんだ」
「死ねや!!」
クロは勢いよく病室のドアを閉めた。
「いいのか、アニキ」
茨木薪火太郎が言った。
「アイツを怒らせると恐ろしいぞ」
「誰だ、お前」
茨木敬は本心から言った。
「いつからそこにいた」 薪火太郎「弟の顔を見忘れたのかよ!?」
敬「悪いが俺は孤児院育ちで身内はいない。そういう詐欺なら他をカモってくれ」
薪火太郎「兄さん!!」
敬「やめろ気持ち悪い! お前の顔を見ていると何故だか気持ち悪い━━!」 「何と言おうと俺はお前の弟だ」
薪火太郎は含み笑いをしながら、言った。
「兄貴が死んだら兄貴のものはすべて俺が貰う」
「なんだそれは」
敬は不快を露にした。
「また来てやるぜ、兄貴。見舞いに来てくれるヤツいなさそうだからな」
そう言ってくるりと背を向けると、薪火太郎の後頭部には、もうひとつの顔があった。
前面の顔と同じ人相だが、より極悪そうな表情のその顔が、薄笑いを浮かべたながら、言った。
「よう。俺は焚火太郎だ。お前の金は俺の金、お前の女は俺の女。ヒヘヘッ!」
「うわっ」
茨木敬は思わず言った。
「こんな奴絶対知らんわ」 ドアがノックされた。
入って来たのは医者だった。
「意識が戻られたと聞きましたので、来ました」
「毎度御世話かけます」
前と同じ先生だったので、茨木はそう言った。
「いやはや。前回も全身を銃で撃たれ、さらに尻から内臓を引っこ抜かれての入院でしたが……」
先生は笑いながら言った。
「今回は頭蓋骨陥没の上、脳味噌が潰れていました。これで生きているというのは本当に凄い」
「ハハハ。主人公の特権らしいです」
「ただし。次はないと思ってくださいよ?」
先生は釘を刺すように言った。
「いつまでも主人公じゃないんですから」 夜になり、またドアがノックされた。
「よっ。オッサン」
入って来たのは優太だった。
「おう。すまんかったな」
茨木は顔を見るなり謝った。
「優勝できなかった」
「まぁ、それは悔しいけどよ」
優太はベッドの脇にドカッと座ると、自分が見舞いに持って来たカットフルーツを食べはじめた。
「まぁ、でも、あの大運動会で準優勝なら儲けモンだわ」
「悔しいのか」
茨木はまじまじと優太の顔を見た。
「あぁ。そりゃよ……」
「あの平山あやめとかいう女とはどうなった?」
「あ? もちろんヤリ捨てたよ。ま、8発ヤッちゃったけど……」
「おいこら。なんでさっき、俺が謝ったんだ。なんで俺が謝んなきゃなんねーんだ?」
「は? てめーがボロ負けしたからだろうが!」
「テメェが初戦に出やがるからだろうが!」
「アア!!? 俺がヤリたかったからヤッたんだよ文句あんのかコラ!」
「静かにしてください」
いつの間にかドアを開けて入口に立っていた婦長が言った。
「何時だと思ってんだゴルァ」 ヤーヤが見舞いに来ないまま茨木は退院を迎えた。
「い……忙しいんだよな?」 アパートに帰ると生活の形跡がなかった。
キッチンを使った跡も、布団を使った形跡もない。
「帰れないほどアイドルの仕事が忙しいのか……」
茨木は座布団に腰を下ろすと、呟いた。
「そりゃ見舞いにも来られねぇわけだ」 「さて……。コレでも見るかな」
茨木はリモコンを手に取ると、ハードディスクレコーダーの電源を点ける。
録り溜めしていたDTB48のバラエティー番組を観るためだ。
「TVの中ででもお前の笑顔が観れりゃいいんだ」 一番最初の録画を再生する。あの大運動会の次の日の放送だ。
番組は生放送なので、ヤーヤに疲れが出ていないか心配だった。
オープニングが始まる。
雛壇に並んで座ったメンバーの中にヤーヤの姿はなかった。 司会のお笑い芸人が告げる。
「今日はヤンちゃんが体調を崩し、お休みということで……」
「なにっ!?」
茨木は思わず呟いた。
「しかし、ここで寝てた形跡はないぞ!?」 すぐに次の録画を観る。
しかし次の日も、その次の日も、結局一週間ぶんすべての放送にヤーヤは出ていなった。
ネットの掲示板を見ると、ヤーヤの状態を知る者はなく、勝手な想像が書き連ねられていた。
━━ 山本サアヤの後追って自殺したんじゃね?
━━ いや、男だな、これは
━━ 妊娠したから出て来れないんだってよ 「あっ、わかった」
茨木はぽんと手を叩いた。
「DTB48には寮があるって聞いた。そっちへ移り住んだんだな?」
そしてスマートフォンを取り出すと、ヤーヤに電話をかけた。
「こんなとこ1人じゃ寂しくていられねぇもんな……」
狭くて何もない自分の部屋を見渡しながら、ヤーヤが出るのを待つ。
しかしヤーヤは電話に出なかった。 サラサラ黒髪ロングストレートの少女がトイレのドアをノックして、声を掛けた。
「どうしたの? かたくてなかなか出ないの?」
ヤーヤはじっと黙っていた。
トイレの窓はあまりに小さい。
こんな所からは脱出できそうにない。
「あんまり頑張ると痔になるわよ」
心配そうに言う黒髪の少女に、後ろから別の少女が声を掛けた。
「もしかして逃げようとしてんじゃない? ケケケッ」 「逃げる? どうして?」
黒髪の少女は首を傾げた。
「まるでヤンちゃんが私達のこと嫌っているような言い方はやめてよ、愛。不快だわ」
「キャハハ。お友達のつもりなの? ヤンちゃんと?」
愛と呼ばれた少女は可笑しそうに言った。
「さすがは天然お嬢様、月夜野 舞さんだべ」
「無礼な! 私とヤンちゃんは本当に友達なのよ」
月夜野 舞は眉を吊り上げ、トイレのドアを拳で叩いた。
「ヤンちゃん! 早く出ておいで。大丈夫、もう痛いことはしないから」 「おい、月夜野 舞」
突然、隣の部屋から殺伐とした男の声が二人の名前を呼んだ。
「それと苗場 愛。こっちへ来い」
「はぁーい」
苗場 愛はすぐに返事をし、歩き出しかけた。
しかし月夜野 舞は首を横に振った。
「行きたいのならお行きなさい。私はここに残ります」
「おい」
隣室の男の声が不機嫌になった。
「俺が来いって言ってんだ。来い」 ドアが開く音がした。
月夜野 舞が振り向くと、Tシャツに短パン姿のヤーヤが仕方なさそうにトイレから出て来た。
「ヤンちゃん! ウンコ出たの?」
ヤーヤは何も答えずにトイレのドアを閉めた。 「長いウンコだったわね。4日も……」
ヤーヤに一方的に話しかけながら、月夜野が隣室に入ると、顔の小さな美少女がまだ泣いていた。
ソファーにもたれて地べたに座り、顔の小さな少女は、月夜野とヤーヤの顔を見ると震える声で言った。
「ぱるが死んじゃうの」
「そうね」
月夜野はそっけなく返事をした。 顔の小さな少女の名前はヤーヤでも以前から知っていた。
牧区上 昆子(まきくがみ ぴりこ)。日本人でも読むのが難しいその名前をヤーヤが知っていたのは、彼女がDTB48の最大のライバルグループ『どっぺり坂46』のエースであるからに他ならない。
女の子ならば誰もその横に並ぶのを嫌がるほどの超小顔、永遠の少女のような趣、
お人形のようなたたずまいと毒舌とのギャップが日本中に受け、彼女単体の人気ならDTB48に敵う者はいなかった。 しかも彼女は台湾人の血が1/4入っているクォーターである。
ゆえに台湾でも特別に凄まじい人気があり、ヤーヤは今、目の前に牧区上 昆子の実物がいることを改めて信じられない気持ちで見た。 「ぱる……だいじょぶ?」
ヤーヤがそう聞くと、牧区上は声を荒らげて即答した。
「大丈夫じゃねーよ糞ボケが!」 ソファーの上には一匹のフェレットがおり、ぐったりしていた。
牧区上 昆子はその頭から背中を撫でながら、涙声で言った。
「……まだ一歳半なんだよ? なんでこの子が死ななきゃなんないの? リンパ腫って何だよボケ……」
「最初は可哀想って思ったけどさぁ」
苗場 愛が言った。
「100回以上も聞かされるとさすがにウンザリするわ」 「ぱる、かわいそう」
ヤーヤの目から涙が一筋、落ちた。
「ぴりこちゃん、悲しい」
「わかってたまるかよ!」
牧区上が吠えた。
「ぱると一緒に暮らしたこともないくせに!」 「もう、構うな」
そう言ったのは先ほど月夜野と苗場を呼びつけた男だ。
綺麗な顔をした40歳前後ぐらいの男だが、明らかにカタギではない。
「とりあえずヤン・ヤーヤ。決意は決まったか?」
「け……けつ?」
ヤーヤはその日本語の意味を一生懸命理解しようとして手をバタバタさせた。
「けつの位置決まったかって……何」
「おいおい。マジかよ」
男は苛立った様子で言う。
「もっと日本語勉強してくれ。台湾は日本の植民地だったんだぞ。昔は台湾の公用語は日本語だったんだ」
「……すみません」
ヤーヤは恐縮した。 「見ての通り……」
男は言った。
「どっぺり坂46のエース牧区上 昆子がペットに余命2ヶ月宣告されたショックでお仕事ができないんだ」
「はい」
ヤーヤは頷いた。
「そこで最大のライバルDTB48のフレッシュエースのお前には台湾に帰ってほしい」
「帰りたいだけど」
ヤーヤは答えた。
「今、台湾、帰れる状態、ない」
「だからさぁ、香港でも中国でもどこでもいいんだよ」
男は苛々と足を揺すりながら、言った。
「お前が邪魔なんだ」 「でも……」
何か言いかけたヤーヤを男は遮った。
「プロデューサーの冬本さんとも話はついてんだ。お前が不法入国者だって情報、ばら撒いてやってもいいんだぜ?」
「でもヤーヤ、日本におとーさん、いる」
「あァ!?」
「おとーさん、いるもん」
「籍入ってないならお父さんじゃねーっつってんだろが! 何べん言わせんだ! 」 「ヤーヤ、帰らない」
ヤーヤはムキになったように言った。
「信じること、日本にあるから!」
「よーしまたリンチするか」
男は舌打ちをしながらそう言った。
「わーい」
苗場 愛がノリノリで立ち上がる。
「もっ、もうやめてあげて!」
そう言いながら月夜野 舞がいそいそとリンチの準備を始めた。 その頃、茨木敬は消えたヤーヤを探しながら、市役所へ立ち寄っていた。
「婚姻届ください」
手に入れたら婚姻届を握り締め、茨木は秋の空に誓った。
『もう中條の時みたいにまったりしないぞ。即刻プロポーズだ!』 「・・・あたまいたい」
ヤーヤはうめきながら目を覚ました。
(・・・私何してたんだっけ・・・あれ?)
意識が徐々にはっきりとしていく内に手足の違和感や体中に感じる鈍い痛みに気がつく。
「えっ・・・これ・・・は」 ヤーヤはパイプ椅子に縛られていた。両手が椅子の肘掛けに、両足が椅子の脚に縄で固定されている。
そしてショッキングだったのは衣服は全て剥ぎ取られ全裸であることだ。
(…なぜこんなことに!?)
ヤーヤは混乱していると目の前の扉が開いて男が出てきた。先ほどのマフィアのような男だ。
「…いい夢は見られたか。散々暴れやがってよ」
男の左目は青く染まり腫れており、口を切ったのが血が滲んでいた。 「グゥッ!」
男の拳がヤーヤの体に打ち込まれ、彼女は呻き声を上げる。
「ここまでするつもりじゃなかったが、お前が暴れるから悪いんだ…ぜ!」
男はさらに暴行をヤーヤに加えた。殴られた衝撃で彼女の割れた腹筋は波打ち、ヤーヤの年齢にしてはたわわな乳房が揺れた。
「…わたっわた…し帰らない…!」
ヤーヤの目は死んでいなかった。彼女は男を睨み付けた。
「…強情な奴め」 男は少し黙り込むと、なにかを閃いたのか戸棚から容器を取り出しふたを開け、中身を手に付けた。
「まあ、飽きてきたしなぁ」
男はヤーヤに近付くと、薬品の就いた手で
彼女の体に塗りたくり始めたのだ。
「ひゃっ!?」
ヤーヤは男の行動を警戒した。体中を這う男の手の感触に不快感を感じる。
「ここはよく塗っとかないとなあ」
男の手が茂みをかき分け肉の溝をなぞると
ヤーヤの体が大きく跳ねた 否、このビルが大きく揺れたのだ。
何やら外が騒がしい。天井から人々の怒号や何かが倒れる音、悲鳴が聞こえる。
「な、何だってんだ・・・!?」
男は何かがおかしいことに気がつくと、彼は拷問を中断し、
懐から取り出した無線機をかけた。
「オイ・・・どうした、上がうるせえぞ?」 しかし無線に出たのは部下の声ではなかった。
ノイズを掻き分けて悪魔のような男の声が、何やら愉快そうに言った。
「俺様が来たんだよ」
「ハァ!?」
「俺様だよ、俺様。わかんねぇかなぁ」
「誰だよ!?」
「俺様を知らんとは。お前、さては名前もないモブキャラだな?」 「…暴動だよ、デモ隊が暴徒化して店舗やビルを破壊し始めたんだ。そう、最近流行のポリコレってやつ」
無線の″俺様″はそう続けた。 「ハァ!? 何のポリコレだよ? 俺は男女差別も人種差別もしてねぇぞ!?」
男は少しパニックを起こしながら声を荒らげた。
「大体、俺には『氷室狂う介』って立派な名前があんだ!」 後ろでドアが開く音した。
「なんだお前ら!?」
氷室は勢いよく振り向くと暴徒と思われる集団がなだれ込んでくるではないか。
「これはどういうことだっ!?」
暴徒の1人が叫んだ。
「まさか、女性を拘束して乱暴していた!?」
さらに暴徒の女がショックを受けたような口調で言った。
「なんて日だ」
それは氷室にとって予想外の事態だった。 「ククク。じゃ、この娘は俺様が保護するぜ?」
無線の声の主が顔を見せた。
長い髪を後ろで束ねた強面の男だった。歳は30前後だろうか。
その男の顔を見た途端、ヤーヤはなぜだか安心した。
「ついて来い、俺様が主人公だ」
男はそう言うとヤーヤの手を強引気味に握った。
「俺の名は茨木 薪火太郎だ。よろしくな」 「待って!」
後ろから月夜野 舞が呼び止めた。
「私達も囚われてたの。ヤンちゃんの友達なのよ。一緒に連れて行って!」
「囚われてたってゆぅかあ……」
苗場 愛が意地悪そうに言った。
「ま、そういうことにしとくかあ……」
薪火太郎は振り向くと、嬉しそうに言った。
「おお、『どっぺり坂46』の月夜野ちゃんと苗場ちゃんじゃねぇか」
そしてその向こうでソファーに座ってフェレットを撫でているお人形のような美少女の姿を認めると、感動の声を漏らした。
「なんと……! 牧区上 昆子がこんな所に……。こりゃ、嬉しすぎるプレゼントだぜ」 ヤーヤ、牧区上、月夜野、苗場の4人は薪火太郎に連れられ、大きな寺の一室に入った。
「ここが俺の家だ。まぁ、何もないが寛いでくれ」
「密室感がなくていいわね」
月夜野が広々と開け放たれた黒檀と畳の空間を見渡しながら、言った。
「お寺とかウケるー」
苗場がバカにするように言った。
牧区上 昆子は何も言わずにフェレットのぱるを抱き締めている。
「じゃ、ヤーヤ、仕事行く」
そう言って出て行きかけたヤーヤを月夜野が後ろから止めた。
「待ちなさい。今、TVにでも出たら、ウチのスタッフがあなたの不法入国のことバラしちゃうわよ?」 「行くもん。ヤーヤ、アイドルしなきゃだもん」
「あなたは台湾に帰ってひっそり穏やかに暮らすのよ」
「おい」
言い合う二人の間に薪火太郎が割って入ると、言った。
「ヤーヤ、お前を俺の養女にする」 「は?」
月夜野が思わず素っ頓狂な声を出した。
「よ、ようじょ?」
「日本国籍を得れば誰にも文句は言われんだろ?」
薪火太郎はヤーヤの返事も待たずに言った。
「早速明日、手続きに行く」
「ヤーヤの日本のおとーさん、けいちゃんだよ」
ヤーヤは無視するなとばかりに言った。
「ヤーヤ、けいちゃんの娘になる」 「アイツはもうダメだ」
薪火太郎はニヤリと笑った。
「あのバカは物語の中心からはずれて平凡な日常を送ろうとなんてしてやがる。もうアイツは主人公じゃねぇ」
「この物語を平凡で平和にすればいいでしょう?」
ヤーヤは抵抗した。
「サザエさんみたいにすれば」
「おいおいヤクザのサザエさんなんて誰が喜ぶ?」
薪火太郎は笑い飛ばした。
「茨木敬の日常は殺伐としてなきゃいけねぇんだよ」 「それから……おい、牧区上 昆子」
薪火太郎はそう言いながら、畳にへたり込むように座る牧区上のほうへ歩いた。
「お前は俺の性奴隷にする。いいな?」
薪火太郎は主人公の熱い眼差しを牧区上 昆子に見せた。
これを見せられたらどんなに高級な登場人物でも自分の虜になる筈だった。
しかし牧区上は薪火太郎をじっとりした横目で睨むと、言った。
「……バカ?」 「あ?」
薪火太郎は思わずキレた。
「……てめぇ、主人公様の言うことが聞けねぇのか?」
「誰が主人公だよ糞野郎が」
牧区上 昆子は顎で突き刺す勢いで睨みつけた。
「あたしの人生の主人公はこのあたしだ。決まってんだろ!」
「……おい、クロ」
薪火太郎がそう言うと、部屋の隅にいつの間にかいたクロが答えた。
「なんだ」
「どうなってんだ? 俺が主人公なんだから、何でも思い通りな筈だろ?」
「そうは行かん」
クロは鼻糞をほじりながら言った。
「あくまで物語に必要なことだけだ。必要ないことは思い通りにならん」 「そっか。ま、いいよ」
薪火太郎はそう言うと、牧区上 昆子のしなやかな腕を強引に掴んだ。
「一発やっちまえば女なんてチョロいもんだ」
「何すんだバカ! 離せよ!」
牧区上が抵抗する。
「らっ、乱暴はやめてあげて!」
月夜野が薪火太郎に協力するように、牧区上のもう片方の腕を拘束しながら、言った。
「ぴり子は今、壊れてるの。ペットが死にかけてて、仕事も出来ないくらい壊れてるのよ。だから主人公様の言うことにも従わないんだわ!」
「どうせ壊れてるんなら……」
薪火太郎は言った。
「廃人になるまで壊し尽くしてやるよ」
「そうね!」
月夜野は嬉しそうに笑うと、言った。
「さ、ぴり子ちゃん。このお方に壊し尽くして貰いましょ」
「離せや!」
国民的アイドル牧区上 昆子は、そう叫びながら皆の前で上着を引きちぎられた。
「いやーーっ! 誰か! 助けて!」 その頃、茨木と優太はいつもの大衆食堂で向かい合って飯を食っていた。
「中條ママが剛力組の組長になってからいいことずくめだよ」
優太が機嫌よさそうにメザシとハンバーグを同時に口に運びながら、言った。
「俺、なんにもしなくても金が入って来る」
「実質、新飛島組と剛力組は統合したようなもんだな」
茨木は豚汁定食を姿勢よく頂きながら、言った。
「今度タピオカミルクティー屋をチェーン展開するんだ。まぁ、俺は資金援助してやらせるだけだけど」
「タピオカミルクティーか。いいな」
茨木は少し羨ましそうな目をした。
「俺はどうもシノギってもんに興味がねぇのがいけねぇ」 茨木「よし。俺もタピオカミルクティー屋をはじめよう」
優太「おいおい。もしかして自分で工夫して経営する気マンマンか?」
茨木「ああ、ヤーヤと協力し合って新しいタピオカドリンクを開発するんだ」
優太「ヤクザが創意工夫してどうすんだ。ヤクザってのはな、資金だけ出して、バカに頑張らせて、売れようが売れまいが毎月10万のショバ代取りゃいいんだよ」
茨木「……たった月10万の収入でどうやって暮らして行くんだ?」
優太「それを何十件も抱えりゃ月何百万だろ。その上俺みたいに自分のフロ屋も持ってみろ。何もしないで月収数千万円だぜ」
茨木「俺は……そんな悪どいことは……」 優太「ヤクザがエプロンつけて自分で工夫してタピオカドリンクなんか真面目にせっせと作ってみろ。世間の笑い者だぜ」
茨木「……」 ちなみに茨木敬の収入源は所属する桜田門組から支給される給料のみである。
しかも固定給21万円だ。 その代わり仕事は非常に楽なものだった。
ヤクザと関わってさえいれば、何をしていてもいいのである。
そしてそのケンカの強ささえ維持していればよく、茨木は昼間は主にパチンコか街の巡回をし、夜は部屋で大人しくテレビを見ていた。 薪火太郎が上着を引きちぎると、国民的アイドル牧区上 昆子は黒い下着だけのしなやかな肢体を露わにした。
「ウヘヘ。まずは……」
薪火太郎が黒いブラジャーを外しにかかる。
「いやぁーーっ!」
腕を組んで抵抗するも空しく、牧区上のブラジャーは剥ぎ取られた。
薪火太郎が強い力で牧区上の腕を退かせると、先のつんと尖った形のいい乳房が晒された。 「待つ!」
ヤーヤは待てと叫びながら、薪火太郎に突進しようとする。
しかしその両腕を月夜野と苗場ががっしりと掴み、行かせない。
「やめる!」
やめろと言っても薪火太郎は止まらなかった。
自分も上着を脱ぎ、牧区上の身体を抱き固めながら、その乳房を堪能している。
「お手!」
「それは人間に言う言葉じゃねぇな」
思わず薪火太郎は振り向いた。 「こんなおとーさん、だめ! ヤーヤ、お前の娘なんかならないよ!」
そのヤーヤの言葉をバカにするように、薪火太郎は笑った。
「いや、お前は俺の養女になるんだ。これ、こんな風に、無理やり俺の娘にしてやるよ」
「だめぇーーっ!」
叫ぶ牧区上 昆子の黒いパンティーを薪火太郎は力任せに裂いた。 「ほぅら、可愛い黒猫ちゃんがピンクの舌を出してお出ましだ」
薪火太郎は牧区上 昆子の両足を掴んでそう言った。
既に自分の性器は取り出してある。
「お母さん!!」
泣き叫ぶ牧区上に構わず、薪火太郎はそこにむしゃぶりつくと、唾液でたっぷりと濡らした。
「おいおい。えらい綺麗なマンコだな。もしかして処女かい?」
薪火太郎は顔を上げると、愛液と唾液まみれの口で言った。
「では、いただくとするかな」 「待て!」
突然現れた謎の男を薪火太郎は一瞥すると、聞いた。
「誰だよ、お前」
「ククク。俺の名前はヨコヤ」
「ふーん。そうなのか」
そう言うと薪火太郎は狭い入口に肉棒をあてがった。
「やだっ!」
牧区上は身体をよじって抵抗するが、逃れられない。
「やめてっ! やめてぇーー!」
『ああ……メリケンサックさえあれば……!』
ヤーヤは変身用の武器を身に着けていなかったことを激しく後悔した。 「ギャオッ!」
突然、牧区上のフェレットのぱるが背中を怒らせ、鋭い牙を剥いて薪火太郎に襲いかかった。
身体は小さいとはいえ、ライオンに立ち向かったこともある小さな猛獣である。
「あ?」
薪火太郎はくだらないものを見るように、襲いかかって来るぱるを見ると、裏拳の構えを取る。
飼い慣らされたぱるの一瞬の野性は脆くも弾き飛ばされた。
「ぱる!!」
牧区上が自分の危機よりも重大な悲鳴を上げる。
病気に冒された体に暴力を加えられたぱるの身体は、投げられたタオルのようにくるくると宙を飛び、ヤーヤのほうへ飛んで来た。 『おねーさん』
ヤーヤにはぱるの声が聞こえた。
『ボクのぴりこママを守って』
ぱるはまっすぐ飛んで来ながら、長い身体を丸めた。
『ボクの力をあげるから』 ぱるはそのままヤーヤの拳に巻きつくと、メリケンサックに姿を変えた。
「ええっ!?」
「ぎゃあっ!?」
驚いて悲鳴を上げる月夜野と苗場を振り飛ばすと、ヤーヤは言った。
「アイヨー! Mode ferret!」 メリケンサックになったフェレットは、薪火太郎への怒りを形に変えた。
銀色のメリケンサックから長くはないが硬く鋭い牙が突き出し、それはドリルのように一回転してみせた。
「なんだそりゃ」
薪火太郎は面白くなさそうに舌打ちした。
「俺の楽しみを邪魔するなら、我が娘でも容赦しねぇぞ」
「娘じゃない!」
ヤーヤは吠えた。
「お前は人類の敵!」 「行くぞっ」
ヤーヤが飛びかかると、薪火太郎は背中を向けたまま、溜め息を吐いた。
「銀色白貂旋轉刀舞!」
今思い付いたばかりの技名を叫びながら、高速回転する牙を薪火太郎の肩めがけて繰り出した。 突然、薪火太郎の長髪を後ろで留めていたコヨリが切れた。
「オイ」
後頭部に凶悪な顔が現れ、ヤーヤを睨みつける。
「なんで肩なんだ」 ぎょっとして動きの怯んだヤーヤの頭を薪火太郎の手が掴む。
そのまま畳に叩きつけられ、ヤーヤは苦痛に思わず声を上げた。
薪火太郎は裏返っていた。
背中が胸になり、振り返ることなくヤーヤのほうを向き、前屈みになってぐいぐいとヤーヤの顔を畳に押し付ける。
しかし下半身は牧区上 昆子のほうを向いている。
ヤーヤから見えるのは薪火太郎の裸の臀部であり、怒張したペニスは向こうにある。
「黙って牧区上昆子が犯されるのを見てろ、この不良娘が」
そう言って上半身でヤーヤを押さえつけたまま、下半身ともう片側の腕で牧区上 昆子を犯しにかかる。
まるで宇宙生物のように不自然なその姿に、月夜野と苗場が揃って恐怖の声を上げた。 「バカにすんなよ、お前!」
後頭部の顔がヤーヤに言った。
「肩なんか狙いやがって! 俺様ナメてんのか!!」
「おお、きっつい」
前のほうの顔が、牧区上 昆子のヴァギナに亀頭を押し込みながら、言った。
「でも、入るぞ。ほらっ!」
みしみしめきめきと音を立てるように、薪火太郎の肉棒は牧区上 昆子の小さな入口に入り込み、獣のように叫び声を上げるその身体を貫いた。 「うぎゃあっ! ひっ、ひぎいぃぃっ!」
快感とは真反対の声を牧区上 昆子が上げるのも構わず、薪火太郎は奥まで難度も貫いた。
「ハハッ! あの牧区上昆子と俺がセックスしてるぜ!」
薪火太郎はヤーヤを引き起こすと、結合部を見せつけた。
「どうだ? すげぇだろ!」
「日本人は……鬼か?」
ヤーヤは涙を流しながら言った。
「バーカ」
薪火太郎は高笑いをすると、答えた。
「俺が神なだけだ」 「しかしちょっと締め付けがきつすぎるぜ」
薪火太郎は牧区上昆子に言った。
「おい、お前。もうちょっと力、抜け」
しかし牧区上は何も答えない。
歯を喰いしばって破瓜の痛みと心の痛みに耐えている。
「こりゃあちと締めすぎだ」
薪火太郎は腰を動かし続けながら、言った。
「小陰唇に歯が生えてたら食いちぎられそうだぜ」 その時、突然、牧区上 昆子の小陰唇にフェレットの鋭い牙が生えた。
「なにっ!?」
牙は薪火太郎の肉棒に噛みつくと、回転をくわえて根本からちぎり取った。
「なんだこりゃ」
薪火太郎は呆れたように自分の下半身を見つめた。
「なんなんだよこりゃ」
「ぱる!」
ヤーヤが快哉を叫ぶ。
「ぱるのがここから飛んだよ! すごいね!」
ぱるが変身したヤーヤのメリケンサックからは白い牙が消えていた。 「ふざけんなよ」
薪火太郎は股間から噴水のように血飛沫を上げながら、後ろの顔でヤーヤを睨みつけた。
「悪い娘め。お仕置きしてやる」 6月27日夜9時前、我が家のフェレットのはる君が天に召された。
リンパ腫。わずか一週間の闘病生活だった。
まだ一歳半。若いと病気の進行が早いらしい。
はるが息を引き取る前後、不思議な体験をした。
頭がはるのことしか考えられないこともあり、その体験のことも含めてあの夜のことを、この場を借りて記しておこうと思う。 外で知らない人に可愛がってもらうのが好きな子だったので、夕方涼しくなるのを待って近くの公園に連れて行った。
元気な頃のようには動けないが、それでも楽しそうに歩き回り、人や犬がいるとそちらのほうへフレンドリーに向かって行った。
3歳ぐらいの男の子を連れたご夫婦に声を掛けられ、可愛がってもらった。
もちろん病気のことや、余命2ヶ月を宣告されていることなどは伏せた。
イケメンのご主人が「可愛いなあ」と言いながら背中を撫でてくれた。
本当はもっと触り心地がいいんですよと言いたかった。
たぶんご主人、フェレットって骨と皮だけの動物なんだと思ったに違いない。 家に帰ると食事の用意をした。
筑前煮の下ごしらえをし、あとは火にかけるだけにしておいて、肉を焼いた。
はるはクーラーの効いた居間にいる筈だった。
しかしふと見ると、足元にはるがいる。
居間と台所を仕切る引き戸は閉まっている。
引き戸なら自分で開けることの出来る子だが、締めることは出来ない筈。
私が移動する時、ついて来てたのを気づかなかったのかな、と思いながら抱き上げた。
「これしたら私もいくからね」
そう言いながら居間にはるを戻し、筑前煮を火にかけようとした。
しかし、いくらやってもガスコンロの火が点かない。
さっきまで肉を焼いていたのに、元栓も開いているのに。
ガス漏れの安全装置でも作動したのかな? と首をひねりながら、後でチェックしようと思い、夕食の焼き肉を持って居間に移動した。 食事をしている間、はるは彼のベッドの上にいた。
しんどそうにぐったりしながらも、身体が痒いのか何度も後ろ脚であちこち掻いていた。
心配で食事をしながら私が見ていると、だんだんとはるが不自然なポーズを取りはじめた。
首が180度後ろを向きながら、前両脚が反対方向へ180度回り、天井を向いている。
「その格好、へんだよ」
私が言うと、はるが目を剥いた。
不自然な格好のまま、カハッと息を吐き、苦しみはじめた。
「はる!?」
私は慌てて箸を置き、近くへ寄った。
息を荒くして相当苦しそうなので、楽な格好にしてやろうと思い、抱き上げ、仰向けにしてやる。
その時にもうはるの息は止まっていた。
「はる!? はる!?」
私は呼び掛け、抱き上げた。
私の腕の中ではるの目から光が消えて行くのがわかった。 心臓が止まっているのを確認し、ぐにゃぐにゃになったはるの身体をベッドにそっと戻すと、私は号泣しながら残りの肉を口に突っ込み、外へ飛び出した。
私は辛いことがあったり不安に襲われたりするとすぐに車を運転する。
わあわあ泣きながら行く宛もなく街に車を走らせた。
それでも冷静に信号の変わり目を予測したり、他の車に譲ったりもしながら、私は車の運転が天職だななどと思って精神が安定するのだ。
3時間と少し車を走らせ、家に帰った頃には落ち着いていた。
たかがイタチが一匹死んだだけでしょ、と考えながら引き戸を開け、居間のはるを見た途端、また嗚咽が漏れた。
もう冷たく、固くなっているはるを抱き上げ、肉球を触った。
リンパ腫って何なんだよ、なんではるが死ななきゃならないんだよと何度も天を呪った。 項垂れながら、お風呂に入った。
本当は今日、はると一緒に入る予定だった。
浴槽に浸かると死にたくなりそうだったので、さっさと身体を洗った。
歯を磨こうとすると、超音波歯ブラシの電源が入らない。
明らかに充電切れだが、それなら前使った時に赤いランプが点き、震動も弱くなるので、気づかないわけがない。
ガスコンロのことといい、命が消える時には周囲のエネルギーが奪われるものなのだろうか。
お風呂を出て、ガスコンロのスイッチを入れると普通に点いた。 その頃、茨木敬は車屋にいた。
「やっぱり色はピンクがいいかな。ヤーヤが好きそうだ」
13年落ちのピンクのワゴンRを舐めるように眺めると、店員に言った。
「これ試乗できますか?」 「やれやれ……。極道モンが軽に乗る時代ですかい?」
店員は言った。
「お客さんみたいな見た目の怖いお人には、やっぱり外車のセダンに乗って欲しいもんですがねぇ……」 茨木敬「見た目で人を判断するな。それって『軽だから遅いだろう』と煽り運転する奴と一緒だぞ」 「なっ……なぜ私がアオラーだとわかった!?」
営業マンは上着を抜き捨て、正体を現した。 茨木「やはり貴様……アオラーだったか」
アオラー「ククク。ばれちまっちゃ仕方ねぇ、お客さん、勝負だ!」 アオラーは茨木の背にピッタリくっつくと、蛇行を始めた。
アオラー「オラオラ!」
茨木「くっ……! こっちが初心者の軽だからと付け上がりやがって……!」
アオラーは茨木をぶち抜くと前に回り込み、急ブレーキを踏んだ。
アオラー「オラオラてめー迷惑なんだよ!」
茨木「うわあああっ! あぶない!!!」 その頃、ヤーヤは薪火太郎に押さえつけられていた。
「ウッ、ウェイシャマ(どうして勝てないの)……っ?」
「悪い娘にはお仕置きだ」
薪火太郎の股間に新たな男根がゆっくりと生えてきた。 薪火太郎はヤーヤーの背後に立っていた。
「ハッ!?」
だがヤーヤは気付いておらず、突然消えたことに狼狽していた。
目の前から突然姿を消した彼を見つけるためキョロキョロしている。 「さあ、お仕置きタイムだ」
薪火太郎がボソリと言うと、ヤーヤは勢いよく振り向き反撃してきた。
だが薪火太郎の方が早かった、圧倒的に。
「わわっ」
薪火太郎の手捌きにヤーヤはなにも出来ず、
衣服を全て剥ぎ取られ、その裸体を晒した。 「えっえっ?」
薪火太郎の動きはヤーヤには目に追えず、
ただただぼう然とするしかなかった。。
「うーん、着痩せするタイプが」
薪火太郎はそう言いながら、ヤーヤのバストを鷲づかむ。
「なにーっ!?」
ヤーヤは胸から伝わる圧迫感にハッとし、
自分が全裸であることにここで初めて気が付いのだ。
「うるせえな」
薪火太郎は彼女の乳房を堪能する。片手に収まりきらないそれは、薪火太郎の手の動きに合わせるように様々な形に歪む。 薪火太郎は無言で反り立つポコチンをヤーヤの股間に押し当てた。 ヤーヤは抵抗しようとしたが、力が入らない。
「ううっ」
彼女は呻いた。薪火太郎のポコチンがヤーヤの膣口を押し広げながら少しずつ侵入してきたのだ。
「初めてじゃなさそうだな、まあいいか」
薪火太郎は腰に力を込めると一気に奥まで突き入れた。 「いや、待てっ!」
堪らず流を無視して茨木敬が突入して来た。
「そっ、それだけはイヤだ! それだけは許さん!」 だが薪火太郎もヤーヤもなぜか茨木には気づいていない。
「ウオア〜ッ!」
茨木は構わず薪火太郎にタックルをかました。 だが茨木は薪火太郎の体をすり抜ける。
「ファッ、何が起きたんだ・・・!?」
茨木は違和感を感じながらも薪火太郎に拳や脚の連撃を加えるが
それらはすべてすり抜けていく
薪火太郎は腰をヤーヤの臀部に打ち込み始めた。
パンパンパンと肉同士のぶつかる乾いた音が周囲に鳴り響く
「オアァァッ、やめろーっ」
その光景に茨木は発狂したように攻撃を加えるがやはり結果は変わらない。 茨木はアオラーとの勝負で相打ちとなり、すでに死んでいたのだ。 「や、やめてくれぇぇ〜え」
茨木は遂に子供のように泣き出した。
「その娘は……その娘だけは……」 だが薪火太郎はそれを嘲うかのように、
ヤーヤの臀部に腰を打ち付け続ける。腰の動きに合わせるように彼女の引き締まった臀部が波打ち、その背中の下では年齢の割には大きな乳房が揺れていた。
静寂に包まれた部屋に肉と肉がぶつかり合い、
乾いた音が鳴り響く。
それは茨木にとっては悪夢のような光景だった。今の茨木はうずくまり耳を塞ぐことが精一杯だった。
「くっ!!」
一方ヤーヤは屈辱に耐えながら反撃の機会をうかがっていた。しかしそれとは裏腹に膣の締め付けは強さを増していた。
「うおっこれは」
薪火太郎は思わず声を上げ、腰の動きを早める。
「あっ、くっ」
や そこへポリコレ騎士団が壁を破壊しながら乱入してきた。
「はわっなんだなんだッ!?」
流石の薪火太郎も驚いてイチモツをヤーヤから抜いて後退る。
「レイシストめ、しねぃっ!!」
騎士団員の一人が薪火に素早く接近して、
ポリコレソードを振り下ろした。
「がっ」
薪火太郎は咄嗟に躱したつもりだったが
自身の汗で滑ったあげく、別の騎士が繰り出した斧の一撃を腹部に貰ってしまった。
「ち、チクショウ…」
薪火太郎は薄れる意識の中、周囲を見渡す。
そこにはぱるやヤーヤの姿はなかった。 茨木敬の頭の中に黒い女の声が響いた。
《ザマァないな、茨木敬》
「ふぁっ、ふぁれふぁっ!?」
茨木は泣きながら誰何した。
《お前が主人公の為すべきことから外れようとするからこのようなことになるんだ》
「クロか!?」
《お前に平凡で平和な日常などあり得ない。辛い目に遭いたくなかったら苦しい戦いの中へ身を浸すしかないのだ》
「クロッ! 貴様っ!」
《クロではない》
黒い女の声は言った。
《私の名はメイファン。ラン・メイファン》 茨木「うるせーっ、ば〜かっ!!」
茨木は幼児退行を起こしていた。 メイファンと名乗った女の声は続けて言った。
《私は本当は日本語は喋れないのだが……》
《本当は中国語と英語とフランス語とドイツ語とヒンディー語しか喋れないのだが……》
《あ。一応チベット語とサンスクリッド語も解するのだが……》
《こんなことを言っておいて恥ずかしいことにネイティブ級なのは中国語と英語だけなんだが……》
茨木敬は言った。「もういいよ。それで?」
《今の私はいわば幽霊みたいなものだ。身体がなく『気』もなく、精神だけだ》
《ゆえにテレパシーのように日本語しか喋れないお前と会話することが出来る》
茨木はどうでもよくなってヤーヤを探しはじめた。
「おい! ヤーヤは? ヤーヤはどこ行った!?」
《ヤーヤはうまく逃げたようだ。だから安心して話を聞け》
「ヤーヤっ! どこだ!?」
茨木は慌てて早足で歩き出した。 「エッ、何事っ!?」
茨木が外へ出るやいなや、町はところどころ火の手が上がっているではないか。
辺りには人が焼ける臭いが漂い、
遠くから叫び声や銃声が聞こえる。
その様相を見て、ここが生まれ育った日本だとは思えなかった。
「ヤーヤっ!」
それでも茨木は娘の名を叫びながら戦火に包まれた街を彷徨う。 「おい」
電柱の陰からクロが声を掛けて来た。
「クロっ!」
茨木は振り返り、藁にすがるように聞いた。
「ヤーヤを見なかったか!?」
「人の話は最後まで聞けバカ」
クロは腕組みをしながら牙を剥いた。
「お前が主人公としてしっかりしてくれないから世界がこんな風に混沌としちまった」
「ヤーヤは!?」
クロの腕が突然、槍に変わり、茨木ののど元を狙った。
「何すんだてめぇ!」
茨木は間一髪避けると、クロを睨みつけた。
クロはもう片方の腕を棍棒に変えると、野獣のような目で茨木を睨み返した。
「もうお前、殺すわ」 「あ」
棍棒は既に振り下ろされ、茨木の脳天をたたき割る・・・
かに見えたが棍棒は彼の体をすり抜け地面に打ち付けられた。
茨木は既にこの世の人間ではなかった。
茨木の肉体はアオラーが起こした事故により、バラバラの肉片とかしていたのだ。 「フン。そうだったな」
クロは鼻で笑うと、言った。
「ならば私も霊体になろう」
クロの身体からうっすらと闇のようなものが抜け出し、茨木の前に立つ。
「お前……さっきの……?」
「そう」
クロから抜け出したそれは言った。
「ラン・メイファン。世界一の殺し屋だった者の霊だ」 >>749
「もちろん消すんだよ」
メイファンの霊は茨木の前でだんだんと形を作りはじめた。
「お前が邪魔だからな」
「どうやら俺はもう死んでいる。もう消す必要なんかないだろ」
茨木は自分が幽霊になっていることに気づいていた。
「現在の主人公ポイントを教えてやろう」
メイファンはメモ帳を見るまでもなく、記憶している数字を告げた。
「薪火太郎101pt、ヤーヤ91pt、飛島優太23pt。そしてお前、茨木敬が100ptだ」
「それがどうした」
「たった1pt差だ。何か主人公らしいことをして2pt得るだけでお前は主人公に返り咲く。わかるだろ? 主人公は不死身だ」
「つまり主人公に再びなれれば……」
茨木ははっとして呟くように言った。
「……生き返れるのか?」 ちゃめ『うわっ。あのスレの癖が出ちまってアンカーつけちまったw』 茨木敬の幽体は岩のように硬くなり、形を持ちはじめた。
「お前を倒し、肉体を取り戻す!」
「おいおい」
メイファンの霊はくねくねと煙のように身をよじり、バカにするように言った。
「私は女だぞ。女は殴れないお前に何が出来る」 「こんなことしてる場合か!」
茨木は我に返り、足のない足で地面を蹴った。
「女だろうと構わん! お前を倒し、日本を……じゃなくて身体をとりもろす!」
「へえ」
メイファンはバカにするように笑った。
「お前の信念って脆いねえ。いい加減だねえ、女は殴らんとか言っといて都合次第で簡単に覆すんだ?」
「ぐっ……!」
言葉に詰まった茨木は、もう何も考えずに攻撃を始めた。
「喰らえ! 『覇王色の覇気』」 そう叫びながら放った無数のパンチは、
メイファンの顔を体を、ガードした腕ごと粉砕していった。
「じゃあ僕、場違いなのでお先に失礼するね」
アオラーは三途の川へ行った。 「いたぁい」
メイファンは泣き出した。
「いたいよぅ。16歳の美少女にこんなことするなんてヒドぉイ……」 「……なんてな」
メイファンはニヤリと笑うと、全身を巨大な手裏剣に変え、回転しながら茨木に襲いかかった。
間一髪で避けたが、茨木は吃驚していた。
「全身砕いた筈だ!」
「そんなフリしたんだよ」
けろりとした顔でそう言うメイファンに茨木は続けて言葉を浴びせかけた。
「その身体……お前人間じゃねぇ!」
「ああ、人間じゃねぇよ」
「バケモノだ!」
「ああ、バケモノだよ」
そう答えるメイファンの目には少し涙が滲んでいた。 「違うわ」
茨木の背後で別の少女の声が言った。
「バケモノはあたしのほう」
茨木が振り向くと、そこには優太がいた。
優しく泣いたあとのような目をこちらに向けて歩いて来る。
「優太!?」
茨木は驚き、言った。
「お前、オカマになったのか!?」 「ゆーた?彼なら私の精神に飲み込まれたよ。」
目の前の人物はニタニタと笑った。
(まさかコイツ、飛島優太じゃ、ない…!?)
茨木は後退った。 「よう、ブフネラ菌」メイファンが言った。
「何よ、アブラムシ」優太に乗り憑っている何かが言った。
「私達は二人で一つだよな?」
「そうね。合体しましょ」
そんな会話の後、茨木の目の前で合体が始まった。 とは言っても優太の身体にメイファンがすうっと入り込んだだけだ。
「これで私達は完璧だ」
そう言うと、優太は着ているものをすべて脱ぎ捨て、全裸で襲いかかって来た。 だが茨木にふれることは出来ない。
彼は退場者だからだ。 「フン。舐めるなよ」
優太の口でメイファンはそう言うと、その口から霊気砲を発射した。
「これはただの私の乗り物だ。これ以外にも豊富に武器を搭載している」 「操縦してるのはあたしだけどねっ、キャハハハ!」
もうひとつの少女の声が発狂したような声で言った。
「動かすのはあたし、撃つのはメイ。逃げられませんよっ!」 突如、そこにヨコヤが現れた。
ヨコヤ「ククク...どうやら私の出番が来た様ですね」
優太「何者?物語をややこしくしないで」
ヨコヤ「ククク...」
遂に再登場を果たしたヨコヤ。
そう、彼は今この瞬間を待っていたのだ。
この物語は波乱を迎える事になるだろう─── 「隙あり!」
ヨコヤに気を取られていた優太のどてっ腹に茨木はパンチを入れた。 「私がうつくしいからでしょう?」
通りすがりの男にいきなり胸を揉まれた女性は、余裕の微笑みでそう答えた。 「そうだ、その通りだ」
通りすがりの男は頷いた。
「しかし、なぜだ? なぜ、君が美しいというだけの理由で、俺はこうして見ず知らずの女性の胸を揉んだ?」
女性は胸を揉まれるままにされながら、余裕の微笑みで男の話を聞いた。
「それ以前に……男はなぜ、見かけた女性が美しかったというだけの理由で嬉しくなる? もう二度とすれ違うこともないかもしれないのに?」 空中に乳房がぶら下がっている。
その先端を、男は口に含んだ。
手など使うことなく、唇と舌だけで、男はその実を揺らし、濡らして行く。
んああ、んああん。
上から女のはしたない声が降ってくる。 男の名はヨコヤ
通りすがりの死神だ
女はララ
亡霊だ ヨコヤは腕をララの下のほうへ伸ばすと、自慢のイボつきの中指を立てて子猫ちゃんを刺激した。 「何すんねん!」
ララは自慢の股間蹴り上げトルネードキックで応戦する。 ヨコヤ「お前らの出番はもうお終い、お疲れ様でした。」 「き……効いてないの?」
必殺の金蹴りを受けてけろりとしているヨコヤの顔を、ララは信じられないといった面持ちで見つめる。 その芋はこの争乱で焼かれた者達の魂が宿っていたのだ。 茨木は芋をかじった時、「主人公」とはなにかを知ってしまった。
それは王冠やステータス、超能力の類いでもない、どちらかと言えば呪いに近い
茨木は呪いに耐えきれず狂ってしまったのだ。 そこへ禅問答が天から降って来た。
「ならば、問う。『主人公』とは何ぞや」 全裸の茨木は質問に答えず、チンポをぶらぶらさせてフラフラと歩き始めた。
その目は焦点が合っておらず、どこか虚ろだ 茨木の前にクロが立っている。
「やはりこの程度か」
短い髪を後ろでまとめ、黒い肌をしたその子供は茨木を見下すような目で見ていた。
「俺は間違っていた、主人公は俺がやらなければならなかった。俺にしか出来なかったのだ・・・うひひっ」 「やってみろよ」
茨木は言った。
「出来るもんならな」 「はっ」
クロはいつの間に茨木が背後に立っていることに驚きを隠せなかった。
「そんなばかな」 「面白ぇ、なら見せてやるよほんとの主人公って奴を…!」
クロは口端を僅かに上げ、振り返りながら茨木の首筋に向かって手刀を振るう。
振るわれたそれは『気』が込められ、鋭利な刃に変化していた。 しかし、刃は表層をわずかに裂いたところで止まった。
「主人公が何だって?」
茨木は平然としている。 「しかし……わかっているのか?」
茨木は誰をともなく睨んだ。
「5ちゃんねるの良さは何の気兼ねもなくエロ描写でにるところだということを」 「社会のクズめっ、その子を離せ!」
その刹那、頭に激しい衝撃と共に鈍い痛みが走る。
「なんだお前らっ…!?」
茨木は声の方を見た。そこに立っていたのは、
今回の騒乱の元凶たるポリコレデモによる群衆だった。
彼らは武器を持っていた。 茨木はボコボコにされドブ川に捨てられたに捨てられた エロ描写を期待して待っていた読者達が茨木に空き缶を投げつける 茨木は激怒した。放屁でドブ川から飛び出した彼は、自分をボコボコにした奴らの前に降り立った。
「うっ…臭…」
ドブの臭いと茨木の体臭が混じったその悪臭は、草木を枯れさせ周囲の人や動物に深刻なダメージをもたらした。 だが茨木はクロにタマキンを掴まれてしまい力を失った。
茨木「ぐはっ」 トリスタンの持つ宝石たちが共鳴し、それらのオーラが渦を巻くようにしてバルログへと絡み付いていく。
既にトリスタンの一撃は、プレートアーマーをも貫き、甲冑ごと切り裂くだけの勢いを持っていた。
敵の剣がトリスタンを襲うと、トリスタンは素早くバルログを返し、剣を断ち切った上でそのまま軌道は敵のプレートに包まれた首を刎ね飛ばした。
敵の槍はそのまま軌道を反らされ、バルログがその槍を握っている腕を落とす。
プレートで包まれた体は腕の一本も落とされれば致命傷である。
兵士は絶望の叫び声を上げながらのたうち回り、やがて失血して死亡した。
「すげぇ、ありゃまるで台風の目だぜ…!」
味方の兵の一人がそう言った。
気がつくとトリスタンは屋敷の裏口から突入し、未だに敵味方でごった返している正門を差し置いて
破竹の勢いで進んでいった。
と、途中で梯子を見つけた。既にドロシーの姿は見失っていたが、今はそれどころではない。
早くキールを討ち取るだけだ。
キールはその時、自室で酒を飲んでいた。
既にフルプレート・アーマーを着こなし、武器も手元にある。
ただし、兜だけは邪魔になるのか、外していた。
「クソっ、下賤の者どもが…俺の意向に従わんとはな…イリシアまでも…あの売女が…!」
手前は護衛の兵たちで固められているのだろう。そろそろ出陣といった雰囲気だ。
それを小窓から見ていたのはトリスタンだ。すでに屋上に取り付いている。
しかし、この窓の大きさではどこからも侵入することはできない。つまり、やれることといえば…
「こうするしかねえぜ!!」
バカァァン!!と屋上の壁が破壊され、崩壊した瓦礫とともにトリスタンが落ちてきた。
それをキールが慌ててかわす。さすがの手馴れた動きだ。
同時に剣による一撃がトリスタンを襲う。切っ先をかわしたかに見えたが、
瓦礫とともに転倒していたこと、それと、「射程が思いのほか伸びたこと」が原因で、肩口に手痛い傷を負うこととなった。
「ぐおっ…」
「おう、貴様はあの時の…随分と威勢がいいな、略奪者め」
「キール様!!」
さらに分が悪いことに、騒ぎに駆けつけた兵が数名、護衛についてしまった。
トリスタンは味方から孤立し、敵だらけの中で、大ボスとご対面となった。
「死ねええええ!!」
再びキールによる一撃が見舞われた。その剣は細長いが、切っ先が特殊で、まるで数倍はあるかのような軌道を取る。
「この剣は…!!ぐっ…」
「俺様の”レッドファルコン”はなぁ、”無敵の剣”って言われてんだよオラァ!」
キールが武器を振るうと、周囲にかまいたちが起こる。
「んにゃっぴ…」
どうやらファルコンの巻き添えになったらしく、部下のアーマー兵の首に外れた一撃が入り、衝撃で頚椎の一部が吹き飛ばされた。
「へぇ〜、そりゃ味方も敵も区別ができないんだな。大したことねえな…!」
血を流しながらも煽るトリスタン。キールをあざ笑うと、キールは明らかに取り乱した顔になった。
「雑魚はみんな死ぬ。こいつらも、てめえもな!!ほら、死ね!イリシアは俺のもんだァァ!!」
留めとばかりに一撃がトリスタンを襲う。それをトリスタンは、素早く弾き飛ばした。
「んぴっ… ん… あれ… グゥォ…!!」
トリスタンはファルコンの軌道を見て、それを弾き返してそのままキールを狙った。それも魔力を込めながら。
兜を被っていなかったキールの頭は見事にハート型に割れ、そのまま脳漿と大量の血を吹きながら崩れ落ちていった。
オォォォォ…!!!!!
周囲の兵たちが崩れ落ちる。残党狩りとばかりにトリスタンは周囲にいた敵をあらかた屠ると、
「キールは死んだ!!もう敵はここにはいない!!!」と大声で叫んだ。
そして、そのまま梯子を降りると、凄い勢いで丘を降りていった。
この日、イリシア勢はキールの屋敷とその周辺施設を陥落させ、
次の日にはニルスの領土にも侵攻しニルス一族を捕虜にした。
バルゲル公爵はハーグ城周辺以外を全て取られ孤立、イリシアは「女王」として正当なマクドネルの後継者を主張し、
王国、王子派につぐ第三の勢力として領地と軍事力を持つに至った。
しかし、トリスタンはその後、姿を現さなかった。 同時に茨木のイチモツは瞬時に肥大化すると
先っちょからザーメンを射出した。 クロは横たわる茨木を見下ろした。
「口ほどでもないな、私の過大評価だったか」 「フッ、フハハハハハハハァ〜。これで勝ったと思うなよ!これが本当の俺様だとでも思ったか?」
「見せてやろう。俺様の最終戦闘形態!」
茨木の身体が見る見る 「お姉ちゃん〜僕のミルミルに何を入れたのさ?物凄く臭いんだけど・・・」
僕のミール貝がミルミルと トリスタンの持つ宝石たちが共鳴し、それらのオーラが渦を巻くようにしてバルログへと絡み付いていく。
既にトリスタンの一撃は、プレートアーマーをも貫き、甲冑ごと切り裂くだけの勢いを持っていた。
敵の剣がトリスタンを襲うと、トリスタンは素早くバルログを返し、剣を断ち切った上でそのまま軌道は敵のプレートに包まれた首を刎ね飛ばした。
敵の槍はそのまま軌道を反らされ、バルログがその槍を握っている腕を落とす。
プレートで包まれた体は腕の一本も落とされれば致命傷である。
兵士は絶望の叫び声を上げながらのたうち回り、やがて失血して死亡した。
「すげぇ、ありゃまるで台風の目だぜ…!」
味方の兵の一人がそう言った。
気がつくとトリスタンは屋敷の裏口から突入し、未だに敵味方でごった返している正門を差し置いて
破竹の勢いで進んでいった。
と、途中で梯子を見つけた。既にドロシーの姿は見失っていたが、今はそれどころではない。
早くキールを討ち取るだけだ。
キールはその時、自室で酒を飲んでいた。
既にフルプレート・アーマーを着こなし、武器も手元にある。
ただし、兜だけは邪魔になるのか、外していた。
「クソっ、下賤の者どもが…俺の意向に従わんとはな…イリシアまでも…あの売女が…!」
手前は護衛の兵たちで固められているのだろう。そろそろ出陣といった雰囲気だ。
それを小窓から見ていたのはトリスタンだ。すでに屋上に取り付いている。
しかし、この窓の大きさではどこからも侵入することはできない。つまり、やれることといえば…
「こうするしかねえぜ!!」
バカァァン!!と屋上の壁が破壊され、崩壊した瓦礫とともにトリスタンが落ちてきた。
それをキールが慌ててかわす。さすがの手馴れた動きだ。
同時に剣による一撃がトリスタンを襲う。切っ先をかわしたかに見えたが、
瓦礫とともに転倒していたこと、それと、「射程が思いのほか伸びたこと」が原因で、肩口に手痛い傷を負うこととなった。
「ぐおっ…」
「おう、貴様はあの時の…随分と威勢がいいな、略奪者め」
「キール様!!」
さらに分が悪いことに、騒ぎに駆けつけた兵が数名、護衛についてしまった。
トリスタンは味方から孤立し、敵だらけの中で、大ボスとご対面となった。
「死ねええええ!!」
再びキールによる一撃が見舞われた。その剣は細長いが、切っ先が特殊で、まるで数倍はあるかのような軌道を取る。
「この剣は…!!ぐっ…」
「俺様の”レッドファルコン”はなぁ、”無敵の剣”って言われてんだよオラァ!」
キールが武器を振るうと、周囲にかまいたちが起こる。
「んにゃっぴ…」
どうやらファルコンの巻き添えになったらしく、部下のアーマー兵の首に外れた一撃が入り、衝撃で頚椎の一部が吹き飛ばされた。
「へぇ〜、そりゃ味方も敵も区別ができないんだな。大したことねえな…!」
血を流しながらも煽るトリスタン。キールをあざ笑うと、キールは明らかに取り乱した顔になった。
「雑魚はみんな死ぬ。こいつらも、てめえもな!!ほら、死ね!イリシアは俺のもんだァァ!!」
留めとばかりに一撃がトリスタンを襲う。それをトリスタンは、素早く弾き飛ばした。
「んぴっ… ん… あれ… グゥォ…!!」
トリスタンはファルコンの軌道を見て、それを弾き返してそのままキールを狙った。それも魔力を込めながら。
兜を被っていなかったキールの頭は見事にハート型に割れ、そのまま脳漿と大量の血を吹きながら崩れ落ちていった。
オォォォォ…!!!!!
周囲の兵たちが崩れ落ちる。残党狩りとばかりにトリスタンは周囲にいた敵をあらかた屠ると、
「キールは死んだ!!もう敵はここにはいない!!!」と大声で叫んだ。
そして、そのまま梯子を降りると、凄い勢いで丘を降りていった。
この日、イリシア勢はキールの屋敷とその周辺施設を陥落させ、
次の日にはニルスの領土にも侵攻しニルス一族を捕虜にした。
バルゲル公爵はハーグ城周辺以外を全て取られ孤立、イリシアは「女王」として正当なマクドネルの後継者を主張し、
王国、王子派につぐ第三の勢力として領地と軍事力を持つに至った。
しかし、トリスタンはその後、姿を現さなかった。 トリスタンの持つ宝石たちが共鳴し、それらのオーラが渦を巻くようにしてバルログへと絡み付いていく。
既にトリスタンの一撃は、プレートアーマーをも貫き、甲冑ごと切り裂くだけの勢いを持っていた。
敵の剣がトリスタンを襲うと、トリスタンは素早くバルログを返し、剣を断ち切った上でそのまま軌道は敵のプレートに包まれた首を刎ね飛ばした。
敵の槍はそのまま軌道を反らされ、バルログがその槍を握っている腕を落とす。
プレートで包まれた体は腕の一本も落とされれば致命傷である。
兵士は絶望の叫び声を上げながらのたうち回り、やがて失血して死亡した。
「すげぇ、ありゃまるで台風の目だぜ…!」
味方の兵の一人がそう言った。
気がつくとトリスタンは屋敷の裏口から突入し、未だに敵味方でごった返している正門を差し置いて
破竹の勢いで進んでいった。
と、途中で梯子を見つけた。既にドロシーの姿は見失っていたが、今はそれどころではない。
早くキールを討ち取るだけだ。
キールはその時、自室で酒を飲んでいた。
既にフルプレート・アーマーを着こなし、武器も手元にある。
ただし、兜だけは邪魔になるのか、外していた。
「クソっ、下賤の者どもが…俺の意向に従わんとはな…イリシアまでも…あの売女が…!」
手前は護衛の兵たちで固められているのだろう。そろそろ出陣といった雰囲気だ。
それを小窓から見ていたのはトリスタンだ。すでに屋上に取り付いている。
しかし、この窓の大きさではどこからも侵入することはできない。つまり、やれることといえば…
「こうするしかねえぜ!!」
バカァァン!!と屋上の壁が破壊され、崩壊した瓦礫とともにトリスタンが落ちてきた。
それをキールが慌ててかわす。さすがの手馴れた動きだ。
同時に剣による一撃がトリスタンを襲う。切っ先をかわしたかに見えたが、
瓦礫とともに転倒していたこと、それと、「射程が思いのほか伸びたこと」が原因で、肩口に手痛い傷を負うこととなった。
「ぐおっ…」
「おう、貴様はあの時の…随分と威勢がいいな、略奪者め」
「キール様!!」
さらに分が悪いことに、騒ぎに駆けつけた兵が数名、護衛についてしまった。
トリスタンは味方から孤立し、敵だらけの中で、大ボスとご対面となった。
「死ねええええ!!」
再びキールによる一撃が見舞われた。その剣は細長いが、切っ先が特殊で、まるで数倍はあるかのような軌道を取る。
「この剣は…!!ぐっ…」
「俺様の”レッドファルコン”はなぁ、”無敵の剣”って言われてんだよオラァ!」
キールが武器を振るうと、周囲にかまいたちが起こる。
「んにゃっぴ…」
どうやらファルコンの巻き添えになったらしく、部下のアーマー兵の首に外れた一撃が入り、衝撃で頚椎の一部が吹き飛ばされた。
「へぇ〜、そりゃ味方も敵も区別ができないんだな。大したことねえな…!」
血を流しながらも煽るトリスタン。キールをあざ笑うと、キールは明らかに取り乱した顔になった。
「雑魚はみんな死ぬ。こいつらも、てめえもな!!ほら、死ね!イリシアは俺のもんだァァ!!」
留めとばかりに一撃がトリスタンを襲う。それをトリスタンは、素早く弾き飛ばした。
「んぴっ… ん… あれ… グゥォ…!!」
トリスタンはファルコンの軌道を見て、それを弾き返してそのままキールを狙った。それも魔力を込めながら。
兜を被っていなかったキールの頭は見事にハート型に割れ、そのまま脳漿と大量の血を吹きながら崩れ落ちていった。
オォォォォ…!!!!!
周囲の兵たちが崩れ落ちる。残党狩りとばかりにトリスタンは周囲にいた敵をあらかた屠ると、
「キールは死んだ!!もう敵はここにはいない!!!」と大声で叫んだ。
そして、そのまま梯子を降りると、凄い勢いで丘を降りていった。
この日、イリシア勢はキールの屋敷とその周辺施設を陥落させ、
次の日にはニルスの領土にも侵攻しニルス一族を捕虜にした。
バルゲル公爵はハーグ城周辺以外を全て取られ孤立、イリシアは「女王」として正当なマクドネルの後継者を主張し、
王国、王子派につぐ第三の勢力として領地と軍事力を持つに至った。
しかし、トリスタンはその後、姿を現さなかった。 トリスタンの持つ宝石たちが共鳴し、それらのオーラが渦を巻くようにしてバルログへと絡み付いていく。
既にトリスタンの一撃は、プレートアーマーをも貫き、甲冑ごと切り裂くだけの勢いを持っていた。
敵の剣がトリスタンを襲うと、トリスタンは素早くバルログを返し、剣を断ち切った上でそのまま軌道は敵のプレートに包まれた首を刎ね飛ばした。
敵の槍はそのまま軌道を反らされ、バルログがその槍を握っている腕を落とす。
プレートで包まれた体は腕の一本も落とされれば致命傷である。
兵士は絶望の叫び声を上げながらのたうち回り、やがて失血して死亡した。
「すげぇ、ありゃまるで台風の目だぜ…!」
味方の兵の一人がそう言った。
気がつくとトリスタンは屋敷の裏口から突入し、未だに敵味方でごった返している正門を差し置いて
破竹の勢いで進んでいった。
と、途中で梯子を見つけた。既にドロシーの姿は見失っていたが、今はそれどころではない。
早くキールを討ち取るだけだ。
キールはその時、自室で酒を飲んでいた。
既にフルプレート・アーマーを着こなし、武器も手元にある。
ただし、兜だけは邪魔になるのか、外していた。
「クソっ、下賤の者どもが…俺の意向に従わんとはな…イリシアまでも…あの売女が…!」
手前は護衛の兵たちで固められているのだろう。そろそろ出陣といった雰囲気だ。
それを小窓から見ていたのはトリスタンだ。すでに屋上に取り付いている。
しかし、この窓の大きさではどこからも侵入することはできない。つまり、やれることといえば…
「こうするしかねえぜ!!」
バカァァン!!と屋上の壁が破壊され、崩壊した瓦礫とともにトリスタンが落ちてきた。
それをキールが慌ててかわす。さすがの手馴れた動きだ。
同時に剣による一撃がトリスタンを襲う。切っ先をかわしたかに見えたが、
瓦礫とともに転倒していたこと、それと、「射程が思いのほか伸びたこと」が原因で、肩口に手痛い傷を負うこととなった。
「ぐおっ…」
「おう、貴様はあの時の…随分と威勢がいいな、略奪者め」
「キール様!!」
さらに分が悪いことに、騒ぎに駆けつけた兵が数名、護衛についてしまった。
トリスタンは味方から孤立し、敵だらけの中で、大ボスとご対面となった。
「死ねええええ!!」
再びキールによる一撃が見舞われた。その剣は細長いが、切っ先が特殊で、まるで数倍はあるかのような軌道を取る。
「この剣は…!!ぐっ…」
「俺様の”レッドファルコン”はなぁ、”無敵の剣”って言われてんだよオラァ!」
キールが武器を振るうと、周囲にかまいたちが起こる。
「んにゃっぴ…」
どうやらファルコンの巻き添えになったらしく、部下のアーマー兵の首に外れた一撃が入り、衝撃で頚椎の一部が吹き飛ばされた。
「へぇ〜、そりゃ味方も敵も区別ができないんだな。大したことねえな…!」
血を流しながらも煽るトリスタン。キールをあざ笑うと、キールは明らかに取り乱した顔になった。
「雑魚はみんな死ぬ。こいつらも、てめえもな!!ほら、死ね!イリシアは俺のもんだァァ!!」
留めとばかりに一撃がトリスタンを襲う。それをトリスタンは、素早く弾き飛ばした。
「んぴっ… ん… あれ… グゥォ…!!」
トリスタンはファルコンの軌道を見て、それを弾き返してそのままキールを狙った。それも魔力を込めながら。
兜を被っていなかったキールの頭は見事にハート型に割れ、そのまま脳漿と大量の血を吹きながら崩れ落ちていった。
オォォォォ…!!!!!
周囲の兵たちが崩れ落ちる。残党狩りとばかりにトリスタンは周囲にいた敵をあらかた屠ると、
「キールは死んだ!!もう敵はここにはいない!!!」と大声で叫んだ。
そして、そのまま梯子を降りると、凄い勢いで丘を降りていった。
この日、イリシア勢はキールの屋敷とその周辺施設を陥落させ、
次の日にはニルスの領土にも侵攻しニルス一族を捕虜にした。
バルゲル公爵はハーグ城周辺以外を全て取られ孤立、イリシアは「女王」として正当なマクドネルの後継者を主張し、
王国、王子派につぐ第三の勢力として領地と軍事力を持つに至った。
しかし、トリスタンはその後、姿を現さなかった。 トリスタンの持つ宝石たちが共鳴し、それらのオーラが渦を巻くようにしてバルログへと絡み付いていく。
既にトリスタンの一撃は、プレートアーマーをも貫き、甲冑ごと切り裂くだけの勢いを持っていた。
敵の剣がトリスタンを襲うと、トリスタンは素早くバルログを返し、剣を断ち切った上でそのまま軌道は敵のプレートに包まれた首を刎ね飛ばした。
敵の槍はそのまま軌道を反らされ、バルログがその槍を握っている腕を落とす。
プレートで包まれた体は腕の一本も落とされれば致命傷である。
兵士は絶望の叫び声を上げながらのたうち回り、やがて失血して死亡した。
「すげぇ、ありゃまるで台風の目だぜ…!」
味方の兵の一人がそう言った。
気がつくとトリスタンは屋敷の裏口から突入し、未だに敵味方でごった返している正門を差し置いて
破竹の勢いで進んでいった。
と、途中で梯子を見つけた。既にドロシーの姿は見失っていたが、今はそれどころではない。
早くキールを討ち取るだけだ。
キールはその時、自室で酒を飲んでいた。
既にフルプレート・アーマーを着こなし、武器も手元にある。
ただし、兜だけは邪魔になるのか、外していた。
「クソっ、下賤の者どもが…俺の意向に従わんとはな…イリシアまでも…あの売女が…!」
手前は護衛の兵たちで固められているのだろう。そろそろ出陣といった雰囲気だ。
それを小窓から見ていたのはトリスタンだ。すでに屋上に取り付いている。
しかし、この窓の大きさではどこからも侵入することはできない。つまり、やれることといえば…
「こうするしかねえぜ!!」
バカァァン!!と屋上の壁が破壊され、崩壊した瓦礫とともにトリスタンが落ちてきた。
それをキールが慌ててかわす。さすがの手馴れた動きだ。
同時に剣による一撃がトリスタンを襲う。切っ先をかわしたかに見えたが、
瓦礫とともに転倒していたこと、それと、「射程が思いのほか伸びたこと」が原因で、肩口に手痛い傷を負うこととなった。
「ぐおっ…」
「おう、貴様はあの時の…随分と威勢がいいな、略奪者め」
「キール様!!」
さらに分が悪いことに、騒ぎに駆けつけた兵が数名、護衛についてしまった。
トリスタンは味方から孤立し、敵だらけの中で、大ボスとご対面となった。
「死ねええええ!!」
再びキールによる一撃が見舞われた。その剣は細長いが、切っ先が特殊で、まるで数倍はあるかのような軌道を取る。
「この剣は…!!ぐっ…」
「俺様の”レッドファルコン”はなぁ、”無敵の剣”って言われてんだよオラァ!」
キールが武器を振るうと、周囲にかまいたちが起こる。
「んにゃっぴ…」
どうやらファルコンの巻き添えになったらしく、部下のアーマー兵の首に外れた一撃が入り、衝撃で頚椎の一部が吹き飛ばされた。
「へぇ〜、そりゃ味方も敵も区別ができないんだな。大したことねえな…!」
血を流しながらも煽るトリスタン。キールをあざ笑うと、キールは明らかに取り乱した顔になった。
「雑魚はみんな死ぬ。こいつらも、てめえもな!!ほら、死ね!イリシアは俺のもんだァァ!!」
留めとばかりに一撃がトリスタンを襲う。それをトリスタンは、素早く弾き飛ばした。
「んぴっ… ん… あれ… グゥォ…!!」
トリスタンはファルコンの軌道を見て、それを弾き返してそのままキールを狙った。それも魔力を込めながら。
兜を被っていなかったキールの頭は見事にハート型に割れ、そのまま脳漿と大量の血を吹きながら崩れ落ちていった。
オォォォォ…!!!!!
周囲の兵たちが崩れ落ちる。残党狩りとばかりにトリスタンは周囲にいた敵をあらかた屠ると、
「キールは死んだ!!もう敵はここにはいない!!!」と大声で叫んだ。
そして、そのまま梯子を降りると、凄い勢いで丘を降りていった。
この日、イリシア勢はキールの屋敷とその周辺施設を陥落させ、
次の日にはニルスの領土にも侵攻しニルス一族を捕虜にした。
バルゲル公爵はハーグ城周辺以外を全て取られ孤立、イリシアは「女王」として正当なマクドネルの後継者を主張し、
王国、王子派につぐ第三の勢力として領地と軍事力を持つに至った。
しかし、トリスタンはその後、姿を現さなかった。 『やんごとなき駄目ドラゴン』#1
「……と、言うわけで一部の気の荒い個体や血気盛んな若い者を除いて、基本的に竜族はテリトリーやタブーを
侵されない限り進んで他者を襲わない。古竜と呼ばれる格の高い竜ともなればその特徴は尚、顕著となる」
王国大学。竜人リューコを講師として招いての集中講義だ。
「よって切羽詰まった冒険の時には、刺激せずに通り過ぎる事をお勧めする。しかし多くの竜が財宝や伝説級の
武具を保持している為に、それを目当てに戦いを挑む冒険者も多くいる。心当たりがあるだろう?」
会場にクスクスと笑いが漏れる。大いに心当たりがあるのだから仕方が無い。
「先程竜族は無闇に戦わないと言ったが、覚悟して挑んでくる挑戦者は大歓迎だ。強者に戦いを挑まれ、それを
斥ける事、斥けられる事は最大の誉れだからな。むしろその為に日頃から宝物を溜め込んでると言っても良い。
これらのものは身も蓋も無い言い方をすれば餌なんだが、竜族側の真意は自らを退治する勇者には最大限の
寿ぎを持って応えたい。その褒賞がショボかったら自らの沽券に関わる、ぶっちゃけると見得だな。」
竜視点の戦いの論理。他ならぬ竜人からの言葉ゆえに説得力はいや増す。
「よって、竜族相手には十分に備えて、容赦無く、精一杯戦って貰いたい。そして勝ったなら、その事を大いに誇って
吹聴して欲しい。諸君らの今後の新たな竜退治伝説に期待する。御静聴ありがとう」
大きな拍手が沸き起こる。名高い竜人によるカリスマ溢れる講義であった。
その後は参加者各人に軽食や飲み物が配られ、幾分気楽な空気の中での質疑応答タイムとなった。
「竜と竜人はどう違うんですか?」
王国に来る前までJKだった雪乃は往年の勘を取り戻し真っ先に質問する
「竜人族は意外と種の歴史が浅い。発生条件に天然タイプと合成タイプとが存在する。
天然タイプは、人語を解する温厚な竜が人間と懇ろになってイタしたり、神として崇められた古竜が人身御供で
捧げられた娘と、折角だからとヨロシクやってしまった結果生まれた者だ。」
「……壊れてしまわないのでしょうか。竜とイタして……妄想が捗ります」
誰かが小声で呟いていたが、皆聞こえないフリをした。
「そして合成タイプは、少し昔にどこぞの神々がやたらと竜と多種族とを掛け合わせる実験に奔走した時期があ
って、少なくない竜人が生み出され放逐された。結果、従来稀にしか生まれず、互いに出会う事がなかった竜人が、
集まり、竜人同士の交配が進み、今では小さいながらコミュニティを形成するまでになった。この合成タイプの出現
が竜人族の発生の契機と言えるだろう。」
生命の創造。普段は様々な雑務に勤しむ神々も、偶には神ならではの仕事をこなすようだ。
余談だがハムスターも、ごく最近、とある森に番が目撃されたのを皮切りに、以後世界に広がっていったと言う。
閑話休題。
「竜人族の家格はどのようにして定まっておりますの?本人の実力?先祖の功績かしら?」
ヴォルケッタ子爵(笑)が扇子で口元を隠しつつ質問する。
主催者のマリーは、「はいはい、貴女はどっちもありますね……」といった様子で溜息をつく。
リューコはやや苦笑しつつ、
「強い先祖を持つ家の竜人は地力がそもそも高い。よって次代が受け継ぐ財産も多くなる。その財産を有意義に
用いて更に強くなる。結果、その竜人は発言権も強くなる。これが人間の言う家格というのかどうか……」
「しかし、やはり実力至上主義だな。どんなに金持ちでも弱ければ多種族に退治されて、ハイ、それまでだ。
むしろ……私やこどらのように偉大な古竜を先祖を持つ家系の者は、簡単に負けたりしたら、受け継いだ力
を生かせなかった愚か者と一般(竜)人以上の誹りを受ける。これが家格というならば難儀なものだな」
「ほう、ほう……ほへっ?」
ヴォルケッタを含む全員の視線が、軽食を食べてお腹がくちくなり、涎を垂らして午睡を満喫するこどらに注がれる。
続く 後輩の前で大物感を見せつける俺、ガストでもリラックス出来ちゃう庶民的なギャップを見せる俺。ガツガツやんちゃに食べる無邪気な俺。
俺、カッコいい。俺、イケてる。
深い意味はないの。それしか頭にないの。
足が短いことにも気づいてないし下品で行儀が悪いことも分からないから、あんな風にインタビュー中に足を組めるし、いい歳して中高生みたいにガツガツ食べる事が痛々しいって分からないから出来る事だし、迎え舌については多分無意識だし。
要するに、なーんにも考えてないの。なーんにも分からないの。お馬鹿なの。
許してあげてー。 中田しのぶは言う
「人は皆主人公なのよ」
中條
「あ、あんたは・・・のぶさん」 「そうか……。物語に影響を与える場面から外れたから、生き返ることが出来たんだな? 中條!」
茨木は愛しい女を抱き締めた。
「お帰り……! あや!」 茨木は中條あやにキスをすると、彼女のたわわに実る双丘にふれる。
「えっ」
あやは体の違和感に直ぐ気が付いた。彼女が下を見ると服はなにも着ておらず、全裸だった。
「かわいい…カワイイ」
茨木の指が中條の胸に食い込み、さまざまな形に歪む。
さらに茨木はあやの乳首を摘まみあげ、刺激を加えると彼女は肩を震わせた。
「ちょ、ま敬くん!?」
茨木の手が下に伸び、あやの陰核を攻めたてる あゆは潮を噴いてしまい栃木は吹き飛ばされ、壁にしたたかに頭を打ちつけられる。
「痛みが、痛みが帰ってきたよ母さん。」 「もっと早く生き返らせろや!」
中條はグーの中指を尖らせて茨木を殴った。 「フン!」
茨城は瞬間イキむと腹筋が盛り上がり、中条の拳のを跳ね返す。
「どうだ中条。俺の鋼鉄製の筋肉はお前のへなちょこな拳なぞ効かぬわ!」
(やべぇ、イキんだら、ちょっとでっちゃった) 「くさっ!」
中條は素早くその臭いを高い鼻でとらえた。
「くさっ! うんこくさっ!」 「臭いだと?笹しか食べない俺の便が臭いわけがないのだが?」 「論より証拠だ。」
中島はおもむろに俺の眼前で握っていた拳を開いた。
「ごわーっ、臭っさ〜〜-!」
俺は臭くて涙が止まらなかった。 「屁でさえこの破壊力だ。うんにょとなると、こんなものではすまんぞ!さあ、どうする?」 「どうするもくそもあるかよ?我慢してやるしかねえべ!」 「こ、これは、hgふcっsっrの5年物じゃないか?」 そう呟く中條あやはうっとりとした表情だ。彼女はカオスな展開と茨木敬や前島の糞の香りでまともな思考を奪われていた。
「ああ〜、あ?」
ボーッとしていたあやを、敬が後ろに押し倒した。
彼は全身から芳しい糞の臭いを漂わせながら、あやの秘部にグロテスクな肉棒を押し付けると一気に挿入した
「えっ、えっ、」
あやは一瞬何が起きたのかわからなかったが、下腹部の痛みと圧迫感で自分が今茨木敬に犯され照ることに気がついた。 だがそれだけだった。中條あやはこのカオスと糞の空間の影響で、体に力が入らず思考も狂気に飲まれつつあったのだ。 あやは気がつくと、茨木敬の上で狂ったように腰を降っていた。
「はっ、はぁ…はぁ…ふっ、はっ」
彼女の顔は紅潮し、その目は虚ろだ。
腰の動きに連動するように2房の豊胸が揺れ、その赤く充血した乳頭部が赤い起動を描いていた。 敬はその赤いボタンを押した。
すると、あやは痙攣をしたように震えだし、
「モード変換ボタンガオサレマシタ。マーダーモードニイコウシマス。」
と、身体が変型を始めた。 「主人公はこのあたしよーーーっ!」
中條はシザーハンズを振り上げ叫んだ。
茨木のちんぽがどぴゅっと音を立てると、中條がクロめがけて発射された。
「死ねやーーー!!!」 「モードヘンカンカンリョウ。マーダーアヤニナリマシタ。コレヨリ、テキヲセンメツシマス。」
殺人アヤは茨木の首を手刀で切断した。
血の噴水を上げながら茨木の頭が転がり、井戸に落ちる
「ホールインワンデス」 転がった茨木の首がカッと目を見開いて叫んだ。
「何じゃこりゃあああああッ!?」 そこへ松田優作が現れた。
「アンタ・・・、下手だね」 「テキヲセンメツシマス」
アヤは優作を脳天から股間までを両断する。 松田優作は真っ二つになった自分の身体を見て叫んだ。
「何じゃこりゃああああ!!!」 クロ「何だか知らんがとにかくヨシ!俺が主人公の器にふさわしい」 「テキヲセンメツシマス」
アヤはクロを脳天から股間まで両断した。 だがそれはアヤが見ていた幻
現実の彼女は全身に媚薬を塗りたくられた上で
敬にバックから突かれイき狂っていたのだ! 敬「ヌフウッ! ヌフウッ!(パンパンパンパン)」 するとパパが腰でママを後ろから激しく叩いているところだった。 飛島優太は茨木敬と中條あやの鬼気迫る性交に恐れおののきその場から退散した! 「まあまあ、みんな落ち着こうぜ。トンスルでも飲んでよう」 中條「アアッ……! オオッ! オオゥッ! ……ファックミー……ファッ、ク…ミー!」
茨木「どがあじゃあ! 感じよんのかあ!? こんがあなズ太ぇマラ突っ込まれてよぉ!?」 優太は職場へ向かったが、ポリコレ騎士団により完全に破壊されていた。
優太「反社だからシカタナイネ」 優太は声の方へ向かうと、クロが座り込んでいた
その手には瓶が握られ、何かの液体が入っている
彼女の顔は少し赤く、仄かに酒のような臭いが漂っていた。 優太「うわっ……。お前、それ、原材料人糞だぞ? 知ってんのか?」 クロ「今茨木敬をどうしゅれば殺せりゅか作戦を練ってたとこなんだ」
クロは気にしてなかった 「できればお前も協力しろ。敵対するなら殺す」
クロは一瞬のうちに優太の後ろに回り込む。 「糞を喜んで飲むようなヤツに誰が協力するかよ」
優太はしっぽでクロの鼻の頭をピシッと叩いた。 「あー? やんのかコラ」
優太は懐からピストルを取り出した。 クロの方が速かった。
優太の全身に重い拳が嵐のように叩きつけられる。
「ぐぐぐっ」
優太はただ防ぐのがやっとで、咄嗟のことだったのでジェット噴射付ブーツも使えなかった。 優太「見切った!」
優太は隙を突いてクロにアッパーを食らわした。
クロ「ぐはっ」 優太のアッパーがクロの溝落ちにめり込むと、クロは嘔吐した。その吐物が優太に降り注ぐ。
優太「ぐわぁ〜」
優太はもんどりうって倒れる。
クロ「ふはは、俺がいつも飲んでいる物を思い出したか。そう、トンスルだ!おかげで俺は全身のどこからでも、糞毒を出すことができるのだ!」 「チッ。こうなったらこっちも最終兵器を出すぜ」
優太はそう言うとズボンのジッパーを下ろした。
「俺様のキャノン砲を舐めるなよ。いや舐めろ」 クロ「そんな物、こうしてくれるわ」
クロは優太のキャノン包を毒手で剥いて、さらには高速運動をしてしまったのでございます。 「わあっ」
彼女の意外な特技に優太は射精してしまった。 「クロ、スケベしようや」
優太はクロを押し倒すと、右手で彼女の胸をわしづかみ
緩急つけながら揉み始めた。 「俺が感じると思っているのか?」
クロは動揺していなかった。 するとクロの股間から硬く大きく逞しい、根性注入棒が飛び出てきた。 否、クロの股間に優太の根性注入棒が突き刺さっていたのだ。 優太「おらあ、おらあ、おらあ!」
優太はひたすら腰を振り続けた。 一年後、優太が犯した猫が、赤子を抱いて優太の前に現れた。
猫「あなたの子よ」
その赤子は優太そっくりな人間の顔と猫の体をしていた。 「うっ、うわーっ。すっげぇキモかわいい!」
優太は父性に目覚めた。
半獣の赤ちゃんを受け取ると、抱っこであやした。
「べろべろべーっ。俺がパパだよ」 「ふぎゃーーシャーッ!!」
めちゃめちゃ引っ掻かれて小便をかけられた。 その時の傷が元で優太は死んでしまうのである。
優太は死ぬ直前、我が子に小便太郎と名付けた。
「お前を小便太郎とめいめする。ガクッ」 優太の忘れ形見の小便太郎は、父の無念を晴らすため、クロを犯すことを心に誓っていた。
「おのれ、あの糞ビッチめ。絶対に犯しまくって、父の仇をとってやる!」 小便太郎が旅立つと、優太は起き上がって精子を出しながら、しみじみと呟いた。
「うわ。めっちゃ出る……」 優太は死して射精をする。優太自身は見えないので、あたかも空中から精子が出ているように見える。
時が経ち、そこは奇跡の子宝の泉として、不妊に悩む夫婦が多く訪れる聖地となるのである。 「お前はこんなところで燻ってるような奴だったのか?」
そんな優太に手を差し伸べたのはララだった。 「お前、主人公になる気はないのか?」
優太に引っ張られたララは言った。 「俺はもう死んでんだよ。だから同じく死んでるララちゃんとエッチできるよ。エヘヘ」 「ばかやろう、俺はやるぞ!」
優太はララを押し倒し、チンポを割れ目に押し当てる。 優太のイチモツがララの陰部に押し付けられると彼女はビクリと肩を震わせた。
「やめろゆーた、お前のやってることは最低だ。主人公のやることじゃない」
ララは目に涙をにじませ、優太を止めようとしている。
「グヘヘ」 ニチャア
だが優太はそんな彼女の反応を楽しみながら、イチモツを割れ目に擦り上げる。 優太はララの太腿を押さえていた左手を離し
エロパイをわしづかみにした。
「相変わらずでけえな」
優太の指が片手では収まらない程度に大きい乳房に沈み、彼の手の動きに合わせその形を変える。 「ヌッ…ハァ、ハァ、ハァ」
ララの呼吸は荒くなっていく 「優太いっきまーすw」
優太はそう宣言するやいなや、
腰に力をぐっと込めると挿入を開始した。 「ゆーた、待って」
ララの懇願虚しく優太のイチモツは、大陰唇を押し広げるように膣を通り
あっという間に子宮口に到達した。
「あー、入っちゃったねえ」
優太はララに嗤いかけた。彼女はわなわなと体を震わせ、涙目で優太を睨んでいる。 優太はララの名を連呼しながらピストン運動を開始した 優太の糞は高く売れるので、買い求められることが多い。 ララ「ふん!」
ララが力を込めて締めると、優太の手首から先がちぎれた。
優太「ぐあーっ!」
ララ「馬鹿な男よ!括約筋は大根をも裁断するのだ!」
出血が止まらず、優太の意識は薄れていった。 その時優太の体に力が漲る。
生命の危機に瀕したことで、生殖機能が活性化したのだ。
優太「…」
ララ「まだやる気なの!?」 活性化した優太は全身が松茸の様な姿になった。
ララ「モルゲッソヨ!」 異形化した優太がララに覆い被さると、その足を強引に開かせる。
やつの股間にはチンポというわりには凶悪なブツが反り勃つており、
優太がこれから何をするのか、すでに明らかだ。
ララ「ま、待て優太、まずは落ち着こうじゃないか」
優太「…」
優太はなにも答えない。 ララ「おい、優太…おまえ乱暴する気か?こんな乙女に乱暴するのか!?」
優太は狼狽するララを無視するようにチンポを割れ目に押し当てる。
ララ「優太、お前主人公になりたくはないのか?今ならまだ戻れる、これ以上進んだらおまえは負け犬やぞ!」 さあ優太二度目のチャレンジ
今回も中折れしてしまうのか? 優太はチンポをララのマンコに突き入れた。
ララ「あっ」 ララ「などと言うと思ったか!ふん!」
ララが力を込めて締めると、優太のチンコがちぎれた。
優太「ぐあーっ!」
ララ「学習しない馬鹿な男よ!我がオメコはジャンボ西瓜をも裁断するのだ!」
出血が止まらず、優太の意識は薄れていった。 優太が目を覚ました時、周りでマントヒヒが宴会をしていた。 ララ「今よ、やっておしまい!」
マントヒヒの大群が俺に襲いかかってきた。
俺は身ぐるみ剥がされ、ヒヒカレーの大鍋に入れられた。
俺「ぐわあ、熱い!美味い!!」
俺の口に入ったカレーは、正に俺が40年間追い求めても、辿りつけなかった味だったのだ 優太「このカレーは俺のものだ。お前に食わせる分はスプーン一杯も無いわ!」
ララ「おのれぇ!独り占めとは卑劣な真似を」 優太「フンッ」
優太はチンポをララのオメコへ突き入れた。
ララ「ぐはっ!?」 その優太の後ろからマントヒヒが組み付き、優太のアナルにヒヒステックをぶち込む。
優太「ぐはっ!?」 ララ「…お前そんなにあたしとしたきゃしてやるよ、このスケベやろうがよっ」 ペニバンが激しく優太の尻をえぐる。
ヒヒは優太の口に巨大なヒヒ棒を突っ込む。 ヒヒ「おら、どうだ!?さっきまでお前のケツの穴に入ってたうまい棒はよ?もっともっと味わいな!」
ヒヒはさらに腰の動きを早くする。
優太「もがぁ」 ボルテージが上がったところでヒヒとララは体制を変え
ヒヒは優太を上に乗せ極太ヒヒ棒で彼のアナルを再び蹂躙した。
「ウギャア」
優太は先程よりも巨大化したヒヒ棒に肛門を破壊され断末魔をあげた。 痛みにより顔を涙と涎、鼻水まみれにしながらのたうち回る
しかしそれとは裏腹に、彼の下半身はパンパンに勃起し、さきっちょから我慢汁が迸っていた ララ「筋金入りの変態かよお前」
ララは優太を見下ろすと、ペニバンを脱ぎ捨て彼の上に跨がり
そして自ら股間のにチンポの先端を押し付ける。
ララは一瞬、深呼吸をしてから一気に腰を下ろし、優太のチンポが彼女のスリットに沈む。 茨木「待て待てお前ら、主人公が誰だかわかってんのか?」 ララ「主人公は私に決まってるじゃない」
マントヒヒ「ウホッウホッ!(俺だ!)」
優太「僕だよう」 茨木は優太の手刀で首がちぎれて死んだ。
なあに、主人公が変わることなんて良くあることさ。 優太は茨木を殺した事を悔やんで自害した。
茨木の伝説は永遠に受け継がれるれるだろう。
END 「よわっ……」と吐き捨てて中條あやは優太に乗り換えた 優太伝
茨木敬を討ち果たした優太の伝説が今始まる。 近所の中華屋でラーメンを食ったんだが、金を払おうとしたら、店主がいらないと言うんだ。
「今日でお店終わり。あなたが最後のお客さん。ひいきにしてくれてありがとう。これ、おみやげ」と、折詰めを二つくれた。
俺は何と言っていいかわかんなかったけど「とても残念です。おみやげ、ありがたく頂戴します。お疲れさまでした」と挨拶して店を出たんだ。
折詰めの中を見たら、餃子やら春巻やら唐揚げやらが、みっしりと詰まってる。ちょっと一人じゃ食べきれないボリューム。
面白い体験だな。得しちゃったな。と、楽しくなってさ。帰り道、友人に電話して、経緯を話してから「今、俺んとこに来たら、中華オードブルがたらふく食えるぜ」と誘ったんだよ。
すると、友人は変な事を言うんだ。 「その折詰めの中身、食ったのか?」
「食ってないよ」
「いいか、絶対食うな。それから、絶対アパートに戻るな。そうだな、駅前のコンビニに行け。車で迎えに行ってやるから」
「どういう事が全然わかんないんだけど」
「説明は後だ。人のいるところが安全だ。コンビニに着いたら電話くれ」
とにかく俺はコンビニに向かったよ。で、友人に電話した。
「着いたよ」
「こっちももうすぐ着く。誰かに後を付けられたりしてないか」
「えーと、お前大丈夫か?」
「それはこっちの台詞だな」
それから、友人と連絡が取れなくなった。携帯がつながらない。
小一時間、コンビニで待ってたけど、友人は現れない。
友人が言った、絶対アパートに戻るな、というのが、何故か頭に残ってたから、ネットカフェで朝まで過ごし、始発で実家に帰った。
いまも実家でゴロゴロしてる。
他の友人に尋ねても、そいつとは連絡が取れないそうだ。
そろそろ学校も始まるし、友人の消息も気になる。
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