【リレー小説】TPパニック 〜 殺し屋達の絆 〜
舞台は台湾の首都台北
主人公は台湾マフィアお抱えの殺し屋ファミリー「タオ一家」三男マルコム
通称「マル」、ただし偽名である
彼らは互いの名前をイングリッシュ・ネーム及び偽名で呼び合い、誰もその本名を知らなかった 国民党党首である韓 国民は、行きつけのカフェで紅茶を楽しんでいた。
群衆に紛れると彼はどう見てもただの汚いオッサンである。
それゆえ誰にも気づかれず、優雅なティータイムを1人満喫していた。 天井から韓 国民のティーカップへ、一本の細い糸が降りて来た。
あまりに細く、透明であるため、目には見えない。
その糸を伝って、ティーカップの中に音もなく透明な液体が一滴、落ちた。 「ぐぁはががが!」
満席のカフェの中で、突然汚いオッサンが首を押さえてもがき出し、他の客が一斉に振り返った。
店員が急いで駆けつけた時には既に彼は口から白い泡を吹いて息絶えていた。 「効きすぎだわ」
遠くのビルの一室から双眼鏡でそれを眺めていた女が言った。
「ジェイ、あなたともあろうものが分量を間違えたわね」 女が双眼鏡を覗き込んでいる後ろの天井から、小柄な男が舞い降りた。
「間違えちゃいねぇよ、バカ」
「わざとなの? 目立ちすぎだわ」
「俺のやることに文句を言うな。妹のくせに」
「あら。そんなにいちいちバカにすることを言うと、この場で死ぬわよ、ジェイコブ?」
「お前なんかにこの俺様が殺せるか、ブス」 女は着ている黒いチャイナドレスのスリットに手を入れると、散弾銃を素早く取り出した。
慌ててジェイコブは声を上げる。
「なっ!? そんなもの、どこから……!」
有無も言わせず散弾銃が火を吹いた。 「兄弟ゲンカはやめんか」
散弾銃の白煙が晴れると、白髪に白髭の初老の小柄な男が立っていた。
「タオ・パイパイ!」女がその男の名を口にした。
「父さん!」ジェイコブは急いでその背中に身を隠した。 「ミッション・コンプリート御苦労、ジェイコブ」パイパイは背中に向けてそう言うと、女のほうへ向き直った。
「タオ・パイパイ……。違うの、ジェイコブが私をバカにするから……」
言い訳する女を叱るでもなく、タオ・パイパイは穏やかに言った。
「バーバラも御苦労。しかし、せめて長男と長女、兄弟の上に立つ者同士、仲良くは出来んものかな」 「こんなブスと仲良くできるもんかよ」ジェイコブが父の背中からまた罵声を浴びせる。
「よくもこの麗しき29歳美女に向かってブスとか言えるわね」
自分で言うだけのことはある。長女バーバラは年齢相応の色気と美しさを纏っていた。 >>11
「ちんこはアンタよ」
そう言うとバーバラはパンティーの中から機関銃を取り出した。
悲鳴を上げる暇もなく>>11は穴だらけになったが、バーバラはさらに撃ち続けた。
バラバラの肉片と化した>>11に流し目を送りながら、彼女は言った。
「あたしがタオ一家の長女バーバラ。薫り立つ黒バラのように美しい29歳よ。覚えておいてね」 「すまんな、妹が狂暴で。俺は無差別殺人などしない。怖がらせたお詫びにこれでも飲んでくれ」
ジェイコブはそう言うと椅子を差し出し、>>12に冷たい台湾茶を勧めた。
「バーカ。お前は毒使いなんだろ? とっくに描かれててバレバレじゃねーか。下手か?」
ヘラヘラ笑う>>12にジェイコブは尚もすまなさそうに頭を下げた。
「そう。俺はタオ一家の長男、名前はジェイコブ。仰る通りの毒使いだ。格闘や火器を使うのはダメだが、毒を使わせればプロフェッショナルだよ」
「何がプロフェッショナルだw これで毒入り茶確定じゃねーか。誰が飲むかよ」
そう言って嗤う>>12の顔がみるみる紫色に変わる。
「茶には何も入ってねーよ」ジェイコブは低い背で見下すように笑った。「即効性の有機毒を仕込んだ俺の可愛い蚊ちゃんにお前を刺させただけだ。あばよ」
>>12はその場に倒れると、もがき苦しんだ末に死んだ。 「まぁたどうでもよい奴らを殺したのか」タオ・パイパイがため息を吐く。「お前らもまだまだじゃの」
「そしてこの人が我等の偉大なる父、タオ・パイパイその人だ」ジェイコブはとっくに死んでいる>>12に向かって紹介した。
「もちろん嘘の名前よ」バーバラが言う。「ちなみにドラゴンボールに出てくる伝説の殺し屋とは関係ないわ」 「まぁ、よい。お前達、今夜は皆揃って晩飯を食おう」タオ・パイパイはそう言うと、突然消えた。 巨大な円卓に兄弟達が腰掛け、料理を待っている。
タオ・パイパイと妻のオリビアは既に並んで上座に着いていた。 10代後半ぐらいのあまり可愛らしくない少女が号泣していた。
彼女は隣に座る黒髪の、暗い印象ながら透き通るように美しい姉にしつこく話しかけていた。
「お姉ちゃん、もうすぐ料理が来るけど、舌を噛まないでね」
頬をびしょびしょに濡らして心配する妹に、姉はうざそうに答える。
「当たり前でしょ。慣れてるから心配ないわよ」 「うっかりほっぺたとかも掻かないでね。お姉ちゃん全身凶器なんだから」
「それよりムーリン、あんたそれ以上泣かないで。あんたが泣くとビクビクする」 長男のジェイコブが遅れて入って来た。
誰もそちらのほうを向かない中で、背の高い短い金髪の男が立ち上がって出迎えた。
「兄貴! 今日は大物仕留めたな! さすが兄貴だぜ!」
「あぁ」ジェイコブは金髪男の名前を呼んだ。「ガンリー、お前のやかましい声を聞くと落ち着く」 「コイツ、わざと大騒ぎにさせたのよ」脚と腕を組み、待ち構えていたようにバーバラが詰った。
「標的は国民党党首だぞ」ジェイコブは冷静な声で答えた。「遅効性の毒では解毒されてしまうことも考えたんだ」
ジェイコブが席に着く。あまりの背の低さに顔だけが卓の上に覗く。 「嘘よ。派手に自分の殺しを見せたかっただけだわ」
「ふむ。バーバラ、蚊に気をつけろ」
「おい、ブス姉」ガンリーが兄を庇うように巨体を乗り出した。「テメー、いつも兄貴の悪口言いやがって。おっぱいもぎ取ってやろうか」 「コラコラ。喧嘩はやめなさい」タオ・パイパイが手を打って場を静めた。「まだ来ておらんのはマルコムと……」
「来ていますよ、ここに。パパ」
そう言いながら、戸口にブランド物のスーツに身を包んだ長身の男が姿を現した。 「やぁ、ブラザー&シスター達。ご機嫌麗しゅう」
そう言ってキザな動作で挨拶をするマルコムに兄弟全員が白い目を向けた。
マルコムは1人ずつ、全員の元に歩み寄ると、爽やかな笑顔で声をかけて回った。 「やぁ、ジェイコブ兄さん。ミッションコンプリートおめでとう」
ジェイコブは舌打ちをすると、無視した。
「気安く声かけんな、マル」ガンリーがまたジェイコブを庇うように立ち上がる。「兄貴はテメーのことが大嫌いなんだよ」
「アハハ、ガンリー兄さん」マルコムは丁寧に胸の前で手を合わせお辞儀をすると、言った。「オレはジェイ兄さんもガン兄さんも好きですよ」
「お前は近いうちに殺す、マル」ジェイコブはそう言うと、手で追い払う動作をした。 「今日もお美しいですね、バーバラ姉さん」
「あら、ありがとう」
バーバラは跪いて手にキスをするマルコムに言った。
「ジェイに気をつけなさい。アイツ本気であなたを殺したがっているわよ」
「ご忠告ありがとうございます」マルコムはウィンクをすると、言った。「でもオレがあんなノロマに殺されると思いますか?」 「元気かい? 仲良し姉妹」
マルコムはそう声を掛けると、まだ号泣しているムーリンの肩に優しく手を置いた。
「泣き虫さん、今はなんで泣いているんだい?」
「お姉ちゃんが……ご飯と一緒に自分の舌を噛み切らないかと心配で……」ムーリンは答えた。
「モーリンはそんなヘマはしないよ」マルコムは優しく微笑んで見せた。「自分の危険すぎる身体には慣れてるさ」 「モーリン、今日はまた一段と、お人形さんみたいに可愛いね」
誉めるマルコムを姉のモーリンは無視した。
「お姉ちゃん! マルのこと無視しないで! 殺されちゃう!」ムーリンが泣き叫ぶ。
「馬鹿だなぁ、ムーリン」マルコムは笑い飛ばした。「知ってるだろ? オレは悪い人しか殺さない。だから……」 「どぅ……」ムーリンの様子が変わった。「どぅあれが馬鹿どぅあとぅ……」
「やばいっ!」
モーリンが必死の形相で妹を優しく抱き締めた。爪や顎が当たらないように気をつけながら。 「いい子、いい子、ムーちゃんはいい子! だから、ね? キレないで!」
必死にあやす姉に応えるように、ムーリンは大人しくなり、またさめざめと泣き出した。
「マルコムさん!」モーリンがキッと睨みつける。「ムーを刺激しないで!」
フゥーッと安堵のため息を漏らすと、マルコムは姉妹の側を離れた。 「えぇと……」マルコムは丸々と太った四男の側に立つと、言葉を詰まらせた。
「いいよ、マルコム兄さん。気にしてないよ」四男は明るい声で言った。「また僕の名前を忘れたんだろ?」
「す……すまん」
「存在感ないからね、ぼく。いつものことだよ」
「な、名前……何だったっけ」
「○○○だよ」
マルコムはまた四男の名前を覚えられなかった。 マルコムが両親のところへ挨拶に向かおうとした時、戸口のほうから太陽のように明るい声が聞こえた。
「みんなー! 元気だった?」
声のしたほうを皆が揃って振り向く。
バーバラ以外の全員が笑顔になった。
そこには白いブレザー姿の長い髪の女性が、皆の笑顔を受けて、輝くような笑顔で立っていた。
「やぁ、キム」
「キンバリーちゃん!」
「キム姉ぇ〜! 会いたかったよぉ〜(泣)」
「お姉ちゃん、お帰りなさい」
マルコムも笑顔で声を掛けた。
「キム……。会いたかった」 次女のキンバリー・タオが入って来た時、長男のジェイコブは鼻の下を伸ばしてしばし彼女に見惚れた。
しかしすぐに、思い出したように対角線に立つ三男マルコムのほうへ鋭く視線を投げた。
マルコムは笑っていた。何か秘密を共有するような意味ありげな微笑みだった。 「まさか国民党党首が暗殺されるとはな」
二人の刑事が屋台に並んで座り、コロナビールをらっぱ飲みしていた。
「これで民主党の蔡 英語の再選がほぼ間違いなくなりましたね」
「なんだお前、嬉しそうだな」
「いっ、いえ! そんなことは……」
「まぁ、大陸にいいようにされて嬉しい奴はそういないからな」
「こんなことをしなくても、民主党の再選は間違いなかったでしょうにね」 「しかし、あれはタオ一家の長男ジェイコブの仕事だよな」
「間違いないですよね、捜査するまでもないかも」
「お前、タオ一家の兄弟、全員知ってるか?」
「知ってるつもりですけど……念のため教えてもらえます?」 「まず長男ジェイコブ。毒殺のスペシャリスト。毒を飲ませるだけでなく、あらゆる方法で標的の体内に毒を注ぐ」
「コイツに狙われたら助からないですよね」
「ただ、格闘には弱いらしい。捕まえて縛り上げるのは簡単だろうな」 「長女バーバラ。いい女らしいぜ」
「見てみたいもんです」
「ただし見た奴はすべて死んでいる。色仕掛けと暗器の使い手だと言われている」
「どんな女なのかなぁ」 「次男ガンリー。タオ一家をしょっぴけるとしたら、頼りはコイツだ。顔が割れてる」
「まじっすか!?」
「しかし個人情報が不明だ。奴らは偽名を名乗っているし、指紋も残さねぇからな」
「よく出没する場所とかないんですか?」
「あるよ。ただしあっちこっちだ。相当遊び回ってるらしい」
「ガンリーは一族1の……」
「あぁ。バカだ」
「捕まえられるとしたらガンリーですね?」
「ただし、奴は格闘においても一族1だ。捕まえるのはそれでも容易じゃない」
「まさしくバカ力の持ち主……ですか」 突如、そこに謎の金髪男が現れた。
「俺の名はヴェントゥス」 以前、国際高校野球大会で、
韓国の監督が「日本が圧縮バット使ってるんじゃないか?」っていい出して
全参加国のバット調べてみたら、圧縮バット使ってるの韓国だけだったww
あれ爆笑したなwww 「ヴェントス? 何だ君は、唐突に?」
「先輩……。もしかしてコイツ、タオ一家じゃないですか?」
二人の刑事は突然声を掛けて来たヴェントスとい名乗る男に動揺しまくった。 「確かに……。今挙げた三人の他の兄弟は面どころか名前も割れてないが……」
「でも?」
「少なくとも金髪はガンリーともう一人だけという話だ。しかもそのもう一人は、女だ」
「おい、ヴェントスとやら、お前、何者だ!?」
男は答えた。
「……ヴェントスじゃなくてヴェントゥスだ」 ヴェントゥスが謎すぎるので刑事達はほっといて話を続けた。
「さっきも言った通り、残りのメンバーは面も通り名も割れていない。しかし、殺し方に特徴がある」
「特徴……ですか」 「まず、必ず傷ひとつだけで殺す奴がいる。しかもコイツはマフィア絡みの悪い奴しか殺さない」
「一撃必殺、ですか」
「コイツなのかどうかは定かじゃないが、それらしき姿を目撃した情報はある」
「どんな奴ですか?」
「高そうなブランド物のスーツに身を固めた、長身の色男だったそうだ」
「へぇぇ……」
「コイツはその殺し方と目撃された姿から『スーパージェットスーツ』と警察内では呼ばれている」 先輩の刑事はコロナビールを一気に飲み干し、おかわりを貰うと、続けた。
「次は『人喰いゴスロリ人形』」
「人喰い……ですか」
「コイツに殺されたのは全員男だ。しかも身体中を刃物のようなもので切り刻まれ、必ずペニスを根本から切り取られている」
「ひぃ」
「しかもそのペニスが現場のどこにも残されていない。持ち帰っているようだな」
「た、食べてるんでしょうか」
「わからん。コイツも目撃情報がある。白と黒のドレスに身を包んだ若い娘だったそうだ」
「それで『ゴスロリ人形』……」 「そして、最後だ。『暴れ牛』」
「え。もしかして……」
「そう。さっき話した金髪の女だ」
「女が『暴れ牛』?」
「コイツは必ず場を荒らす」
「場を?」
「あぁ、その場にいた人間を皆殺しにするんだ。1人だけ殺す場合でも必ずその部屋を滅茶苦茶に荒らす」
「暴れ狂った跡……みたいな感じですかね」
「そう。だから『暴れ牛』。目撃情報によると金髪長髪の十代ぐらいの醜い娘だそうだ」
「よく目撃者生きてましたね」 「以上だ」
「えっ……? 先輩、タオ一家って6人だけなんですか?」
「わかっているのは、な」
「もっといそうだけどなぁ」
「父親のタオ・パイパイは引退している。母親のエレナ・タオは24年前に殺しに失敗し、死んでいる」
「えっ? じゃあ、さっきの十代ぐらいの女の子ってのは?」
「再婚したんだろうよ。恐らく『人喰いゴスロリ人形』も後妻の娘だ」 「さぁ、ぼちぼち帰って子供の面倒を見てやらんとな」
「先輩は奥さん大事にしますよねぇ。いいなぁ」
「おい、ヴェントゥスとやら」先輩刑事は振り返ると、言った。「別に用がないなら俺達は帰るぞ?」 食卓に豪華な料理が並べられた。
「わぁい。この鶏モモ肉、めっちゃ美味しい」
ムーリンは姉の心配はすっかり忘れて早速料理にかぶりついている。
「気をつけなさい。17歳は食べたものが吹き出物に変わりやすいのよ」
「違うわ、お姉ちゃん。ムーリンは若者だから、吹き出物じゃなくニキビっていうのよ」
「……くっ!」
「さぁさぁ、それじゃ食事を始めよう」タオ・パイパイが手を叩いて言った。「さぁ、皆も食べ始めてくれ」 「毎回こういう時思うけど」モーリンが姿勢正しく箸を持ちながら言った。「毒味はしないでいいの?」
「ジェイコブ相手に毒味なんて必要ないわよ」隣のバーバラが言った。「飲ませる気になれば毒味が終わった食べ物からでも毒を飲ませられるんだから」
「バーバラお姉さんは飲まされたことある?」
「いっくらでもあるわ」バーバラは平気な顔で鶏肉を口に運びながら言った。「解毒さえすれば何も問題ないのよ」 ジェイコブは食事をしながら、ずっと横目でマルコムとキンバリーの様子を窺っていた。
二人は離れて座り、話どころか目も合わさずに食事をしていた。
しかしたまに遠くで目が合うと、キンバリーが何やら恥ずかしそうに笑い、マルコムが軽くウィンクをした。 ジェイコブはガンリーに何やら耳打ちした。
ガンリーは立ち上がると、音も立てずに食事をしている四男のところへ行った。
「おい、えーと……名前が出て来ん!」
「『○○○だよ、ガンリー兄さん」四男はそう答えると、にっこりと笑った。 「うっ!?」
モーリンが口を押さえて呻いたので、楽しそうに食事をしていたムーリンが飛び上がると同時に泣き出した。
「お姉ちゃん!? 舌噛み切っちゃったの!?」
「いいえ。お箸を食べてしまっただけ」
「うわぁぁぁ! 病院! 救急車!」
「必要ないわよ。そのうちお尻から出て来るわ。ただ……」モーリンの人形のような顔が暗く曇った。「悔しいだけよ。私としたことが……」 「キンバリー、オーストラリアはどうだったね?」タオ・パイパイが隣のキムに話しかけた。
「心から楽しかったわ、パパ」キムは笑顔で答えながら、数回まばたきをした。
「そうか。すまなかったな。お前の身を案じてのことだ、察してくれ」
「えぇ、パパ。感謝してる」キムはそう言うと、家族全員の顔を見回しながら言った。「こうやってまた皆と会えたのもパパのお蔭」
普段は殺伐とした表情の兄弟達が、キンバリーに見つめられると、途端に人懐っこい笑顔になる。
「私、皆と一緒にいる時が一番楽しいの」
「キム……」ジェイコブがうっとりと笑いながら、頷いた。 「君と血の繋がりがなくて本当によかった」
ジェイコブは誰にも聞こえない声で呟いた。
「君は後妻オリビアの連れ子。俺達の母親エレナはもちろん、タオ・パイパイの血も入っていない」
ジェイコブは鼻の下を伸ばして気味悪く笑いながら、なおも独り言を呟いた。
「君には俺の妻となり、次世代のタオ一家を作ってもらいたい」 タオ一家の住む台北市内から北へ離れた草東街の温泉旅館にマルコムは1人、愛車テスラで訪れていた。
一家揃っての晩餐からそれほど後のことではない。
マルコムがスーツ姿のまま窓から山林の景色を眺めていると、ドアが外からノックされた。
「どうぞ」
マルコムがそう言うと照れ臭そうにドアが開かれ、白いブレザー姿のキンバリーが入って来た。 迎え入れるなり、マルコムは彼女の身体を抱き締めた。
髪を指でなぞり、貪るように口づけをする。
「会いたかった!」
叫ぶように囁くマルコムの目をまっすぐ見つめてキンバリーはうっとりと微笑んだ。
「私もよ、マル」 マルコムは壁にキンバリーを押しつけると、その白いブレザーを脱がせた。
脱がせながら、だんだん露出して行く肌にキスをした。
興奮して息を荒くしながらキンバリーも、マルコムの短く刈り揃えた髪にキスをする。 マルコムの手が優しく、しかし強引にキンバリーの胸を隠していた白い布を取る。
手も口も片時も休まなかった。
指で乳首を愛撫しながら唇を何度も吸う。
手が腰や尻を触りはじめた頃には唇は首筋から鎖骨へと這い、焦らすように乳首の周りを舐めた。 キンバリーが待ち焦がれていた乳首を攻撃される頃には、マルコムの指は今度は白いパンティの上からクリトリスの周りを焦らして回っていた。
たまに中へ入り込んでも陰毛を撫でるだけで、なかなかそこは触らない。
「んもうっ、意地悪!」
興奮の高まったキンバリーはマルコムの腕を振りほどくと、怒ったようにしゃがみ込んだ。 慌てたような手の動きでマルコムのスボンとカルバン・クラインのブリーフを脱がせると、そそり勃っている長物を両手で握りしめた。
「あぁ……。キムの手、赤ちゃんみたいに柔らかいよ」
「赤ちゃんなんかじゃないって、思い知らせてあげるわ」
そう言うとキンバリーは、長くて赤い舌を這わせた。
付け根から亀頭まで、長い旅をするように舐め上げた。 赤い紅を塗った唇で包むと、きつく吸い込み、舌を波立てる。
「凄いな、どこでそんなテクニックを教わった?」
「あなたでしょ? もぉっ!」
「はは。オレか。オレがあの清純キンバリーを売女にしたのか」
「売女じゃないもん」キンバリーはすねたようにそう言いながら、マルコムのペニスにキスをした。「あなただけよ」 ベッドの上で長身の男女が重なり、腰を振り合っていた。
「あ……! あ……! マルっ……!」
「キム……。綺麗だよ。白いマーガレットのようだ」
マルコムの長い剣がキンバリーの花弁の中心を突き刺し、かき回す。
「マル……! マル……あああっ!」
「泣いてる君も綺麗だよ」 「……いや、ちょっと待て」
マルコムはベッドに座り、後ろからキンバリーを突き上げ続けながら、言った。
「いつからそこにいた?」
「えっ?」
合体している二人をまるでAVを観賞するように真っ正面から見ながら、粗末なモノをしごいていた四男が声を出した。 キンバリーは快楽に心を奪われてか、目の前の四男に気づいていない。
マルコムは背面座位で彼女の膣を突き上げ続けながら四男に聞いた。
「もしかしてオレの車に乗ってたか?」
「うん。ずっと後ろの席にいたよ」
「ジェイコブに頼まれたな?」
「うん。でもマルが嫌なら嘘の報告する」
「別に兄さんを怒らせてもオレは構わないが、キムが困る。このことは秘密にしてくれ」
二人はキムの喘ぎ声と肉のぶつかり合う音にかき消されないよう、大声で会話した。
「うん、わかった。ジェイコブには二人は会ってたけどセックスまではしてなかったって報告するよ」
「いや待て。会ってたことも言うな」
「わかった」四男は頷くと、泣くような顔をした。「殺さないで」
「殺さないよ。お前は可愛い弟だ。ただし……」マルコムは優しく微笑みながら言った。「キムを傷つけたら殺す」
「わかった」
四男は何度も頷くと、部屋を出て行った。 「ねぇ」
情事が終わるとキンバリーは、子供のように甘えながら、葉巻に火を点けたマルコムに聞いた。
「誰かと話してなかった?」
「君への褒め言葉を思いつく限りに並べてたのさ」
マルコムはそう言うと、葉巻の煙を吸い込んだ。そして吐き出しながら笑った。
「君は僕の腰の動きに夢中で聞こえてなかったけどね」 「近い所まで送るよ」
そう言いながらキンバリーの腰を抱いて歩いて来たマルコムがふいに立ち止まる。
愛車テスラの後ろに停まっているドゥカティの赤い1000ccバイクを見つけたのだ。
「……敵わないな、姉さんも尾けてたのか」 「ダメな子ね、マル」
二人の背後の茂みから、赤い皮ツナギ姿のバーバラが腕を組んで現れた。
「一家のアイドルを独り占めしてはダメよ。ジェイコブに殺されるわ」 「オレがあのウスノロに殺されるとでも?」
マルコムはおどけてみせた。
「しかし意外だな。姉さんの口からキンバリーをアイドルと認めるような言葉が出るなんて」
「もちろん、あたし以外の一家のアイドル、という意味よ」
バーバラは笑ったが、目つきがキンバリーに対する殺意を浮かべていた。
「わかってらっしゃると思うけど、あたしはアンタのこと、虫酸が走るほど嫌いだから」
バーバラにそう言われ、キンバリーは怯えた少女のようにマルコムの背に隠れた。 「姉さん」
たしなめるように言うマルコムをバーバラは手で制した。
「わかってるわよ、マル。キムは一家にいなくちゃならない人物だものね」
「お姉さん……」
マルコムの背中から顔だけを覗かせているキンバリーに、バーバラは微笑んだ。
「さっきのは嘘よ、キム。仲良くしましょ」
キンバリーの顔が嬉しそうに綻んだ。
「ハイ!」
そう言いながらマルコムの後ろから駆け寄って来たキンバリーの股間をバーバラは素早く掴んだ。力を入れて強く締め上げる。 「痛い! お姉さん、痛い!」
泣き声を上げるキンバリーに笑いながらバーバラは聞いた。
「何発ヤッたの? 大人しそうな顔をして」
「姉さん!」
マルコムが怒鳴るとバーバラはすぐに手を離した。
くるりと背を向けると舞うようにバイクに跨がり、ヘルメットを被る。 「女のソレはね、お金にも、武器にもなるの」
バーバラはバイクのエンジンを始動させながら言った。
「あなたみたいに何にもならない勿体ない使い方をする人の気が知れないわ」 「あなたは朝に輝く白い薔薇。あたしは夜に艶めく黒い薔薇。永遠に相容れないわね」
バーバラはそう言い捨てるとバイクのスロットルを煽った。
「それじゃ、おやすみなさい」
あっという間に夜の向こうに見えなくなる赤い後ろ姿を見送りながら、マルコムが頭を掻きながら呟いた。
「何しに来たんだ、あの人……」 タオ・パイパイは自分の部屋にジェイコブを呼びつけた。
「なんだい、話って? パパ」
「まぁ、そこに座りなさい」
先にソファーに座ると、タオ・パイパイはお茶と菓子を勧めた。
菓子皿には子供の頃ジェイコブが好きだったチョコをかけたコーンパフのお菓子が入っていた。 「ジェイ、お前、マルを殺したがっているだろ」
少しギクリとしながら、菓子皿には手も付けずにジェイコブは答えた。
「そんなことはないよ、パパ」 「お前らは実の兄弟。仲良く出来んものかな」
「仲良くしてるよ、パパ」ジェイコブは作り笑顔でコーン菓子を手に取ると、サクサクと食べた。「みんな仲良しさ」
「とにかく」タオ・パイパイは言った。「ワシが生きているうちは兄弟で殺し合うようなことは絶対に許さん」 「それからバーバラだ」タオ・パイパイは続けて言った。「あの子はキムを殺したがっておるな」
「えっ?」ジェイコブの菓子を食べる手が止まった。
「なんだ気づかなかったのかお前ともあろうものが」
「バラがキムを嫌っているのは知っていますが……だってキムは……」
「気に入らない人間は誰であろうと殺すのがバーバラだろう」
「そんな……」
「あっ、すまん。バーバラだけじゃないな。お前もか」
「キムは俺が守ります」
「いや、だから、バーバラを殺したりするなよ?」
「バーバラ……殺す!」
「いや、だから……」 「お姉ちゃん」
薄暗い屋敷の廊下をTシャツと短パン姿のムーリンが金髪のポニーテールを揺らして歩いている。
「お姉ちゃぁん」
廊下に新しく張られていた足元のワイヤーを軽く飛び越すと、壁からBB弾が飛んで来た。
それも軽く前に屈んで避けると、ムーリンは姉の部屋のドアを開けた。 入るなり姉のモーリンが飛ばして来た吹き矢をスウェーでかわすと、ムーリンは嬉しそうに笑った。
「お姉ちゃん、またこけしの手入れしてたの?」
「えぇ。アンタなかなかすばしっこくなったわね、ムー」
モーリンは純白のドレスに身を包み、一体のこけしを左手に持って磨いていた。
「そりゃこの屋敷で育てばすばしっこい子になるよー」
ムーリンはぶさいくな顔を明るく笑わせた。 ムーリンの部屋はお姫様の部屋のようで、飾り台には所狭しと大小様々な形のこけしが並んでいる。
「最近、新しいこけしがなかなか手に入らないわ」
モーリンは暗い目をして美しい顔を曇らせた。
「それそれ、そのことよ」ムーリンは持って来た嬉しい報せを姉に伝えた。「パパから言われて来たの。お姉ちゃん、仕事だよ」
「本当?」モーリンの目の奥が輝いた。 香港マフィアの幹部ジャッキーは台湾料理を満喫すると、ホテルの一室に通された。
「綺麗どころを呼んであるんだろうな?」
台湾マフィアのチンピラに偉そうにそう言うと、チンピラはへへ、と笑って答えた。
「台湾は美女どころ。最上級のを用意してありますぜ」 「女優で言うと?」ジャッキーは涎を垂らす勢いで聞く。
「うーん」チンピラは暫く考えると、答えた。「若い頃のビビアン・スー」
「でかした!」 ジャッキーは部屋に入ると、ソファーにだらしなく腰掛け、若い頃のビビアン・スーがやって来るのを待った。
葉巻に火を点け、貧乏揺すりをしながら待っていると、ドアが外から軽い音でノックされた。
「入りなさい」ジャッキーは興奮を抑えきれない声で言った。 「お邪魔いたします」
そう言って頭を下げながら、若い頃のビビアン・スー似のタオ・モーリンが部屋へ入って来た。 「おぉ……!」
ジャッキーの顔がスケベ心丸出しの笑顔に歪んだ。
「名前は?」
「ビビアンと申します」
モーリンはそう言うと、またお辞儀をした。そして妖しく微笑みながら、言った。
「逞しいおじさまは私の大好物」 「そのドレス……あぁ、何といったかな」
「ゴシック・ロリータですわ」
モーリンはそう言うと、黒いスカートを広げて見せた。
「……たまらん! 早くこっちへ来なさい!」 ジャッキーはモーリンを膝の上に乗せると、その美しい白い顔の肌と赤い唇を目で堪能した。
「年は? 19歳ぐらいか?」
「21歳になりますのよ。脳公(旦那様)」
「よし……よしよし! まずは口づけをさせろ!」
「嫌」
「何?」 「私、早く脳公のここが欲しい」
そう言うとモーリンは白い手袋を嵌めた手を、ゆっくりと下へ伸ばした。
「脳公の下面(おちんぽ)、舐めてもいいですか?」 「いっ、いきなりか!」ジャッキーは嬉しそうに笑った。「ふっ、風呂も浴びずにいきなりしゃぶってくれると言うか!」
「はい」
頷くとすぐに、モーリンは猫のようにしなやかにしゃがみ込み、ズボンのベルトを脱がしはじめた。
「欲しい」上目遣いでジャッキーに聞く。「貰ってもいい?」
「即効OKなほどにギンギンだぜ」
主の言う通り、トランクスを脱がせると丸太ん棒のように逞しいペニスがモーリンの唇を待っていた。 「わぁ」モーリンはうっとりと笑った。「素敵。大型で怒った顔のこけし……」
ジャッキーは嬉しそうにモーリンの顔を上から眺めている。
「それでは」モーリンはゆっくりと口を開いた。「いただきまぁす」
開かれた口からモーリンの歯が現れる。毎日磨いてカミソリの刃のように鋭利になっている歯並びが、光った。 林檎を齧るような音とともに鋭い痛みを感じ、ジャッキーは声を上げた。
見るとモーリンの白い顔が返り血に彩られ、自慢のペニスが根本から無くなっている。
思わず意味不明な声を上げながら懐のピストルを取り出そうとしたジャッキーの右腕が飛んだ。
「んふぅ」
ペニスを口中に含んだまま、モーリンはうっとりと笑っている。
長く伸ばしてマニキュアで鋼の硬度に固めた爪が振るわれ、左腕も斬り落とす。 「おっ……、おいっ! 殺し屋だ!」
廊下の用心棒に向かって叫ぼうとしたジャッキーの声は、しかしモーリンの頭で塞がれた。
勢いよく立ち上がったモーリンの黒髪がジャッキーの口に突き刺さる。赤いカチューシャには毒針が仕込んであった。
さらにモーリンは顎を高く振り上げ、ジャッキーの耳に打ちつけた。
顎の下から長い針が伸び、鼓膜を突き破って反対側の耳へ貫通する。
それがとどめだった。 「どんなの?」
机に座った四男がモーリンに聞く。
モーリンは自慢するように口を開き、ピンクの舌に絡めたジャッキーの男根を出して見せた。
「今度のはでかいね」 ジャッキーの男根はモーリンの口の中で、最大サイズのまま固まっていた。
「立派でしょう?」
そう言って笑うと、モーリンは弟に命令した。
「明日までよ。それまでは待てない。早く仕事にかかれデブ」
「任してよ」
四男は卑屈な笑いと自信たっぷりな目の輝きを同時に浮かべると、自分の胸を叩いた。
「最高の作品に仕上げてみせる」 自分の部屋に帰るとモーリンは、飾り台に並んだこけし達に話しかけた。
「明日、新しいお友達が来るわよ」
こけし達は何も言わず、しかし描かれた可愛い顔で笑っていた。
「今度の子は超大型巨チンよ。仲良くしてあげてね」 刑事二人が小吃店で並んで涼麺を食べながらTVを観ている。
モンキーズ対ライオンズの試合が中継されていた。
「12対13か。いい試合だな」
「しかし我が国のプロ野球の超打高投低はどうにかならないんですかね」
「大規模な八百長やってた頃のがまだ人気あったな」
「大王様も日本のプロ野球に行ったらさすがに四割打ててませんし」 刑事部長が入って来て、隣に座ると言った。
「コラ、お前らはプロ野球解説者か?」
「あ、すいません」
「ハハ……」
刑事部長は持参したペットボトルの水を飲むと、言った。
「タオ一家の奴ら、今までは国内のマフィア同士の抗争に関わる仕事を主にしていたが……」
「今回は香港マフィアでしたね」
「その前は政治家」
「何かが変わったのか知らんが、あまり良くない兆候だな」
「今まで通り、カス共の間だけでやっててくれりゃよかったのに」
「いや、それも良いとは言えんが……」 「今回は『人喰いゴスロリ人形』の仕事か」
「えぇ。例によって男根が切断されていました」
「喰ったのかなぁ……」
「目撃者は?」
「いません。被害者のボディーガードはすべて薬を飲まされ眠っていました」
「女を手配したチンピラがいるだろう」
「そいつが行方不明で……」
「ふむ」刑事部長は涼麺を一啜りすると、言った。「やはり『逃がし屋』がいるな」 金髪男が刑事部長の隣に突然座ると、言った。
「俺の名はヴェントゥス」 「またお前か……」
「誰だ?」
「わかんないけどヴェントゥスって名前の奴です」
馬鹿にするような目で見て来る刑事達に、ヴェントゥスは阿呆を見る目で見返すと、立ったまま言った。
「おい、お前ら、これはいつリレー小説になるんだ?」
「うっ」
「それは……」
「だって……」
狼狽える刑事達をもう一度見下すと、謎の金髪男ヴェントゥスは、何も注文せずに店を出て行った。