瞼の裏を眺めている間だけは、死ぬことはないと思っていた。
眼を閉じればまた明日が来る。そう思っていた...
 規則的に揺れるジープに起こされてから、しばらく外を見つめていた。
真夜中に降り積もった雪はその勢いを和らげていた。
ペテルブルグを経ってからかれこれ20日あまりが経っていたが、いまだに僕らはベルリンにたどり着けずにいた。
数10km前にあった教会6日程世話になって、食料や水の備蓄を増やしてから南下を続けていた。
ついこの間までは情報部隊として前線に立たされていたのに、こうしてみればえらく静かだった。
反対に無線機をもう2週間も入れずに突っ走るような真似をしてしまったのだから当分国へは帰れないだろう。