「あ、あれはハッケヨイなのか!?」
「カハハハ…そうみたいですぞ」
トーンの異なる2人の男の声が、ハッケヨイのいる玄室に響いた。
「ブヒィィ!ブヒィィイイッ!!」
狂ったハッケヨイはトロールよりも下等な怪物となっていた。
赤く濁った小さな目と上を向いた大きな鼻、そして汚らしい涎を溢れさせた口の両端から上向きに突き出した大きな牙。
その獣面から受ける印象はトロールと呼ぶよりも、むしろ直立した豚そのものである。
それは邪悪な退化の道を辿ったトロールの成れの果て―――
亜人種の中でも最も下等な存在とされるオークであった。
「ブヒヒヒィイッ!」
奇声を張り上げ、贅肉を波打たせたハッケヨイが2人のもとに走り出した。
その澱んだ頭脳に獲物を貪る様を思い描いているのか、豚ですら顔を背けるような浅ましい喜悦の表情を浮かべている。