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リレー小説「中国大恐慌」

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0001創る名無しに見る名無し
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2018/11/21(水) 05:01:20.00ID:Ll07jrjG
2018年11月21日、中国東部を超巨大規模の停電が襲った。
北京周辺から上海周辺にかけて、地上から電気が消え、人々はパニックに陥った。
これはそんな架空の中国が舞台の物語である。

主人公の名前は李青豪(リー・チンハオ)。
29歳の青年である。通称は「ハオさん」。 
愛称は「ハオ」。
0556創る名無しに見る名無し
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2018/12/26(水) 21:52:54.39ID:xLIYasjn
ハオは持ち前の恐ろしいまでのプラス思考をふんだんに用いて立ち直った。

「シューフェンが癌だって? ……」
ハオは暫く考え込んでから、言った。
「癌は治る病気です! って言うよね?」

「シューフェンがリウ・パイロンと出来たって? ……」
ハオは何かを思い出しながら、言った。
「だからそれ、デマだってばw」

「俺はリウ・パイロンに負けた……。それは事実だ」
ハオはその時のことを思い出しながら、言った。
「でも俺って『これからの人』だろぉ?」
「『これからの人間』が一番恐ろしいんだぜぇ?」
ハオは一月一日が誕生日であり、もうすぐ30歳であった。
「何かを始めるのに『早い、遅い』なんてない!」
一部の天才のみに当て嵌める真理であった。
「うるさいな『地の文』! お前だって??????$」
ハオは地の文が深く傷つく言葉を並べ立てた。

「さぁ〜! ……ってことで、これから何しよっかなぁ〜」
ふと気がつくと施設内には人の気配がなかった。
メイファンも今朝どこかへ出掛けて行った。
「あれ?」ハオはひとりごちた。「これって逃げれるじゃん?」
しかしお金が一銭もなかった。
メイファンの部屋を漁ろうと思ったが鍵がかかっていた。
習近平の部屋に入ろうとしたらセキュリティ・アラームが鳴り出した。
「うーん?」
自分の部屋のTVでも質屋に売ろうかと思ったが面倒臭かった。
「寝るか?」
ベッドに寝転んだところで枕元の自分のスマホに気がついた。
0557創る名無しに見る名無し
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2018/12/26(水) 23:06:27.79ID:xLIYasjn
ハオはスマホを持って外へ出た。
玄関先程度ではまだ検閲プログラムの圏内であるらしく、メールを送信しても帰って来た。
スマホを持ってどんどん歩いた。『施設』がどんどん小さくなり、やがて見えなくなった。
住宅街を抜け、市場を抜け、古都西安の由緒ある町並みに足を踏み入れた時、ようやくスマホが何かを受信した。
ウィーチャット(中国のLINE)のメッセージ受信画面に「樹芬(シューフェン)」の白い文字がピンク色のハートマークとともに表示されていた。
「やったぞ!」
浮かれ気分でそれを開こうとすると、またシューフェンからのメッセージが入って来た。
「あっ?」
次々と入って来た。止まらなかった。
ハオはそのいつ終わるかわからない連続受信を、鳩の群がる公園で、うきうきしながらずっと見つめていた。
「な? やっぱりシューフェンは俺の彼女だろ?」
153件目を最後に受信ラッシュは止まった。ハオは始めから読み始める。

最初のほうは「生きてる?」「無事?」「どこにいるの?」等、短いメッセージばかりだったが、
毎日必ず一通ずつ送信されており、ハオはそれらを恥ずかしいほどの笑顔で隅々まで読んだ。
やがてシューフェンが女優になれるチャンスを掴んだ頃から長文の報告メッセージが多くなった。
『ハオ、聞いて聞いて〜!(絵文字)凄いことがあったのよ!(絵文字)何だと思う?(絵文字)ヒントは(ツイ・ホーク)。そして(映画)。最後に(主演女優)。
これだけで分かったらアンタのこと逆に(え。本当はデキる奴だったの!?)って怖くなるわ……(青ざめた絵文字)』
ハオはハハハと口に出して笑いながら読んだ。
しかし映画の撮影が始まってからメッセージは3日に一通程度にペースが落ちる。
「忙しかったんだなぁ。しょーがねぇよな、許す!」
それが3ヶ月前からは2ヶ月以上に渡って一通も届いていなかった。
「……」
しかしこの10日以内になると、5通も届いていた。ハオは喜んでそれを読む。
『潰れそう』
『ロンがね、側にいてくれないの。(ずっと側にいる)って言ってくれたくせに』
『ハオでもいいから側にいて欲しい』
『最近、ハオとのこと、よく思い出すよ。ハオはあたしが一番落ち着ける場所だったね』
それが二日前。
そして一番新しいメッセージは、今日だった。
『ロンと結婚します』

「は?」
ハオは最後のメッセージを何度も何度も読んだが、意味が取れなかった。
「は? は?」
思わずシューフェンに電話をかけた。
呼び出し音が鳴る。相手は出ない。
ドキドキしながらハオは直立不動で待った。
7ベル目で繋がった。「……もし……もし?」
電話の向こうで女の声が言った。
「やかましいわ、このカスが!!!」
「は? は? シュー……誰?」
「師匠の声もわからんのか。糞弟子」
「メイファン!? なんで!?」
「今、シューフェンは麻酔が効いて眠っている」
「な……なっ!? 今度はシューフェンに何をするつもりだ!? 解剖か!?」
「アホ。頭の爆弾これから取り除くんだよ。今、西安は○○街の海亀歯科にいる。シューフェンに会いたけりゃ、来い」
0558創る名無しに見る名無し
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2018/12/26(水) 23:39:03.39ID:xLIYasjn
「リー・チンハオからか」
手術衣を着たリウが言った。
「あぁ、ここに来るかも知れん」
同じく手術衣姿のメイファンが準備を始める。
手術台には髪を上で束ねられたシューフェンが仰向けに寝ている。
「どんな奴だか見てみたくはあった」
「本当に見るのか?」
「? 見たらいけないのか?」
「いや、手術を」
「あぁ」リウは少しイラッとした顔をしてから言った。「ちゃんと除去するのを見届けたいからな」
「脳味噌でるぞ?」
「自分のを見たことがあるぐらいだから大丈夫だ」
「そうか」
と言いながらメイファンは猿の玩具のシンバルを指で挟み、回転させるとちょうど歯医者さんの使うドリルのようにキュンキュン音が鳴りはじめた。
それをシューフェンの頭に緊張感も何もなく当てると、スイスイと肉が切れた。リウが少し「うっ」と言った。
「立ち会い出産でインポになる旦那、多いそうだぞ」メイファンが手術を進めながら言った。「インポにはなるなよ?」
パカッとシューフェンの頭が蓋のように取れ、鮮やかな色の脳味噌が露になった。
リウはなにやら興奮しているようだった。
メイファンは左側側頭葉に貼り付いている小さな黒いセロファンテープのようなものをペロリと取ると、すぐに蓋をかぶせ、白い手を当てた。
「終ーわりっ」
わずか1分もかからず手術は終了した。
血の1滴も出なければ傷跡もまったく残らなかった。
リウはマスクを外した。ハァハァ言っていた。
0559創る名無しに見る名無し
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2018/12/27(木) 05:13:35.49ID:5AnEyMlF
虚勢をはって、前向きになっていたハオもあの一文には耐えられず
うつむきその場にペタりと座り込んでしまった。
0560創る名無しに見る名無し
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2018/12/27(木) 06:28:59.88ID:Qrxyx0At
「オーマイガッ」
ハオはその声を聞くと顔を上げた。
あたりを見渡すと通行人たちが
「オーマイガッ」と叫んでいる。

「・・・なんだこれ」
ハオは不気味に感じその場を立ち去るために走り出した。
0561創る名無しに見る名無し
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2018/12/27(木) 14:17:25.93ID:fpIUUBUu
「メイ、ララ、ありがとう」
そう言うとリウは頭を深く下げた。
「ララなんて人間はいないんじゃなかったのかよ」
メイファンがその頭を踏みつけながら笑った。
「いや、認めるよ」リウはメイファンの足を掴もうとしたが、逃げられた。「考えたらお前は何でもアリだからな」
「今さら認められてもな……なぁ、ララ?」
ララは何も答えなかった。
「ララ?」
最近ララはなぜかとても物静かだった。いつものお喋りララがどこかへ行ってしまっていた。
ララの沈黙の意味を何となく読み取ってメイファンは言った。
「言っとくがな、リウ・パイロン。お前のために手術したんじゃねーからな」
「わかってるよ。愛弟子のためだろ」
「そうだっけ?」
「そうだろ」
「うーん。考えたらよくわからなくなった。何のために爆弾除去したんだっけ。わからんから、戻すか」
「殴るぞ」
メイファンはケラケラと笑った。
「ところでお前、俺のことリウ・パイロンなんてフルネームで呼ぶのやめろ」
「じゃあ『メカゴリラ』でいいか?」
「昔みたいにまた『お兄さん』って呼べよ」
「そんな呼び方をした記憶はないな」
「じゃあ何て呼んだ?」
「『お兄ちゃん』だろ」
「よし、呼んだな?」リウは満足そうにニヤリと笑った。
「……糞くだらねー」
「もっと呼んでくれ」
「馴れ合おうとすんな」メイファンは厳しい口調で言った。「私達とお前は敵同士なんだ。今日別れ、明日もしまた出会ったなら殺し合いをする……」
「そうか。なら言いにくいな」
「な、何をだ」
「お願いがあるんだが」
「言ってみろ」
「無理だと思うが」
「いいから言ってみろ」
「お前のいる『施設』に暫くシューフェンと住ませて欲しいんだ。無理を言うようだが」
「うん、いいよ」
「俺は恐らく警察から指名手配されている。爆発物秘匿か何かの罪でな。だから暫くの間隠れ場所が欲しいんだ」
「だから、いいってば」
「『施設』なら警察の手は届かんし、俺もお前がいればトレーニングには困らんし、何よりシューフェンが最高の医療を受けられる」
「わかったから、来いよ」
「……なんて、お前の都合も考えない勝手なお願い……やっぱり無理だよな?」
「聞こえててわざと言ってるだろ!!」
リウは瞑っていた目を開くと悪戯っぽく笑ってから両手を前で合わせてお辞儀をし、感謝の意を示した。
「メイ」メイファンの口からララの声がした。「説教部屋へ行って」
「ここ海亀先生の病院だぞ」メイファンはそう言いながらも歩き出した。「喫煙室でいいか?」
0562創る名無しに見る名無し
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2018/12/27(木) 14:56:32.95ID:fpIUUBUu
ハオは結局、海亀歯科へやって来た。
複雑そうな顔で看板を見上げ、呟いた。
「歯の癌なんてあるのか……?」
玄関から入るとまず喫煙室があった。中から何やらぶりぶりと激しい音が聞こえて来る。
「こんな所でうんこしているのか……?」
ハオは正体不明の非現実感に包まれていた。
スリッパを履き、中へ進むと手術室があった。誰もいない。
自分でもなぜだかわからないがハオは足音を殺していた。泥棒のように廊下を進むと入院室みたいな部屋があり、ドアが半分開いていた。
ゆっくり覗くとベッドに身を起こして笑顔のシューフェンがいた。
「本当に何か手術を受けたなんて思えないほど普通な感じよ?」と誰かに向かって喋った。
「麻酔がまだ残っているから動いちゃダメだぞ」
傍らでリウ・パイロンが林檎を剥いているのがようやく目に入った。
「林檎は身体を温めるんだ。どうぞ」そう言ってリウは切った林檎を口に咥えると、シューフェンへ差し出した。
「ありがと、王子様」そう言うとシューフェンは口で林檎を受け取り、二人はそのままキスをした。
ハオは目の前が真っ暗になり、その場に倒れかけた。
しかし何とか気を持ち直すと、帰ろうかその場に踏み込んで行こうか迷いはじめた。
そんな挙動不審な男を見つけて言葉を失っているリウに気づき、シューフェンは入口のほうを見た。
幽霊みたいにフラフラしているその男を見、暫く声を失っていたが、男が帰ろうとしたので急いで声をかけた。
「ハオ?」
0563創る名無しに見る名無し
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2018/12/27(木) 15:08:53.39ID:fpIUUBUu
ハオが嫌そうに振り向くと、シューフェンはハオの「オ」の形のまま固まった口をして、目を猫のように丸くしてこちらを見ていた。
ハオは顔の大きい猫に見つかった弱い猫のように、シューフェンと目を合わせないようにしながら何やらぶつぶつ言った。
シューフェンが立ち上がり、ハオに目を釘付けにしたまま近づいて来るのがわかった。
すぐ側まで来たシューフェンに向き直り、ハオは「シューフェン! 会いたかった!」と泣き顔で叫んでハグをしようとした。
ハオの左頬にシューフェンのパンチが入った。ハオは床に叩きつけられた。
「シュっ、シューフェン……?」
「どんだけ心配したと思ってんのよ馬鹿ハオ!!!」
0564創る名無しに見る名無し
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2018/12/27(木) 15:15:14.11ID:fpIUUBUu
「どこほっつき歩いてたのよ! 連絡もしないで!」
シューフェンは鬼の形相だった。
「その……。電波の検閲が……」
「言い訳すんな! 電話したら出ろ!」
「出れねぇし、お前上海で……」
「死んだと思ってたろ! 人を無駄に悲しますな!」
「え……。悲し……?」
シューフェンはぽろぽろと涙をこぼしはじめると、膝をついてハオに抱きついた。
「よかったよ〜! 生きててよかったよ〜」
0565創る名無しに見る名無し
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2018/12/27(木) 15:19:58.80ID:fpIUUBUu
リウはあっけにとられてその様子を見ていた。
やがて口を挟める間が空くと、そこにボケをかました。
「あの……え? 弟さん?」
シューフェンは涙を拭きながら振り返ると、言った。
「私の大切な男的朋友(男友達)なの」
「違います」ハオはシューフェンを抱き締めながら訂正した。「どうも。シューフェンの男朋友(彼氏)のリー・チンハオです」
0566創る名無しに見る名無し
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2018/12/27(木) 15:56:39.91ID:fpIUUBUu
リウはハオのセリフを無視してシューフェンをベッドへ戻した。
「動いちゃ駄目だって言ったろ。ほら林檎」
シューフェンはスプーンに刺さった林檎を受け取ると、ハオに言った。
「ハオも林檎食べる? ロンが剥いてくれた林檎、美味しいのよ」
「剥く人関係ねーだろ……」ハオは立ち上がった。
それを見てリウも立ち上がり、ハオに向かって姿勢を正すと、言った。
「初めましてリー・チンハオ。リウ・パイロンだ。君に会えてとても嬉しく思うよ」
リウがハオと会うのは実はこれが3回目であったが、リウはまったく覚えていなかった。
ハオはまずシャツにサインして貰うと、言った。
「シューフェン……お前、癌なんだって? 嘘だよな?」
「ハオ……。ロンに挨拶を……」
「嘘だよな?」
諦めた顔をしてシューフェンは答えた。「本当よ」
ハオは口をパクパクさせたが言葉が出て来なかった。
「膵臓癌なの」シューフェンは優しく微笑むと、言った。「膵臓癌はね、一番自覚症状のない癌なんだって。だから発見も遅れたんだけど、苦しみも今のところ少ないの」
「嘘つけ!!」ハオは怒鳴った。
「本当なのよ」
「嘘つけ!! だって>>108に肺癌だって書いてあるぞ!? いつの間に膵臓癌に変わったんだ!? テキトーなこと言ってんじゃねぇ!!」
ハオはそう言って涙を流しながら激怒した。
シューフェンもリウも何を言って話を続けたらいいやらわからなくなってしまった。
0567創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/12/27(木) 16:02:54.03ID:fpIUUBUu
とりあえずハオはリウ・パイロンに自分とシューフェンの仲を見せつけてやりたかった。
何をしたらいいか考えるまでもなくハオは動いた。
シューフェンがスプーンに刺して持っている林檎に近づくと、反対側を齧った。
「あ。食べる? じゃあお皿……」
そう言って皿を取ろうとしているシューフェンに向かって、咥えた林檎を差し出した。
「ひゅーふぇん、ほら、キスしよ」
0568創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/12/27(木) 16:14:01.41ID:fpIUUBUu
「ごめんね、ハオ」
そう言って優しく微笑んだシューフェンは美しかった。最近ずっと使用しているグラビアそのままの眩しさがそこにあった。
「私とロン、結婚するのよ」
ハオの脳裏に幸せだった恋人ととの日々が走馬灯のように流れた。あの恋人は今、もうどこにもいなかった。
「本当にごめん」
そう言って頭を下げたシューフェンのつむじが見えた。いつもベッドで抱き締め、くりくり弄っていたつむじだ。もうそれをくりくりすることは永遠に出来ないのだった。
「うわあぁあぁあぁあ!!」
そう叫ぶとハオは病院を走り出た。

走って、走って、疲れて止まった。
燃え殻のような夕陽が世界を包み込んだ。
西安に海はない。しかしハオの心はシューフェンと暮らした上海の海にいた。
ハオは膝を抱いてうずくまると、シューフェンの好きなデヴィッド・タオの懐かしいヒット曲を心を込めて口ずさんだ。
0569創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/12/27(木) 16:32:54.23ID:fpIUUBUu
https://youtu.be/q5b2eJzA_8U
「沙灘(砂浜)」 日本語訳:リー・チンハオ

誰もいない この砂浜
風が吹き抜ける 冷たい海岸
僕は靴の砂を軽く払い 足跡を振り返る
一人きりだ 一歩一歩が なんて寂しいんだ

海は緑が多く見え 空は青を多く含む
あの愛の物語は 無念を多く含む
未知の世界のように 海と空の間に遊び
最も深い場所にたどり着いた
するとまた君が現れる そして僕は既に 棄てられていた

僕は波音を聞く 優しい息吹
僕は雲を見る どこへ流れて行く
方法はあるのだろうか 本当に君を忘れられる そんな方法が

Only Blue Only Blue
愛は人を憂鬱にさせる
僕の心は 僕の心は 真っ青だ……

僕は心から探している 一艘の船を
この砂浜から遠く離れて行ける 一艘の船を
いつも戻って来てしまう 同じような海辺に
また君への未練に浸ってしまう

想い出す君は 少しブルー
いやしないんだ! 君みたいになれる人なんて!
君が残して行ったものは 少しのブルー
0570創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/12/27(木) 18:20:48.76ID:MBaNrYG/
ハオはもう永遠にシューフェンには会えないのだと思った。
しかしその日のうちに、シューフェンとリウ・パイロンが『施設』に引っ越して来た。
しかも部屋はハオの部屋の隣だった。
0571創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/12/27(木) 20:08:53.50ID:+SmJaRt0
「ありがとう。お世話になるよ」
「メイファンちゃん、よろしくね」
二人は簡単な荷物だけを下げて引っ越して来た。
「遠慮せずに何でも好きに使ってくれ」
メイファンは目をキラキラさせて迎えた。
何しろ大好きな女優リー・シューフェンが自分の家に住むのだ。これ以上嬉しいことはそうそうない。
そしてそのそれ以上に嬉しいこととして、大大大好きななお兄……メイファンはぶるぶると首を振って今考えかけたことを吹き飛ばした。
しかし迎えに出たのはメイファンただ一人だった。主の習近平も、メイドやコックも、ハオも姿を現さない。
なんだか自分の嬉しさと反比例する現場の寂しさに、メイファンは提案した。
「なんなら友達も呼んでいいぞ」
0572創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/12/27(木) 20:44:04.40ID:+SmJaRt0
ハオは行くあてもなく、自分の部屋に戻っていた。
ドアに鍵をかけてずっと引き籠っていると、夜遅くになって誰かがドアをノックした。
『シュ……シューフェン?』
そう思って暫く見ていると、ドアの壁が柔らかく溶けはじめ、白い手が沼の底からせり上がって来るように現れ、ノブを掴むと回し、鍵を外した。
いつもよりも真っ白なララが入って来た。
白いネグリジェを着て、いつもの笑顔が消えた幽霊のような顔をして、光の加減からか髪の毛まで白く見えた。
「お兄ちゃん、可哀想」
ララは囁くような声で言った。
「ララも、可哀想」
意味のよくわからないことを呟くと布団の中に潜り込んで来て、すぐ目の前に顔を出した。そして言う。
「ずっと泣いてたのね? こんなに鼻や目の下が赤く擦り切れるほど……」
そう言うララも赤い目をしていた。
「ねぇ、慰めてあげる。エッチしよう」
そう言うとララは寝転んだままネグリジェを脱ぎはじめた。
「あいつらに聞こえるぐらいの声を出してあげる」
「そんな気分じゃない。ほっといてくれ」ハオはララに背中を向ける。
「可哀想なひと……」ララはその背中に白い手を当てた。「一緒に寝るのは構わない?」
ハオは何も答えない。
暫く間を置いてララが言った。
「私、どうしてお兄ちゃんに……ハオさんに引かれるのかわかった気がする。私は似た者同士なのよ」
ハオが鼻を啜った。
「他人にいいようにされて、押さえつけられて……自分の言い分は聞いて貰えなくて、良い人呼ばわりされることで納得させられて……」
ハオはまた鼻を啜った。
「ハオさんも怨念が溜まっているでしょう?」
「怨念なんかねーよ」
「またそんな風に自分を良い人にして納得しようとする」
「怨念なんかどこにおんねん」
「いつか……私の力を貸してあげるわ」
ハオは寝たフリを始めた。
「ハオさんのカンフーの才、私の強大な『気』……。私は自分自身が『気』だからなのか、それをうまく使えないけど。ハオさんが使ってくれれば……」
ララはハオの背中に額をつけた。
「きっと素敵な怨念戦士が生まれるわ」
そしてハオの中に空いた穴を探した。シューフェンを失った悲しみで心は穴ぼこだらけだった。まるで穴だらけのチーズのように、固い心に丸い穴がいくつも空いていた。ララは思った、
『あそこ……もう少し穴が広がれば……入れそう』
0573創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/12/27(木) 21:20:46.40ID:+SmJaRt0
朝、メイファンが勢いよく目を開くとハオの背中があった。
何か気になって自分の身体を見ると、やたらヒラヒラのついた白いネグリジェを着ていた。
「なんじゃ、こりゃ……」
記憶を辿る。昨夜は確か、シューフェンを交えてリウと酒を飲み、酔い潰れて自分の部屋で寝たはずだった。
「ああ……」メイファンは納得した。「ララか」
しかし寝た時の格好は虎の着ぐるみのはずだった。ララが着替えたにしても、こんな服は持っていた覚えがない。
「ああ……」メイファンは納得した。「習近平の趣味か」
気持ち悪っ! と一気に脱ぎ捨て、全裸でハオの隣にまた寝転ぶ。
暫く全裸でシーツとハオの尻の感触を楽しんでいたが、やがて気が済むとハオの背中に思い切り正拳突きを喰らわせた。
「ぎゃあーーーっ!!!」
「起きろ。メシ食って迎え酒して特訓だ」
「……行かない」
「いつまでも泣きベソかいてんじゃねぇ! 死ね!」
そう言うとハオの背中に五段突きを喰らわせた。
「はぅあぅあぅあ……! ……」
ハオは脊椎を骨折してその日の特訓を休んだ。
0574創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/12/28(金) 04:18:00.17ID:fGOESS1y
「ララちゃんっ、明日の夜は空けておいてねっ」
お茶を持って来たララに習近平が踊りながら言った。
「え。何があるの? ピンちゃん」
「またまたぁ〜トボケちゃってぇ〜明日は恋人達のピンクな夜、クリトリスイボ……じゃなくてクリスマスイヴだろぉ?」
「えー! だって中国、クリスマス禁止じゃん」
「誰がそんなこと言ったんだ」
「アンタじゃん!」
「いいんだ。庶民はクリスマス禁止。僕らはクリトリス満喫でいいんだ。国家主席の私が許す」
「独裁者だなぁ」
「その通りだもんっ!」
「でも、たぶん今夜起こることで明日はそれどころじゃないと思うよ〜?」
「今夜? 今夜何が起こると言うんだね?」
「んー……」
「?」
「ヒ・ミ・ツ」明らかにララの下手な物真似をするメイファンの声が言った。
「おのれメイファン〜! またワシらのスイート・タイムの邪魔をしよるか!」
0575創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/12/28(金) 04:21:17.53ID:fGOESS1y
「ごめんね、ニーハオ」
そう言って優しく微笑んだオーフェンは美しかった。最近ずっと使用しているビニ本そのままの眩しさがそこにあった。
「私とタンロン、結婚するのよ」
ニーハオの脳裏に幸せだった恋人ととの日々が走馬灯のように流れた。あの恋人は今、もうどこにもいなかった。
「本当にごめん」
そう言って頭を下げたオーフェンのつむじが見えた。いつもベッドで抱き締め、くりくり弄っていたつむじだ。もうそれをくりくりすることは永遠に出来ないのだった。
「うわあぁあぁあぁあ!!」
そう叫ぶとニーハオは病院を走り出た。

走って、走って、疲れて止まった。
燃え殻のような夕陽が世界を包み込んだ。
西安に海はない。しかしニーハオの心はオーフェンと暮らした上海の海にいた。
ニーハオは膝を抱いてうずくまると、シューフェンの好きなデヴィッド・ボウイの懐かしいヒット曲を心を込めて口ずさんだ。
0576創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/12/28(金) 04:45:37.92ID:EQhi8ll7
オナラ・デ・ニーロは持ち前の恐ろしいまでの試行錯誤をふんだんに用いて立ち直った。

「チャカ・カーンが癌だって? ……」
イギー・ポップは暫く考え込んでから、言った。
「痔は治る病気です! って言うよね?」

「フィル・コリンズがシャン・パイロンと出来たって? ……」
ビリー・ニョエルは何かを思い出しながら、言った。
「だからそれ、デマン湖だってばw」

「俺はブルース・リョーに負けた……。それは事実だ」
ロッキーはその時のことを思い出しながら、言った。
「でも俺って『これからの人』だろぉ?」
「『人間の証明』が一番恐ろしいんだぜぇ?」
三沢光晴は一月一日が誕生日であり、もうすぐ60歳であった。
「何かを始めるのに『高い、安い』なんてない!」
一部の奇才のみに当て嵌める真理であった。
「うるさいな『ウルグアイ』! お前だって雄松崎!」
ヌーノは地の文が深く傷つく言葉を並べ立てた。

「アイゴ〜! ……ってことで、これから何しよっかなぁ〜」
ふと気がつくと施設内には人の気配がなかった。
ジョニー・ロットンも今朝どこかへ出掛けて行った。
「あれ?」クレーン・ユウはひとり手マンだ。「これって逃げれるじゃん?」
しかしお金が一銭もなかった。
前澤社長の部屋を漁ろうと思ったが鍵がかかっていた。
前科モンの部屋に入ろうとしたらセキュリティ・アラームが鳴り出した。
「うふーん?」
自分の部屋のメガドライブでも質屋に売ろうかと思ったが面倒臭かった。
「寝るか?」
ベッドに寝転んだところで枕元の自分のエロトピアに気がついた。
0577創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/12/28(金) 09:00:23.76ID:QX3RqS+w
メイファンは白いチャイナ服に着替え、道場に立った。
向かい側に立つのはいつものハオではなく、かつての一番弟子リウ・パイロンだ。
「楽しいなぁ」メイファンは牙を見せて笑った。「また本気で遊べる」
「棒は勘弁だが」リウが言う。「トンファーぐらいなら持っても構わんぞ」
「バカ言うな。人殺しにはなりたくない」
「お前が武器を持たんと俺の圧勝すぎてつまらんだろ」
メイファンはとても楽しそうに眉間に皺を寄せ、青筋をビキビキと立てて猫のように笑った。
「ではよろしくお願いします」リウが手を合わせ、一礼した。「礼!」
「れ〜」メイファンはテキトーに言うと、『気』を全開にさせた。

「なんでかな」メイファンは頬にバンドエイドを貼りながら言った。「これで3連敗だ」
「判定ならお前の勝ちだった」目の回りの青く腫れ上がったリウが言った。「お前はマウントを取られると弱すぎる」
「まさか散打にマウントがあるとは思わなかったもんでな」
「ルールの縛りがあったらデタラメなお前には絶対に勝てんだろ」
メイファンは急に緊張を声に走らせて言った。
「リウ・パイロン。お前、ここに引っ越して正解だったぞ」
「急に何だ?」
「習近平の諜報部員から報告があった。アメリカに私の情報が漏れたそうだ」
「何だと?」
「いつ私をピンポイントで狙ってミサイルが降って来るかもわからん」
「そんなもん、お前なら捌けるんじゃないのか」
「私は『気』を持たない物に対しては無力だ。『気』も察知出来ないほど遠くから狙撃されても何も出来ん」
「何てことだ……」
「それでな、なぜだか知らんがお前までターゲットに入っているらしい」
「俺がか」
「お前の上にもいつピンポイントでミサイルが降って来るかもわからん。気をつけろ」
「確かにそれは気をつけろと言われてもどうしようもないな」
「だが、ここにいるうちは安全だ。ミサイルが飛んで来れば探知出来るし、窓はすべて防弾になっている」
「なるほど」
「半径20km以内なら厳重警戒されているから外でも安全だが、それでもなるべく外はうろつくな」
「わかった、ありがとう」
「取り乱さないんだな」
「取り乱したってしょうがないだろ。お前の情報には間違いがないしな」
「『なんで俺まで!?』とか騒がないのかよ」
「お前が『なぜだか知らんが』と言った以上、理由なんか聞いても誰も答えちゃくれないだろ」
「正論だ」
「シューフェンには黙っていてくれ」
「言わないのか? ある日突然お前の上からミサイルが降って来て、笑顔で振り向いたシューフェンの目の前でお前が消えたら何て説明するんだ?」
「そのシューフェンの笑顔を消したくない」
「ふーん。なんか、矛盾してるな?」
「矛盾?」
「お前はそれに似たようなことをしたあの人を怒ったんじゃないのか」
リウは暫く胸に手を当てて考えた。だんだんとシューフェンが癌のことを自分に黙っていた気持ちがわかりはじめる。
「あぁ……そうか」リウは小さく呟いた。「シューフェン、俺を悲しませたくなかったんだな」
0578創る名無しに見る名無し
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2018/12/28(金) 10:29:43.75ID:QX3RqS+w
円形の卓に豪華な朝食が並べられた。
席に着いたのは実質六人の五人。
主の習近平、娘のメイファンとララ、訓練生のハオ、そして客人のリウとシューフェンであった。
「お初にお目にかかります。国家主席の習近平です」
「初めまして。女優をやっておりますリ……シン・シューフェンと申します。お会い出来て光栄ですわ」
死期の近づいたシューフェンは大抵のびっくりするようなことは平然と受け入れるようになっていた。目の前に国家主席がいてもまったく平然としている。
「いつもTVで狂おしく拝見していますよ」習は粘っこい笑顔で言った。
「お久しぶりです」と、リウも挨拶した。
「お前にはこの間会っただろ」習は無視して言った。「さぁ開動了。食べよう食べよう」

「シューフェン、身体の調子は?」リウが鴨のステーキを切り分けながら言った。
「とてもいいの」シューフェンは微笑んだ。「昨日、メイファンちゃんが手を当ててくれてから……というか実は10日ぐらい前からずっと」
メイファンは子豚の丸焼きを喰いながら聞いていた。
「本当に最近調子がいいの。治っちゃったかな? って思うぐらいよ」
「それ、手を当てて治療してるの、実は私じゃねーんだ」メイファンが言った。「私の姉ちゃんのララなんだ。私の中に住んでる」
「ララ、姿を見せてくれ」リウが優しく言った。
「……」メイファンは丸焼きを皿に戻して準備したが、ララは出て来ない。「……ララ?」
「メイファンが死んでずっとララちゃんになればいいのに」習近平が杜仲茶を飲みながら言った。
「そうなって習近平もあっという間に暗殺されてしまえばいいのにな」メイファンはそう言うとまた呼び掛けた。「ララ? 寝てるのか?」
シューフェンは口の中の鴨をゆっくり噛みながら笑顔に疑問符を乗せて待っている。
「ハオ」メイファンはハオを見た。「お前が呼んでみろ」
ハオはひどく泣き腫らした顔をしてオムレツを食べていた。皆がハオのほうを見たが、シューフェンは一人だけ目を逸らした。
「ララ」ハオは鼻声で呼んだ。
するとすぐに白いトレーナーの上の黒いメイファンの顔が白くなりはじめ、猫のようだった目はタヌキのようなタレ目に変わった。
身体は少し大きくなり、がさつな髪の毛は繊細に柔らかくなり、何の悩みもなさそうだった表情が固くこわばり、助けを求めるようにハオを見つめた。
「まぁ」
死期が近づいて大抵のことにはびっくりしなくなっているシューフェンが少しだけ驚いたような声を上げた。
「自己紹介しろ、ララ」メイファンの声がララの唇を動かした。
「……ララです。お姉さんの癌だけは、絶対に治します」ララはシューフェンをまっすぐ見つめ、静かな口調でそう言った。
「治せるのか?」メイファンの声が言った。
「治せは……しないけど」
「嘘は言うな」
「……ごめんなさい」
「ララちゃん、よろしくね」
シューフェンがそう言って微笑むと、ララはようやく笑顔を浮かべた。
「どうか、僕からもよろしく頼むよ」
リウがそう言うとまた笑顔が消え、頑なな表情になった。
「最近調子がいいのはララちゃんのおかげだったのね」シューフェンがララを見つめる。「ありがとう」
ララはにっこりと笑って答えた。
「シューフェンお姉さんの痛みを取るのが私の仕事です。お姉さんはハオさんの大好きな人だから」
シューフェンは複雑そうな顔をして笑顔が固まった。
ハオが立ち上がり、顔を押さえて走って出て行った。
「ハオさんを傷つけた人でもあるけど、私はお姉さんのこと大好き。怨念はすべて別のほうへ向いています」
優しい笑顔でそう言うララにリウが言った、
「よくわからんが……。ララ、心から感謝している」
「ガアッ!」それがララのリウに対して向けた初めての言葉であった。「オマエのためじゃない! オマエのためじゃないぞ!」
メイファンはララの中で困っていた。ララがどんな表情をしているのか、さっぱり想像もつかなかった。
0579創る名無しに見る名無し
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2018/12/28(金) 11:00:19.95ID:QX3RqS+w
次の日、『施設』に四人の客がやって来た。
映画監督ツイ・ホーク、同じく有名な映画監督であるチャウ・チンシー、俳優であり世界の格闘王でもあるケン・リュックマン、
そして世界トップのメイクアップ・アーティストであるジョアンナ・ポンの四人であった。
四人は明日施設内で執り行われるリウ・パイロンとシン・シューフェンの結婚式に招かれ、前日から泊まり込みでやって来たのだった。
本当はもっと多くの招待状を出したのだったが、習近平の護衛が有名人以外の入場を許さなかった。
一気に二人の周りは賑やかになり、メイファンはすこぶる機嫌がよさそうだった。
0580創る名無しに見る名無し
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2018/12/28(金) 11:15:24.98ID:QX3RqS+w
シューフェンのララによる昼の治療が終わると、一同はテーブルを並べ、お茶会を始めた。
ララは窓辺に立ち、それを眺めていた。
窓を見ないようにしながら、『気』を動かさないようにしながら、窓をゆっくりと開ける。
メイファンはララの『気』だけはうまく読めない。そこに殺気があっても気づくことは出来なかった。
窓の外にはビルがあり、その屋上からリウ・パイロンが丸見えの位置に立っていた。
防弾ガラスさえ開ければ、そして屋上にいる狙撃手の腕前さえ確かなら……。
しかし屋上に狙撃手はいなかったようだ。
やがてジョアンナが窓が開いていることに気づき、ララを見ながら言った。
「寒いっ! 寒いんだけど!?」
ララはわざとらしいほどにうろたえてキョロキョロすると、
「あっ。ごめんなさい。開いていました」と微笑み、窓を閉めた。
その向こうでリウがなぜか少し悲しそうにララを見ている。
「おい」メイファンの声がララに言った。「本当に『開いていた』のか?」
0581創る名無しに見る名無し
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2018/12/28(金) 11:47:41.88ID:QX3RqS+w
ララはハオの部屋に入った。ハオはまたベッドに突っ伏して泣いていた。
ララは何も言わずに隣に座り、机の上からペンと便箋を手に取ると、文字を書き、自分の目には決して見せないようにしてハオに見せた。
ハオはそれを涙目で読んだ。
『シューフェンお姉さんはハオさんのもの』と書いてあった。
「おい」メイファンの声がした。「何を書いてる? 見えん」
さらにララは便箋に文字を書き、ハオに見せた。
『明日になったら完全にハオさんのものじゃなくなってしまう』
ハオは読みながら何も言わなかった。
ララはさらに書き、少し怖い顔をしてハオに見せた。
『リウ・パイロンを殺してシューフェンお姉さんを奪うの』
メイファンが出て来そうになった。ララは苦しそうにそれを抑える。
「シューフェンはアイツのものだよ」ハオが言った。「シューフェンが選んだんだ」
ララは鬼のように牙を剥くと、強く言った。
「根性なし! 愛しているなら奪え! そんな根性もないからオマエは皆からバカにされるんだよ!」
そしてハオの口に先程書いた三枚の便箋を詰っ込んだ。
「食え! それを食って根性つけろ! それには私の怨念も籠ってる! それ食ってぶりぶりぶりぶり!!」
「ぶりぶり!! それ見せろ!」メイファンはララを押さえつけて出て来た。
しかしハオはもう飲み込んでしまっていた。
メイファンの口からララの嗚咽が漏れはじめ、言った。
「私にはアンタを押さえつけて出るなんて、したくても出来ないのに……アンタはそうやって出て来る……」
メイファンは目を忙しく動かしながらそれを聞いた。
「アンタの決定に私は従わされ、私は押さえつけられる……。アンタがツンで私がデレなわけでもなく、アンタは一人でツンデレをこなす……」
ハオもびっくりするような顔でララの言葉を聞いた。
「なぜアンタを殺せば自分まで死んでしまうのよ? ひどいじゃない!!」
「ララ……ぶり」
「ぶりぁぁぁあああ!! 力が欲しい!!」
ララは神を呪うように叫んだ。
「アンタみたいな、人を簡単に殺せる大きな力が欲しい!!」
0582創る名無しに見る名無し
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2018/12/28(金) 12:01:12.61ID:QX3RqS+w
メイファンはララの『白い手』を使えるが、ララはメイファンの『黒い手』を使えない。
ララの手が黒くなる時、そこには必ずメイファンの意思がある。
元々この身体がメイファンのものであることに加え、『気』を操れるメイファンは『気』そのものであるララを操ることも出来る。
そのことに不満はないはずだった。
自分はヴァーチャル映像を見ているだけのただのお喋り好きな無力な女の子でよかった。
はずだった……。
0583創る名無しに見る名無し
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2018/12/28(金) 12:50:04.36ID:QX3RqS+w
「リウ・パイロンを発見しました」眼鏡カマキリが報告した。
「どこだ?」芋饅が聞く。
「西安の習近平国家主席別邸です」
「手ぇ、出せねえ〜〜」
「黒色悪夢と兄弟になったというのは本当なんですね」
「で、もう一人の女の子は?」
「ラン・メイファンですか」
「彼女にも公務執行妨害とフランスパン窃盗の指名手配がかかっている」
「あのパン、何だったんですかね」
「名前がわかっているんだ。簡単じゃないのか」
「それが……名簿に記入された『乱妹芳』の名前と国民IDは確かに存在するんですが、しかしそんな人間はいませんでした」
「戸籍は?」
「戸籍もあるんですが、住所を調べたら公衆トイレになっていました」
「なんだそりゃ」
「更に調べたところ、気になるものが……」
「何だ」
「ラン・メイファンという名前の人間をリストアップしてみたところ、漢字のないlan mei fangという17歳の女性が存在することがわかりまして」
「漢字がない? それって日本人の名前がtanaka hanakoみたいなことだぞ?」
「はい。そして、その女性の住所が例の習近平国家主席別邸になっているんです」
「両親は?」
「いません。習近平氏が養女として引き取り、しかし籍は入れていないんだと思われます」
「なぜだ」
「それで私、思いついてしまったんですが……」
「何をだ」
「あの女の子がもしかしたら、裏のNo.1武術家にして習近平の最強の用心棒、黒色悪夢なのではないかと」
「あの女の子が?」
二人は暫く考え込み、すぐにわっはっはと笑い出した。
「AKBの宮脇咲良が実は殺し屋だったってぐらいありえないですよね〜」
「芦田愛菜ちゃんが武藤敬司より実は強かったってぐらいありえんな!」
0584創る名無しに見る名無し
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2018/12/28(金) 12:58:10.31ID:Ux0mzO8C
ララは無力だと思いこんではいるが
気を操るメイファンと比較した場合はそうかもしれない。
だか、実際には人を殺せるだけのパワーはあった。

ララは1歩踏み出す度胸と覚悟がなかったのだ。
0585創る名無しに見る名無し
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2018/12/28(金) 14:08:18.07ID:rDlg23g3
日が替わり、結婚式当日になった深夜、ララはリウとシューフェンの部屋を訪れた。メイファンは眠っていた。
部屋には鍵がかかっていた。ララは扉に手を当てクリームのように柔らかくすると、そこから手を差し入れた。
ララの治療の能力はララ自身が使うよりもメイファンが使ったほうが強力であるが、この大抵のものなら柔らかくしてしまえる能力はララだけの得意技である。
ただ、柔らかく出来る範囲は小さく、手を差し入れるのがせいぜいであり、それでも住居不法侵入の際には大いに役立っていた。

部屋に入って来たララは全裸だった。衣擦れの音を出さないようにとメイファンから教わったことがあった。
手には長めのナイフとノコギリを持っていた。
リウ・パイロンはシューフェンに腕枕をし、ぐっすり眠っていた。
ララはゆっくり、ゆっくりとナイフを頭上に上げる。しかしリウの胸に振り下ろすには距離が遠すぎる。
ララは一気にリウの上に馬乗りになる。奇声を発しながらナイフを振り下ろす。
しかしリウとメイファンが同時に目を覚まし、外と内から体を押さえられてしまった。
びっくりして目を覚ましたシューフェンが自分を見ていた。
『ハオお兄ちゃんの大切なシューフェンお姉ちゃん』が、ララのことをキチガイでも見るような顔をして怖がって見ていた。
ララは泣き崩れ、メイファンの中へ逃げ込んでしまった。
0586創る名無しに見る名無し
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2018/12/28(金) 19:02:56.74ID:o31+kZJF
シューフェンの見る目は正しかった。ララはリウのレイプにより気が狂っていたのだ。
0588創る名無しに見る名無し
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2018/12/28(金) 23:36:01.20ID:5eg4F3aP
突如、時空の隙間から出現したオザワ先生のビッグペニス!
震えあがるハオ!
0589創る名無しに見る名無し
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2018/12/29(土) 12:15:11.76ID:vUHqmOF9
朝食前にメイファンとリウは軽く手合わせをした。
新郎の顔を青アザだらけにしないよう、二人は触れ合わない距離を置いて技を出し合った。
「昨夜はララがすまん」メイファンが言った。
リウは何も言わなかった。昨夜のララを許すことは出来なかった。
しかしララにはシューフェンの治療をして貰わないと困る。だからといってララに嘘の微笑みを見せることは出来なかった。
「ララを外す」とメイファンは言った。「習近平に命令して最高の医療チームを付けさせよう」
「あぁ」リウは答えた。「そうしてくれ」
「入籍もここにいながら出来るぞ? 便利だろう?」
「いろいろ助かる」リウはハイキックを繰り出しながら言った。「ありがとう、メイファン」
0590創る名無しに見る名無し
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2018/12/29(土) 12:22:27.10ID:tk7swJ0m
メイファンはハイキックを鼻差でかわすと足を抱え込み、軸足を蹴りあげた
体制を崩すかに見えたがリウは抱え込まれた足を今度は軸に変えて回転蹴りを撃ち込む!
メイファン「相変わらず身が軽いな」
メイファンは軸足を手から離しながら更にもう一歩後ろに引きその回転蹴りをダッキングでかわした
0591創る名無しに見る名無し
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2018/12/29(土) 12:35:37.16ID:vUHqmOF9
習近平別邸の中庭で結婚式は簡素に、しかしとても賑やかに行われた。
既に入籍を済ませ、シューフェンはリウ・シューフェンに名前が変わっていた。
本名のシン・シューフェンはもちろん、芸名のリー・シューフェンも改められた。

白いウェディング・ドレスを着たシューフェンは痩せて頬骨が目立つようになっていたが、それでも花のように美しかった。
終始心から幸せそうな笑顔を浮かべ、リウに支えられていた。
ツイ・ホークとチャウ・チンシー二人の映画監督が彼女の姿をフィルムに焼き付けた。
二人は昨日から競うように様々な場所で彼女を撮っていた。後の新作映画の中でその映像を使うのか、夭逝の美人女優のドキュメンタリーを製作するのか、それは未定だった。
誰もが既にシューフェンの病気のことを知っていた。残された時間は僅かであることも知っていた。
それでも集まった人達は一人を除いて皆、祝福の笑顔で二人を包んでいた。

シャンパンをぼーっと飲みながら、ただ一人笑顔のないハオはシューフェンの花嫁姿を眺めていた。
「思った通りだ。君にはウェディング・ドレスが最高に似合うよ」
そう呟いてから改めて自分の立っている場所を見る。シューフェンから20m離れた来賓テーブルだ。
「俺、なぜ、ここ!?」
0592創る名無しに見る名無し
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2018/12/29(土) 12:50:23.17ID:vUHqmOF9
当日になってやって来たリウの両親が、習近平に服従の姿勢を示した後、壇上に上がりハグを求めた。
父親のポホェイシェンとは険悪な仲のパイロンが、涙を浮かべた笑顔で父親と抱き合った。
シューフェンにも愛情の籠った笑顔でハグを求め、シューフェンは義父さんの頬にキスをした。

ブーケトスが行われた。
後ろを向き、せーのでシューフェンがブーケを投げる。
ジョアンナのほうへそれは飛び、がめついほどの笑顔で取ろうとしたジョアンナの直前で風が吹き、隣にいたハオの手にそれはパサリと落ちた。
ハオは言った。「皮肉!?」

シューフェンの身体を気遣い、式は短く終わった。
メイファンは警備のため別室にいたが、モニターでずっと式の様子を見ていたが、
無事に終わったことを見届けると、何も言わずに目を伏せて、休息するため自室へと帰って行った。
0593創る名無しに見る名無し
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2018/12/29(土) 13:46:10.82ID:fkotC3dq
「なぜ私を無視するのか?」
そう言いながらケン・リュックマンが壇上に上がった。
0594創る名無しに見る名無し
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2018/12/29(土) 14:47:59.35ID:H5BsKKmq
式を終えて暫くの時が経った。
ほんの少しすつ元気を取り戻しつつあったハオは、ずっと閉じ籠っていた部屋からカーテンを開けて窓の外を見た。
シューフェンが結婚式を行った中庭が見えた。それだけで他には何もなかった。
カーテンを閉め、ベッドにまた寝転ぶ。するとドアをノックする音がした。
メイファンならノックなどしないし、ララのノックはもっと遠慮がちだ。しかしこの軽やかな骨の音は聞き覚えがある、そう思っているとドアが開き、シューフェンが入って来た。
「ハオ、いい?」
ハオは一生懸命隠れ場所を探した。壁に思い切り顔をぶつけてから布団に潜り込んだ。
シューフェンがベッドに座って来た。
「今日、聞いたの」
ハオは気配を殺して存在しないフリをしている。
「あと3日だって」
ハオは暫く意味がわからず考え込んだ。
しかしすぐに意味がわかり、飛び起きた。
「よ、余命?」
久しぶりに間近でシューフェンの顔を見た。かなり痩せ、肌の若々しさはなくなっていたものの、バケモノはおろか別人のようにさえなってはいなかった。
そのシューフェンがにっこり笑いながら頷いた。
「お前……本当にいなくなっちまうのかよ」
「うん」
「嘘だよな? 嘘だって言ってくれよ」
「ふふ……」
「嫌だよ! 俺、お前にフラれるのも嫌だけど……お前にいなくなられちまうのはもっと嫌だよ!」
「それでね……ハオ」
ハオは涙と鼻水をとめどなく流し、言葉が出せない。
「天国に行く前にハオに言いたいことがあって」
ハオは震えながらシューフェンの目の奥まで覗き込んだ。
「言いたいことがありすぎて忘れちゃった」
「アホ!」ハオは頭にチョップを食らわす真似をした。
シューフェンは昔のように笑った。そして言った、
「ここに来てから一言も交わしてなかったから」
「うん」
「これじゃ死ぬ時悔いが残るなって」
「うん」
「でも、アンタとこうやって言葉を交わせただけでなんかどーでもよくなったわ」
「うん……」
二人は並んで座り、遥かなような暫くの時間、長い間連れ添った老夫婦のように黙っていた。
付き合った6年の思い出が二人の間をそよ風のように流れて行った。
「結婚式、出席してくれてありがとね」シューフェンが言った。
「うん」
「ブーケ、ハオが受け取ったね」
「何の罰ゲームだよって思ったけどな」
「みんな、しらけてたね」
「一番誰とも仲良くない奴が受け取ったからな」
「ハオ、私のこと、忘れてね」
ハオの目から涙がぶわっと溢れ出した。
「忘れねぇよボケ」
「ハオ」
「ボケ」
「私……女優になったよ。ハオは?」
「あ?」
「ロンとハオの試合、観たかったな」
「おう」
「あたし……自分の映画の初上映にも間に合わないのよ」
「おう」
「でも……いいの」
「いいのかよ」
「ハオ」
「ん?」
それきりシューフェンは何も言わなかった。しかしハオは目を閉じた彼女の安らかな笑顔に自分への愛を感じていた。
0595創る名無しに見る名無し
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2018/12/29(土) 17:09:37.98ID:H5BsKKmq
シューフェンがハオの部屋を訪れている時、リウはメイファンと身体を動かしていた。
ララがリウはもちろんメイファンの傷さえ治療しなくなったので、本気で手合わせをすることが出来ないのだった。
ララはあれきり一言も喋らなかった。完全に存在しない人間になっていた。
メイファンは毎日呼び掛けるのだが返事はなく、ハオが呼んでも出ては来なかった。
「つまらんな……」メイファンがイライラした口調で言った。
「これも立派なトレーニングだ」リウはメイファンと向き合わず、同じ方向を向いて腕を伸ばしたり縮めたりした。
「まるでラジオ体操だ」メイファンはふざけてヒップホップの動きをしはじめた。
「中国はヒップホップ禁止だぞ」リウが国家主席の養女に皮肉を言う。
「飽きた」メイファンは座り込んでバナナを食べはじめた。
仕方なくリウも座り込み、バナナを剥いた。
「リー・チンハオは一度も道場に来ないが、強いのか?」リウが聞く。
「4000年に1人の逸材だ」メイファンは真顔で答えた。
「それは凄い」リウは激しく興味を示した。「ぜひ手合わせをお願いしたい!」
「だが、気力がない、やる気がない、3分で世界最強になる方法を欲しがるみたいな奴だ」
「なるほど」リウはハオの顔を思い出しながら言った。「ここへ来て大分経つが、あの人とまだ一言も会話して貰ってない」
「ハオがお前に『そこの醤油取ってください』と話しかけたのを見た覚えがあるぞ」
「メイ」リウは言った。「近日、自分の散打のジムを立ち上げるんだが、リー・チンハオを預けて貰えないだろうか」
「ダメだ」メイファンは即答した。「アレは私のだ」
「じゃあ、メイ、お前、来るか?」
「そんな明るいところ、目が潰れるわ」
「そうか」リウは残念そうな顔をした。
「独立するんだな」
「あぁ、トレーナーの楊とウマが合わなかったこともあるしな」
「ジムの名前はもう決めてあるのか」
「『L&S』に決めてある」
「リウ&シューフェンか」
「いや、ロン&シューフェンだ」
「どうでもいいな」
「重要だ」
「糞どうでもいいな」
「シューフェンも喜んでくれた。自分の名前が残るんだ、って」
メイファンはバナナを食べきると頭を下げた。
「すまん、リウ・パイロン。ララがあのまま治療を続けていればあと半月はもつ予定だったのに……」
「俺も同意したことだ」
「あら、あたしは無理矢理やめさせられたのよ?」唐突にララが喋り出した。
「び、びっくりした!」メイファンが慣れていたはずの自分の口の自動発声にのけ反った。
「リウ・パイロンさん、あなたがどうしてもと言うのならあたしがまた治療をしてもいいのよ?」
「ララ、本当か」リウが身を乗り出す。
「ええ、あたしはとても明るくて良い子のラン・ラーラァだから」
「お願いする! せめて、最後まで苦しくないようにしてやってくれ」
「了解よ、リウ・パイロンさん」
ララの声はとてもハキハキとしているが、笑っているのか怒っているのかさっぱり読み取れなかった。
「あたしはとても明るくて良い子のラン・ラーラァだから、もうあなたにナイフなんて突きつけなくってよ」
0596創る名無しに見る名無し
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2018/12/29(土) 17:49:34.06ID:KUSdcMm/
「シューフェン……」
ハオは後ろから彼女のうなじの匂いを嗅ぎ、その身体を抱き締めた。
「あ、もうロンが湖に連れて行ってくれる時間だわ」
そう言って立ち上がる彼女からハオは手を離した。
愕然とした。まるで骨と皮だけの抱き心地だった。
0597創る名無しに見る名無し
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2018/12/29(土) 18:06:22.05ID:PMmcIL3H
1人ぽつんと残されたハオはあまりの悲しみと絶望に
「ブッダよ、あなたは今も寝ているのですか!!」
と訳の分からないことを叫び号泣した。
0598創る名無しに見る名無し
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2018/12/29(土) 19:30:51.12ID:9fWqcOeO
リウは赤いベンツを運転してシューフェンを湖に連れて行った。
その後ろからぴったりついて来るデミオの助手席にはサングラスをかけたメイファンが乗っており、運転手はハオだった。
「なんで俺まで!?」
「シューフェンから余命の話、聞いたはずだ」メイファンがポップコーンを食べながら言う。「思い出作りしておけ」
「他人の妻の思い出!?」

湖のほとりに車を停め、リウはシューフェンを支えて湖を見せた。
「仙女が現れそうな所ね」シューフェンは帽子を押さえながら微笑んだ。
「綺麗だ」リウは湖から視線をずらし、シューフェンを見つめながら言った。
「なんで俺、ここにいんの?」ハオはまたメイファンに聞いた。
「思い出作りだ」メイファンはまた答えた。

シューフェンを木の柵に凭れて立たせ、リウは少し離れると写真を撮りはじめた。
シューフェンは弱々しいながらもピースサインを決め、顔にかかる黒髪を払いのけて笑う。
「なぁ、なんで俺……」
ハオの言葉が止まった。
「なんだ?」
ハオは空を見上げる。
キラリと一瞬、上空に光るものが見えたと思うと、それはあっという間に降って来た。
轟音が聞こえはじめてようやくリウはカメラから目を外した。
自分の頭上へ向かって降って来る超小型のミサイルに気づいた時は、もう避けようもなかった。
しかし横から物凄いスピードでハオが飛んで来て、ミサイルに掌打を当てると、ミサイルは吹っ飛び、シューフェンから遠いところを通って湖に落ちた。
湖に大きな水飛沫が上がる。続いてすぐにもうひとつ、大きな水飛沫が上がった。
メイファンが捌きを終えた姿勢のまま叫んだ。
「早く車に乗れ! 20km圏内まで戻るぞ!」
湖は『施設』から21km離れていた。そのためこちらの迎撃システムは働かなかったようだ。
リウはシューフェンを抱きかかえると素早くベンツに乗せ、走り出した。
「な、何?」
シューフェンにはミサイルも見えず、ただひたすらに何が起こったのかわからなかった。
「な、何だったんだ?」
きょろきょろ辺りを見回して呆然とするハオをメイファンは抱きかかえると、素早くデミオに乗り込み、走り出した。
0599創る名無しに見る名無し
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2018/12/29(土) 19:45:53.42ID:9fWqcOeO
「いやはやお手柄だ、ハオ」メイファンは運転しながら声に緊張を漲らせた。
「は? 何だったの?」
「お前が気づかなければメカゴリラも私も食らっていた。私があれを捌けたのもお前のお陰だ」
「は? は?」
「それこそ金属バットで飛んで来る弾丸を打ち返すような離れ業だった。お前の『気』にシンクロさせたとはいえ、よく捌けたと自分を褒めたい」
「へぇ〜……で、何だったの、アレ?」
「ハオさんすご〜い」ララの声がした。「ハオさんが欲し〜い」
0600創る名無しに見る名無し
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2018/12/29(土) 20:49:48.86ID:9fWqcOeO
ララが治療に戻っても、結局シューフェンの余命が伸びることはなかった。
湖へ行った日から3日後の朝、シューフェンは峠を迎えた。
テレビ電話でツイ・ホークとジョアンナが話をした。
「ジョアンナ、友達になってくれてありがとう」
「シューフェン、待っててね。あなたの骨格に最後のお化粧をしに行くわ」
「監督、私を見出だしてくれてありがとう」
「君の主演映画をもっともっと撮りたかったよ」

電話が終わるとシューフェンはメイファンに言った。
「メイファンちゃん、本当にありがとうね。あなたのお陰で安心して眠れるわ」
「映画、観に行くから。またその時に会いましょう」
メイファンらしくない優しい言い方に触れ、シューフェンはにっこりと微笑んだ。
「ララちゃんにも会いたいわ」
するとすぐにメイファンは白くなり、明るい笑顔のララが現れた。
「ララちゃん、ありがとう。こんなに安らかに眠れるのはララちゃんのお陰ね?」
「アハハ」とララは声を出して笑った。「キチガイを見る目で怖がったくせに?」
ララはすぐメイファンに戻ると、口をぶりぶり言わせながら部屋を出て行った。
「ハオ」
メイファンはハオを見た。ハオはシューフェンが何か言おうとする前に泣きながら言った。
「シューフェン、愛してるよ!」
「あら。あたしも愛してるわよ?」
リウが驚いた顔でシューフェンを見た。ハオは言葉を失ってぼろぼろ涙を流した。
「ロン、最後のお願いよ。本当のことを言わせて」
リウは黙ってその場で頷き、腕組みをした。
シューフェンは深く息をすると、言った。
「どうして二人の人を好きになっちゃいけないんだろ。ロンのことも愛してる、ハオのことも愛してる。これが本当の気持ちなのに」
「シューフェン〜〜〜……」
「ハオは私の一番落ち着ける家みたいなもんよ。手のかかる家だけど、だからこそ可愛いの」
「キスしてもいい?」
ハオの言葉にシューフェンはリウを振り向いた。リウはくるりと背を向けると、耳を塞いだ。
鼻水まみれのキスをすると、ハオはシャツでシューフェンの顔を拭った。
「大好きよ、ハオ」シューフェンは言った。「だから自信を持ってね」
「もういいだろ」と言いながらリウがハオを押し退けた。
部屋から出て行かないハオを一瞥すると、ハオはようやく出て行った。
「ロン……」
「また黙ってやがったな」
そう言いながらリウはポケットからハンカチを取り出し、鼻水の残りを優しく拭いた。
「ごめんなさい」シューフェンは最も信頼する人の顔を見ながら微笑んだ。
「いいさ」綺麗になった唇にキスをする。「俺を悲しませたくなかったんだろ」
「でも、最後に悲しませた?」
「悲しいもんか」リウは静かに言った。「アイツは確かに凄ェライバルだしな」
「でも、あたしはずっとロンの側にいるわ」
「あぁ」リウは微笑んだ。「俺もずっと側にいる」
二人は手を握り合った。
リウには見えてしまった。シューフェンの気がどんどん弱くなり、消えてしまうその一瞬が。
「ロン、あたし、今……」最期にシューフェンが言った。「幸せよ」
0601創る名無しに見る名無し
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2018/12/29(土) 21:09:12.43ID:9fWqcOeO
帰らぬ人となったシューフェンを見て、ハオは泣き叫びながら言った。
「メイファン〜! ララ〜! どっちでもいいからシューフェンの中に入って生き返らせてくれよ〜!」
「……!」メイファンは呆れて言葉も出せなかった。
「お前ら一人の身体に二人入ってんじゃんよ〜! 一人出てってシューフェンの中に入ってくれればいいじゃんよ〜!」
「てめぇ」リウがハオの胸ぐらを掴む。「取り乱すのはわかるが、いい加減にしろ」
「何でだよ〜! 死んだ恋人ゾンビにして生き返らせる人の気持ちがお前にはわかんねぇのかよ〜!」
「それでもし生き返ったとしても、それはシューフェンじゃねぇだろうが!」
「シューフェンだよ〜! 見た目がシューフェンならシューフェンだよ〜!」
「そいつは取り乱してなどいないぞ」メイファンがリウに言った。「そういう奴なんだ」
「頼むから!」リウはハオを床に投げると涙声で言った。「安らかに眠らせてやってくれよ……!」
投げられたハオはすぐに立ち上がるとメイファンに駆け寄った。
「な〜! メイファ〜ン! ドラえもんみたいに何とかしてくれよ〜!」
「こういう奴だが……」メイファンは拳を握りしめた。「ここまでだとは思わなかった」
メイファンに『気』を込めて殴り飛ばされたハオはすぐにまた立ち上がるとシューフェンの遺体に突っ伏して泣きまくった。
「アハハ」とララの声がした。「あたしはハオさんに賛成〜」
0602創る名無しに見る名無し
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2018/12/29(土) 21:19:45.93ID:9fWqcOeO
メイファンは説教室にララを連れ込んだ。もちろん物置部屋に一人で入っただけである。
「ララ、最近お前、おかしいぞ!」
「ハオさんに共感〜」
「あのな、身体から出るなんてお前、出来ると思うか?」
「だってあたし、いらない子だしぃ〜、家出〜」
「シューフェンの死体に入れたとして、入ったお前も死ぬことになるぞ」
「なんで〜? あたし生きている気体じゃ〜ん?」
「シューフェンは魂が抜けたから死んだんじゃないんだ、身体が死んだから死んだ。わかるか?」
「なるほど!」
「それにメカゴリラも言ってた通りぶりぶりぶり……」
「じゃあ、生きてる人になら入ってもいいのね!?」
「何のことだ?」
「穴がね」ララの声は嬉しそうに言った。「大きく広がったの!」
0603創る名無しに見る名無し
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2018/12/29(土) 22:07:55.13ID:9fWqcOeO
その夜メイファンが眠りにつくと、早速ララは出掛けて行った。
ハオの部屋に入ると、ハオも泣きながら眠っていた。
「お兄ちゃ〜ん」
0605創る名無しに見る名無し
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2018/12/29(土) 22:31:41.18ID:9fWqcOeO
ハオが目を開けると、また白いネグリジェ姿のララがいた。
「合体しよ〜、合体」
「慰めなんかいらねーっつってんだろ。あっち行け」
「慰めるつもりなんかねーよバーカ」
「あ?」
「ただ合体しよーっつってんだ。大人しく合体されろバカ」
そう言うとララはいきなりハオのズボンとパンツをいっぺんに下ろした。
「いやだからそんな気分になれるわけねーって……」
ララの柔らかく温かい唇がハオを包み込んだ。
「ねーって……」
舌がねっとりと絡みつき、同時にハオは強烈なフェロモンを吸い込んだ。
「ね、ねっとり〜って……」
ハオの如意棒はびんびんに立ち上がった。
「こ……こんな時に立ち上がるんか……! 俺って奴は……俺って奴は……」
ララは唇を離し、柔らかな手で激しくしごきながらハオに顔を近づけて来た。
「フフフフ、ハオさん、ララの同類〜」
「くっ……くそぅ……」
「ふきんしん〜。ひとでなし〜」
「あぁっ……いっ……」
「そんじゃね、そんじゃね」
「うぅっ……!」
「いっただっきまーす」
そう言うとララは大きく口を開け、ハオにディープキスをした。
ハオの口を押し開け、舌が入って来る。
どんどんどんどん入って来る。
綿菓子を休みなく口の中に突っ込まれるように……いや待て、これ、本当に舌か?
そう思ってハオが目を開けると、ララは白目を剥いて痙攣していた。痙攣しながらぐいぐいと口を押しつけ、離さない。
その口から何かふわふわしたものがまだまだハオの中へ注ぎ込まれる。
「むぇいぶぁーーっ!!」
ハオはそう叫んでメイファンを起こそうと試みたが、メイファンは出て来ない。
やがてララの顔がビキビキと音を立てて黒く割れはじめ、白い破片はすべてハオの口の中に入り、ようやく目を白黒させたメイファンが現れた。
0606創る名無しに見る名無し
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2018/12/29(土) 22:36:17.28ID:5Xkok9Ad
「…ううっ、ダダァ…ッ!」
ハオは目を覚ました。
「…苦しいのね、お兄ちゃん。」
ララはハオを優しく抱擁し、ストレスでハゲ散らかったその頭を撫でた。
0607創る名無しに見る名無し
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2018/12/29(土) 22:53:41.22ID:wPQXNOaF
「お兄ちゃんっ、お兄ちゃんっ、私お兄ちゃんとつながってるよぉっ!キャハハハッッ!!」
ハオの精神世界内部に入り込んだララは
精神体のハオと激しく交わっていた。
「ううっ、ララ…やめてくれぇ…。」
それはハオの意志を無視したレイプの様相を呈していた。

一方、現実世界ではメイファンの目の前でバケモノが誕生しつつあった。
0608創る名無しに見る名無し
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2018/12/29(土) 22:59:56.99ID:9fWqcOeO
気がつくとメイファンは大きく開けた口をハオの口に押し当てていた。
ちょっと舐めた後噛みついてから口を離すと、おかしな感覚があった。
「ララ?」
ララの『気』がどこにもないのがメイファンの通常の感覚であった。自分の臓器は異常を訴えない限り意識しないのと同じようなものだ。
自分の臓器が目の前に置かれているような感覚だった。ハオの中に、ララの『気』を強く感じたのである。
「ララ……お前、ハオの中に入ったのか!?」
「うふぅん」ハオの口が勝手に動き、オカマのような声で喋った。「いい感じぃ」
しかしその『気』は白くはなかった。コバルトブルーの『気』がハオを大きく包んでいた。
「凄いな……こんなこと出来たんだ」メイファンは感心していた。「おもしれ〜。おいララ、それでララになったらどうなるんだ?」
「凄いよ〜」ララは楽しそうに言った。「身体交代しなくても動かせちゃう」
ハオは操り人形みたいな動作で立ち上がる。
「はははっ!」メイファンは面白がる。「ララが操縦するロボットみてーだ」
するとハオは急激に殺気を立ち昇らせた。
「おい!?」
ハオの掌打が想像以上の速さでメイファンの胸めがけて飛んで来た。
メイファンはそれを紙一重でかわし、遅れて『気』を纏う。
「アハハッ! メイ」ハオは言った。「あたしの操るハオさんに勝てるかな?」
0609創る名無しに見る名無し
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2018/12/29(土) 23:14:54.10ID:9fWqcOeO
リウは激しい物音にすぐ駆けつけた。
ハオが『施設』を飛び出して行く後ろ姿が見えた。
ハオの部屋に入るとメイファンが自分の腕を押さえていた。出血している。
「何事だ?」リウが聞く。
「ちっともわからん!」メイファンは答えた。「アイツ……本気で私を殺しに来やがった」
0610創る名無しに見る名無し
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2018/12/29(土) 23:20:38.61ID:9fWqcOeO
「んー。もっと操縦に慣れないと」逃げながらララは歌うように言った。「二人が相手じゃとても敵わないと思う〜」
ハオはララが喋っている間は何も喋れなかったが、ララが言葉を止めたのでようやく喋れた。
「何? 何何何コレ!?」
「うるせー喋んなハオ號機!」
「ハ……ハオ號機!?」
「気分いいわ〜。自由サイコ〜」
「じ、自由!?」
0611創る名無しに見る名無し
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2018/12/30(日) 05:32:16.55ID:/pWikotR
(うわああぁあああああっ、助けてくれぇッ!)
ハオは体の制御が効かない現象と、徐々に自分が自分ではなくなっていく感覚に恐怖を抱き、声にならない悲鳴をあげた。
0612創る名無しに見る名無し
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2018/12/30(日) 06:48:19.24ID:oxo46bJJ
「思った通りだわ」ララが言った。
「何が?」ハオが聞いた。
「私達、相性抜群」
「そうかな」
「そうよ、だってハオさんの動きは格段に強くなったっぽく思うし」
「あ。素人目にもそれわかる?」
「それに私は難しい操作とかしなくても、ハオさんが格ゲーのキャラみたいに私をフォローして賢く動いてくれるし」
「なんか動いちゃうんだよね」
「何より押さえつけられてた日陰キャラ同士、怨念ぱわぁーが増幅よね」
「ごめん、俺、それはない」
「ハオさんがグズろうと主導権、私だし」
「うぅっ……」
「優しいだけだった私の白い『気』が、ハオさんと化学反応起こして青い『気』に変わったし。この子に『すべてを破壊する憂鬱』と名付けましょう」
「ううう……」
「それに……わかる?」
「わかってるよ」
「さっきからこの会話、口を使わずテレパシーでしてるのよ、私達!」
「頭の中で……声がする」
「あっ! お腹が空いた。お腹が空いたよ、私!」
「そりゃ昨夜から何も食べて……あれ。俺は空腹感じねぇ」
「感覚をどちらか一方が占有出来るみたい! 今まで私、食事はメイファンのをヴァーチャル体験出来るだけだったのに!」
「俺の口でメシ食っても、旨いって感じるのはララさんだけってこと!?」
「これからはララって呼ばないで」
「ぇ……」
「これからはララ・ラングレーと呼びなさい。あなたのパイロットよ」
0615創る名無しに見る名無し
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2018/12/30(日) 08:48:51.93ID:01L5XKUk
外ではトランプ大統領の「大恐慌」作戦が進行し中華を蝕んでいたが
安全な施設内にいる、ララとハオにとってはどうでも良かった。
0616創る名無しに見る名無し
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2018/12/30(日) 11:42:50.12ID:h4prWkBw
「恐慌」って日本じゃ経済関係にしか使われないけど、中国語だと「パニック」みたいな意味だよね
0617創る名無しに見る名無し
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2018/12/30(日) 17:31:22.72ID:WQL6GbTK
ララはハオと同化が進む度に淫靡な声を出すと同時に
ハオもまた麻薬のような快楽に襲われ
アへ顔を晒した。
0619創る名無しに見る名無し
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2018/12/30(日) 19:08:10.97ID:3YJxU4dv
ララはお腹が空いた、お腹が空いたと繰り返し喜んだ。
「何か食べましょう、ハオさん」
「んなこと言ったって俺、金ねぇよ」
「お金がないならカードを使えばいいじゃない?」
「カードなんか持ってねぇし」
「何てことでしょう!」
「どーでもいいよ。俺は腹減ってねぇし」
「カードを持たない人間がいるなんて!?」
「社会的信用ねぇんだよ」
「ではピンちゃんにお願いするしかありませんね。ハオさん、スマホをお貸しなさい」
「お前が突然家出したから持って来てねぇよ」
「では……今夜はどこで寝ればよいのですか……?」
0620創る名無しに見る名無し
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2018/12/30(日) 20:06:21.54ID:3YJxU4dv
「帰ればいいだろ」ハオは真っ当なことを言った。
「それは……」
「何意地張ってんだ?」
ララは暫く考え込み、キッと顔を上げると、ハオの身体もキッと上を向いた。
「とりあえずハオさん、ご飯を食べましょう!」
「だから金ねーって……」
「私達は『すべてを破壊する憂鬱』。破壊すればいいのですわ」
「は?」
「レストランへ入り、食事をし、社会秩序を破壊し、外へ出るのよ」
「あぁ……食い逃げ?」
「食い逃げという罪ですのね? では、レストランへ入り、食事をし、店主を殺し、外へ出るのは何と仰るの?」
「普通に殺人だろ」
「それをするのよ、お兄ちゃん」
「しねーよバカ」
「私達も殺し屋としての経験を積むの。メイから教えられたことを活かしてみなさい」
「殺し屋ってそんなセコい仕事じゃねーから!」
「いいからご飯屋さんに入るの! ほら!」
朝4時だった。西安の町は静まりかえっていた。たまーに労働者風のおじさんが歩いて通るぐらいで、マクドナルドすら開いていなかった。
しかし寺をライトアップする明かりに混じって、セブンイレブンの偽物のコンビニが開いているのが見えた。
「あそこに入って、お弁当とあったかい飲み物を買って、店員を殺して、出るの」
「そんなことで殺される店員さんが可哀想だろ!」
「やるのよ、ほら!」
ララがレバーを前に倒しながらAボタンを押すとハオは立ち上がり、コンビニへ向かって歩き出した。
「歓迎光臨(いらっしゃいませ)〜」黒縁眼鏡をかけたブサイクな20歳代の男の店員が一人、レジにいた。
ハオはまだ操縦され慣れないギクシャクとした動きで弁当と温かいお茶をなぜか2つずつ手に取ると、レジに差し出した。
「48元ね」
『殺すな! ララ! やめろ!』
身体の中で叫ぶハオを押さえつけてララは言った。
「フフフ……」
「? 48元よ。財布忘れたアルか?」
「体で払うわ!」
「ヒエーッ!?」
ララはハオのシャツを思い切り脱ぐと、自慢のフェロモンを大量発射した。男の乳首が店員を誘っていた。
「アイヤーーッ!!」
店員は思い切りカラーボールを投げつけて来た。ハオはひょいと避けた。
「お願い! お腹が空いてるの! お腹が空くって死にそうな気持ちなの! これで……これで」と言いながらララはハオのちんちんを見せた。「どうか!!」
0621創る名無しに見る名無し
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2018/12/30(日) 20:35:07.42ID:bD+F6+w9
ハオのちんちんはララとの同化が進行していたため
女性器にちんちんが生えた奇妙な形状に変化している。

店員はそのあまりのグロさに嘔吐した。

「い、今のうちに・・・!」
ララはお金を払わずに弁当を店から持ち去った
0622創る名無しに見る名無し
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2018/12/30(日) 20:35:57.65ID:bD+F6+w9
ハオのちんちんはララとの同化が進行していたため
女性器にちんちんが生えた奇妙な形状に変化している。

店員はそのあまりのグロさに嘔吐した。

「い、今のうちに・・・!」
ララはお金を払わずに弁当を店から持ち去った
0624創る名無しに見る名無し
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2018/12/30(日) 21:46:37.12ID:3YJxU4dv
「ハオさん、ごめんなさい」ララは泣きべそをかいた。「ハオさんの大切なところを殿方の前にさらけ出してしまって……」
「いいよ」ハオはだんだん落ち着いて来た。
「しかも……あの方を……殺せなかった」
「安心したよ。ララが本当は狂ってなくて」
「そうでしょうか? 自分では十分狂ってると……」
「お腹が空きすぎておかしくなってただけだよ」
ララはハオの中でぽろぽろと泣きはじめた。
「私……お腹が空くというのがこんなにも辛くて絶望的なものだとは知らなかった……」
「お腹空いたことなかったの?」
「昔はあったんだと思う……。でも、いつからか、辛い感覚はメイファンが私から遮断するようになって……」
「辛い感覚?」
「うん。空腹とか、痛みとか、生理痛も……」
ハオはメイファンが全裸にナプキンだけつけてるとこなんか見た覚えがないけどな、と思いながら聞いた。
「あ、そうだ。そんなに辛いなら……」
「うん」
「その空腹、俺に預けちゃえよ」
「えっ」
「感覚をどちらかが占有出来るんだろ?」
「あっ……あぁっ! そうですね!」ララの声は元気を取り戻した。「私、お腹が空いた喜びに囚われて、つい占有してしまいました。えいっ!」
ハオは相当な空腹に襲われるのを覚悟していたが、やって来たのは『小腹が空いた』程度の感覚だった。
「凄まじく絶望的な空腹でしょう?」
「うん。これは凄い」
「えへへ。お兄ちゃんに押し付けてやった」
0625創る名無しに見る名無し
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2018/12/30(日) 22:22:19.81ID:3YJxU4dv
「でも、何か食べないとお兄ちゃんが死んじゃう」
ララは笑ったり悲しんだり忙しかった。やっぱりちょっと狂っているのかもしれなかった。
「お兄ちゃん、タダでご飯食べられる方法って、何かないの?」
「7時まで待とう」ハオは言った。
「7時になったらどうなるの?」
「たぶん、施しがある」
「施しって……わっ、私を誰だと思っているの? 表向きとはいえ、国家主席習近平の娘が、シモジモの者から施しを受けるなど……っ!」
「そんなんじゃねーよ」ハオは静かに言った。「まぁ、待て」

やがて冬の遅い朝陽が昇りはじめ、公園には人々が集まりはじめた。
老いも若きも、男も女も集まってゆっくりと太極拳の套路を始めた。
「ララ、身体を自由にさせてくれ」
ハオがそう言うと、ララは操縦モードをオートに切り替えた。
ハオも集団に混じって套路をこなした。
ゆったりとした時間の流れに包まれて、ララはハオの中で眠ってしまった。

しかし何だかいい匂いに誘われて目を覚ますと、目の前に熱々のお粥と肉饅頭があった。ララは叫んだ。
「お兄ちゃん! ご飯だ!」
「この大恐慌の御時世だからね、太極拳に参加すれば施しが貰えるところ、多いんだ」
「すごーい! お兄ちゃん! ご飯だ!」
繰り返してからララは、すぐにお腹の感覚を自分が占有し、オートモードを解除して操縦桿を握り、お粥を口に運んだ。
口をはふはふ言わせながら熱々のお粥を口に運ぶ。胃に流れて行く熱が心地よかった。気持ち悪かった空腹がだんだんと満たされて行く。
肉饅頭を齧ると肉汁が迸り、おっとっとと断面を上に向けてもちこたえた。塩胡椒の効いた豚肉と筍の慈味が身体に染み込んで来た。
「お兄ちゃん、ご飯って美味しいねぇ」見えないララの笑顔がハオには見えるような気がした。
ハオには味も満腹感もまったく感じることが許されなかったが、まぁ、いいかと思った。
「お兄ちゃん、ご飯って美味しいねぇ」
そうぶつぶつ呟きながら物凄い笑顔で肉饅頭を食べるもうすぐ30歳の男を見ないフリをしながら参加者は皆引いて行った。
0627創る名無しに見る名無し
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2018/12/31(月) 06:19:38.23ID:f5Slofw4
ハオは体の異変に気がついていなかった。
それはおちんちんが消滅しつつあることだ。

なんだか声もおかしい、オカマ声ではなくララの声に近くなったような気がする
0628創る名無しに見る名無し
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2018/12/31(月) 07:18:11.99ID:IDyfozoU
邵紅虎(シャオ・ホンフー)はまだ42歳だが、誰が見ても50歳過ぎぐらいに見える。
ボサボサの髪に無精髭、左目は赤くいつも充血しており、右目は大きな縦の傷で潰されていた。
彼は遠く西安で故郷の四川料理の店を開いているが、料理店主は表の顔、裏では様々なことをやっていた。
依頼されれば殺しもやる。とある地下倉庫では、彼がリーダーとなってほぼ何でもアリのファイティング・クラブを開催していた。
単に素人同士を喧嘩させることもあれば、裏の殺し屋同士が技を競い合うこともあり、結果的に死者が出ればシャオが後処理をする。
その仕事だけで彼の懐は潤っていたが、そのことを隠す表の職業として四川料理店主をやっているのである。
彼は10年近く前までは散打の選手であった。
しかもただの選手ではなく、散打王とまで呼ばれた強者だった。
当時鳴り物入りでデビューしたリウ・パイロンという若者の必殺技、超低空アッパーが顔をかすめ、左目を失い、選手生命を絶たれたのである。
シャオの並外れた反射神経がなければ片目を失うことなどなかった。並みの者ならアッパーは腕に当たり、弾かれたところをリウ・パイロンは掴み、投げて試合を決めていたことだろう。
しかし紙一重で避けようとしたがために、リウの炎を纏うような拳はシャオの左頬をかすめ、まるで火の玉が通過したように眼球含めそこらの肉を焼いたのである。
0629創る名無しに見る名無し
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2018/12/31(月) 07:29:25.42ID:IDyfozoU
ララは街をハオに乗って歩きながらため息をついた。
「私、こんなに知らないことだらけだったのね」
「世間を楽しんだらお家に帰ろうぜ、お姫様」
ハオの言葉にララはむしろムキになった。
「何とかピンちゃんに連絡をとるわ。お金を何とかしてもらうの」
「オカマ声で電話するの?」
「とりあえずお兄ちゃんは何とかしてお金を稼ぎなさい。アルバイトとか……」
「大停電はいまだ続き、北京や天津のほうからこの西安にも職を失った難民が押し寄せてる。今はバイト先すら高き門だよ」
「そんなこと言ってお兄ちゃん、本当は働きたくないだけでしょうがっ」
「んなこたねーよ」
「とりあえずまた私、お腹が空いた」
「まだ11時だぞ」
「お腹が空いた。お腹が空いた。お腹が空いた」
「わかったよ」
「やっぱりレストランに入って、食事をした後、殺しましょう」
「嫌だよ」
「やるのよ! 私達は悪になるんだからっ!」
「聞いてねーよ」
「あっ。目の前にボロいお店がある! あそこなんか初殺しにピッタリじゃない!?」
ララはハオを操縦し、赤い看板のかかった薄汚い店へ入って行った。
看板には白い文字で『シャオ四川料理店』と書かれてあった。
0630創る名無しに見る名無し
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2018/12/31(月) 08:07:31.74ID:IDyfozoU
「いらっしゃい」
ハオが入って来たのを見るとシャオは読んでいた新聞を置き、低い声で言った。
『あれ?』ハオがララの中で言った。『何か見たことあるような……』
『知人のフリしてもダメですよっ』ララが叱る。『食べて、笑顔になって、殺すの!』
ララはカウンター席に座るとハオの声で四川麻婆豆腐と鶏肉飯を注文した。
「お客さん、台湾の人?」とシャオが調理をしながら聞く。
「いいえ。甘粛よ。なぜ?」
するとシャオは少し不機嫌そうになり、黙ったかと思うと、キレたように答えた。
「喋り方が女みたいだからだろうが」
『お兄ちゃん、この人怖い』
『な? こんな怖い人殺せねーだろ?』
『怖いから殺そう』
『それよりこの人に頼み込んでここに住み込みで仕事させて貰うという手もあるけど……』
『やだ。こんな怖い人と一緒に住めない。殺そう』
『……この店に人手がいるとは思えないしな』
『ね? 殺そう?』
そんなこと言っといてララに人は殺せない、たぶん食い逃げすることになるんだろうなぁとハオは思っていた。
「食え」
シャオはそう言って麻婆豆腐と鶏肉飯を連続でハオの前に置いた。
「え?」
「なんだ」
「麻婆豆腐……注文したん……ですけどぉ」
「それが麻婆豆腐だ」
『ゲ、ハオさんが吐いたゲロではないの、これ!?』
おそるおそる一口食べてみる。
『まっず!』
赤唐辛子をふんだんに入れたハオのゲロの味がした。
鶏肉飯もぞうきんを浸した汁の味が濃く、ララはどんどん殺意を燃え上がらせた。
0631創る名無しに見る名無し
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2018/12/31(月) 08:49:48.64ID:Rs7TC/B0
『なんだ?』シャオが睨んできた。『俺の料理が不味いとでも言いたげだな』
『いっ、いえ……あっ、そうだわ!』ララはいいことを思い付いた。
味覚をすべてハオに押し付け、自分は満腹感だけを味わった。
『糞まっず!』
嫌がるハオの口にはレンゲが無慈悲に運び続けられた。ハオの目にもシャオへの殺意か灯る。
「食ったか」シャオは言った。「食っちまったな?」
そして続けて言った「8000元(約12000円)だ」
ララとシャオは殺意の燃え上がる目で店主を睨んだ。
0633創る名無しに見る名無し
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2018/12/31(月) 10:14:42.65ID:TEqzuQ+s
ララとハオの感情がシンクロしたため
ララとハオの気の同化がより促進した。

ハオは発作的に湧き出る体の快感に
白目を剥き、目尻を下げ、口端を釣り上げ似ニタァとアへ顔をシャオに晒してしまった。

「ヒェッ!」
流石のシャオもその悍ましさに悲鳴をあげ、たじろいた。

なお、下半身の一部は既にララ(女性)化しつつあったが
ハオはまだ気が付いていない。
0634創る名無しに見る名無し
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2018/12/31(月) 12:29:40.72ID:Rs7TC/B0
「俺としたことが計算も出来ねぇのか……」
シャオは目を覆った。
「正確には日本円に換算すると12万8千と4百円な。さぁ払って貰おうか」
0635創る名無しに見る名無し
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2018/12/31(月) 12:47:25.70ID:0IrSFJmi
ハオ號機は軽い身のこなしでシャオ店員の手を躱すと そのまま外へ逃げ出した。
当然シャオも後を追う。

「待てーっ、食い逃げだーっ、誰かそいつを捕まえてくれー!」
シャオはハオ號機を追いかけながら叫んだ。
0636創る名無しに見る名無し
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2018/12/31(月) 14:21:45.62ID:yALZNHS7
しかし、シャオに加勢する者は誰もいない
0637創る名無しに見る名無し
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2018/12/31(月) 18:08:46.64ID:fdageKNZ
    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
   /  / ̄ ̄ ̄ ̄ |
   /  / ⌒  ⌒ | ほいさっ ほいさっ
  | /  (・)  (・) |
   (6      ⌒) / ̄/ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ
   |   )  __ ∧λ/        ヽ      
   \    \_/ |/   ⌒  ⌒ |
     \____||||||||    (・)  (・) |
  /⌒  - -  |(6-------◯⌒ヽ―、
/ /|  。    。|| \   / ―┬‐i┘
\ \|    亠  \ \ ||  IIIIIIII| アヒィ!
  \⊇  /干\  |\   |___亅  
    |         | |   \__|_
   ( /⌒v⌒\__| |  ∨\__|  
パンパン|     丶/⌒ - - \
    / \    |  |     / |
    /  ノ\__|  |__三_ノ|  |
   /  /パンパン|  | ゚  ゚   |  |
  /__/     |  |      |  |
          ⊆ |     | ⊇
0638創る名無しに見る名無し
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2018/12/31(月) 18:51:59.31ID:Rs7TC/B0
「ったく……何やってんだジンチンっ!」
シャオが叫ぶと同時にハオの前方に巨大な風船のようなハゲ頭の男が出現した。
「ジンチン! 塞げっ!」
ジンチンと呼ばれた男は「もわー」と欠伸をすると2倍に膨らみ、狭い路地を塞ぎ行き止まりにしてしまった。
ハオ号機は追い詰められた。
「てめぇジンチン! 店の出入口を塞いどけっつったろーが!」
「すいませーん兄貴。飴買いに行ってたんですいませーん」
ララはハオ号機を操縦し、パンチの連打をジンチンの腹に食らわした。しかしぶよぶよのお腹はその攻撃をすべて吸い込んでしまい、まったくダメージを与えられない。
0640創る名無しに見る名無し
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2018/12/31(月) 19:46:27.93ID:WIr7Q0KF
シャオ「払えねーってのなら身体で払って貰うぜ?
男色専門の娼夫になるか、ゲイバーで働くか、臓器を売るか。選べ!」
0641創る名無しに見る名無し
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2018/12/31(月) 20:32:52.84ID:se1nnDpO
そこへ紫色に塗装した110ccのホンダカブが突っ込んで来た。
乗っているのは紫色の髪をした黒いツナギの女だった。
「ズーラン!」シャオが女の名前を叫ぶ。「てめぇ!」
ズーランと呼ばれた女はアクセルターンでバイクを止めると、ハオに後ろに乗れと命じた。
0644創る名無しに見る名無し
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2018/12/31(月) 23:55:50.17ID:BJdREtyP
謎の女ズーランはハオを乗せて逃げ去るかと思いきや、500mほど走った石畳の橋の上でまたアクセルターンをし、ハオを振り落とした。
0647創る名無しに見る名無し
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2019/01/01(火) 07:48:12.61ID:tA0Wtriz
ズーランはハオの2つ年下の幼なじみであった。しかし会うのは11年ぶりになる。
0648創る名無しに見る名無し
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2019/01/01(火) 07:50:15.82ID:tA0Wtriz
ハオは紫然(ズーラン)のことを親しみを込めて紫紫(ズズ)、ズズはハオのことを豪豪(ハオハオ)と呼ぶ間柄だった。
0649創る名無しに見る名無し
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2019/01/01(火) 08:42:48.09ID:P9GAyYdG
「久しぶりね、ハオ。11年ぶりかしら」ズズは妖しく微笑んだ。
「一瞬わからなかった! すっかりいい女になったなぁ〜!」
「ハオは変わらないわね」
ズズは意味ありげに笑う。長い紫色に染めた髪が風にキラキラとなびく。口紅は真っ赤である。
胸は作りもののように巨きく黒い皮ツナギの前を膨らませ、引き締まったウェストに意外に小さなお尻。
『お尻だけは勝ったわ』ララは操縦席でお茶を飲みながら思っていた。
しかし広州のビルの屋上で聞いた話がララの頭の中でリピートされていた。ハオが素人童貞を卒業したのはシューフェンが相手だったはずだ。
ということは、この女性とは肉体関係がないか、あるいはこの女性がプロであるかだ。
しかし最後に会ったのは11年前だと言った。11年前、ハオさんは18歳? 目の前の女性は16歳だろうか?
16歳でプロだったとは、いくら中国でも考えにくい。
ララにはわかった。ハオさんは、意気地なしだったのだ。本当はすごくヤリたくてしょうかなかったのに、
意気地なしのまま童貞は卒業せず、高校を卒業してしまったのだ。

ララはハオの身体と同化することで、子供の頃からの夢がひとつ叶っていた。
昔からララは不思議でならなかった。なぜメイファンの身体には、おちんちんかないのかと。
習近平と一緒にお風呂に入る時、彼の身体の真ん中についているものが自分にはついていないのを見て、自分(メイファン)には本来あるべきはずのものが欠けていると思った。
10歳になった頃、自分は『女』なのだとようやく意識するようになり、カタワの自意識は薄れたが、
しかし11歳でリウ・パイロンにレイプされた時、恐怖と絶望とともに激しく感じたものがある。それは男根への憧れであった。
自分を容赦なく突き刺す暴力的権力的な棒力に、なぜこの恐ろしい力が自分にはないのだろう? と悔しかった。心が張り裂けるほどに悔しかった。
その力の象徴が今、自分の身体についている。早く誰もいないところへ行ってそれを思い切り触り、握り、何かに入れてみたかった。

『ハオさん』
『ん?』
『この人をレイプしましょう』
『は!? 今度は何を……』
『意気地なしのハオさんの思いを叶えてあげるの! おちんぽも喜ぶわ!』
ララは操縦桿を握った。ハオの身体がロボットのようにピシリと不自然に固まる。
「あら? ハオ、あなた……」ズズは目を細め、怪訝そうにハオの一挙一動を見る。
ハオはがしゃんガシャンと音を立てるようにズズへ向かって手を前に出しながら歩き出した。
ズズが急いでバイクのエンジンをかけ直す。
『やめろっ! ララ! ズズは……』
『ひゃっほうレイプでララも童卒〜』
『男なんだ!』
『おっとこおとこぉ〜……え。男!?』
0650創る名無しに見る名無し
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2019/01/01(火) 09:05:28.04ID:P9GAyYdG
ハオがガス欠したように動きを止めると、ズズはバイクのエンジンをまた止め、ハオの目を覗き込みながら言った。
「何かに取り憑かれているわね?」
そして前カゴにあったパールホワイトのハンドバッグに手を突っ込むと、片手いっぱいの塩を握り出し、投げつけて来た。
「悪霊、退散!」
「『ぎゃあ〜っ!』塩を投げつけられたララはナメクジのごとく小さくなり……ってそんなわけないでしょバシッ!」ララはハオの中でツッコんだ。
「退散したか?」ズズは緊張した顔で聞く。
「あ、うん。すっかりいなくなった」
ズズはほっと胸を撫で下ろした。
「趣味で退魔をやっていてよかった……」
「趣味でタイマ!?」
「ハオは相変わらずエロい顔してるわね」
「うん。あ! ところであのオッサン……追いかけて来ないな? あんまり離れてないのに」
「ええ。シャオの縄張りを出たからね」
「へぇ〜」
「ここからはあたしの縄張りよ」
「え! ズズってボスなの!?」
「まぁそんなもん」ズズはバイクのエンジンをかけ、言った。「あたしの家に来てよ。ハオのことだからどうせプー太郎でしょ?」
0651創る名無しに見る名無し
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2019/01/01(火) 10:38:03.89ID:06grf6Ty
しかし、早くララを追いださなければ
ハオのちんちんは消滅してしまうのだが
ララもハオもまだ気が付いていない。
0652創る名無しに見る名無し
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2019/01/01(火) 13:37:17.20ID:RLkBOwtJ
ズズの部屋は意外と地味だった。
白や赤やピンクや水色で溢れ、芸能人のポスターが部屋中の壁
0653創る名無しに見る名無し
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2019/01/01(火) 13:57:29.62ID:RLkBOwtJ
ズズの部屋は意外と地味だった。
白や赤やピンクや水色で溢れ、芸能人のポスターが部屋の壁中を埋め尽くしているメイファンの部屋を見慣れているララにはまるでオッサンの部屋に見えた。
ベッドと小さなテーブル、ソファー、ドレッサー、冷蔵庫、それとTVの他にはほぼ何もない。木の床に白い壁、木の扉。テーブルの上にはガラスの灰皿が置いてあるだけだ。
ズズは冷蔵庫から缶コーラを2本出すと、1本をハオに渡した。
「ようやく二人きりになれたわね、ハオちゃん」
ズズはそう言うと意味ありげに笑った。
「なんなら暫くここに泊まってもいいのよ? 宿泊代はその逞しい体でいいわ」
「げっ」ハオは思わずコーラを少し噴いた。
「可愛い。昔とちっとも変わらないわ」
「あのっ!」ララが喋り出した。「おちんちん、ついてるんですか?」
「まだ取ってないのよね」ズズは自分の股間をまさぐりながら言った。「タマは取ったわ」
ララは言葉を失った。ハオがまた喋り出す。
「やめろ俺は女の子が好きなんだ」
ララは言葉を失いながらも興味は津々だった。タマのないおちんぽってどんなもの? 入れる穴がないのは残念だけど、こんな綺麗な人なら見てみたい、ちんちんチャンバラを。
「ねぇ、ハオ」ズズは色っぽい目で言った。「あなたの口はやめろって言う。でも、あなたの身体はやろうって言ってるわ」
ハオの身体はやる気マンマンにズボンの前を膨らませ、ズズをまっすぐに見つめながらゆっくりと接近していた。
「私、どっちを信じたらいいのかしら」
0654創る名無しに見る名無し
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2019/01/01(火) 16:40:01.27ID:uWKRrAX1
「冗談よ」そう言ってズズはハオを両手で押し返した。「ハオなんか相手にするわけないでしょ気持ち悪い」
「ええっ? じゃあせめて、おちんぽ見せろよぉ」ララはハオの真似をした。「タマなしおちんぽ見せろよぉ」
「でもよくあのシャオの店から逃げ出せたわねぇ」
「あのひとこわかったぁ……」
「シャオのことはハオならよく知ってるだろうけど、あの用心棒のジンチンがまた厄介なのよ」
ズズは細い煙草を取り出すと、火を点けた。
「あんなアホみたいな顔してめっちゃ強いのよ。地下ファイトで1万元まで上がってる」
「地下ファイト?」ハオが聞いた。
「シャオが主催者でね、地下倉庫で賭けファイトをやってるのよ」
「金が貰えるのか?」
「相手の強さによって対素人1元(約16円)〜対王者1万2千元。王者はもちろんシャオよ」
「ふーん」
「ハオも出てみる?」
「いや興味ねーし、帰ってぃやいや相当興味ありますそれ! 出る! 出る! 出てみたい!」
「……どっちなのよ」
『ララっ! 俺は帰ってシューフェンの葬式に出なけりゃいけないんだっ!』
『出なくていいじゃん! お兄ちゃん関係ないじゃん!』
『関係ないことないだろ!』
『だって取られたじゃん! お兄ちゃんのじゃないじゃん!』
『でも最後に……』
『最後にシューフェンお姉ちゃん看取ったのリウ・パイロンじゃん!』
ハオは何も言えなくなってしまった。
「急に黙り込んで一点を見つめ出して……何よ」ズズは不気味そうにハオを見る。
「出ます」ララは言った。「どうしたらいいですか?」
0655創る名無しに見る名無し
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2019/01/01(火) 16:52:18.20ID:uWKRrAX1
「まずは変装ね」ズズは言った。「シャオの奴、執念深いのよ。アンタだと知ったら何が何でも今日の食事代、払わせるわ」
「変装かぁ」ララは言った。「ちょっとやってみる」
「やってみる?」
「ちょっとお化粧室貸してくださいね」
「どうでもいいけど、アンタ、あたしの言葉遣い、うつった?」
ララはハオを操縦して化粧室の鏡の前へ行くと、自分の姿をまじまじと見た。
まじまじと見るまでもなく見慣れたハオの姿だった。
「まだ、やってみてなかったのよね」
「え?」ハオは意味がわからず聞いた。
「メイと身体を入れ替わった時、全然違う姿に変身したでしょう?」
「えっ」ハオは何だか嫌な予感がした。「まさか……」
「ハオさんの身体でララになったら……どうなるかな」
「嫌な予感がする! キモい予感がする! やめてくれ!」
「女っぽくなって、弱くなっちゃうのかなぁ」
「うぁぁぁ何か見たくない! 目を瞑らせてくれ! 無理か! いやぁぁぁ!」
「えいっ!」
0656創る名無しに見る名無し
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2019/01/01(火) 18:38:04.86ID:uWKRrAX1
「ォェェェェ……」
「ォェェェェ……」
二人分のゲロを吐きながらハオは戻って来た。
「どっ、どうしたの?」ズズが驚く。
「ダメだわ。あれはダメ……」ララはこの後しばらく後遺症に悩まされることになる。
「やっぱり普通に変装するしかなさそうね」
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