『シューフェン、元気か。突然いなくなってすまない』
「拉致されてるとか書くなよ。もちろん習近平のこともだ」
「わかってるよ、糞」
ハオは続きを読み上げながら書いた。
『俺は今、鬼のような先生について散打の特訓をしている』
「散打だと?」メイファンが口を挟んだ。「まぁ、いいか。殺し屋ににるための特訓をしているとは書けんしな」
『事情あって場所は言えないが』
「よしよし」
『もしよかったら去年の11月20日に一緒に食べに行ったものを思い出して欲しい』
「なんか暗号臭いな、それ。削除しろ」
チッと舌打ちしてハオは続けた。
『俺は元気でやっている。心配しないで欲しい』
「……」
『俺が愛しているのはお前だけだ、シューフェン。どうかおれの帰りを待っていて欲しい』
「おい」
「なんだ」
「お前は一生ビーフンの元には帰れんのだぞ。これは決定事項だ。それなら気を持たせるよりきっぱり別れを告げるほうが彼女のため……」
「ほっといてくれ!」ハオはさらに強く机を叩いた。「俺の手紙だ! 気が散る! 黙れ!」
メイファンは素直に黙った。
『なぁ、最後に交わした言葉、覚えてるか?』
『お前は女優のファン・ビンビンと自分とどっちが綺麗かと聞き、俺はファン・ビンビンと言った』
「そんなこと言ったのかよ」メイファンは小声で呟いた。
『あれは本心だ』
「正気か」
『だけどもしファン・ビンビンとお前を選べるとしても、俺は間違いなくお前のほうを選ぶ』
「……」
『俺の運命の相手はお前だからだ。俺にとってだけは、お前は世界一の女なんだ。俺の帰る場所はお前だけだ』
「…………」
『愛している』
「ズッキュゥゥゥン!」メイファンの心臓から音が鳴った。
「なななななんだなんだ銃声がしたぞ!?」
「知らんな」メイファンは無表情で言った。「私には聞こえなかった」