>「やぁキャトラ!度々僕は思うんだけど、君は両手に花だね。
 その徳を理解したつもりで、まぁ、僕の暇つぶしに協力したまえ!」

「……う、うん! そういえばそうだね」

自分は性別の意識が薄い妖精族だし、シリルはローブをまとった中性的な雰囲気なので、
言われてみればそうなのか、という感じだ。
しかし決してシリルが美人ではないとかいうわけではなくむしろ逆。
美少年とも美少女ともとれる、性を超越したような整った顔立ちをしている。
暇つぶしとはなんとことはない、雑談であった。
その中で192さんがスカゲラク海峡のクラーケンの伝承を語る。

「スカゲラク海峡って……もろ今から通るとこじゃん!」

>「遺憾ながらここはクラーケンが来ないように神に祈るしかないよ。
 僕達にできることは少ない。海の魔物相手にどこまで戦えるかも分からないし、ね。
 あと数時間でスカゲラク海峡だ。吉と出るか凶と出るか。僕達の女神に任せておくとしよう」

快晴だった天気が一変、海峡に近づくほどに悪天候となり、大波で揺れる船。
様子を見に出て行ってみると、何やら船長と船員が深刻な顔で話している。

>「クラーケンの野郎に出くわすことになるかもしれん……。
 まさか俺の代でこんなことになろうとはな……」
>「船長、どうするんですか?」
>「どうすることもできんさ……神にでも祈るんだな」
>「……アイアイサー」

「おいおい、マジかよ……ってぎにゃあああああああああああ!?」

一際強い揺れが来たかと思うと、吸盤のついた巨大なイカの足のようなものが海面から現れ、船の甲板に叩きつけられた。
たちまちのうちに船上は混沌の戦場と化す。

「ぎゃー! お助けー!」

「お客様の中に勇者、剣士、魔法使い、その他戦える方はいませんかー!?」

「これでも一応神託の勇者らしいからさ……エンチャント”ファイア”!」

炎をまとった短剣で脚に切りかかると、相手は暫しひるんだように見えた。

「あなた方は!?」

「話は後! 残念だけどオレ達には倒せる気がしない……!
なんとか牽制している間に全速力で海峡を抜けてくれ!」